360° business innovation | 久保 裕嗣 - 三井物産株式会社

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久保 裕嗣

United Grain Corporation(出向)
Chartering Manager
在Vancouver / Washington州 / U.S.A

米国の小麦・大豆・トウモロコシを、さまざまな国々の消費地まで直接届ける。消費地のニーズをもっと反映した生産やサービスへ。久保裕嗣は、世界の「おいしい」を支え、広げていく。


米国西海岸で最大規模の穀物集荷・輸出事業

米国西海岸で最大規模の穀物集荷・輸出事業

私はいま、米国西海岸にあるユナイテッド・グレイン社(以下UGC)に出向しています。UGCは小麦、大豆、トウモロコシなど、西海岸で最大規模の穀物集荷・輸出事業を行う企業。三井物産の100%出資会社です。ここで集められた穀物は、日本を筆頭に中国、フィリピン、韓国、タイなど、さまざまな国に運ばれていきます。

こちらに赴任してまだ半年ほどですが、日々、新たな挑戦をしています。実は、UGCの現場の最前線に日本人が入るのは私が初めてなんです。これまで経営層にはいたのですが、もっと現場に入ってビジネスを進めるべく私が来ました。米国人のスタッフと席を並べ仕事をしています。いちいち部屋をとって会議、なんて時間をかけるのではなく、どんどん席に行って話し、すぐに結論を出す。一人ひとりが責任をもってスピーディに仕事を進める。そんな毎日です。

私がここに来たのは、UGCのビジネスの枠を広げていくためです。これまでUGCの役割は“物流”の枠内にありました。内陸の農家から穀物を集め船に積むまでがUGC、そのための用船やその先の販売は三井物産が担う。そんな棲み分けがあったんです。

しかし、近年、三井物産の食料事業そのものが大きく進化しています。川上から、川中へ、そして川下へ。配合飼料メーカーに穀物を販売するという旧来のビジネスの枠を超え、たとえば畜産メーカーや、加工食品メーカーのお手伝いまで。バリューチェーンが広がり、最終商品に近い領域で付加価値を生む役割を求められています。こうした流れの中で、UGCもまたビジネスの範囲を広げようとしています。消費地と直接取引し、その情報をタイムリーにつかむことで、需要先のニーズをより反映した生産やサービスを実現したいと考えているのです。

その第一歩として、UGCの50年近い歴史上はじめて中国との直接取引を実現しました。米国のスタッフと現地中国へ飛び、取引先との関係構築をはかる。契約書づくり、船の手配、実際の積み下ろしから、揚げ地での手配まで。すべてをUGC自ら手がけた初のケースです。上海でのビジネス経験も大いに役立ちました。

こうしたノウハウをUGC内に蓄積し、担当者の育成や組織設計まで含め、東京の三井物産本社と連携してバリューチェーン全体でよりきめ細かな提案を行える体制を築くこと。それが私の役割です。

総合商社では異色の経歴

総合商社では異色の経歴

私は入社後9年間、食料分野でさまざまな経験を重ねた後、自ら手をあげて畑違いの金融分野でキャリアを積みました。その後、縁があって食料に戻ってきましたが、ずっとひとつの分野で知見を深め“その道のプロ”となる人材が多い総合商社の常識では、ある意味、めずらしい経歴といえるかもしれません。

金融では、先物市場でトレーディングに携わる一方、お客様の価格リスクをコントロールする金融商品の開発を手がけていました。一般にメーカーは価格リスクを抱えています。たとえば缶コーヒーが1本120円なら120円で販売価格が固定されているのに対し、原料のコーヒー豆は日々相場が動いている。今日にも原料価格が急騰するかもしれません。そうなると利益を圧迫してしまいます。

食料ビジネスは、主に買付・販売・在庫調整といった現物のソリューションが中心です。しかし、もっと価格面でのソリューションが提供できないだろうか。それが、私が金融を志向した理由です。そしてその考えは今も変わりません。食料の事業において私たち三井物産に求められる機能がどんどん多角化していく中で、現物・価格あらゆる角度からお客様の課題にこたえられる力を高めていきたい。私はそう考えています。

実をいえば、ここ米国でも先物市場での知見を活かし、農家の方々を相手に定期的に勉強会を開催しています。価格リスクはメーカーだけのものではなく、生産者にとっても切実な問題です。大切なパートナーである穀物農家のみなさんには安定した収益を得ていただきたい。よりよいパートナーシップなくして、私たちのビジネスの成功はないですから。

もっと世界の「おいしい」のために

UGCに赴任して半年。とにかく今は、UGCの事業をいかに広げていくかを考えています。消費地との直接取引をいっそう広げられる体制を敷き、産地から消費地まで安定的につながるバリューチェーンを築きたいと思います。

それができたとして、もっと長い時間軸で考えると、個人的には米国に限らず、より多くの国々で現物と価格を組み合わせたサービスを提供していきたいですね。

国が成長しているときは、価格リスクなどイメージできないものです。需要が伸びつづけていますから、たとえば今日買ったものの価格が明日急落するなんて事態は想像もつかない。しかし、永遠の成長はあり得ません。どんな成長もいつかは止まる。いつかは価格リスクと向き合わざるを得ない時がきます。

たとえばインドネシアやベトナムなど、近年めざましい成長をとげている国々も例外ではありません。そんなとき、現物と価格、両面でソリューションを提供できれば多くのケースで役に立つことができます。

私たちの仕事は、世界の「おいしい」を支え、広げる仕事です。そのためにパートナー、取引先、そして私たち自身、皆が共に歩み、共に成長できるビジネスの仕組みを作れたらと考えています。安定してつながり、安定して世界中においしさが広がっていく。そんな未来のために、私たち三井物産ができることはたくさんあるはずです。

2018年6月掲載