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Business Innovation

「買う」をもっと楽しく。
デジタルの力で。

消費が多様化する時代に、デジタルを活用し新しいリテールビジネスを生んでいく。三井物産は、世界で毎月2億5千万人以上が視聴するライフスタイルメディアTastemade(以下テイストメイド)と共に次の挑戦をはじめています。


(動画) NYC Restaurant Pastis Re-Opens featuring Their Maître D' Dressed in Paul Stuart’s “CustomLAB”.

モノを買う。そのプロセスがかつてないスピードで変化しています。ニーズの多様化、デジタルメディアの普及。消費者からトレンドが生まれる時代です。ビジネスにも、消費者と共に価値を生む取り組みが求められています。そこで三井物産は、従来得意としてきた物流プロセスの効率化・省力化、需給予測・在庫最適化などのロジスティクス領域での進化に加え、より消費者の近くでデジタルの活用を進めています。

その一例が、テイストメイドです。日本を含め世界中で毎月2億5千万人以上に、食・旅・ファッションなどの動画を発信。新しい「やってみたい」を生むと同時に、視聴者の興味・反応を分析することで、今まで見えていなかったニーズをいち早く把握。それをものづくりに活かし、一人ひとりが真に求めるサービスを生み出していきます。毎日の暮らしに次のワクワクを生んでいく挑戦です。

毎月2億5千万人以上が見るライフスタイルメディア

毎月2億5千万人以上が見るライフスタイルメディア

テイストメイドは、2012年、米国ロサンゼルスで誕生しました。レシピ動画の制作・配信事業からスタートし、現在ではさまざまなジャンルの動画を主要SNSやインターネットTVで発信しています。

たとえば、今あらゆるレシピ動画の基本フォーマットのようになっている、真上から手元だけを映した「ハンズオンリー動画」。あのスタイルを最初に生み出したのはテイストメイドです。独自の発想で、新たなジャンルを切り拓いてきました。

今や旅行、ファッションを含め、衣食住すべてに扱うジャンルを広げており、視聴者に新たな暮らしのきっかけを提供する「ライフスタイルメディア」として、米国のみならず、南米、ヨーロッパ、アジアで事業を展開しています。

その動画は、全世界で毎月2億5千万人以上の視聴者が、25億回以上再生。短いもので60秒〜90秒。長いものは数十分、場合によっては1時間を超えるものもあり「番組」と呼べるほどのスケールになっています。

日本では2016年6月にサービスを開始。東京・青山のオフィス内にスタジオを持ち、テイストメイド・ジャパンのアカウントでオリジナル動画を毎日3〜5本公開しています。現在は主に「食」カテゴリーで短い秒数の動画が中心となっていますが、今後幅広い展開をしていく予定です。

三井物産は、2019年4月、このテイストメイドに出資。グローバルなネットワークで成長をサポートすると同時に、日本国内での事業開発を担っています。

私たちは、テイストメイドを起点に、消費者向けビジネスの新しいカタチを生み出していきたいと考えています。

「広告が効かない」世代にリーチする

テイストメイドの大きな特長のひとつは、「広告が効かない」と言われる若年層に支持されていることです。米国では「ミレニアル世代」と呼ばれる20代半ば〜30代半ばの視聴者が圧倒的に多く、テイストメイド・ジャパンも18歳〜34歳の視聴者が70%を超えています。

日本の大手広告代理店の調査によれば、「若年層の約60%は広告とわかった瞬間に動画をスキップする」という結果が出ています。こうした層に対し、テイストメイドはプロダクトプレースメント(動画内へのスポンサー商品の露出)を効果的に行い、自然な形でアプローチしています。

テイストメイドの動画づくりの方針は、視聴者に新たに「やってみたい」という気持ちを起こさせるエンタテイメント性を持たせることです。本国ではハリウッドに近いロサンゼルスに本社を持つ地の利を活かし、有能なスタッフを起用。ハイクオリティな動画を制作してきました。そのノウハウが日本でも活かされています。

たとえばレシピ動画でも、単に料理の手順を教えるハウツー動画とは異なります。映像の美しさ、多彩なアングル、小気味よい編集。見て楽しく、「こんなことができるんだ!」と毎日に新しい発見を生む動画を目指しています。「ハンバーグ」でサイト内検索してみるだけでも、五感に訴えるワクワク感を重視したテイストメイドの世界観が伝わるほどです。

スポンサーとのタイアップ動画に関しても、こうしたスタンスは一切変わりません。レシピ動画に食品メーカーの商品を使用したタイアップや、料理中にスマートスピーカーを使うシーンを取り入れたタイアップなど。さまざまなコラボレーションを行ってきましたが、商品を前面に出すのではなく、その商品を使った新しいライフスタイルのイメージが湧くような、楽しめるものに仕上げています。

だからこそ、若い世代に広く支持されているのです。

動画メディアから商品開発へ、その先へ

テイストメイドは、あらゆる場面でデータを活用しています。いつ、どの地域で、どんな動画が、どんな層に、どのくらい再生されているのか。最新のデータを常に分析。PDCAを回しながら、視聴者に本当に楽しんでもらえる動画づくりを追求しています。

その一方で、こうした視聴者の反応を商品・サービス開発に活用する取り組みも始めています。

その代表的な例が、全米に約2万4千店を展開するサンドイッチチェーン「サブウェイ」の新商品開発のケースです。若年層への売り上げが低迷していたサブウェイは、2018年にテイストメイドと提携。テイストメイドは視聴データをもとに嗜好トレンドを分析し、若い世代の健康志向を捉えた新商品を提案しました。2019年4月、そのメニューが両社の共同ブランドとして販売開始。以来大きな注目を集めています。

また、2019年秋には、三井物産の100%出資先であるニューヨークのファッションブランド「ポール・スチュアート」がテイストメイドでプロモーションを展開しました。若者や女性など、ブランドの可能性を広げる新たな客層にアプローチすると同時に、そこで得られたデータを売り場・売り方の改革へ、そして商品開発へと活用していく予定です。

視聴者の興味や動きを分析することで、誰も気づいていなかった消費者のニーズにいち早く気づき、一人ひとりが本当に求める商品・サービスを生み出すことができる。それがテイストメイドの新しいチャレンジ。日本でも、私たち三井物産が軸となって進めていきます。

動画メディアから商品開発へ、その先へ

それだけではありません。テイストメイド・ジャパンでは、さらに一歩進んだ挑戦として、視聴者にもっと直接的に商品・サービスを体験してもらいたいと考えています。

そのために目下進めているのが、「eコマース」と「フードデリバリー」です。動画で見て気に入った食品を、ネットでそのまま買える。あるいは気に入ったメニューを宅配してもらい、できたてを食べることができる。そんなサービスを目指していきます。

2019年11月、まず東京・中目黒エリアでフードデリバリーを開始しました。視聴者は大手デリバリーサービスのアプリで注文可能。テイストメイドらしい楽しいメニューが実際に届き、食べることができます。

消費者と共に「買う」を次の時代へ

私たち三井物産は、これまでリテールビジネスにおいて、主に取引先への原料調達や中間卸の領域で力を発揮してきました。これからはデジタルを活用することで、次のステージへと進化していきます。消費者との直接的な接点を広げ、消費者をもっと理解し、そこから多様化するニーズを深く理解する。そしてそのニーズに真に応える商品を生んでいく。サービスを生んでいく。私たちのビジネスのあり方そのものが、大きく変わっていきます。

従来強みとしてきたロジスティクス領域で今後も力を発揮していくことは当然の前提。これからはデジタルの力を活かし、より消費者の近くで、消費者と共に次の価値を創っていきます。テイストメイドはそのひとつのカタチです。

新しい時代の、新しいリテールビジネスへ。ワクワクを生んでいく私たちの挑戦ははじまったばかりです。

2019年12月掲載