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Business Innovation

モザンビークから、
世界の明日をLNGで担う。

「より多くのエネルギーを、より少ない環境負荷で」。世界の課題に応える三井物産の新しい挑戦、それが東アフリカ・モザンビークLNGプロジェクトです。


これからの時代、エネルギーの使命はますます大きくなっています。77億人を超えて増え続ける、世界中の人々の需要に応えること。一方で、サステナブルな社会を実現すること。「より多くのエネルギーを、より少ない環境負荷で」。この両立が、世界共通の課題です。

その答えの一つとなるのが、三井物産が世界中で展開するLNG(液化天然ガス)事業。LNG は、エネルギーの量と質を両立するその可能性から、大きな期待を集めています。私たちは、このLNG事業を米州、豪州、ロシア、アフリカ、中東、アジアなどで推進。さらに2019年6月には、東アフリカ・モザンビークでのLNGプロジェクトの最終投資決断を実行しました。世界有数のガス埋蔵量を誇る同地から、明日のエネルギーを、社会を支えていきます。

世界最大級の埋蔵量を持つ海底天然ガス田

2019年6月、三井物産のエネルギー事業は新たな一歩を踏み出しました。10年以上にわたり進めてきた、モザンビークLNGプロジェクトへの最終投資決断を実行したのです。

このプロジェクトは、可採ガス埋蔵量が全体で約65兆立方フィート。日本の年間LNG輸入量に換算して、実に15超年分という規模を誇ります。近年発見された中では世界最大級の埋蔵量です。さらに注目すべきは、その地理的な好条件。極東・アジア・欧州などへのアクセスがよく、世界のエネルギーの安定化に大きく貢献できる一大プロジェクトです。
ここから世界中の国々の、そしてホスト国モザンビークの、豊かな明日が生まれていきます。
そもそもLNGとは、気体である天然ガスをマイナス162℃程度に冷却することで液体化したもの。気体の状態に比べ体積が600分の1に減るため、大量輸送・貯蔵が可能となります。
天然ガスは豊富な埋蔵量がある上に、CO2排出量は他の化石燃料よりも少なく、さらに大気汚染の原因となるSOxの排出量はゼロ、NOx(窒素酸化物)も少ないため、世界の人口増と環境問題に対応しうるエネルギーの一つとして、近年大きな期待を集めています。

モザンビークLNGプロジェクトでは、エリア1鉱区と呼ばれる地域を開発。海底2,000~3,000mの層に達する18の生産井、40kmに及ぶ海底パイプライン、また陸上にLNG液化プラント等を建設。ガス田開発から冷却・液化、さらには輸出までを一体化し、世界中にLNGを届けていきます。2024年の生産開始を目指し、現在、急ピッチで開発作業が進んでいます。

世界最大級の埋蔵量を持つ海底天然ガス田

エネルギー開発のフロンティアエリアでの挑戦

エネルギー開発のフロンティアエリアでの挑戦

プロジェクトのきっかけは、今をさかのぼる2008年のこと。米石油大手と共に、石油探鉱に参画しました。

このエリアは、その時点まで石油もガスも一切発見されたことのないフロンティアエリア。エネルギー開発においては何の実績もない「空白の地」でした。しかし、三井物産の専門的知見を持つスタッフは、さまざまなデータからこのエリアの可能性に注目。JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)と共同でプロジェクトに加わることを決定しました。
過去に実績のない地で海底に眠るエネルギーを探しだし、従来にない事業をゼロから立ち上げたい、というチャレンジでした。探鉱活動を進めていった結果、膨大な埋蔵量の天然ガスを発見。それは、後に世界でも有数の規模と判明しました。

実は、LNG開発は、石油開発に比べて建設・操業コストが桁違いに大きくなります。石油開発にはない、液化の工程が必要となるためです。数多くの困難が確実に予想されることから、事業化を進めるべきか慎重な検討がくり返されました。しかし、世界でも類を見ないそのポテンシャルの高さから、プロジェクトを進める決定が下されたのです。

LNG商業化の4つのステップ

LNG商業化の4つのステップ

LNGの商業化には、主に次の4つのステップが必要となります。①法的枠組みの整備、②生産設備の建設・操業準備、③安定した長期販売先の確保、④プロジェクトファイナンスの組成です。私たちはさまざまなハードルを乗り越えながら、その一つ一つを粘り強く進めてきました。

まず、法的枠組みについて。LNG開発は、投資決断から実際にガスを生産し投資回収するまでに極めて長い時間がかかります。販売先への安定供給を果たすためにも、操業期間にわたって想定外のリスクが生じないよう、さまざまな法的条件を明確化した上でその安定性を事前に確保しておく必要があります。
しかし、モザンビークでは海外企業との資源開発の経験がほとんどありませんでした。そこで私たちはモザンビーク政府に働きかけ、両者が一体となって数年がかりで法整備に取り組みました。

インフラの問題もあります。生産拠点は、首都から実に2,000kmも離れた遠隔地。プラントはもちろん、道路・港湾など、必要な基礎インフラをプロジェクト側が自ら整備しなければなりません。経験豊富なコントラクターの協力を得ながら精緻な計画をあらかじめ練り上げておくことが、その後の建設作業を円滑に進める上での鍵となります。

さらに、販売先の事前確保も不可欠です。いったん操業を始めれば、日々、圧倒的な量のLNGが生産されることになります。そこであらかじめ販売先と長期契約を結び、販売の見通しをつけておくことで、安定的に開発を進めることができるのです。

最後にファイナンスです。プロジェクト開発費は、全体で実に二兆円超。三井物産の負担だけでも数千億円にのぼリます。今回の場合、日本、米国、英国、オランダ、イタリア、南アフリカなど、8つの国と地域にまたがる制度金融を活用することで、世界最大級の調達規模となるプロジェクトファイナンスを組成しました。

これらすべてをクリアし、巨大プロジェクトを実現するには多様な知見と幅広いネットワーク、そしてそれ以上に、何としても事業をやり遂げる強い意志と使命感が必要になります。三井物産がエネルギー事業において、数多くの実績を持つ理由がここにあります。

モザンビークの“国創り”にも貢献する

このプロジェクトは、モザンビークという国自体にとっても非常に大きな意味を持っています。モザンビークは現在、人口3千万人弱、GDPは約145億ドル。一人当たりGDPは約500ドルにとどまり、今後の発展が見込まれる国の一つです。
こうした状況にある同国にとって、プロジェクトの影響力は極めて大きいものがあります。経済効果はもちろん、インフラの整備をはじめ、社会に及ぼす効果も広範囲にわたります。たとえば、現地のLNGプラントの建設予定地周辺では、病院や学校・警察等、新たなコミュニティが生まれています。また技術者の育成や、教育への貢献も期待されています。

世界中にエネルギーを安定供給する一方で、ホスト国であるモザンビークに深く根差した事業を展開し、現地の人びとと共に豊かな“国創り”にも貢献したい。モザンビークとプロジェクトが共にサステナブルに発展する新しい仕組みをつくっていきたい。それが私たちの願いです。

エネルギーの産出国と消費国。あらゆる国、地域を超えて、世界中で次の時代の豊かさをつくっていくために。三井物産の挑戦は続きます。

2020年12月掲載