Business Innovation
仕事を創り、国を創り、未来を創る。
三井物産の「創る力」
いま世界で最も活気があり成長している国のひとつ、インドネシア。その物流と貿易の新たな拠点をつくる国家規模のプロジェクトを、三井物産が牽引しています。
人口2億6千万超。その半分が30歳以下という“若い国”インドネシア。中国、インド、米国に次ぐ世界第4位の人口を持ち、経済成長率5%を誇るこの国は、いま最も活気にあふれ成長を続けている国のひとつです。私たち三井物産は、首都ジャカルタの玄関港・タンジュンプリオク港の新コンテナターミナル開発プロジェクトを推進。同国初の外資との大型港湾開発において、コンソーシアムのリーダーとしてプロジェクトを牽引しています。
何もない海上にゼロから港をつくり、国の物流と貿易の中核にする。まさに国家事業。2016年8月の操業開始以降は、私たちは日々の港の運営にまで関わり、総合商社の新たなビジネスを切りひらきながら同国の未来を支えています。
国の輸出入を支える新コンテナターミナル
タンジュンプリオク港は、インドネシアの輸出入貨物全体の半分以上が集まる巨大港です。新興国では、物流インフラの整備不足が経済成長のボトルネックとなるケースが少なくありません。そこで、インドネシア政府は急増する輸出入に対応。2012年、年間コンテナ取扱総量360万TEU(※)から510万TEUへと同港の拡張を決定しました。
※1TEU=20フィートコンテナ1個分の貨物量
三井物産は、半世紀以上にわたり同国で築き上げたネットワークを活かし、この構想を初期段階からキャッチ。いち早く、かつ深く、同国政府のニーズを理解し、外資パートナー候補3社の中で頭ひとつ抜けた提案に成功。2013年2月、優先交渉権を獲得しました。
実は、三井物産がコンテナターミナル事業に本格参入した当時、業界における存在感は決して大きくはありませんでした。にもかかわらず、私たちが成功を収められた背景にはいくつかの要因があります。
ひとつは、オペレーターシップを取り主体的に事業に関わっていく方針を経営が明確にしていたこと。大型インフラ案件でのプロジェクト開発ノウハウを持つ人材、物流オペレーションや業界知見を持つ人材など、部署の壁を越え多様な才をハイブリッドに組織化。物流インフラ事業を大きなビジネスへと育てる、強い意志と体制がありました。
それに加えて、当社が東ジャワのパイトン発電所をはじめ、同国で大規模な官民インフラプロジェクトを長年手がけてきた実績。また、子会社であるPortek 社が同国の国内貨物ターミナル事業で築いた運営実績が高く評価され、優先交渉権を得るに至ったのです。
夜を徹した13ヵ月に及ぶ契約交渉
優先交渉権を得た三井物産ですが、しかし、事業立ち上げまでの道のりは平坦ではありませんでした。沖合での人工島建設、そのための資金調達、事業を進めるスキームの構築など。インドネシア側にとっても、本プロジェクトは初めて外資と共同で大型港湾開発を立ち上げる試み。その実現には、クリアすべき課題が数多くありました。
前例が一切なく、契約書の雛形さえない。そんな契約交渉は困難を極め、夜を徹し、当初予定の3ヵ月を大幅に超えて延べ13ヵ月に及びました。成長中の新興国では、プロジェクト推進中に法規制の整備が並行して進むこともしばしばあります。中長期的な視点で法規制をクリアすべく、そうした変化を見越して柔軟に対応策を検討する日々。それは私たちが数多くのプロジェクトを通じて培ってきた、仕組み構築力を駆使した挑戦の連続でした。
インドネシア側、コンソーシアム側、双方に最適なスキームを求めて。三井物産は、社内外の専門家の協力を得て、あらゆる角度から答えを追求しました。事業スキームの検証、貨物需要予測などの分析。さらにPortek社の知見を活用して、ターミナルレイアウト、クレーンなど荷役機器の調達計画、オペレーションなど技術面の分析を実施するなど。当社ならではの総合力をフルに発揮し、インドネシア側との交渉に臨みました。
また、100万TEUを超えるターミナルには高度なITを駆使したオペレーション知見とグローバルな顧客誘致力が必要と判断。パートナーとして日本郵船に加え、シンガポールを拠点とする世界第1位のオペレーターPSA社を招き、短期間でコンソーシアム契約を締結。世界トップレベルの運営体制を築きました。
その結果、度重なる交渉期間の延長に伴い、あわや優先交渉権剥奪という危機に遭遇しながらも、2014年4月ついにインドネシア側と主要契約に合意。インドネシア国営港湾運営会社(IPC社)、PSA社、日本郵船、そして三井物産の共同で事業会社PT New Priok Container Terminal One(NPCT1社)が誕生。25年にわたって新ターミナルの建設・運営・維持を行なっていくプロジェクトが本格的に動き出しました。
インドネシアの未来へ その先へ
2016年8月、新ターミナルは部分操業を開始。2017年3月には目標容量である150万TEUの取扱いが可能となり、いよいよ全面オープンしました。現在、主な貨物は自動車やバイクなどの部品、産業機械、日用雑貨、また冷凍・冷蔵が可能なリーファーコンテナに積まれた食品や化学品など。インドネシアの生活を、経済成長を支えるあらゆる品々が24時間365日行き来しています。
新ターミナルは、タンジュンプリオク港の既存の2つのターミナルに比べ大型船舶への対応能力が向上。コンテナ荷役速度も50%UPし大幅な効率化が進んでいます。それを実現しているのが世界最大級のクレーンに代表される最新鋭の設備と、NPCT1社が訓練したオペレーターたちのスキルです。
またNCPT1社は、港湾オペレーターであるIPC社・PSA社のサービスプロバイダー視点と、船会社である日本郵船のユーザー視点をあわせ持つ強みを活かし、あらゆる角度からより顧客ニーズに応えるサービスを追求しています。
物流インフラ事業への本格参入から短期間で世界のトップオペレーターと対等なパートナーシップを築き、国家規模のプロジェクトを成功へと結実させた三井物産。しかしその原動力は華麗なものではなく、労をいとわぬ小さな努力の積み重ねであり、厳しい状況でも諦めず協議を重ねる姿勢でした。
三井物産の「創る力」。それは仕事そのものを興し、プロジェクトをまとめ上げ、完遂する力。その先に新たな価値を生み出す力。私たちは、本プロジェクトで得たノウハウを活かし、他の領域・他の国々へも物流インフラビジネスを拡大。国創り、未来創りにいっそう貢献していきます。
2018年3月掲載