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Business Innovation

世界の食糧問題の解決に寄与する

Novus International, Inc. (以下Novus社) は、家畜の成長を促進する飼料添加物などの製造・販売を行う世界トップメーカーです。三井物産は、総合商社として長年蓄積してきた知見と情報網を活かし、Novus社の経営をサポートすることで、世界の畜産業の成長・発展に寄与しています。


2050年までに世界の人口は96億人になると予想され、新たな食糧需要を満たすためには、現在の2倍の食糧が必要だと言われています。急務である食糧の増産を実現するためには、畜産物の生産効率の改善が不可欠です。この深刻な課題に対する1つの答えとして期待されているのが、鶏、豚、牛などの家畜の成長を促進し、畜産物の増産に大きな効果を有する飼料添加物であり、その代表的な栄養素が、Novus社が提供するメチオニン(商標名:アリメット)です。

動物が成長するために必ず食物として摂取しなければならないアミノ酸は「必須アミノ酸」と呼ばれます。この必須アミノ酸の1つであるメチオニンは、豚や牛にとっても重要なものですが、特に鶏に関しては、他のアミノ酸をどれだけ多く摂取しても、成長促進がメチオニンの量で決まってしまう「第1制限アミノ酸」という大切な栄養素になっています。

実際、メチオニンは、鶏の成長促進で効果を上げています。
メチオニンが飼料に添加される以前の1950年代、ブロイラーがふ化してから出荷時の平均1.4キロの体重に到達するのに約120日かかっていました。しかし、2009年には、出荷までに必要な日数は42日程度と以前のおよそ3分の1に短縮され、出荷時の体重は平均2.6キロへと倍増しました。

この飛躍的な生産効率の改善の背景には、ブロイラーの品種改良などとともに、飼料添加物導入による栄養効率の上昇も大いに寄与しています。ブロイラーの出荷までの日数を比較した研究調査でも、家畜の成長促進におけるメチオニンの効果の高さが証明されています。

世界の食肉消費量の推移
体重1キロを増加させるために必要な飼料(左)と出荷時月例(右)

世界の豊かな暮らしのために

1991年、モンサント社の飼料添加物事業売却の意向を受け、三井物産(出資比率65%)と日本曹達(株)(同35%)が共同で事業を買収、米国ミズーリ州のセントルイスの近郊に本社を置く Novus 社が設立されました。

当時、80人ほどだった社員全員で「会社とはどうあるべきか」「何を目指すのか」が議論されました。このとき生まれたのが「豊かな暮らしの実現のために、世界中に手頃で健康に良い食べものを」というNovus社のビジョンステートメントです。
社員およそ800名となった今も、世界の人たちの豊かな暮らしの実現に貢献するという志を確認するために、会議などで社員が集まると、このビジョンが唱和されています。

3つの強みで世界トップメーカーに

Novusには、3つの“強み”があります。

1つめは、事業の参入障壁が高いこと。
化学品であるメチオニンの原料のなかには、取り扱いが非常に難しいものがあり、生産には相当高度な技術と経験値が求められます。そのため、新規参入は難しく、メチオニンの世界シェアの9割を主要4社が占め、Novus社は3割程度のシェアを誇っています。

Novus社のメチオニン製品「アリメット」は粘度の高い液体です。顧客が飼料とアリメットを混ぜるためのミキサーの脇に、Novus社がアリメットのタンクを設置しています。タンクにはセンサーがついていて、補充が必要になると、自動的にNovus社の工場から適切な量のアリメットがローリーで運ばれます。このシステムにより、顧客、Novus社双方にとって最も効率的な生産・物流が実現されています。

2つめは、メチオニン以外にも飼料添加物の取扱商品が充実していることです。

液体のメチオニンのほか粉末のニーズもあり、粉末状のメチオニンMHA®も生産しています。また家畜の腸内バランスを整える有機酸、排泄物による土壌汚染を防ぐために栄養分の吸収率を高める製品など、顧客のニーズに合わせて、鶏以外にも豚、牛、魚など様々な畜種向けに飼料の商品価値を高める、数々の商品を市場に投入しています。

既にアメリカ、メキシコ、ドイツ、スペイン、中国など10か所の生産拠点、ブラジル、南アフリカ、インド、タイなど24か所の主要販売拠点を持ち、100以上の国や地域に3500超の顧客を有するNovus社。世界中の顧客と接点を持つことで、最終ユーザーがどんなニーズや課題を抱えているか、Novus社は迅速に情報を収集し、製品のベストミックスの提案や新たなサービスの開発、物流システムなどにより、総合的なソリューションを提供できます。

3つめは、Novus社の製品開発力です。

Novus社は、従業員の約10%が研究・開発に携わり、より生産性を高めるための研究や啓発活動に積極的に取り組んでいます。米国ミズーリ州セントルイス郊外にあるNovus研究所では「鶏成長予測モデル」や「動物の細胞生理学」などの分野で数多くの研究成果を生み、これらが商品開発や顧客サービスの源泉となっています。

また、畜産農業の分野で学ぶ学生や研究者に対する、Novus研究所での研修を含む奨学金制度を充実させており、中国、ブラジルなどで講座を実施しています。また、農業の研究・発展に従事するアフリカの女性たちを支援する「AWARD(アワード)*」プログラムに対し、米国の民間企業で初めてスポンサーになりました。

Novus社はこれらの強みによって、メチオニン市場のトップメーカーとなっています。

 

*African Women in Agricultural Research and Development

グローバル事業で世界の食糧問題に資する

現在、メチオニンの市場は、米国はもとより、南米、アフリカ、中東、東南アジア、中国、ロシアなど、世界中で急速に伸びています。1991年に25万トンだった市場は、現在、4倍超の110万トン。年率5%程度の市場成長率が期待されているメチオニン需要を背景に、Novus社ではメチオニン製造能力の拡大を検討しています。

2014年、7つの攻め筋の1つとして「食糧と農業」を掲げた三井物産は、総合商社の俯瞰的な視点でNovus社の事業をとらえながら、世界の畜産業の発展に貢献し、食糧問題の解決に資する取り組みをこれからも進めて行きます。

2015年12月掲載