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長松 宏枝

エネルギー第二本部
天然ガス第一部米州ガス物流事業室

「LNG液化プラントの建設現場にお客様をお連れして、タンクなどを見学することがあります。キャメロンの敷地は本当に広く、周囲は見渡すかぎりの湿地帯で、ワニもいるそうです」
そう長松宏枝は現場の様子を説明する。

「今回の事業は、輸出する米国にも輸入する国々にも意義のあるプロジェクトだと思います。米国のシェールガスを欲しいお客様がいても、自社で取りに行くには、交渉や手続きが非常に困難で、リスクも大き過ぎます。そこで、エネルギー事業の実績と実現力に長けた三井物産が間に入ることで、お客様のニーズを捉え、当社ならではの付加価値をつけた物としてお渡しすることができます。」

入社7年目の長松は、2012年10月にエネルギー第二本部天然ガス第一部に着任して以来、「キャメロンLNGプロジェクト」に携わってきた。

「20年間にわたるLNGの販売条件をどうするかなど、販売活動に関して、買主様と交渉し、結果を契約書に落としていくのが、私の仕事です」

メインスピーカーとなる先輩1人か2人と組み、たとえば顧客が何か懸念を示した場合、契約の細部まで把握した長松が、その懸念を払拭するための文言の修正など行う。しかし、英米では、契約交渉は弁護士の仕事である。入社してからはアブダビで顧客の対応係をしてきた長松は、米国の契約交渉専門の弁護士が持つようなスキルをどこで身につけたのだろう。

「最初は、弁護士に販売契約のテンプレートをつくってもらい、一週間ほど日本に招いて、朝から夜遅くまで集中的に打合せしてもらいました。それでも、ほとんど役には立てなかった。ですから、独特の契約文言などについては、ほかのプロジェクトの契約書を勉強したり、実際の仕事の中で、弁護士の指導を受けたりしながら、懸命に勉強しました」

言語が変わって内容に齟齬が出るリスクを避けるため、日本の販売先との間のものも含めて、契約書はすべて英語で書かれる。契約文言には、法律関連の特殊な英語が頻出する。

「確かに、契約書は100ページくらいありますので、読み込むだけでもたいへんで、理解するまでにはすごく時間がかかります。米国で当社より先に承認されたシェールガスLNG輸出許可第一号案件のプロジェクト契約書は公開されているので、それを参考にしました。キャメロンLNGプロジェクトでは、多くの買主様と同じような内容の契約を何度も交わしますし、お客様からの疑問やご要望も共通することが多いので、契約書に必要な英語力の修得には、何より仕事の中での経験の積み重ねが大きかったと思います」

そんなに苦労するなら、契約交渉は英米式に弁護士に任せた方がいいのではないか?という質問に、長松は即答した。

「やはり、天然ガスのビジネスに詳しいのは私たちです。実践的な知識を踏まえた上で契約書ができるのが、この方法の一番いいところです。弁護士から詳細な説明もなしに英語の契約書を送りつけられるより、私たち三井物産が間に入って、お客さまの目線で噛み砕いて説明した方が信頼も得られます」

交渉や契約書の作成に携わりながら、短期間で英語の契約書の内容に精通するには、かなり多忙な時間を過ごしてきたのではないか、と問うと、長松は屈託のない笑みを浮かべて答えた。

「高校から大学まで、部活で空手をやっていたので、体力には自信があるんです。空手で培った集中力が役立っています。」

三井物産の先輩たちの印象を尋ねたとき「みなさん、嬉々として、仕事の話ばかりしています。」と答える。
そこには、一つひとつの仕事を積み重ねることで、日本やアジアの国々のエネルギーの安定供給を支える一翼を担いたいという思いがある。

2015年9月掲載