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Business Innovation

米国からアジアへ。「おいしい」をもっと。
三井物産の共創力

世界最大の農産物輸出国・米国から、日本へ、急成長するアジアの国々へ。三井物産は、ユナイテッド・グレイン社を通じてさまざまな穀物を輸出。豊かな食の土台を支えています。


最新の国連予測によれば、現在の世界人口80億人という数字は、2050年には98億人、2100年には112億人に達するとされています。世界で年間8,300万人もの人口増がつづく中、食料供給がこれからの世界において重要なテーマであることは疑いの余地がありません。

この課題に対する三井物産の取り組みのひとつが、世界最大の農産物輸出国・米国での穀物の集荷・輸出事業です。100%出資会社であるユナイテッド・グレイン社(以下UGC)を通じて、西海岸で最大規模の施設から、アジアの国々へ小麦・大豆・トウモロコシを輸出。米国内の農家とのパートナーシップを活かし、単なる“集荷・輸出”の枠を超え、消費地のニーズによりきめ細かく応えられる仕組みをつくろうとしています。

小麦・大豆・トウモロコシをアジアへ

三井物産は、これまで、半世紀にわたり米国穀物市場で大きな存在感を示してきました。1969年、いわゆる穀物メジャーABCDのひとつであるArcher Daniels Midlandから輸出エレベーターを買収し、UGCを設立。確実に業績を伸ばしてきました。

ワシントン州バンクーバーの港に、大規模な輸出施設を保有。その貯蔵能力は米国西海岸最大を誇り、現在では年間約600万トンもの穀物を取り扱っています。これは太平洋岸北西部の輸出市場で20%のシェアを占める数字です。

UGCは長年小麦を中心に取り扱ってきましたが、施設を拡張し2012年からは大豆・トウモロコシの取り扱いも本格化。以来、急速な成長をつづけています。UGCの穀物輸出総量は、2013年に250万トンだったものが、2017年には2倍以上の600万トンに。その内訳比率も、2013年には小麦が80%を占めていたものが、今では小麦50%・大豆25%・トウモロコシ25%へと変化しました。

小麦・大豆・トウモロコシをアジアへ

こうした変化には2つの背景があります。ひとつは、産地である米国北西部で大豆・トウモロコシの生産が拡大したこと。そしてもうひとつはアジア、特に中国の経済成長に伴う需要の高まりです。

UGCは、三井物産の販売網を通じ、アジア全土に穀物を届けています。世界有数のトウモロコシ消費国である日本の需要はもちろん、急拡大する中国の大豆需要に応えました。事実、中国の大豆輸入量は1996年に110万トンだったものが、2017年には9,550万トンへと爆発的に増加。世界最大の輸入国となりました。まさに巨大市場の台頭といえます。こうしたニーズの変化に的確に応えることでUGCは大きな成長を遂げたのです。

さらに、フィリピン、韓国、タイ、台湾など。アジアのさまざまな国・地域にUGCの輸出先は広がっています。これらの国々で、小麦は小麦粉として販売され、大豆は搾油され植物油と家畜用飼料に。トウモロコシは家畜用飼料や、甘味料である高果糖コーンシロップの原料になっています。アジアの新興国が豊かになるにつれて、肉を中心とした高タンパクの食生活が広がっています。UGCはこうした世界的な暮らしの変化を、食品原料・飼料原料というかたちで支えているのです。

生産者とのパートナーシップ

生産者とのパートナーシップ

UGCは現在オレゴン州、モンタナ州、ノースおよびサウスダコタ州をあわせ、米国内に26のカントリーエレベーターを保有しています。カントリーエレベーターとは、穀物の貯蔵施設の一種です。巨大なサイロと穀物搬入用のエレベーターなどからなり、乾燥・選別・貯蔵などを行うことができます。

このカントリーエレベーターを拠点に、エレベーターマネージャーと呼ばれるUGCの担当者が生産者と日頃からコンタクト。生産者との間に強いパートナーシップを結んでいます。この農家との信頼関係がUGCの大きな強みになっています。

三井物産がつかんだ消費地のニーズ動向をもとに、農家とのコミュニケーションをはかり、それに応えられる生産体制を構築。また、生産サイドの作付け状況や、作物の生育度合い、収穫物のタンパク質量など、さまざまな情報をバンクーバーの本社を通じて消費地へと伝達。タイムリーに情報を共有し、生産地と消費地をスムーズに結ぶことで、より効率的で付加価値の高い穀物生産と物流を実現しています。

また、需給の調整機能もUGCの重要な機能です。農家は作物の収穫後、早期に販売したいと考えるのに対し、消費地の顧客は一年を通じた安定供給を求めます。そのため農家の売りたいタイミングと、顧客の買いたいタイミングの間にはズレが生じてしまいます。そこでUGCがいったん農家から買い上げて保管。品質管理を行いつつ適切なタイミングで顧客に販売するのです。さらに、価格変動のリスクにも対応することで、生産者、顧客、ともに相場変動の影響を回避できます。

消費地のニーズにより細かく応える挑戦

近年では、UGCと三井物産とが連携し、消費地からのより細かなニーズに対応する生産の取り組みも始まっています。その一例が、日本の高齢者向け食品のための小麦生産です。パートナー農家との契約栽培により、食品メーカーの求める栄養成分に綿密に応えようという試みです。

こうした作物は、バルクではなく、必要な量を生産しコンテナ輸送で個別に対応しています。生産者と信頼関係を築いているUGCだからこそできる取り組みです。こうした取り組みは、まだはじまって間もない小規模な事例です。しかし、将来に向け大きな可能性を秘めています。

近年、三井物産の食料ビジネスは多様化し、川上から川中へ、そして川下へ、力を発揮する場が広がっています。最終商品に近いところで付加価値を生む役割を求められる機会が増えるのに伴い、UGCのカバーするビジネス範囲もまた広がっていきます。

より生産者の近くへ。より消費地のニーズの深くへ。今までにない事業を展開していく。もっと、もっと、世界の「おいしい」のために。パートナーと、取引先と、共に歩み、共に挑み、共に次の価値を創っていく。UGCの“共創力”が支える挑戦はこれからも続いていきます。

2018年6月掲載
2024年3月更新