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Business Innovation

食と農の産業に、進化を。
三井物産のサイエンスネットワーキング

増え続ける世界の人口を支えるには、「食と農」の革新が欠かせません。三井物産は、総合商社としての事業推進・ネットワーク力、そしてサイエンスの力を駆使して、食料・農業分野のイノベーションに積極的に取り組んでいます。


食と農の産業に、進化を。三井物産のサイエンスネットワーキング

人々の命を支える「食」と、それを生み出す「農」。現在も人口が増え続けているこの地球上にあって、その二つは、「エネルギー」「環境」などと同様、人類が取り組むべき大きな課題となっています。2050年には100億人に近づくといわれている人口をいかに支えていくか──。そこにはいくつかの論点があります。

まず、農業の生産性という問題です。人口が増え、食料需要が増えても、耕作地は有限です。限られた土地で農作物の収量を上げるには、生産性を向上させなければなりません。そこで必要とされるのが、質が高く安全な農薬、肥料や種子です。

次に、主に発展途上国の経済発展にともなって、中間所得層が拡大するという課題があります。一般に人々は、所得が向上するにしたがって多くの肉類を消費し、食の「おいしさ」を求めます。これを支えるためには、動物に与える栄養と成長の関係を研究する動物栄養科学や、食品に含まれる栄養素と風味、食感、味わいの関係などを研究する食品栄養科学の知見が求められます。

一方、先進国では、これから高齢化が加速度的に進行します。高齢者の病気を防ぎ、健康寿命を伸ばすためにも食品栄養科学が必要とされます。

農薬、肥料、種子、動物栄養科学、食品栄養科学──。食と農に関わるさまざまな課題を解決するための私たちの武器。それが、三井物産の「サイエンスネットワーキング」です。

環境に優しい生物農薬で農作物を守る

環境に優しい生物農薬で農作物を守る

三井物産は、2016年4月「ニュートリション・アグリカルチャー本部」を設立しました。化学や栄養科学(ニュートリション・サイエンス)などのサイエンスを駆使して、新しい事業基盤をつくり、食糧増産や食への多様なニーズに取り組むこと。それがこの新しい本部のミッションです。これまで三井物産が展開してきた化学の領域と食料の領域のビジネスの中間に位置し、「化学」と「食」のハイブリットの性格を持つのがニュートリション・アグリカルチャー本部の大きな特徴といえます。同本部は現在、三井物産のグローバルネットワークを活かし、世界各国の食と農の産業を発展させる取り組みを積極的に進めています。

微生物由来の「生物農薬」の製造と販売を手掛ける米国のセルティス社(Certis USA L.L.C.)での事業展開も、そういった取り組みの一つです。生物農薬とは、菌類などの微生物を利用して害虫を駆除する農薬で、環境への負荷が低いことから、近年、世界中で活用が広がっています。

さまざまな手法を組み合わせて病害虫の発生を抑える手法を「IPM(Integrated Pest Management/総合的病害虫管理)」と呼びますが、従来の化学農薬とセルティス社が開発するような生物農薬を、各地域の環境や病害虫の発生状況に応じて組み合わせていくIPMの手法が、「農作物の収量の向上」と「環境への負荷の低減」という一見相反する課題を同時に解決する一つの方法と考えられています。

セルティス社の取り組みはまさしく、従来の化学農薬とのベストミックスによって環境を守りながら、農作物の生産性を上げていくことを目指したものです。それが農と食への貢献、さらには世界中の人々の生活への貢献につながるのです。

肥料の成分を最適化し、施肥を精密にコントロール

肥料の成分を最適化し、施肥を精密にコントロール 肥料の成分を最適化し、施肥を精密にコントロール

三井物産はまた、肥料分野でも食糧増産の課題解決にも挑んでいます。その代表的な事業の一つが、チリで肥料販売のトップシェアを持つアナグラ社(Anagra S.A.)です。

農作物の成長を促進し、収量を上げるには肥料が欠かせません。しかし、過剰な肥料散布は土壌を傷めることになります。また、土壌に合わない肥料を用いることも、効率的な農作物生産の妨げとなります。

アナグラ社は、農場から土壌サンプルを取得し、研究機関で土壌分析をしたうえで、それぞれの農場に最適な原料配合を行う「カスタムメイド配合肥料」を提供しています。その、いわばコンサルティングモデルによって土壌のポテンシャルを最大限に引き出すのが、アナグラ社の肥料ビジネスの大きな特徴です。

また、ICT事業本部はデータを活用した「精密農業」に取り組んでいます。カナダのファーマーズエッジ社(Farmers Edge Inc.)は、衛星によるリモートセンシング(遠隔測定)によって、農作物の育成状況に基づく施肥企画を作成。そのデータをトラクターのシステムに読み込ませ、肥料の量をコントロールし、収穫の最大化および肥料コストの低減を図る技術を提供しています。

三井物産としての総合力を発揮し、サイエンスに加えデータや最新の技術を駆使した農業ITなど様々な切り口から食糧増産の仕組み作りを進めているのです。

ニュートリション領域で新たな価値創造に挑戦

ニュートリション領域で新たな価値創造に挑戦

南米チリ、米国、カナダ──。三井物産の農業関連事業は世界各地に広がっていますが、栄養科学(ニュートリション・サイエンス)の分野でも、積極的な取り組みを行っています。

飼料添加物の世界トップメーカーであるノーバス社(Novus International, Inc.)は、動物向け栄養科学を基盤に栄養改善を通じた食肉生産性の向上に取り組んでいます。必須アミノ酸であるメチオニンをはじめ、動物の腸内バランスを整える有機酸や、栄養の吸収を助ける酵素などを、世界100ヶ国以上に販売。ニュートリション・サイエンスを通じて、安全で健康な畜産を支えています。

日本では、機能性素材の一つである「糖アルコール」の製造・販売を手掛けてきた物産フードサイエンスが新たな取り組みを行っています。

物産フードサイエンスは、ここ数年の研究開発によって、オリゴ糖の一種であるケストースの工業生産に成功しました。ケストースは自然界にも広く存在し、物性や味質は砂糖に類似しています。腸内有用菌の調整を通じて全身の健康維持に寄与する効果を有する優れたプレバイオティクス素材であると同時に、食品への利用でも非常に汎用性が高いと考えられています。また、国内外の大学や医療機関との共同研究結果から、乳幼児アトピー性皮膚炎改善や、肥満などの予防に効果を有することが学術論文として報告されており、摂取しても血糖値に影響を与えません。このような機能性素材の研究・開発を通して、食を通じた病気の予防や、人々の健康な生活の実現を目指しています。加えて、ケストースの製品開発には、発酵や微生物を用いた医薬品を製造開発する三井物産子会社の日本マイクロバイオファーマの知見・技術も一役買っています。サイエンスを基盤とした広範なネットワーク力で、新たな価値を創造し、市場へ提供しているのです。

三井物産は、長年にわたって培ってきた総合商社ならではの総合力、つなぐ力、サイエンスネットワーキングを活かして、食と農の「産業」を発展させ、その価値を世界中の人々に届けたいと考えています。そして、人々の健康な生活、豊かさの実現に寄与したい──。三井物産はこれからもサイエンスとビジネスをつなぎ、食と農の産業の発展に貢献し続けていきます。

2017年3月掲載