Business Innovation
患者さんと、医療にかかわる全ての人の未来を。
三井物産のヘルスケアエコシステム
世界各国・地域における医療ニーズは急増かつ多様化していますが、それに対応可能な医療施設やサービスはいまだ十分とはいえません。
三井物産は、病院事業を中核とし医療周辺事業を有機的につないだ「ヘルスケアエコシステム」の構築を通じて、その課題解決に取り組んでいます。
国連が2011年に発表した世界人口予測によると、世界の60歳以上人口は1950年の2億人、2012年の8億人から2020年には10億人、2050年には20億人という急激な高齢化が予測されています。また、高齢化と平均寿命の伸長にともない、医療費の負担増加も見込まれています。
とりわけ、人口増加と経済発展による生活レベルの向上が同時に進むアジアでは、これまでになかった「急速な高齢化と高度かつ長期的な治療を必要とする生活習慣病の急増」という深刻な問題に直面しています。しかも、アジアではそもそも病院自体が不足している地域も多く、医療レベルが国際水準に達している病院の数も十分ではありません。医療の供給について量的にも質的にも少なからず課題を抱えているのです。
三井物産は、2008年に医療・医薬関連の事業・部署を集約し、メディカル・ヘルスケア事業部を設立。世界の医療環境を調査・分析しながら、さまざまな試行錯誤を重ね、アジアにおける医療インフラの需給ギャップの解消にビジネスチャンスを見出しました。医療施設が不足している地域には病院をつくり、その病院を中核に専門クリニックといった関連施設、医療・医薬情報サービス、医療人材紹介サービス、施設管理や病院給食事業などの周辺事業を取り込み、つなぐことで、様々な医療課題の解決に貢献することを目指しました。そして、たどり着いたのが、三井物産ならではのヘルスケアエコシステム構想です。
三井物産のヘルスケアエコシステム
ヘルスケアエコシステムとは、病院を中核プラットフォームとし、専門医療、医薬、情報、サービスなどの各種周辺事業を有機的につなぎ合わせることで、医療の質と効率性を高め、社会に貢献するための次世代型の医療インフラです。
医療を提供する場の中心には、病院があります。その周りには、初期医療のクリニック、診断センターや透析センターなどの専門クリニック、薬局などの周辺事業があります。また、そこで使用される薬や輸液を開発・製造する医薬品事業もあります。さらに、医療人材の派遣・教育や医療に関するさまざまな情報提供などの経営支援型事業、病院の清掃、患者さんや職員への給食、電気も含めた設備・施設管理などのアウトソーシング型事業も、それぞれ重要な役割を担っています。これらの周辺事業は、ヘルスケア産業という同一のカテゴリーにありながら個別に運営されるため、充分なシナジー効果が得られていませんでした。
そこで、三井物産は「つなぐ力」と「総合力」を発揮して、これら周辺事業と病院をネットワークで結ぶことにより、全体として患者さんと医療提供者にさまざまな価値をもたらし、最適な医療を持続的に提供できる新たな医療インフラづくりに取り組んでいるのです。
アジアにおけるメインプレーヤーを目指して
アジアにおけるヘルスケアエコシステムの構築を大きく前進させたのは、IHH
ヘルスケア(IHH)への経営参画でした。
三井物産は2000年代初頭からアジア民間最大手の病院グループIHHと創薬や治験の支援事業などを通じて関係を構築していました。そして、2011年5月に、このIHHの株主であるマレーシア政府系投資ファンドカザナ社(Khazanah
Nasional Berhad)からIHHの株式30%(2016年9月末現在18.1%)を取得しました。
IHHへの経営参画によって、ヘルスケア事業における主要プレーヤーとしての存在感を高めた三井物産は、2016年4月にヘルスケア関連事業、医薬品事業、アウトソーシングサービス事業、人材・教育などを再編成したヘルスケア・サービス事業本部を発足。同年8月には米国最大手の透析クリニック事業会社「ダビータ社(DaVita Healthcare Partners Inc.)」傘下の「ダビータ・ケア社(DaVita Care Pte. Ltd.)」の株式20%を取得し、アジアの透析事業への参画を果たしました。
一方、2011年の参画当初は16病院・約3,500床だったIHHの事業規模は、IPOや買収を通じて、2016年9月末時点では52病院・約10,000床にまで拡大しました。株式時価総額で民間病院事業として世界第2位(2016年6月30日時点)の企業となったIHHは、高度医療を望む富裕層患者の受け皿となると同時に、公立病院との役割分担を通じて国全体の医療システムの発展に貢献し、アジアの医療インフラの整備に寄与しています。
日本、アジア、そして世界で
いま、世界の医療費は年間約500兆円といわれていますが、現代の医療はさまざまな課題を抱えています。三井物産は、病院・医師・医薬品の不足の解消、医療機関同士の連携強化、経営効率の改善など、現代の医療の課題解決を今までにない発想で進めています。そのカギは、「場」×「人」×「モノ」×「サービス」×「情報」を、量・質ともに高めてつなぐこと。たとえば、高度医療に特化した病院、慢性期医療を行う専門クリニックや医師などの人材派遣、医薬品の開発・製造・販売。さらには病院食や医療情報の提供まで、あらゆる分野への経営参画を通じて、それぞれの現場から得られる情報・ノウハウをつなぎ、より効率のよい、次世代の医療のしくみを生み出しています。患者さん、医療の現場で働く方、それを支える方、全ての人とともに、誰もがいつでも質の高い医療を受けられる時代へ。
三井物産は、「場」から「情報」まで、一つ一つが有機的につながり共存する、持続可能なヘルスケアエコシステムの構築を通じて、医療の未来を日本、アジア、そして世界で創っていきます。
2016年11月掲載
2021年6月更新