コーポレート・ガバナンス
コンプライアンスとリスクマネジメント
コンプライアンスの考え方
三井物産は、信用こそがビジネスの基本であり、信用を守る必要条件がコンプライアンスであると考えます。
当社グループが真に社会から信頼される企業グループであり続けるために、社員一人ひとりにコンプライアンス意識を徹底し、企業人としての高い品格と高潔さを備え、個々人の良心・良識・倫理や、人間としての礼節、企業倫理・社会の常識などに照らして行動すること(インテグリティ)を求めるとともに、グローバル・グループベースでのコンプライアンス体制構築に取り組んでいます。
コンプライアンス体制構築に向けた取り組み
三井物産グループ行動指針
三井物産グループ各社においては、各社の事業形態に合わせて個別の役職員行動規範を制定していますが、グループ全体で共有すべきインテグリティやコンプライアンスに関する考え方を更に明確にするため、三井物産をはじめ、グループ各社を対象とする「三井物産グループ行動指針」を2018年11月に策定しました。核となる5つの基本精神を含め、一人ひとりの社員が日々の業務においてこの行動指針の内容を実践することを通じて、三井物産グループは、これからも社会からの信頼に、誠実に、真摯に応えていきます。
三井物産グループ行動指針
5つの基本精神
- 1.法令を守り、最も高い倫理水準に基づき誠実に行動します。また、人権を尊重し、いかなる差別も行いません。
- 2.社員一人ひとりの個性と多様性を尊重し、自由闊達な風土を守り、育てます。
- 3.公正な事業活動を行い、社会からの信頼に、誠実に、真摯に応えます。
- 4.地球環境を大切にし、豊かで住み良い社会の実現のため積極的に貢献します。
- 5.何かおかしいと感じたとき、疑問に思ったときは勇気を持って声を上げ、より良い会社をつくります。
三井物産役職員行動規範
「三井物産役職員行動規範」は、法令遵守と企業倫理の観点から企業としての社会的責任を果たし、ステークホルダーの信頼を得るために社員一人ひとりが日常の業務や活動においてどう行動すべきかについて規範として具体的に定めたもので、2001年2月に制定して以来、時代の変化に合わせて改訂を重ねてきました。取締役会監督の下、定期的に研修やe-learningにより全社員にその内容の周知・規範の効果の見直しを図るとともに、一人ひとりの社員が規範を遵守する旨を約束する誓約を行っています。グループ会社でも、それぞれの事業形態に合わせて、「三井物産役職員行動規範」を基に、各社個別の行動規範を制定・導入しています。また、海外では、それぞれの国の法令や慣習などを反映した地域ごとの行動規範を設けています。
三井物産役職員行動規範
- 1.コンプライアンスとインテグリティ
- 2.人権と多様な文化の尊重
- 3.職場環境及びハラスメント
- 4.独占禁止法等の遵守
- 5.利益相反行為及び公私のけじめ
- 6.贈答・接待
- 7.情報の取扱い
- 8.輸出入手続・各種業法の遵守
- 9.会社資金、会計報告及び納税義務の履行
- 10.献金・寄付等
- 11.社会貢献
- 12.環境保全
- 13.反社会的勢力への対応
- 14.報告及び処分
役職員行動規範
コンプライアンス体制
CCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)の指揮・監督の下、コンプライアンス・プログラム統括部署である法務部コンプライアンス室が中心となって、国内外の各本部および支社等にのコンプライアンス統括責任者(事業本部長、支社長等)と連携しながら、グローバル・グループベースでコンプライアンス意識の徹底、コンプライアンス・プログラムの整備・強化、コンプライアンス関連案件への対応を行っています。2021年3月期からは各事業本部にコンプライアンス管理責任者を設置しました。同管理責任者がコンプライアンス統括責任者の職務執行を補佐し、本部内のインテグリティやコンプライアンス意識の浸透、および主管関係会社におけるコンプライアンス体制の整備・強化を実務レベルで加速していくことを目的としています。
コンプライアンス関連全般についての協議を行う場として、コンプライアンス委員会を設置していますが、コンプライアンス体制整備の重要性が一層増してきたことから、2019年3月期からその開催回数を増やすとともに、事業本部長2名を委員に加え、営業現場の目線も交え、活発に議論を行っています。同委員会では、社外弁護士参加の下、コンプライアンス関連事案の発生傾向や課題およびこれらを踏まえたアクションプランについて報告の上、コンプライアンス体制のあり方について話し合い、その内容についてはイントラネットで公開しています。
取締役会は、グローバル・グループベースでのコンプライアンス体制の運営状況等に関する監督機能を有しており、CCOは、コンプライアンス体制の運営状況やコンプライアンス委員会で審議された内容に関して原則として年2回、取締役会への報告を行っています。取締役会では、今後の重点取り組み事項等につき活発な議論がなされています。三井物産グループ行動指針“WithIntegrity”の策定に当たっても、指針の内容や浸透活動のあり方に関して各社外取締役・監査役から多くの具体的な提言やコメントが出され、反映されています。
また、当社CCOおよび国内関係会社のCCOが参加するグループCCO会議、海外拠点地域CCO会議等を定期的に開催し、グローバル・グループベースでのコンプライアンス体制強化のため、最適な取り組み等について積極的な情報交換・意見交換を行っています。
コンプライアンス違反またはその恐れがある場合、CCOに報告するとともに、事業本部長等、各部門のコンプライアンス統括責任者およびコンプライアンス管理責任者が中心となり、原因究明や再発防止策策定を含め主体的に対応に当たり、事態収束後には、結果と再発防止策等をCCOに報告することを定めています。事案によっては、CCOの指揮・監督下において法務部コンプライアンス室が対応します。なお、臨時の社長直轄組織として危機対応時に迅速・的確な意思決定を行う危機対策本部を設置する手順もあらかじめ定めています。
コンプライアンス・プログラム
当社は、どんなに緻密なコンプライアンス・プログラムを策定したとしても、経営幹部による率先垂範を伴わなければ、実効性は高まらないと考えています。そのため、社長やCCOをはじめとする経営幹部が率先してインテグリティのある組織づくりに取り組むとともに、社員に対して継続的かつ繰り返しメッセージを発信し、インテグリティやコンプライアンスの大切さを伝えています。特に毎年11月をWith Integrity月間と定め、意識啓発を継続しています。
具体的な施策としては、CCOブログ等を活用したインテグリティ・マインドの浸透、おかしいと思ったことに声を上げるスピークアップ文化の醸成、コンプライアンス意識調査の実施、コンプライアンス違反事例の共有による再発防止、事業現場での管理の徹底、業務プロセス上のコントロール強化および人材流動化促進等の取り組み、ならびに各種研修・e-learningの実施等であり、それらを着実に実行しています。
なお、当社は、社会の要請・動向を常に意識するとともに、事業活動に関わるリスクの評価を定期的に行い、その結果に基づき、コンプライアンスに関する施策を継続的に見直すことが重要だと考えています。毎年、コンプライアンス意識調査アンケート結果、コンプライアンス委員会や取締役会で議論された内容、各組織コンプライアンス担当者との意見交換および外部評価機関からのフィードバック等を踏まえ、前期に実施した各種施策の効果検証や課題抽出をした上で、来期の活動計画の策定に役立てています。
独禁法遵守に向けた取り組み
当社は各国独占禁止法遵守を経営上の重要事項として位置付けており、各種マニュアル提供や定期的なセミナー実施等を通じて周知徹底を行っています。とりわけ、カルテルについて、2018年11月に「三井物産役職員行動規範」の下位規程として「カルテル防止に向けた行動基準」を策定し、改めて当社の独占禁止法遵守姿勢を明確にするとともに、カルテル防止に向けて、より具体的な行動基準を示すことにより当社役職員の意識向上を促しています。加えて、海外拠点・海外グループ会社でも、それぞれの地域性も踏まえた独占禁止法に関する教育・研修を実施することにより、グローバル連結ベースでの独占禁止法遵守体制の構築を図っています。
腐敗防止に向けた取り組み
当社は各国腐敗防止規制の遵守についても経営上の重要事項として位置付けており、包括的にあらゆる形態の贈賄防止・腐敗防止の体制や取り組みを定めた「三井物産贈賄防止指針」を2016年12月に公表しています。事業の検討においては、腐敗リスクが高いと認識される事業について本指針に基づいたデューデリジェンスを実施しています。また、当社では、公務員等の接遇管理制度や代理店等の起用管理制度等を設けると共に、各種の教育・研修を行うなどして、腐敗防止規制の周知徹底を図っています。加えて、国内外の当社子会社等においても、腐敗防止規制に係る教育・研修の実施に努めるなど、当社に準じた腐敗防止体制の整備・運用を推進しています。
なお、取締役会は「三井物産贈賄防止指針」の取り扱い状況を含むグローバル・グループベースでのコンプライアンス体制の運営状況等に関する監督機能を有しています。
コンプライアンス教育・研修
社員のコンプライアンス意識のさらなる徹底とコンプライアンス実践に必要な知識・情報の周知を図るため、当社では各種コンプライアンス教育・研修を実施しています。
2020年3月期も、新たに当社での勤務を開始した社員向けや管理職向け等の職層ごと、または海外赴任やグループ会社出向前等に、ハラスメント等、人権・人格侵害防止を含むコンプライアンス研修、国内外の重要法令についての説明会等を実施しました。また、ライン長およびライン長相応の管理職全員に対しての出席必須のハラスメント研修を実施し事案発生の抑制に努めています。これらの研修では、コンプライアンス違反に関する報告・相談を自身が受けた場合の対応方法に関する解説も盛り込み、社員が安心して声を上げることの出来る組織づくりに取り組んでいます。
また、2019年11月にはWith Integrity月間を開催し、「インテグリティについて考える」とのテーマの下、社長が直接社員にインテグリティについての自身の思いを話したほか、CCOを含むコンプライアンス委員会メンバーをパネリストとし、若手社員とインテグリティについて議論し合うパネルディスカッションや、社外講師による講演等を実施しました。海外現地法人等および国内外グループ会社ともWith Integrityの価値観を共有すべく、一部のプログラムは英訳しイントラネットで動画を配信しています。こうした全社レベルの企画に加えて、各組織でもセミナーや情報共有・意見交換等の企画を積極的に実施しました。
また、「三井物産役職員行動規範」を解説したコンプライアンスハンドブックによる学習を継続し、当社役職員が日常業務を遂行していく上で身に付けておくべき最低限のコンプライアンス関連知識の浸透を図りました。
グループ会社役職員向けのコンプライアンス研修にも積極的に取り組んでおり、希望のあった国内子会社等に対しては、「三井物産グループコンプライアンスハンドブック」を配布したほか、当社と同様のウェブ診断テストの実施や独自教材の配信が可能なe-learningプラットフォームを提供しました。海外拠点・海外グループ会社でも、それぞれの地域性を踏まえたコンプライアンス教育・研修が実施されています。
コンプライアンス意識調査アンケート
役職員のコンプライアンス意識の浸透を評価するために、三井物産本店および国内支社では毎年、そして海外現地法人や連結ベースでも必要に応じてアンケート調査を実施し、その結果をさまざまな施策立案・実行に役立てています。
そのほかの取り組み
グループ内で生じたコンプライアンス関連事案については、他組織での再発防止やコンプライアンス体制整備の参考となるものを、教訓や再発防止策を特定した上で、グループ全体で共有しています
また、前期に引き続き、当社CCOおよび国内関係会社のCCOが参加するグループCCO会議を開催し、内部通報制度に関するセミナーやグループディスカッション等を実施しました。そのほかにも、グループレベルでのコンプライアンス徹底の観点から、重要関係会社を個別訪問の上、各社の抱える課題を把握し、各社における自主自立的なコンプライアンス・プログラムの整備・運用につながる助言を提供しています。
2020年3月期には、こうした取り組みをさらに加速させるべく、関係会社におけるコンプライアンス体制整備のために最低限必要とされる主要な原理・原則を取りまとめた「関係会社コンプライアンス体制整備ガイドライン」を策定しました。まずは国内子会社を対象に、同ガイドラインを用いて各社の取締役会等で議論を深め、自社の課題を確認しながらコンプライアンス体制の強化が進むよう運用を開始しています。
コミュニケーションの円滑化とスピークアップ文化の醸成
コンプライアンスの本質は、経営理念や価値観を反映した風通しの良い職場環境をつくり、円滑なコミュニケーションを通じて問題の発生を予防していくことにあると考えます。一方、万が一問題が発生した場合は、直ちに上司または関係者に報告・相談し、迅速に適切な処置を施す必要があります。このため、当社では問題を早期に発見することは重要であり、スピークアップは会社をより良くすることにつながる旨の経営幹部メッセージを継続的に発信し、おかしいと思ったことに声を上げるスピークアップ文化の醸成に積極的に取り組んでいます。
コンプライアンスに関する職制ラインおよび職制外の報告・相談ルートとして、社外弁護士や第三者機関(匿名可)も含めた8つのルートを設置しています。このルートは、当社役職員のほか、派遣社員、業務委託先の役職員のうち、当社の委託した業務に従事した、または、している役職員を対象としており、電話、メール、ファックス、書簡等を通じて受け付けています(電話を除き、24時間受付可)。
内部通報制度が有効に活用されるためには、通報者が通報により一切の報復や不利益な取り扱いを受けないことが何よりも重要です。この点、内部通報制度規定において、通報者が通報により報復や不利益な取り扱いを受けることが無い旨を規定することに加えて、通報者および調査関係者への報復・不利益取り扱いの禁止に違反した場合には懲戒の対象となり得る旨明記しています。そのほかにも、2019年4月には通報における匿名性確保や、コンプライアンス違反への関与者が自ら会社に対して違反を報告した場合には懲戒処分の決定に際し情状として考慮することを内部通報規定に明記する等、スピークアップを促すための施策を推進しています。
また、役職員向けに、当社の内部通報制度に関して報告・相談ルートの開設や通報した後の事案の取り扱いについて紹介した動画「おかしいなと思ったらSpeak Up!」をイントラネットで公開し、プロセスの可視化や制度への信頼度向上に取り組んでいます。コンプライアンス報告の状況
当社では、早い段階において広く社員から報告・相談を受けることで、事態の改善に向けた対策を講ずることが可能となり、結果として、コンプライアンス関連事案の発生を予防することにつながると考えています。このような考えの下、コンプライアンス違反か分からなくても、その恐れがある場合には早期の社内報告を奨励しています。
2020年3月期に当社、国内支社、海外拠点および関係会社のコンプライアンスに関連して報告された事案の件数は1,050件で、このうち当社および当社関係会社の経営に重大な影響を及ぼすものはありませんでした。また、当社における腐敗行為・反競争的行為に基づき法的措置を受け、または罰金・課徴金を支払った事例はありませんでした。Global Tax Management 基本方針
当社は各国での適切かつ公正な納税義務の履行と税金費用の適正化に努めており、「Global Tax Management 基本方針」は当社の税務における基本方針を示すものです。
情報リスクマネジメント
情報セキュリティ方針
大切なビジネス資産である情報の適切な管理は、当社にとって必要不可欠であると認識しています。情報セキュリティ方針に基づき、CDIOを委員長とする情報戦略委員会の専門部会である情報リスクマネジメント部会を設置し、「情報管理規程」「情報システム管理規程」および「ITセキュリティ規程」を整備の上で、連結グローバル・グループベースで情報資産(情報およびITシステム)に対する適切な管理を行い、これを継続的に改善しています。
情報セキュリティ方針
個人情報保護
個人情報保護管理体制は、個人情報保護マネジメントシステム(PMS: Personal Information Protection Management System)総責任者の下にPMS事務局を設置し、当社の「個人情報保護方針」「個人情報保護規程」を踏まえて、全役職員へ個人情報の保護の周知徹底を図っています。
当社および関係会社は多様な商品を取り扱っており、とりわけB to C(Business to Consumer)と称される消費財の事業分野を中心に、個人情報の取り扱いが多く、その保護、管理に細心の注意を払っています。このため、事故防止の観点から、教育徹底に加えて、社内各部署に「個人情報管理担当者」を設置し、日常業務における個人情報の管理状況を継続して確認し、必要に応じて改善しています。
2018年5月に適用が開始されたGDPR(EU一般データ保護規則)への対応に関しては、社内ルールを制定し、EU個人データを取り扱う際の各部署における管理体制・運用ルールを整備しています。また、イントラネットを通じた社内周知を行い、GDPRで求められる運用管理(処理活動記録義務対応等)を行っています。
GDPR以外の海外での個人情報保護関連規制についても、適時に対応していくことが企業価値を向上させるものと認識し取り組んでいます。
個人情報保護方針
サイバーセキュリティ
当社および関係会社における事業のICT化およびデジタル化の進展に伴い、当社はサイバーセキュリティ専門子会社の知見を活用しながら、グローバル・グループベースでのサイバーセキュリティ体制の整備に加え、万一の場合に備えて、サイバー攻撃に対応するための専門組織を拡充し、点検を継続的に実施しています。