Business Innovation
素材の可能性を引き出す。
三井物産の付加価値力
これからの暮らしを便利に、快適にしていくさまざまな「素材」。こうした素材を組み合わせ、多彩な情報を表示する液晶モジュールが、私たちのICT社会を支えています。三井物産は、その生産の一端を担っています。
いま、世界中で暮らしが大きく変化しています。情報、環境、衛生をはじめ、あらゆる領域で生まれる、革新的な製品やアイデア。その多くは、実は「素材」の力で支えられています。素材は生活の未来そのものなのです。
三井物産は、そうした素材メーカーのパートナーとして、さまざまな付加価値を提供しています。その一例が、最新のエレクトロニクスを支える先端材料の分野。たとえば私たちは、スマートフォンや車載用ディスプレイに使われる液晶モジュールの製造受託事業で力を発揮しています。その製造規模は大きく、年間約5,000万台、実に毎秒1.5台のスマートフォン用液晶を組み立てている計算。調達や在庫管理から設備投資、ファイナンスに至るまで、あらゆる機能を高度に融合することで、品質・コストの両面を支えています。
年間5,000万台のスマートフォン用液晶を最適なプロセスで
いまや私たちの毎日に不可欠になっているスマートフォン。液晶モジュールとは、その「製品の顔」とも呼ぶべき部分。具体的には、画像を表示するディスプレイにタッチパネル機構を加えた部分を指します。三井物産は、その組立業務を液晶メーカーから受託、中国のパートナー企業と連携し幅広く手がけています。
こうした製造の受委託はEMS(Electronic Manufacturing Service)と呼ばれ、電器業界を中心に世界中で行われています。EMSは一大産業となっており、世界的ブランドのPC、タブレット、スマートフォンなどもEMSにより生産。EMSを手がける企業には“受託”という枠をはるかに超え、それ自体が独立した巨大企業となっている会社もあるほどです。
三井物産は、本事業のために香港に子会社を設立。中国のパートナー企業とともに生産にあたっています。広東省の東莞市にある工場では、毎月トラック130台分もの部材が運び込まれ、5,000人が日々作業にあたります。生産する液晶モジュールのモデル数は約40種類。それぞれに30ほどの部材が必要なため、あわせて約1,200種類にもおよぶ部材の在庫を適切に管理。1秒に1.5台、1日あたり15万台、年間約5,000万台のペースで滞りなく生産をつづけているのです。
そこにあるのは、従来の商社でイメージされる“売り買い”のビジネスではありません。中心となるのは製造と物流をつなぐノウハウ。複雑な構造の製品を、高い歩留で効率よく製造するために、パートナーと連携し、日々の発注・納入から製造・出荷に至るまで、安定したオペレーションを提供しています。
実際、さまざまな製品の中でもスマートフォンのサプライチェーンのスケール感、スピード感は際立っています。たとえば自動車産業と比較すると、1年間の生産台数は、クルマの1億台に対してスマートフォンは15億台。モデルチェンジは、クルマの4〜5年ごとに対してスマートフォンは6ヶ月〜1年ごとです。
6ヶ月〜1年ごとに次々と新製品が投入される市場。このスピード感にあわせ、短期間で品質と価格を両立させ、かつ大量の製品を安定して供給しつづける。その生産のマネジメントが大きな課題であることは言うまでもありません。私たちは、ある意味世界で最も過酷ともいうべきハードルに挑み、顧客の期待に応えつづけています。
EMSの製造以外の機能を一括提供
三井物産は、大きく4つの役割を果たしています。1.部材調達、2.在庫(部材・仕掛品)管理、3.物流・決済、そして4.ファイナンスです。
顧客である液晶メーカーから週ごとに提示される注文を生産計画に展開し、それに基づき必要な部材を発注。部材ごとの納期や受入検査結果、製造の歩留や出荷計画を日々アップデートし、生産ラインの稼働を維持。さらに物流の効率化や複雑な製造に関する精算処理を迅速に行うことで、EMSとしての利便性の高いオペレーションを提供しています。
さらに、主な部材に関して、顧客(発注元)から支給を受ける際は有償購入とする一方で、パートナーへの支給は無償に。製造中の資金負担を三井物産が引き受けることで、顧客・パートナー両社の負担をなくしています。設備投資の初期費用も引き受けるなど、ファイナンス面でのサポートも非常に大きなものとなっています。
このように、液晶モジュールのEMS事業で私たちが果たしている役割は極めて多岐に渡ります。それはいわば、コーディネーションやコラボレーションというレベルを超える「機能融合」。顧客の製品設計が求める、中国パートナーの製造力に、物流・決済・ファイナンスにいたる私たちのさまざまな知見を融合させ、最大限に力を発揮することで、タイムリーな生産と顧客の要求にあったコストを実現しているのです。
先端のエレクトロニクスを支えるEMS。しかしそれを可能にしているのは、何かひとつの劇的なソリューションではありません。日々のさまざまな局面で立ちあらわれる課題や困難、時にトラブル。それらの改善を糧として、ひとつひとつを解決し、成果をひとつひとつ積み上げていく。そのくり返しにより、私たちは今日も着実に顧客の要求に応えています。
世界人口100億人時代の生活を見すえて
液晶モジュールにかぎらず、いま、先端材料の活躍の場はどんどん広がっています。たとえば半導体や回路基板、電池など、エレクトロニクス関連に限定しても、その裾野はICTの普及に伴って広がる一方。年率10%以上もの高成長をつづけています。
また、さらに目を転じれば、エレクトロニクスに限らずより幅広い領域でさまざまな素材が力を発揮しています。たとえば、クルマを軽量化することでCO2削減に貢献する炭素繊維複合材料。開発途上の国々に衛生的な毎日をもたらす洗剤原料など。その例は枚挙にいとまがありません。
私たち三井物産は、こうした素材が最大限にポテンシャルを発揮し、より広く人びとの暮らしに役立てるよう、素材メーカーをあらゆる角度からサポートしています。たとえば消費者起点での新たな用途提案や、販路・市場開拓、最適なサプライチェーンの構築、多様なビジネスモデルの設計など。そのカバー範囲や手法は多岐にわたります。
もっと便利に、もっと快適に。来たるべき世界人口100億人時代の生活を見すえて。常に先を読み、新たなビジネスを次々と構想し、汗をいとわず、パートナーとともにあらゆる角度から素材の可能性を広げていく。それが、私たち三井物産の「付加価値力」です。
2018年6月掲載