People
Rick Neitz
Vice President, Head of Natural Gas
Mitsui & Co. Energy Marketing Services (USA) Inc.
Houston, USA
Cathy McCann
Manager, Natural Gas Scheduling
Mitsui & Co. Energy Marketing Services (USA) Inc.
Houston, USA
シェール革命以降、劇的に変化する米国のエネルギー市場。Rick NeitzとCathy McCannの2人は、そこで急成長する三井物産のガス事業を支えている。
Rick Neitz
LNGの大型プロジェクトに挑む
私はいま、12人からなるチームの責任者として米国でのガス事業に携わっています。三井物産が権益を持つプロジェクトから生産されるガスの引き取りや管理、また三井物産以外が生産するガスのトレーディング、マーケティングなどです。
私たちにとっていま最も重要なのは、何と言っても2019年にいよいよ操業が始まるルイジアナ州の「Cameron LNGプロジェクト」です。これは米国産LNGの輸出プロジェクトであり、とてつもなく大きな規模で天然ガスを取り扱うことになります。たとえば、Cameronでは毎日、標準的な500MWの発電所が1日に消費する天然ガス量の25~30倍もの量を扱います。単一の施設としては驚くべき量です。
取り扱い規模だけでなく、Cameronのオペレーションが決して容易ではないことも長年の経験から想像できます。たとえば、一般的なLNGのプロジェクトでは原料となるガスの生産現場と液化プラントが近く、パイプラインは1つか2つのみです。LNGを引き取るタンカーの到着が遅れたり、液化設備に問題が生じたりしても、オペレーターは生産サイドに連絡しペースを落とすよう頼めばそれでいい。しかし、Cameronでは工程がそのように一体化されていません。 液化設備を管理するSempra社、原料ガスを送り込むためのパイプラインの会社、その他のパートナー各社の複合体で運営される事業のため、各社の状況を常に把握し、動く必要があります。私たちは、起こりうるありとあらゆる事態を想定した上でビジネスを進めなければなりません。
また、CameronのLNGは、長期契約と短期契約を組み合わせ世界中に販売される予定です。私のチームは、東京の三井物産のLNG販売チームに対し、原料となる米国内の天然ガスの価格動向とそれに関わるさまざまな予測データを提供しています。原料となるガスの価格は、パイプラインのメンテナンスや稼働状況など、あらゆる変数の影響を受けます。私は何十種類もの変数を分析し、日々とどまることなく価格変動する原料ガスの最適調達を可能にするプログラムをチームで構築しました。すべてはプロジェクトを成功に導くための挑戦です。大変困難でしたが、結果にはとても満足しています。
常に学び、常に自分をアップデートする
私はMEMS以前にもグローバルなエネルギー企業にいました。しかし、どの会社でも経営トップでない限り、世界中の他のオフィスとの対話はほとんどありませんでした。そう考えると、三井物産が世界中で人材交流を進めていることはとても価値あることだと思います。他のオフィスや他業界に関する新しい情報に触れることができるからです。
アメリカの企業は商品軸に特化して活動する傾向があり、異なる商品の知見を持つ人と一緒に働くことはあまりありません。しかし、ここでは多様な社員の意思疎通と協働をとても重視しており、私にとって大きな刺激になっています。
先日はニューヨークで、米州にある三井物産の関係会社CEOを集めたカンファレンスに参加しました。テーマはDigital Transformation。参加者は、三井物産ならでは、さまざまな事業分野から集まっており、異なる業界の視点からエネルギーバリューチェーンについて意見交換するなど、大変有意義な経験となりました。
エネルギー業界に話を戻すと、シェール革命は市場だけでなく、その業界で働く人間のキャリアにも大きな影響を及ぼしています。業界全体が恐るべきスピードで変化する中、常に自分をアップデートしつづけなければならない。私はそう感じていました。2015年に再び大学に入りMBAを取得したのものそのためです。クラスにはエネルギー業界の経験者も多く、そこで取得したMBAは間違いなく私のスキルの向上に役立っています。まあ、フルタイムで働きながら20年ぶりの学生生活を送ることは非常にハードではありましたが(笑)。
今後の目標は、MEMSの事業エリアの拡大です。5年以内に全米の主要市場すべてで活発に事業を展開する。決して手の届かない目標ではないと考えています。
さらには、米国以外、特にメキシコでの展開も視野に入れています。今後、三井物産がこの業界でどのような戦略を描くにせよ、間違いなく私たちMEMSはそのキープレーヤーとなる。これからますます面白くなっていくとワクワクしています。
Cathy McCann
事務アシスタントからスケジューラーへ
わたしのエネルギー業界でのキャリアの第一歩は、1999年、多国籍エネルギー企業での事務アシスタントでした。その後、2001年にスケジューリング業務に関わるようになり、以来15年以上にわたりスケジューラーとして経験を積んでいます。
MEMSではスケジューリングチームのマネージャーの立場です。チームメンバーはわたしと、20年以上の経験を持つシニアスケジューラー、ジュニアスケジューラーの3人。この3人で当社のガストレーダーが取引するすべてのガスをカバーしています。
米国の天然ガスのパイプラインシステムは非常に複雑です。わたしたちは、ガストレーダーが売買したガスの輸送を、さまざまなパイプラインを通じ所定の期限内に手配します。デリバリーの期日管理は極めて厳密で、ミスは許されません。
トレーダーがガスを売買する。スケジューラーはそのガスが無事運ばれる事を責任もって見届ける。トレーダーとスケジューラー、両方の力がひとつになってはじめて仕事が完了するのです。そこに貫かれているのは、「Keep people whole」(全員がまとまり、責任を持って仕事をやり遂げる)という精神。チームとしての力が求められています。
いま、MEMSはエキサイティングなフェーズを迎えています。取り扱うビジネスの量においても、人材においても、大きく飛躍しつづけている。この時期にチームの一員であることを、わたしは誇りに思っています。
プロとして、子どもたちの手本として
わたしは、ここで働くことをとても楽しんでいます。日本人の同僚との交流もその一つです。今までにベルギー、フランス、ロシア資本の企業で働いてきました。さまざまなライフスタイルや文化に触れてきましたが、日本人の同僚は、こうした中でも指折りの知性と勤勉さを備えているように思えます。
また、プライベートでは、わたしにはもうひとつ大きなタスクがあります。それは家族。子どもたちを育てることです。母としての最大の責任は、子どもたちが成功に向かって挑戦するよう導くことだと感じています。そして、その最良の方法は自分が手本となってその姿を見せることだと思うのです。
わたしはこの業界で、アシスタントとしてスタートしました。いわば“いちばん下のポジション”からスタートし、一歩一歩今のポジションまでたどり着きました。よく働き、貪欲に知識を求めること。それが今のわたしを築いています。
自分がプロとして努力する姿を見せること。それがいちばんの手本になると信じて。だからこそ、働くときはとにかく真摯に、一生懸命働くのです。
2019年1月掲載