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Business Innovation

三井物産の総合力
Vale社とのアライアンス

人類に文明と発展、進化をもたらしてきた金属、鉄。日本の製造業が高度経済成長期に隆盛し、世界有数の経済大国となった礎には、世界トップレベルの品質を誇る鉄鋼業の発展がありました。

鉄の原材料である鉄鉱石は、世界のさまざまな国と地域で産出されていますが、鉄鉱石業界は寡占化が進んでおり、トップ3社によって世界の約40%の鉄鉱石が産出されています。その3社とは、ブラジルVale(ヴァーレ)社、豪州リオ・ティント社、豪州BHPビリトン社。三井物産は、この3社共に良好な関係を築いており、貿易業務だけでなく、鉄鉱石資源開発の投資事業でも共同で取り組んでいます。

その中でも海上貿易シェア21%を誇る世界一の鉄鉱石サプライヤーVale社と三井物産は、特に深い関係にあります。Vale社は第二次世界大戦中に、米国や英国へ鉄鉱石を供給するブラジル国営企業として1942年に設立。その後1997年の民営化を経て、現在はニッケル(世界第1位)、銅、金、マンガン、ボーキサイト、リン鉱石、カリウムなど、多様な鉱物を開発する世界最大級の資源企業へと成長しました。Vale社の2014年の売上高は約382億ドル、従業員数約76,000人のブラジル有数の大企業です。

三井物産とブラジル鉄鉱石投資事業の歴史は1970年代にさかのぼりますが、Vale社との関係はブラジル鉱物資源企業カエミ社に、両社がパートナーとして共同出資した2001年から一気に加速しました。これを機に、さまざまな分野における協業の推進を目指した戦略的アライアンス協定が締結され、多目的・複合的にビジネスを創出する当社の「総合力の発揮」に向けた体制が構築されました。そして2003年、三井物産はVale社の持株会社であるValepar(ヴァレパール)社の株式15%を取得し、役員差入れなどを通じてVale社の経営に参画しています。

現在、鉄鉱石事業のほか、モザンビークの炭鉱及び鉄道・港湾インフラ事業、ニューカレドニアのニッケルプロジェクト、ペルーのリン鉱石プロジェクト、ブラジルの一般貨物輸送事業などの共同事業案件、物流案件では鉱山用鉄鋼レール、鉄鉱石運搬用貨車、鉱山機械、鉱山用超大型タイヤなどの販売実績を積み重ね、三井物産の13営業本部中、9営業本部がVale社とビジネス上の接点を持っています。三井物産とVale社とのいくつかの取り組みについてご紹介します。

Valeとの鉄鉱石事業

鉄鉱石は鉄の原材料です。1トンの鉄を作るのに、どれくらいの鉄鉱石が必要かご存じでしょうか? 答えは約1.6トン。鉄鉱石に含まれる鉄は6割程度で、コークスによる還元や、製鋼過程で不純分が取り除かれ、純度の高い鉄が作られるのです。

日本の鉄鋼業は、戦後の高度経済成長期に飛躍的な発展を遂げました。その際、日本の鉄鋼メーカーにとって最も重要な課題は、海外から製鉄原料を長期安定的に調達することでした。三井物産はそのニーズに対応するために、1960年代から豪州と南米を中心に、海外における鉄鉱石資源開発に乗り出しました。

2014年に世界で消費された鉄鉱石は20億トン強で、このうち13億トンが海上貿易で流通していますが、三井物産は、投資事業を通じて権益ベースで5,500万トンの持分権益生産量を保有し、そのうち1,600万トンがVale社に関連する鉄鉱石権益です。
三井物産は、鉄鉱石事業を通じ、地域社会や地球環境に配慮した鉱山開発・インフラ整備を行い、資源保有国の成長への寄与と顧客への鉄鉱石の安定供給を通じて、世界経済の発展に貢献しています。

リン鉱石事業

植物が育つために必要な三大栄養素は窒素、リン酸、カリウムで、これらは農業において「肥料の三要素」といわれています。

リン酸の原材料となるリン鉱石は、主に古代の動植物の化石や糞が鉱床となったものです。中国、米国、モロッコなどが主な産出国で、全世界で年間約1.9億万トンが産出されており、その約85%が肥料用として利用されています。

2010年、三井物産はVale社がブラジルの隣国ペルーのピウラ郡バイオバール地区で開発を進めていたリン鉱山の開発プロジェクトに、米国肥料最大手のMosaic社と共に、資本参画し、三井物産は25%の議決権および経済権益を獲得しています。

現在、同リン鉱山の年間生産量は約390万トン。生産期間は2010年より27年間の計画です。米国・アジア市場へのアクセスに優れ、埋蔵量、品位共に非常に恵まれていることが特徴です。今後伸び続けると予想されるグローバルな食糧需要への貢献につながることを期待しています。

ブラジルでの一般貨物輸送事業

VLI社が保有する機関車

日本の22.5倍、世界5位の国土面積を持つブラジル。世界有数の鉱物・金属資源輸出国(輸出額で豪州に次ぐ世界第2位)であり、世界有数の農産物輸出国でもあります(輸出額で米国、オランダ、ドイツに次ぐ世界第4位)。

そうした恵まれた輸出資源を持ちながらも、経済発展の遅れなどから、世界の先進国に比べて国内の輸送インフラの整備が遅れています。鉄道網整備の遅れや、港湾ターミナルの不足のためトラック輸送への依存度が高く、高い物流コストが問題となっています。ブラジル政府はこの深刻な問題を解消するため、近年、国策として鉄道網と港湾インフラ投資計画を進めています。

Vale社は自社の生産した鉱物を運搬し、輸出するための設備として、約10,700kmの鉄道網と、それに接続する複数の港湾ターミナルの事業権や通行権を保有していましたが、2010年12月、Vale社はその一般貨物輸送事業をVale社本体から切り離し、VLI S.A.(以下:VLI社)を設立。現在同社は、ブラジル中部および北部地域において、穀物や肥料、製鉄原料や鉄鋼製品などの一般貨物を対象とした複合一貫輸送サービスを提供しています。

三井物産は、米国、欧州、ブラジルおよびロシアにおいて貨車・機関車リース事業を展開するほか、世界各地で港湾インフラ事業にも参画してきました。そのノウハウを提供することも期待され、2014年4月、三井物産が約700億円を投資してVLI社の株式の20%を取得しました。同社は現在、鉄道輸送や港湾能力の増強により貨物取扱量の倍増を目指し、機関車・貨車の調達や鉄道網および港湾ターミナルの整備・拡張などの新規投資を進めており、2018年には鉄道輸送や港湾能力の増強を通じて貨物取扱量の倍増を目指しています。

モザンビークでの炭鉱及び鉄道・港湾インフラ事業

モアティーズ炭鉱
総距離912kmのナカラ回廊鉄道

モザンビークはアフリカ大陸の南東部に位置し、アフリカ有数の資源国といわれながらも、1964年から約30年間続いた独立戦争とその後の内戦で、開発が遅れていた国でした。三井物産はこのモザンビークで、Valeが推進する巨大な投資プロジェクトに参画します。
2014 年12月、三井物産はVale社がモザンビークで開発を進めているモアティーズ炭鉱と、同炭鉱にて生産される石炭、一般貨物及び旅客を輸送する鉄道・港湾インフラ事業に参画する契約を締結しました。モアティーズ炭鉱を開発するVale社子会社の15%持分、及びインフラ事業を推進するVale社子会社の50%持分を取得します。モアティーズ炭鉱は、製鉄で使われるコークスの原料となる希少性の高い強粘結炭を含む大規模な埋蔵量を有し露天掘りによる大規模生産が可能な世界でも有望な炭鉱の一つです。

三井物産は1960年代に豪州の石炭権益を取得して以来、同国に於いて優良資産の積み上げに邁進してきましたが、今般新たな供給ソースを保有することで更なる石炭安定供給の確保と強化を図ります。一方、長年に亘る石炭事業、鉄道輸送、港湾インフラ事業で培った知見を活用することで本プロジェクトの価値向上に貢献したいと考えています。

本プロジェクトによって生産、輸送される石炭は、モザンビークの主たる輸出産品となり、また、912㎞に及ぶ鉄道、港湾インフラが地域の基幹インフラとして、「モノ」や「ヒト」の輸送において重要な役割を果たすことで、モザンビーク及び同鉄道が通過する隣国マラウィ両国の経済発展に寄与することが期待されています。

日本とブラジルの交流を深める

東京本店で開催されたVale社・三井物産交換研修10周年記念パーティーとVale社派遣第20次研修員送別会

三井物産は、ホスト国の課題やニーズに応える仕事を通じて、長期的な目線での国創りに寄与しています。ブラジルにおいては、日伯賢人会議、日伯経済合同委員会にVale社長と共に参加しており、ブラジル財界活動にも積極的に協力し、両国の発展と関係強化にも貢献しています。

また、三井物産とVale社は、長きにわたる信頼関係をより強固にしていくには人と人の交流が重要であると考え、2003年に交換研修プログラムを開始しました。2015年10月現在、これまで三井物産から133名の研修員を派遣し、Vale社の研修員を138名受け入れています。8~11週間にわたる研修を通じ、両社の事業内容だけでなく日本・ブラジルの文化・商習慣を相互に理解する格好の場になっています。

今後も、営業本部の枠を越えた横断的な取り組みを通じ、より高い付加価値を迅速に提供することを目指し、「総合力」の発揮により、各事業価値の向上に貢献していきます。

2015年9月掲載