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Business Innovation

世界のエネルギーの最前線で、
新たなビジネスに挑み続ける。

世界のエネルギービジネスの新たな中心地、米国。三井物産は、この地で、ガス・電力などを一手に扱うエネルギー物流プラットフォームを構築しようとしています。


世界のエネルギーの地図が、大きく塗り替えられています。2009年、米国はロシアを抜いて天然ガス生産量で世界首位に。2013年にはサウジアラビアを追い抜き、世界最大の産油国になりました。「シェール革命」により、今や米国は世界一の石油・ガスの生産国であり消費国です。エネルギーの中心地が中東から米国へ大きくシフトし、新時代に突入した今。市場のダイナミクスは一変し、さまざまな事業機会が生まれています。

こうした流れをいち早く捉え、三井物産は米国におけるエネルギーバリューチェーンを広く網羅した取り組みを進めています。その中でもMitsui & Co. Energy Marketing Services (USA) Inc.(以下MEMS)は、現在主にガスバリューチェンの中流と下流のオペレーションの拡大を担うとともに、変動するコモディティ相場に対応した多角的なビジネスを展開しています。

ガスバリューチェーンの全てに価値を

2010年、三井物産はひとつの会社を設立しました。米国内のガスならびに石油開発事業を推進する、Mitsui E&P USA LLC(以下MEPUSA)です。これにより、私たちはシェールガスの上流事業におけるプレゼンスを確立。そして、その次の一歩として生まれたのがMEMS です。

MEMSは2011年3月に設立。当初はマーセラスで生産されたガスの販売のみを手がけていましたが、市場の知見を得ることでビジネスの幅を広げています。

たとえば、そのひとつが第三者ガス売買です。これは、三井物産の関係会社以外が生産するガスの販売をはじめ、グループの枠を超えて広く生産者・需要家(=第三者)と取引を行うビジネス。この事業を通じ、MEMSは取引量と顧客基盤の拡大はもちろん、それ以上のメリットを3つ獲得しました。第一に、パイプラインや貯蔵施設の動向に関する深い知見。第二に、顧客ニーズを肌で感じ取る機会。そして最後に、米国市場における知名度の向上です。MEMSの第三者ガス売買は順調な成長を続けており、その取引量は2012年から2020年にかけて10倍以上となる見込みです。

もうひとつ、大きなビジネスの柱となっているのが三井物産の他本部と連携したガス関連ビジネスです。たとえば化学の領域。テキサスを拠点とする米国化学品大手・Celanese社と三井物産とのジョイントベンチャーであるFairway Methanol社に対し、原料ガスを供給。接着剤やさまざまな化学品の原料として活用されています。

米国のガスビジネスの最前線で得たさまざまなノウハウやネットワークを活かし、MEMSは次々と新たな事業を展開。その領域とスケールを拡大し、バリューチェーンを広げています。

ガスバリューチェーンの全てに価値を

支え続ける、挑み続ける 2018年11月Cameron LNG全景

さらに、いま最大級の注目を集めている事業としてはCameron LNGプロジェクトが挙げられます。三井物産はCamron LNG社に16.6%出資、年間生産能力1200万トンのうち400万トンを扱います。400万トンとは、実に、約1200万世帯が1年間に使うガスの量。同プロジェクトの規模の大きさがわかります。

2019年、Cameron LNGはいよいよ生産を開始。MEMSはそのプロジェクトを管理し、原料調達や体制整備とともにLNG船への積み込みまで手がけます。MEMSが基地に送る原料ガスは、初年で現在のMEMS原料ガス年間取扱量の3割以上に達する見込み。さらに、今後よりいっそう大きく伸びていくことも期待されています。

電力事業へ、さらにその先へ

電力事業へ、さらにその先へ Fairway Methanol社製造工場

MEMSの事業は、天然ガスの枠にとどまりません。2017年にはエタン、プロパン、ブタンなどのガス副産物(NGL)も取扱いを開始。さらに2018年には電力の卸売りにも参入し、段階的な成長に向けた多角化を進めています。

米国で生産されるガスの約40%は、実はガス火力発電所に供給されるもの。ガスと電力の市場は深くつながっており、MEMSにとってガス事業の先に電力へと目が向かうのはごく自然な流れでした。

しかも、MEMSの拠点があるテキサス州は全米第2位の電力市場。テキサス電気信頼性評議会(ERCOT)が2,500万人の電力を支えています。電力自由化の先進的市場であるテキサスで知見を重ねることは、MEMSの大きな強みとなります。そこで得たノウハウが、将来他の地域の市場に参入する際に活かされることは言うまでもありません。

エネルギー物流プラットフォームとして力を発揮するために。これからの時代を見据えたMEMSの取り組みが加速しています。

支え続ける、挑み続ける

世界のエネルギービジネスの、最前線中の最前線で事業を拡大すること。それは三井物産の大きな挑戦です。私たちは、そのために現地スタッフと価値観を共有し、役割分担しながら、日々新たなトライを進めています。

思えば三井物産のエネルギー事業の歩みは、すべてが挑戦の歩みでした。戦後の石油・石炭の輸入に始まり、事業を多角化。石油ガスの開発・生産を拡げ、今では生産量総合商社1位に。と同時に、バイオマスや水素などの多様な次世代エネルギーにも挑んでいます。

いま、米国の市場動向を知らずして、世界のエネルギー市場を理解することはできない。ダイナミックな変化の真っ只中にいるからこそ、新たなビジネスチャンスをつかみ、顧客への付加価値を生み出すことができる。

エネルギー事業とは、いわば、世界の未来をつくる事業。もっと、もっと、豊かな社会を支え続けていくために。私たちは、市場の新たな流れ、社会の新たなニーズをいち早く捉え、常に新しいビジネスに挑み続けていきます。

2019年1月掲載