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Business Innovation

電動バスの先に、
暮らしや街づくりまで見据える。

電気自動車(EV)を起点に、クルマだけでなく、社会全体の可能性を広げていく。三井物産の構想の一翼を担うのが、ポルトガルNO.1のバス製造会社CaetanoBus社(以下カエタノ)と共に進める電動バス事業です。


いま、世界中で広がるクルマの進化。しかし、その先に見えているのはクルマの可能性だけではありません。自動車、電池、そしてエネルギー。EVや燃料電池車に関わるさまざまな産業の垣根を越えて事業を展開し、ひとつの産業だけでは生み出せない大きな進歩を社会にもたらす。三井物産はそんな未来を思い描いています。

その一翼を担っているのが、カエタノと共に進めている電動バス事業です。電動バスを欧州の、ひいては世界中の街へ。のみならず、EVの設計・開発で得たノウハウを活用し、他メーカーへ基幹部品を提供。また電池のリユース・リサイクルを見据えたエコシステムの構築や、電池を活用したエネルギーマネジメント、さらにはオンデマンドバスを含む移動サービスの提供など。EVを起点に、これからのより環境にやさしく、より便利で、より快適な暮らしや街づくりを支えていきます。

バスのボディ製造会社からの成長

バスのボディ製造会社からの成長

2017年12月、三井物産はカエタノに出資参画しました。カエタノは観光バスや路線バス、ミニバスを製造している他、ダイムラーとの合弁で生産している空港ランプバス「COBUS」は全世界で販売。世界シェア1位を占めています。

三井物産は現在、同社の5人の取締役のうち2人を差し入れ、新たなビジネス開発に共に挑んでいます。

カエタノはもともと、バスのボディ製造を生業にした企業でした。エンジンを他社から購入するビジネスモデルのため、販売先がどうしても限定されてしまいます。しかし、2008年の金融危機の際、国内市場の冷え込みで苦境に陥った経験から、基幹技術を他社に依存しない、自立したバス製造会社として積極的に海外展開していくことを決意。電動化時代を見据え、EV専用の駆動システム開発に取り組みました。その結果、事業のリポジショニングに成功。2015年からは電動バスの販売を開始しています。

そもそも、EVの大きな長所のひとつは、ランニングコストが低い点にあります。そのため、週末などに使用が限られることも多い乗用車に比べ、毎日必ず一定距離を走行するバスにはより大きな電動化のメリットがあります。

バスのボディ製造会社からの成長

今後都市のスマート化が進んでいく上で、電動バスには公共交通ソリューションの中心的な役割を担っていくことが期待されており、大きな飛躍が予想されます。

また、カエタノは現在、トヨタ自動車と共に燃料電池バスの開発を積極的に推進。さらに、空港バスを中心に自動運転の導入にも取り組むなど、次世代への挑戦を進めています。

私たち三井物産がカエタノと共に事業を展開する理由も、まさに、こうした未来へのポテンシャルにあります。

三井物産のネットワークを活用することで、カエタノの技術力をいっそう強化すると同時に、新たな市場への進出を加速。さらに、事業の壁をこえたビジネスの可能性をも広げることができる。そう考えています。

ロンドンの路線バスへ、そして、世界へ

カエタノの世界展開の一例として、すでにロンドンの路線バスに採用が決定しています。2つの路線向けに、34両のシングルデッカー電動バスを受注。2020年春からロンドンの街を毎日走りはじめます。

入札にあたっては、三井物産のパートナーであり、ヨーロッパ全土で公共交通事業を展開するAbellio UK社と共同で手がけました。三井物産は現在、同社と共に英国の2つの地域で列車のフランチャイズを運営。そのノウハウを活かしていきます。また、カエタノの電動バス用電池システムは同じく三井物産の出資先であるフランスのForsee Power社が提供。ここでも私たちのネットワークが活かされています。

ロンドンの路線バスといえば、その赤い車体が世界中に人々に広く知られています。世界的に認知されているこの路線の契約を勝ち取ったことは、「世界各国にバスを輸出する」というカエタノの目標に向けて絶好のPRになります。

現在、欧州の大都市の多くは路線バスの電動化を進める方針を打ち出しており、カエタノが飛躍的な成長を遂げるチャンスが広がっています。

また、英国や日本と同様に左側通行のインド、シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイなど、アジア諸国も潜在的な市場と言え、その目線はまさに世界中に向けられています。

自動車、電池、エネルギーの垣根を越えて

私たちが目指しているのは、電動バス事業の成長だけではありません。カエタノの事業を、またそこで得た知見を、世界中のパートナーと結びつけることで大きなシナジーを創出。より幅広い領域で新たなビジネスを生み出したいと考えています。

たとえば、EVの基幹部品を他メーカーにも提供。前述のForsee Power社とも連携し、電池システムの開発・製造から、リユース、リサイクルまで網羅する電池エコシステムを構築していきます。

クルマで使用し容量の減った電池を、定置型蓄電池としてリユースし、電力需給の調整に活かす。そんなビジネスを、すでにドイツの電力事業会社The Mobility House社と共に始めています。

将来的には、家庭で停車中のEVの中にある電池を、定置型蓄電池のように使用することも可能に。送電網の安定化に役立てると同時に、クルマのオーナーはそれによって副収入を得ることができる。そんな事業も構想。次世代のエネルギーマネジメントに挑んでいきます。

それだけではありません。バスに限らず、タクシーや鉄道を含むさまざまな交通手段を組み合わせ、一人ひとりに最適な移動サービスを提供できるようなモビリティサービスにも取り組んでいきます。

たとえば、ある街で路線バスのEV化が検討された場合、電動バスの提供はもちろん、電池のリースからエネルギーマネジメントまでトータルパッケージでサービスを提案することができる。その先に、輸送効率やインフラの最適化まで実現することができる。それが私たちの考える、EVを起点とした次世代ビジネスのひとつの姿です。

自動車、電池、エネルギー。産業を隔てる垣根がなくなりつつある今。事業の壁を越えて価値を生むことのできる、私たち三井物産が社会に対して果たせる役割もますます広がっていきます。

私たちがカタチにする、これからの暮らしに、これからの街にどうぞご期待ください。

三井物産のEVを起点とした事業展開

2019年10月掲載