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自然資本

水資源

方針・基本的な考え方


水は地球上のすべての生命の源であり、社会経済システムの存立基盤でもある貴重な資源です。現在、世界人口の増加や発展や気候変動の進行を背景に、世界規模での水資源問題が発生しています。

三井物産は、安全で衛生的な水へのアクセスは全ての人が持つ重要な人権の一つと認識しています。また、水資源は当社の事業継続に不可欠な資源であると同時に、事業を展開する地域の住民にとっても大切な資源です。このため、環境方針に水使用量の削減及び水資源利用の効率性向上に取り組み、水資源の保全に努めることを掲げています。

当社は、世界各国で事業を展開しており、一部の水ストレスの高い地域においても事業活動を行っています。大規模な開発や水資源の大量消費が、水資源問題の要因となっていることを認識し、問題に適切に対応するための水リスク評価を行い、水資源の保全及び持続可能な利用に取り組んでいきます。また、中期経営計画2026においては、事業を通じたNature Positive達成への貢献に取り組むことを掲げており、水関連ビジネスを重点分野と位置付け、海水淡水化・揚水事業や造水事業等をグローバルに展開し、当社の事業を通じて水資源問題の課題解決へ貢献していきます。

*バリューチェーンを通じた自然への依存・インパクトを低減し、生態系を回復・再生することで、生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せること

また、社有林「三井物産の森」のうち30%程度に相当する約15,000ヘクタールが水資源の確保や水害防止に役立つ「水源涵養保安林」として公的に指定されています。森が公益的機能を十分発揮できるようにするためにも、適切な整備・管理を継続していきます。

さらに、オフィス活動においても廃水の処理やリサイクルなど適切な管理を行い、水の消費削減に努めます。


環境方針

目標


水資源の保全及び水リスクの特定

  • 事業に関連する水資源の保全及び事業に関連する水資源の保全及び水リスクの特定と対応策の検討。
  • 新規事業参画や拡張、ならびに事業撤退に際して、ESG デューデリジェンスチェックリストを活用し、水関連項目について事前にリスク評価を実施する。水ストレス地域での飲料・農業・鉱山等、水資源が特に重要な事業・投資案件では、リスクの事前把握に努める。

水使用量の削減及び利用効率改善

  • 単体のうち本店、国内支社・支店等における水使用量を前期使用量以下に削減し、水の利用効率を改善する。

進捗は「水使用量削減の取組みオフィスにおける水の利用効率改善」を参照ください。


体制・システム


サステナビリティ委員会

サステナビリティ委員会は、経営会議の下部組織として、水資源に関わる経営の基本方針、事業活動やコーポレートの方針・戦略に関し、企画・立案・提言を行っています。
サステナビリティ委員会の活動については、取締役会による監督が適切に図られる体制となっており、サステナビリティ委員会における審議事項は、定期的に経営会議及び取締役会に付議・報告されます。

管掌役員 代表取締役専務執行役員、CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)、サステナビリティ委員会 委員長
事務局 サステナビリティ経営推進部、経営企画部

当社サステナビリティ経営の推進体制図やサステナビリティ委員会の活動に関する詳細はリンク先をご参照ください。


ESGリスクマネジメント

当社が事業に取り組むに当たっては、新規に開始する段階に加え、操業時、及び撤退時においても環境・社会に対する最大限の配慮に努める仕組みを整えています。
新規事業投資案件では、環境への影響が大きい案件について、専門家による調査を実施するほか、特に水ストレス地域においては、WRI(世界資源研究所)のAqueduct(水リスクマップ)を活用し、新規事業のみならず既存事業も対象として水ストレスのリスク分析・モニタリングを実施し、水関連リスクの軽減を図っています。また、ESG デューデリジェンスチェックリストを活用し、水関連項目チェックリストで事前にリスク評価を実施しています。


ESGリスクマネジメント:環境・社会面におけるリスク管理プロセス

ステークホルダーとの協働


イニシアティブへの参画

イニシアティブへの参画を通じた水資源への取組みを推進、拡大させています。各イニシアティブへの参画においては当社の水資源に対する基本方針、取組みと合致しているか確認の上、参画を決定しています。

CDP(Water Security)

企業の水リスクに関する世界的な情報公開プログラムCDP Water Securityの質問書に2015年から回答しています。2024年に実施されたCDPの質問書に対する回答の結果、最高評価である「A」の評価を受け、「Aリスト」に選定されました。

日本経済団体連合会

当社は、日本経済団体連合会における、以下の委員会等に参画しています。

  • 企業行動・SDGs委員会:企業行動憲章の周知、「Society 5.0 for SDGs」の普及・推進、企業の社会貢献活動推進
  • 資源・エネルギー対策委員会:S+3E(Safety+Energy Security、Economic Efficiency、Environment)のバランスを確保したエネルギー政策の推進
  • 環境委員会:気候変動対策、循環経済(サーキュラー・エコノミー)・生物多様性の主流化の推進、環境規制・制度等の改善

NGO・NPOとの協働

水ストレス地域においてNPOを通じ安全な飲料水を提供する雨水のリユースシステム構築を支援

雨水貯留タンク 雨水貯留タンク

フィリピン・ボホール州の離島・中山間地域は、安全な飲料水を容易に入手できない、水ストレスの高い地域です。海岸沿いや離島の井戸は海水混じりで飲料には適さないため、離島の住民は海を渡って飲料水を購入しながら日常生活を送っており、飲料水確保のコストと時間が大きな負担となっています。この地域の住民が簡単に安全な飲料水を獲得できるよう、三井物産環境基金の助成案件の一つとして、特定非営利活動法人イカオ・アコによる、雨水を貯留・浄水する設備を提供する取組みを支援しています。地域に最適な規模のタンクを住民自身が設計・建設することで、地域での維持管理が可能になり、持続可能な飲料水供給システムが構築されています。当該プロジェクトを通じ、当社は水ストレス地域における課題解消に貢献しています。

取組み


水ストレス地域における取水量

当社は、国際環境NGOの世界資源研究所(WRI)が開発した、Aqueduct(世界各地域の水リスクマップ)を用いて水ストレス地域の国別高リスクランキングの対象となっている189カ国中、水ストレスレベルが著しく高リスク(17カ国)、高リスク(27カ国)に分類される47カ国を水ストレス地域として特定しました。2024年3月期、特定した水ストレス地域のうち、当社が事業を展開しているメキシコ、チリ、ポルトガル、イタリア、ベルギー、オマーン、インド、タイ、ペルーにおける取水量調査の結果は以下の通りです。

(注1)ただし、データ取得は当該事業の現場サイトから直に取得できている場合と、事業会社の本社(親会社/SPC)所在地にてのみ現状取得可能となっているケースあり。
(注2)集計範囲:連結子会社、Un-incorporated Joint Venture

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
高リスク(40-80%) 拠点数 9 8 10
取水量(千m3 99 132 1,499
著しく高リスク(>80%) 拠点数 4 4 7
取水量(千m3 1,099 1,016 1,141

水ストレス地域における取組みチリの銅鉱山向け海水淡水化・揚水事業

チリは世界の銅生産量の約3割を占めています。銅鉱山の操業には多量に水を使用することもあり、また特に鉱山の集中するチリ北部では地域全体として水資源不足への懸念が高まっており、水ストレスの高い地域です。当社はスペインACSグループ傘下Dragadosとの折半出資で保有するCaitanを通じ、大手鉱物資源会社BHPの100%子会社でスペンス鉱山の開発を行うMinera Spence向け海水淡水化・揚水サービスの運営事業に参画しています。Caitanがチリ北部アントフォガスタ州に海水淡水化プラント及び約150キロメートルの揚水設備を建設・保有・操業し、銅鉱山を操業するMinera Spenceに2023年より20年間にわたり淡水供給を行う事業です。今後も海水淡水化需要は年率5%強で需要が伸長すると見込まれています。成長著しいチリの水インフラ需要を取り込み、関連インフラのさらなる整備を通じて同国の発展に貢献すると共に、事業を通じて水不足の課題を解決していきます。

上下水インフラ事業

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

(2024年3月末現在)

種類 単位 処理能力(総容量)
上水供給事業 タイ 千m3/日 1,028
上水供給事業 メキシコ 千m3/日 130
下水処理事業 メキシコ(4件) 千m3/日 4,620
発電・造水事業 カタール 千m3/日 290
銅鉱山向け海水淡水化・揚水事業 チリ 千m3/日 90

水使用量の削減及び利用効率改善の取組み

シェールガス・シェールオイル採掘時の水利用率改善の取組み

当社は、連結子会社を通じ、米国でシェールガス・シェールオイル開発・生産プロジェクトを推進し、水圧破砕による採掘を行っていますが、水圧破砕に使用する水(フラッキング水)の適切な利用(一部排水の再利用を含む)・管理・廃棄を進めることで水資源への配慮に努めています。

銅事業における水利用率改善の取組み

当社は、チリにおいて、銅鉱山事業を行っています。チリは水ストレスレベルが高リスクに該当する地域ですが、多量の水が必要になる事業であるため、各鉱山の操業プロセスにおいて水使用効率を最大化すべく技術導入を推進し、新規取水量の削減を図る取組みを行っています。
Anglo Americanと共に推進するLos Bronces銅鉱山事業(チリ中部首都州に所在)においては、廃滓からの水分抽出・再利用を行う取組み等により、2023年における水の再利用率は90%に達しました。更に、2026年から毎秒500リットルの海水を淡水化しLos Bronces鉱山に供給する契約をAguas Pacifico社と締結、第三者から調達した産業排水や処理済下水の利活用等の施策も進めており、今後水源の減少に直面する約2万人の地域住民に水を供給する予定です。また、同じくAnglo American社及びGlencore社をパートナーとする生産量規模世界第2位であるCollahuasi銅鉱山(チリ北部タラパカ州に所在)においても、2023年は79%の水再利用率を達成。今後、尾鉱からの水再利用率向上を目指すほか、海水淡水化プラントの建設、2026年からの運用を計画しています。当社は水資源の配慮に努めながら、パートナーと協同し、事業を通じて同国の発展に貢献していきます。

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

2021年 2022年 2023年
Los Bronces鉱山 水再利用率(%) 89% 88% 90%
Collahuasi鉱山 水再利用率(%) 79% 80% 79%

*Los Bronces鉱山においては外部からの廃滓水調達、処理済下水等も含めた合算(Recycle+Reuse)。

事業における取水量

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

対象範囲 単位
(年間平均)
2021年 2022年 2023年
Los Bronces鉱山 銅精鉱処理プラントで処理された1トンの鉱石当たり取水量 m3/t 0.54 0.60 0.58
Collahuasi鉱山 銅精鉱処理プラントで処理された1トンの鉱石当たり取水量 m3/t 0.50 0.44 0.45
製糖業の取水量原単位

KASET PHOL SUGAR

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

単位(年間平均) 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
製糖1トンあたり(年間平均) m3/t 3.7 1.1 5.4
畜産加工業の取水量原単位

プライフーズ

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

単位(年間平均) 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
鶏肉加工1トンあたり(年間平均) m3/t 12.8 13.7 13.7

水使用量削減の取組み-オフィスにおける水の利用効率改善

当社本店ではトイレ洗浄水に排水をリサイクルした中水や雨水を使用し、水利用の節約に努めています。また、単体のうち本店、国内支社・支店等における水の使用量を、前期使用量以下に削減することで水の利用効率を改善することを目標に掲げています。

※下記表は横にスクロールしてご覧ください。

目標に対する進捗状況

目標 対象範囲 単位 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 目標達成状況・取組み状況
単体のうち、本店、国内支社支店などにおける水の取水量を、前年使用量以下に削減する。

【目標値】
2022年3月期
≦25 千m3
2023年3月期
≦58 千m3
2024年3月期
≦70 千m3
取水量 単体のうち本店、国内支社・支店等 千m3 57 70 77 前年度対比、従業員の出社率上昇に伴う増加。
定期的なセミナー、環境法令研修の実施を通じて、環境問題に対する役職員の意識向上に努めています。
原単位 単体のうち本店、関西支社 m3/人 12.76 15.14 16.44
従業員一人当たりの水使用量

水関連リスクに関連するコスト

単体のうち本店における水リサイクル費用:4.217百万円(2024年3月期)

水資源関連の環境関連法規の遵守

2024年3月期は、連結子会社で環境事故が1件発生しましたが、迅速に当局含む関係各所に報告を行い、社内外の関係者と協働して、事故の真因特定、適切な是正処置・予防処置及び再発防止に向けた対策の検討を実施しました。