三井物産株式会社

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社会的インパクト評価と進捗報告

ゆたかな自然資本を育む未来の森づくりを国内で実現する挑戦

2026年8月31日 現在

助成金額

100,000,000円

助成先

青葉組株式会社(東京都千代田、以下「青葉組」)

イシューファインダー

中井 照大郎 代表取締役

解決を目指す社会課題

森林を主とする自然資本の保全・成長と、林業従事者の所得向上を両立

トピックスリリース

https://www.mitsui.com/jp/ja/topics/2025/1251495_14877.html

社会課題「劣化する森林(自然資本)を再生し、その担い手を育てる!!」

日本には約1,000万haの人工林が存在しますが、植林人材は20年間で6割減少する等の不足状態にあります。これにより、毎年の伐採面積が約9万ha(東京ドーム約20,000個分)にのぼる一方、再造林率は37%に留まっており、森林の劣化が進んでいます。また、伐採すらされず放置されている森林も多くあります。森林は木材の生産に限らず、CO2の吸収、生物多様性や水源の保全、土砂災害の抑止といった広範な価値、生態系サービスを有しています。生活や経済活動に欠かせない自然資本としての森林の機能を維持していくことは、喫緊の社会課題となっています。

青葉組は、木を伐るのではなく、伐採跡地を森林所有者から受託する形もしくは買い取る形で、企業スポンサーと協働して植林・育林を推進してきました。近年はスキー場跡地の森づくり等に取り組んでいます。加えて、湿地造成にも取り組み、森林だけでなく幅広い自然資本を回復・成長させる専門人材を育成しています。林業従事者の役割を「木材の生産者」から「自然資本を増やすプロフェッショナル」へ拡張し、自然資本の保全・回復活動そのものを収入源にしていく「林業の自然資本産業化」を確立していきます。これにより、林業従事者の所得を増やし、自然資本が有する生態系サービスを維持・向上していく社会の実現を目指します。

三井物産は、本基金を通じ青葉組に対し森林を集約する際の周辺サポート、行政対応の支援、地場企業との連携、同社が志向する森づくりへの企業パートナリング支援等を行います。社有林保有者としての立場からも同社理念に共感し、国内林業を変革し自然資本の向上に貢献します。

社会的インパクト評価(ロジックモデルとKPI)

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イシューファインダー&共創者対談

聞き手: 渡辺(三井物産、右) 答え手: 中井(青葉組、左)

渡辺: 中井さん、まずは青葉組を立ち上げたきっかけを教えていただけますでしょうか?

中井: 日本は約1,000万haの人工林を抱えていますが、植林を担う育林従事者は過去20年で6割も減少しました。その結果、伐採しても再び植える人がいない。再造林率はわずか5割前後に留まり、毎年約4万ha前後もの伐採跡地が放置されています。草地は100年で90%減、湿地は150年で60%減。この現実を目の当たりにして、「伐って、使って、植えて」のサイクルを取り戻すだけでなく、森林が持つCO2吸収や生物多様性、水源涵養といった多面的な自然資本の価値を再生する仕事を、事業として成り立たせたいと考えて2020年に起業しました。

渡辺: 私自身、三井物産で木材建材の事業に携わってきましたが、国内の林業現場で「植える人がいない」という声を何度も聞いてきました。その課題に正面から挑んでいる中井さんの情熱に強く共感したのを覚えています。

渡辺: 三井物産共創基金のことは、どのようにして知ったのでしょうか?

中井: 三井物産とは2023年頃から再造林やJクレジットの文脈で意見交換をさせていただいており、その中で共創基金の存在を知りました。ソーシャルスタートアップも対象と分かり、渡辺さんら共創者に推薦いただく形で、2024年11月に正式に申請しました。議論自体はそれよりずっと前から行っており、約1年かけて申請内容を練り上げた形です。

渡辺: 我々も当初は青葉組との接点を別のビジネス文脈で持っていたのですが、対話を重ねるうちに、中井さんが目指す「自然資本を成長させる」というコンセプトに深く共感しました。戦後の拡大造林期に植えられたスギ・ヒノキが伐採期を迎える中、「伐って、使って、植えて」のサイクルを健全に回すことが今まさに求められています。この課題に情熱を持って正面突破できる方だと確信し、共創基金への推薦に至りました。

渡辺: 実際に三井物産共創基金を活用してみて、どんな印象を持たれましたか?

中井: 率直に申し上げて、資金面の支援は大変ありがたいです。我々のような小さなベンチャーにとって、伐採跡地の買取資金や新拠点の立ち上げ費用、人材の採用・育成費用を安定的に確保できることは事業の生命線です。ただ、それ以上に価値を感じているのは、三井物産の社員の方々が「共創者」として実際に伴走してくださることです。単なる寄付ではなく、共創者が一緒に現場を訪れ、行政や森林組合との折衝をサポートし、スポンサー企業の開拓を手伝ってくださる。このハンズオンの支援は、資金以上の価値があります。

渡辺: こちらこそ、中井さんとの共創を通じて多くの学びをいただいています。「植える側」の現場に深く入り込む経験は初めてで、林業の課題をより立体的に理解できるようになりました。

渡辺: 共創者に期待することや、連携で生み出されている価値について教えていただけますか?

中井: 大きく二つの面で助けていただいています。一つは、企業ネットワークの活用です。我々は自然資本の再生を事業として成り立たせるために、スポンサー企業の開拓が不可欠です。三井物産のネットワークを通じて植林連携の話が生まれたり、被災林再生のスポンサー探しに壁打ちお付き合い頂いたりと、我々だけでは届かなかったネットワークにアクセスさせていただいています。もう一つは、事業の「仕組み化」の支援です。山林の集約化スキームや契約書類のレビュー、財務モデルの構築など、ビジネスの実務面で経験豊富な三井物産の皆さんの知見は非常に心強いです。

渡辺: 当社としても、サステナビリティ経営推進部、さらには三井物産フォレストとの社有林連携など、社内横断的にリソースを活用しながら支援しています。共創基金の仕組みがあるからこそ、部門を越えた協力体制を組みやすくなっている実感があります。

渡辺: 中井さんが目指す自然資本の再生を実現するために、三井物産共創基金以上に必要なものは何でしょうか?

中井: 最も重要なのは、社会全体のマインドセットの変革です。これまでの林業は木材という単一の価値で評価されてきましたが、森林にはCO2吸収、生物多様性の保全、水源涵養、土砂災害の抑止など、多面的な「自然資本」としての価値があります。我々は栃木県茂木町の社有林で町や産学と連携し、湿地造成後わずか5時間で絶滅危惧種のホトケドジョウやムカシツチガエルが確認されるなど、自然資本の回復を定量的にデータで示す取り組みを進めています。このような「見える化」を通じて、企業が自然資本への投資を経営判断として行えるような環境をつくることが、林業を「木材のシングルベネフィット」から「マルチベネフィット」の産業へと転換させる鍵だと考えています。

渡辺: 自然資本の定量化と事業化は、当社サステナビリティ経営推進部も課題認識している分野です。青葉組が自然資本分野に於ける様々なパートナーと連携して水源涵養量や生物多様性を定量化する取り組みは、まさにフロンティアだと感じています。

渡辺: 今後、三井物産共創基金やそのエコシステムにどのようなことを期待されていますでしょうか?

中井: 我々は10年後の2034年までに、自然資本の回復・成長へ官民から年間160億円の新たな資金が投下される世界を目指しています。その実現には、成功事例を一つひとつ積み重ね、「自然資本への投資は経済的にも合理的である」ということを証明していく必要があります。三井物産共創基金を通じて、我々の取り組みが一つのモデルケースとなり、他の企業や起業家にとっての道標になれればこれほど嬉しいことはありません。また、イギリスやオーストラリアでは既に自然再生に年間数百億円規模の市場が生まれつつあります。日本でも同様の動きが加速するよう、社会的なムーブメントを起こしていくことを期待しています。

渡辺: 先日、青葉組の社有林を訪れた際、コナラの苗木が根付き始めた再造林地と、造成したばかりの小川、湿地に既にカエルが産卵に来ている光景を目にして、自然の回復力に感動しました。戦前の旧三井財閥が北海道の森林開拓に深く関わった歴史がありますが、令和の時代において「自然資本を育む新しい林業」という新産業を中井さんと共に創っていけることを、大変光栄に思っています。引き続き、共創者として伴走させていただきます。中井さん、本日はありがとうございました。

活動のハイライト

1.自然資本人材育成の仕組みづくり:採用・育成50人の目標に対し、16人を育成

将来の森づくりを担う自然資本人材育成プログラムを始動しフィールドワークを実践、16人の人材育成を進めています(2026年6月時点)。
業界全体への波及効果を生むために、3年目を目途に社外向けプログラムへ展開する計画です。

2.自然資本づくりへの評価による昇給額:一人あたり50万円/年の目標に向け取組中

昇給は、企業からの評価に対する対価が未だ十分ではなく0円にとどまっており、今後企業取引増加に合わせて増額を見込んでいます。

3.地域を越えた山林集約スキームづくり(新拠点数、集約化面積):3拠点の目標に対し、大船渡市に1拠点を開設、419haを取得

岩手県大船渡市に1拠点を開設し「岩手団」の作業を開始。山林419haを取得済みで(2026年6月時点)、目標1,000haに向け集約を継続します。残る2拠点も候補地の選定・協議中です。

4.自然資本保全のムーブメントづくり:企業との取引件数(含当社有償イベント)60件の目標に対し計29社が参加、自然資本に配慮した事例記事発信件数の目標30件に対し14件

栃木県茂木町で企業向け現場ツアーを3回開催(2026年2月・3月・6月)し、ツアー等イベント全体で累計29社が参加。スポンサー企業とは「植林×卓球」イベントも実施しました。Note等の配信サービスを活用し事例記事の配信も14件実施しました(2026年6月時点)。


三井物産のマテリアリティ(重要課題)

三井物産は、「世界中の未来をつくる」を企業使命に、さまざまなステークホルダーの期待と信頼に応え、大切な地球と人びとの豊かで夢あふれる明日を実現すべく、サステナビリティ経営の重要課題としてマテリアリティを特定しています。本件は、6つのマテリアリティの中でも、特に「持続可能な安定供給の基盤をつくる」、「環境と共生する世界をつくる」の実現に資する取り組みです。

  • 持続可能な安定供給の基盤をつくる

    持続可能な安定供給の基盤をつくる

  • 環境と共生する世界をつくる

    環境と共生する世界をつくる

  • 健康で豊かな暮らしをつくる

    健康で豊かな暮らしをつくる

  • 人権を尊重する社会をつくる

    人権を尊重する社会をつくる

  • 「未来をつくる」人をつくる

    「未来をつくる」人をつくる

  • インテグリティのある組織をつくる

    インテグリティのある組織をつくる