Main

Business Innovation

TVショッピング事業でインドの暮らしを豊かに

三井物産が2015年11月に20%までに出資比率を引き上げたインドの通信販売会社Naaptol社は、TVショッピング事業において、視聴世帯数、認知度ともにインド国内でトップクラスを誇る企業です。
しかし、同年3月に三井物産が初めて5%出資した当時は、まだ業界3位の会社でした。Naaptol社は、三井物産とともに数か月でトップクラスの企業へと躍進したのです。


インドTVショッピング市場規模

Naaptol社は、新聞通販、Eコマース、TVショッピングの事業を展開しています。サリーなどのアパレル商品や、アクセサリー、調理器具など、日用品を中心に販売し、2014年度は約150億円を売り上げました。

中でもTVショッピング事業では急成長を遂げ、インドで最も多く使われているヒンディー語の放送だけでも約8,000万世帯、ほかの言語も合わせれば、業界トップの視聴世帯数を誇ります。
インドの小売業では、特にTVショッピング事業が有望視されています。
2015年に約70兆円だったインドの小売市場は、2019年には約125兆円と、13%の成長率が予測されています。

しかし、インド政府の厳しい参入規制により、外資系企業のショッピングモールやチェーン店はほとんどなく、小売市場の90%以上が個人商店によるものです。これら小規模の個人商店で供給される商品の種類は少なく、品質も限定的です。

そこで、インドでは、近年の中間所得層の増加に伴い、自宅に居ながらにして多くの種類から良質でリーズナブルな商品を選べる通信販売市場の成長が見込まれています。
2015年の実績に対して、2019年には、EC市場は約3.5兆円で60%、TVショッピング市場は約0.6兆円で45%と、高い成長率が予測されています。

さらに、インドでは、TVショッピング事業に有利な条件があります。

都市部を除くと、インド国内のインターネット普及率は未だに高くありません。一方、衛星放送やケーブルTVを主とするテレビは地方でも広く普及し、2014年に141百万世帯ある視聴世帯数は、2019年には182百万世帯にまで増えると予測されているのです。

経験と知見を蓄積してきた三井物産

三井物産が初めてTVショッピング事業に参入したのは1995年、日本の地上波の深夜のインフォマーシャルでした。インフォマーシャルとは、さまざまなチャンネルに広告として差し込む数分から数十分の通販番組です。

2000年、三井物産は、世界最大のTVショッピング事業者である米国のQVCと提携して「(株)QVCジャパン」を設立し、24時間のTVショッピングチャンネルを開始。現在、QVCジャパンの年間売上は約1,000億円に及びます。

また、2011年には、中国・北京のCCTV(国営放送)と提携して「CCTVショッピング」を始めました。

こうして経験と知見を蓄積した三井物産は、経済成長を続け、中間所得層が急増するインドのTVショッピング市場に参入しました。

三井物産が、Naaptol社をパートナーとして選んだ理由は、財閥系の親会社を持つ大手インドTVショッピング事業者にはない強みを、独立系のNaaptol社が持っていたからでした。

Naaptol社だけが持つ強み

Naaptol社の強みは二つありました。

一つ目は、インド全域に商品を届けられること。

インドでは、全国をカバーする民間の配送業社がありません。地方にも商品を届けるには、国営のインドポスト社の配送網が必要となります。しかし、同社のシステムでは、配送中の商品がどこにあるか、把握が難しく、遅配や未配のリスクが避けられないため、通販業者は利用できませんでした。

しかし、IT系の出身であるNaaptol社の創業者は、荷物追跡システムを独自に開発し、インドポスト社の配達のトレーサビリティを改善しました。結果、民間の配送業者とインドポスト社の配送網を併用することで、Naaptol社は、業界で唯一、インド全域が対象の通信販売を実現しています。

インドの主要言語別人口

二つ目は、多言語化です。

インドは、連邦公用語のヒンディー語の他にテルグ語やタミル語など、公的に認定されている言語だけでも22言語ある多言語国家です。

TVショッピング事業では、顧客リストや売れ筋の傾向など、管理・分析すべき情報が膨大にあります。多言語化は、これらの情報処理を大きく増加させるため、対応できない競合他社は、ヒンディー語の番組の放送だけにとどまるケースも少なくありません。

しかし、ITに強いNaaptol社では、独自にシステムを開発することで、積極的に多言語化を進め、三井物産の出資以降は、潤沢な資金を活用して、多言語化を加速させました。現在、ヒンディー語で制作した番組を吹き替える形で、24時間TVショッピングを6チャンネル(6言語)で放送。インフォマーシャルも、差し込むチャンネルの言語に対応させています。

この多言語化により、Naaptol社は現状唯一ヒンディー語以外にも5言語を放送しており、これら言語でのテレビショッピング市場はNaaptol社の独壇場となっています。

三井物産の出資・参画によって新たに加わった強みは、ほかにもあります。
TVショッピング事業の要ともいえる「番組」の質の向上です。

経験と知見を誇る三井物産のサポートにより、現場では、照明やカメラワーク、音響効果などの技術が向上しています。また、台本づくりや番組進行においても、効率化や最適化が図られました。さらに、三井物産の助言により、スタジオを新設し、インフォマーシャルや生放送の番組を増やすなど、顧客に対する訴求力も高められています。

インドの人々の豊かな暮らしのために

TVショッピング事業は、2014年発表の新中期経営計画における「7つの攻め筋」の一つ「衣食住と高付加価値サービス」であり、ビッグデータや高度な物流機能を活用しながら、付加価値の高いサービスを届けることを目的としています。

この目的を果たしている実例の一つが、高度な荷物追跡技術や優れた社内データベースによって飛躍的な成長を遂げるNaaptol社のTVショッピング事業といえます。

三井物産の使命は、地球と、そこに住む人びとの夢あふれる未来づくりに貢献することです。

その取り組みの一つとして、三井物産はこれからも、Naaptol社のTVショッピング事業を通して、インドの人々に上質でバリエーション豊かな商品を届けます。

2016年3月掲載