360° business innovation | 吉田 浩一 - 三井物産株式会社

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吉田 浩一

コーポレートディベロップメント本部 金融事業部
アセットマネジメント事業室 プロジェクトマネージャー

三井物産に入社して3年が経った2013年5月、吉田は、当時在籍していた経理部から日本ロジスティクスファンド投資法人(JLF)を運営する三井物産ロジスティクス・パートナーズ(MLP)の財務企画部へと出向を命じられた。
「一刻も早く戦力になってJLFの成長に貢献する」と決意した吉田は、「貢献したいという気持ちは、口先だけではなく姿勢や結果で示すしかない」と考え、懸命に業務に取り組んだ。

吉田が最初に任された大きな仕事は、JLFでは3年ぶりとなる公募増資のための目論見書の作成だった。

公募増資とは、企業が資金調達のために新たな有価証券を発行し、不特定多数の投資家から資金を集めること。その際、当局に提出する有価証券届出書の情報と有価証券の内容や発行者の事業を説明する情報を合わせた「目論見書」が、必ず投資家に渡される。

吉田は財務企画部の一員として、証券会社や弁護士とやりとりしながら、150ページ以上ある目論見書をつくりあげていった。責任は重大だった。当時のJLFは、大きな物件のテナントが抜け次のテナントが見つからないなど、克服すべき課題をいくつか抱えた時期だった。

厳しい状況の中で資金を集め、新たな物件を購入することをきちんと投資家に評価してもらうためにも、投資判断に必要な重要事項をしっかりと伝える目論見書が不可欠だったからだ。

設立以来、JLFが一番大切にしてきたのは、投資家への分配金を増やすことだった。

「『公募増資で集めた資金で良質の物件を購入し、JLFが有する先駆者としてのアドバンテージ、三井物産の強力なサポート、含み益率の高さ、強固な財務基盤、保有物件の再開発(Own Book Redevelopment)という5つの強みを活かした運営をすること。これにより、分配金を下げないstable(安定)と投資家のみなさまへのリターンを増やすGrowth(成長)のどちらも追いかけます』というメッセージをしっかりと打ち出しました」
目論見書に記載されたJLFの成長戦略は投資家に評価され、2013年9月に実施された公募増資では約150億円が集まった。

一方、20~30億円規模の物件を買う場合は、市場ではなく銀行からの融資で資金を調達した。
「『金利はいくらで』『期間何年で何十億円借りたい』などという交渉は、なかなかこの年次では任せてもらえないと思います。ただ、MLPには若手にも思い切って仕事を任せて育てるという風土がありました。銀行との交渉も自ら志願した仕事でしたが、周りの方が必要なサポートをしてくださったのがとても心強かったです。JLFの調達コストを抑えるために交渉を行うのですが、一方で銀行と長期的に良好な関係を築くことも大切で、想像以上に奥の深いこの仕事に大きなやりがいを感じていました」

MLPで吉田は投資家対応(IR)の仕事も担当した。半年に1度、決算の発表後、国内の個人投資家や投資信託のファンドマネージャー、地方銀行、信用金庫、信用組合、農協(JA)などの機関投資家、北米やアジアの主要な投資家のもとを訪れた。

「一般的にIRの仕事は、他のリートでは“会社の顔”である社長やCFOが行うケースがほとんどです。しかし、MLPでは着任して半年を過ぎた頃には『1人で行って来い』と言われました。ハードルは相当高かったのですが、チャレンジングな機会を与えてもらえたことに感謝しています」

個人投資家へのIRは、数十人単位で集まってもらい、講演形式で行った。何十歳も年上の投資家の方々に対して、吉田は「こんな若造に説明された投資家さんの心証はどうだろう?」と心配したが、IRをアレンジする証券会社の担当者からは「しっかりと説明しているので、大丈夫ですよ」と太鼓判を押されたという。

2015年5月、吉田は2年間の出向を終え、三井物産において4月に新しく組織されたコーポレートディベロップメント本部に異動した。物流、金融の知見と、エネルギー、インフラなど、さまざまな分野での豊富な実績、優れた人材と知見、ネットワークを組み合わせることで、次代のニーズに応えるビジネスの創造に取り組むプラットフォームとして設立された本部だ。

ところで、MLPに出向した際の「一刻も早く戦力になる」という決意は、実現したのだろうか。
「出向最終日には泣いてくださった方もいて、少しはお役に立てていたのかなと感じることができました。MLPの社員の方々には、今でも会えば『席を空けて待っているから、いつでも戻って来て』と声をかけていただけます」と吉田は笑顔をのぞかせた。

現在、吉田は、MLPと私募ファンドを扱う三井物産リアルティ・マネジメントの2つの関係会社管理を担当している。
「主管部として2つの関係会社をしっかりサポートしていきます。さらに、海外展開やリートの対象を産業施設などに広げる計画がありますので、そこを実現していくのも私のミッションです」。さまざまな「金融機能の提供」と「金融マーケットとの接点」を通じて、収益基盤の構築と新規事業の創造に挑んで行く。

2015年9月掲載