三井物産株式会社

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Business Innovation

データドリブン経営
三井物産グループは未来へ

世界中に拠点を持ち、ありとあらゆる領域でビジネスを展開する三井物産。その経営改革が、最新のデータ・AIの力で進められています。


いま、あらゆる産業分野にかつてない影響を及ぼしている一大潮流がデータやAIの活用です。最先端のデータ知見はビジネスを劇的に変えます。世界に475もの関係会社を持つ(*2025年3月現在)私たち三井物産は、グループ全体で「データドリブン経営」と呼ばれる取組みを推進。世界中で経営改革を加速させています。

米国三井物産が育てた取組みは、三井物産グループ全体を巻き込んだ動きとなり、東京・北米・中南米を中心に100以上の部門・関係会社で150以上のプロジェクトが進んでいます。私たちはそこで得られたノウハウを資産とし、欧州、中東・アフリカ、アジア全域へと広げていきます。

キーワードは、データ活用の「民主化」。全世界の社員が日常的に、最新のデータ・AIを基に意思決定できるプラットフォームを構築。さらに、総合商社の強みを活かし、企業・業種の壁を超えてグループとしての価値を生み出していきます。

データに基づく意思決定で事業価値を上げる

世界中でヒットしたアメリカ映画『Moneyball』をご存知でしょうか。2011年に公開されたこの作品、実話に基づくストーリーが大きな反響を呼びました。経営危機に瀕した弱小メジャーリーグ球団が古い常識を覆し、緻密なデータ分析で選手を集め大躍進。野球界そのものを変えていくのです。

当時から15年。意思決定に客観的なデータと分析を用いる手法は、スポーツ界に限らずあらゆる領域に広がりました。企業の経営判断に、革命的な変化が起きています。こうした取組みは「データドリブン経営(Data Driven Management:以下DDM)」と呼ばれています。

三井物産のDDMは、米国ニューヨークを起点に一人の社員のアイデアから始まりました。データをフル活用し関係会社の事業価値を上げる。2022年10月にタスクフォース化され、その後、取組みが加速した際のコードは「Project Moneyball」。映画の中の躍進さながらの成果を次々とあげ、現在はグローバルで150以上のプロジェクトを展開。食料、流通、モビリティ、化学品、ウェルネス、エネルギー、インフラなど、幅広い事業領域をカバーしています。

私たちのDDMが米国から始まった理由は二つあります。ひとつは、米国が世界のデータビジネスの最前線であること。クラウド型データウェアハウスや分析プラットフォームの主要企業が揃っており、彼らとパートナーシップを結ぶことで、誰もが簡単に使えて、個別のプロジェクトをグループ全体の資産に変えていける共通プラットフォームを構築、展開することに成功しました。

もうひとつは、「グローバルマトリクス体制」を採用している三井物産の事業軸と地域軸の交差点に米州本部が位置していること。事業部間の垣根が低く、ボトムアップで新しい提案ができる自由闊達な文化が根付いていました。

その結果、専門家に頼りすぎずに「現場社員が」「現場のリアルなニーズに基づき」「現場の日常の中で」最新のデータ分析を活用する動きがどんどん広がっていったのです。

中古トラックのオークションの経営改革

中古トラックのオークションの経営改革。画像

米国で中古トラックのオークション事業を展開するTaylor & Martin(以下T&M)という会社があります。モビリティを成長分野の一つと位置づける三井物産は、2024年4月、同社を買収。契約成立のまさに当日にDDMチームがT&Mの経営陣とミーティングし、同社のユニークなデータの活用法を議論しました。

コロナ禍で対面集会が禁止されたのを機に、T&Mは地域ごとの現地オークションから全米規模のオンラインオークションへ中核事業を移行。その結果、「宝の山」とも呼ぶべき膨大なデータを手に入れていたのです。

落札データはもちろん、これと並んで大きな価値を持つのは、ギリギリで落札できなかった「惜敗顧客」のデータ。「どんな車種を、どんな条件で、どんな価格なら買う意思があったのか?」――それは、限りなく優良な見込客だけを集めた詳細なデータです。しかし、これを有効活用するには、適切なプラットフォーム、そして現場で一緒になって動ける実装部隊が必要でした。

現在T&Mでは複数のDDMプロジェクトが走っていますが、最も代表的なのは価格予測ツールと惜敗顧客へのアプローチです。

価格予測では、これまでの膨大なオークションデータを元に機械学習をすることで、出品希望者に精度の高い落札予想額を素早く示すことが可能に。シンプルなインターフェースで使い慣れたアプリケーションから利用でき、経験の浅い営業スタッフでも質の高い提案をすることができるようになることが期待されます。

一方で惜敗顧客は自動でリスト化。新たなオークションの際に刺さる商品を自動提案します。購入意欲の強い層にピンポイントでアプローチし売上の増加に貢献しています。

T&Mのケースはほんの一例です。三井物産は出資した事業会社に人材を送り、現場のオペレーションに深く寄り添ってきた歴史があります。現場理解は私たちの圧倒的な強みです。データ・AIの活用による経営インパクトが大きい業種に、私たちが橋渡ししてDDMを導入することで事業価値を大きく高めることができます。

現場の改革を、現場が加速させる

現場の改革を、現場が加速させる。画像

DDMのプロジェクトには三つの型があります。(1)分析の民主化、(2)機械学習による将来予測、(3)AIエージェント、の3つです。

「民主化」プロジェクトでは、統合されたデータに対して現場スタッフがノーコードで高度な分析ができる環境を整えます。実際に具体案件で、伴走しながら進めるのがポイントです。また、「機械学習」プロジェクトでは、需要・価格予測などの高度な予測機能を説明可能な形で実現します。そして「AIエージェント」プロジェクトでは、エージェントを活用したオペレーション自動化、文書処理の効率化のようなプロジェクトを推進します。

この三つを全て同じ共通プラットフォーム上で稼働させることで、個別のプロジェクトからの学びをテンプレートとして蓄積できます。どこかの事業部で開発されたAIエージェントや予測モデルは「テンプレート」として資産化され、共通プラットフォームを介して最小の追加コストでグループ全体へ展開されます。

現場中心の改革を加速させるため、2024年からは「DDM Day」という取組みをスタートしました。三井物産所属のメンバーではなく、グループ会社の現場スタッフが自社のデータ活用プロジェクトを他社の仲間に共有する場です。

2025年のDDM Dayにはオンライン・オフライン合わせて400人以上が登録。6つのグループ会社社員がプレゼンテーションを行いました。流通業界の需要予測や、AIを活用したオペレーションの自動化など、多岐にわたる知見が共有され大きな盛り上がりを見せました。

三井物産ならではのユニークな事業価値創出を

現在、DDMの取組みは北米・中南米から世界中へ広がり始めています。

米州を担当するニューヨーク・サンパウロチームに加え、ロンドン(欧州)、ドバイ(中東)、シンガポール(アジア)、東京にもチームが設置されました。2025年9月には、東京本店にグローバルDDMタスクフォースが立ち上げられ、これをベースとして、2026年4月付けで本店に「グループDDM戦略推進室」が新設されるなど、プロジェクトは次のステージへ進もうとしています。

DDMのロードマップは、「点・線・面」という3つのフェーズで描かれています。「点」=データ・AIの民主化と現場への実装、「線」=三井物産との連携深化による経営の高度化、「面」=グループ間エコシステムと創発です。

現在は「点」と「線」、すなわち民主化および実装と、三井物産と連携した経営高度化の段階ですが、これを「面」、つまりグループ間でのビジネス革新へと拡大していきます。ひとつひとつの個別事業の枠を超え、部門・業種をまたいだ事業の組み合わせの価値(Combinatory Value)の創造を目指しているのです。

DDM ロードマップ

「データ・AIの民主化」による各現場でのユースケース(点)創出を起点に、グループ内データのリアルタイム結合による経営判断の高度化(線)、事業・バリューチェーン横断的なデータの統合活用による価値創出(面)へと発展させる

点(Points)

データ・AIの民主化と実装

  • 誰もがデータを活用できる環境を整え、現場のプロの力を最大化
  • 成功事例を起点にニーズを喚起し、ユースケースを自律的に拡大
線(Lines)

リアルタイム連携と経営の高度化

  • グループ間のリアルタイム連携で、迅速な経営・ポートフォリオ判断を実現
  • 静的なレポートから、動的なインテリジェンス共有へ変革
面(Network)

グループ間エコシステム

  • 業界・組織・地域を横断したデータ活用で、複合的価値(Combinatory Value)を創出
  • ユースケースをグループ内で共有し、成功事例を拡大・再生産

三井物産は総合商社として、同じサプライチェーンの様々な段階に多くのグループ会社を有しています。鉄鋼と自動車、モビリティと小売、エネルギーとインフラなど、その例は枚挙にいとまがありません。こうした企業間で、共通のプラットフォームを通じて情報を連携することで、より高度な経営判断を可能にします。

たとえば、自動車販売のデータは鉄鋼市場の需要の変化を示す重要なシグナルとなり、川上に位置する鉄鋼メーカーが活用することができます。この発想をあらゆるサプライチェーンに広げ、世界475社のグループ会社に事業価値創出に繋がる独自のデータと、それを活用するユースケース・エージェントを組み合わせて届ける構想です。

私たちはデータ活用を深化させることで、三井物産グループだからこそ可能なユニークな価値を生み出していきます。それは"360° business innovation"をスローガンとして掲げる三井物産ならではの挑戦です。

データの力で未来へ。総合商社のビジネスの最も進化した姿がここにあります。

2026年8月掲載