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溝口 剛

ForeFront Power LLC(出向)
Co-CEO

次世代エネルギーとして米国で大きく成長する、分散型太陽光発電事業。溝口剛はその最前線で、時代にこたえる新しいビジネスを動かしている。


「ソーラーコースター」と呼ばれる激動の市場で

「ソーラーコースター」と呼ばれる激動の市場で

私はいま、ForeFrontのCo-CEOを務めています。2人いるCo-CEOの1人で、営業部門、開発部門、そしてこれから展開していくメキシコをはじめとした国内外の新市場での事業を統括する立場です。

営業部門の仕事は、ごく単純化すると契約を取るところまでですね。たとえば地域で複数の顧客に売電するコミュニティソーラーの場合、各州でのコミュニティソーラー制度化を見越して土地を確保しておくところから、売電契約を結ぶところまで。一方、開発部門は、発電施設を建て運転を開始するところまでをカバーします。許認可の取得、系統接続、建設管理なども含まれます。

米国外も含めて新たな市場開拓も積極的に進めており、これから取り組みが本格化していきます。

私は入社から14年間、従来型の大規模発電を手がけてきました。三井物産がこれまで力を発揮してきたそうした領域と、現在手がけているビジネスでは、業界の変化のスピードや競争環境が大きく異なります。

ちょっと面白い話があって、米国の太陽光発電の業界は、ローラーコースターをもじって「ソーラーコースター」と呼ばれているんです。遊園地のローラーコースターに乗っているように、規制や税制が目まぐるしく変わる。振り落とされないようにしないといけない。そんな話です。

常に環境が変わりつづけ、常に決断や行動を迫られつづける。それが米国の太陽光発電ビジネス。困難も、醍醐味も、そこにあります。

100件200件という案件が常に同時に動く世界です。さまざまなステージにある無数の案件を並行して見るため、管理・経営は大変です。しかし、新しい領域で、新しい仕事の仕方に挑むのは大きなやりがいがあります。

カルチャーの違いを超える

私は、そもそもForeFrontの前身となるSunEdisonのC&I部門買収を最初に検討しはじめた段階からこの案件に関わっています。新領域開拓のチームリーダーとして分散電源のビジネスに挑み、さまざまな経験を積んでいくうちに、「私たち三井物産がドライバーズシートに座り、主導権をもって事業を行っていく案件を自分の手で創ってみたい」、そう思うようになったのです。

2017年、ForeFront立ち上げに合わせて出向が決まった時には感慨深いものがありました。ずっとやりたかったことを責任者という立場でやらせてもらっているわけですから、「絶対この会社を成長させるぞ」という強い気持ちがあります。

三井物産では、本件のような100%買収はまだあまり多くありません。米国の会社を100%子会社とし、その経営に携わる。ある意味、日本全体でも経験した人の少ないトライではないでしょうか。分散電源というビジネス自体が私たちにとって新領域ですし、私個人にとっても60人の会社の経営はチャレンジです。いわば初めてづくし、毎日が挑戦です(笑)。

カルチャーの違いは当然あります。SunEdisonはもともと米最大手でアグレッシブな社風で知られていました。現場が権限を持ち、どんどん決め、どんどん事業を進める。そんな社風です。それに対して、私たちは議論を重ね、検討を尽くし、より全体的・長期的な視点で事業を展開していくことでForeFrontを大きく成長させようと考えています。オープンに意見を交わしながら、米国流と日本流を融合させた、この会社を本当に伸ばしていく経営を目指しています。

2018年末にこんなことがありました。

NYで8件のコミュニティソーラーの開発が進んでいたのですが、税制上のインセンティブを得るため2018年中に完工することが不可欠な状況だったのです。1日でもオーバーすれば、ForeFrontとして初の大型開発案件がなくなってしまう。大袈裟ではなくオールオアナッシングの状況です。

ところが、よりによって2018年の冬は、NYは稀に見る悪天候で。土砂降りの雨、どんどん積もる雪。工事は全く進まず、11月からずっと社員全員キリキリとお腹が痛くなるような状況でした。現場に日参する者、オフィスで祈る者、みんなが心からハラハラする毎日。そんな中、総力を挙げてなんとか年内の最終営業日に完成させたんです。ひとつ間違えると全てがムダになる状況で、全員で力を合わせて8件全部完工にこぎ着けた。あれは組織としての自信になり、一体感が生まれました。

結局、そういうことの積み重ねなんだと思います。2018年、ForeFrontは業界大手の一角と呼ぶに足る設備導入量を達成しました。この勢いでどんどん成長させていきたいと思います。

時代に求められているビジネス

時代に求められているビジネス

これから先の話をするなら、まずはForeFrontを、より数字として結果を出せる会社にすること。そしてそれ以上に、中期的には「おもしろいことができる」会社にしたいですね。

私たちが買収したのは、SunEdisonの“Commercial & Industrial”部門。つまり、「産業・商業需要家向け」の部門です。買収した時点では一般家庭向けに電気を売るなんて想定していませんでした。しかし、買収から2年、いまやこの領域が成長のエンジンになっていくと感じています。

このスピード感、柔軟さ、それが分散電源のビジネスの面白みだと思います。環境変化を取り込みながら、そして常に結果を出しながら、新しいことにどんどん挑戦できる会社にしたいです。

従来型の発電とは違うやりがいですか?そうですね、「時代に求められている」「時流に乗っている」ことをやっているという実感はありますね。化石燃料から再生可能エネルギーへ。集中電源から分散電源へ。そんな社会の期待を、日々の仕事でひしひしと感じています。

需要家の敷地に発電設備を設けるオンサイトソーラーは、学校に作られることが多いのですが、竣工式や完工式でテープカットセレモニーを行うことがよくあります。私がテープカットするわけではもちろんありませんが、ちょっと挨拶のスピーチをしたりすることはあるんです。

子どもたちがワーッと集まって来て、ローカルのTV局が来てたりして。そんな中で話す時、「スゴいことやってるのかな」「未来の役に立つことやってるのかな」と柄にもなく思うことはありますね。

子どもたちの期待や社会の反応を身近に感じながら、新しいビジネスをどんどん開拓していきたいです。

いや、実は明日もあるんですよ、式典が。朝6時に起きて、クルマで2時間かけて学校まで行くんです。だからこの取材が終わったら、スピーチ原稿を覚えなきゃいけない。がんばらないと(笑)。

2019年8月掲載