Environment
サーキュラーエコノミー
方針・基本的な考え方
限りある資源の有効活用や環境負荷低減、またGHG削減の観点からもサーキュラーエコノミー(循環経済)を目指す動きが加速化しています。三井物産は、さまざまな製品の原料、地下資源の開発・加工・販売に加え、地上資源のリサイクルを推進しています。サーキュラーエコノミーへの移行においては、廃棄物規制強化や原材料需要減少等のリスクと、サーキュラーエコノミーへの対応を進める取引先のニーズを捉えた新たなビジネス機会の両面で、当社事業に影響があると認識しています。
当社のマテリアリティの一つである「環境と調和する社会をつくる」に基づき、環境方針においては、資源・エネルギーの利用効率改善、廃棄物の削減に取り組むこと、また、サーキュラーエコノミー事業を通じて、経済成長と環境負荷低減の両立に努めることを掲げています。資源やエネルギーの投入量と廃棄物発生量を抑えつつ、資源循環の中で付加価値を生み出し、経済成長と環境負荷低減の両立を目指すサーキュラーエコノミー事業の取組みを推進していきます。
当社は、川上から川下に至るまでの全てのバリューチェーンにおいて幅広い製品・サービスを取り扱い、ステークホルダーが抱える課題解決に取り組んでいます。当社事業を通じて培った知見やグローバルネットワークを活用し、バリューチェーン上の全ての段階において、当社が納入する製品から生じる副産物及び残渣の有効活用方法や、環境負荷の低い代替製品の提案並びにマテリアルデザインによる価値創造等を行い、サーキュラーエコノミーへの移行で生じる新たなビジネスチャンスの取り込みや既存事業の拡大を推進し、当社収益基盤の強化と企業価値向上につなげていきます。
サーキュラーエコノミーにおけるビジネスモデル
当社は、「トレーディング」と「事業投資」の両輪での成長を軸とするビジネスに取り組んでいます。川上から川下までの幅広い事業を通じて培った顧客やパートナーとのネットワークを活かし、メーカーの新しいデザインに適した資源・原料を提案し、また使い終わった資源を回収し、当該資源を別の事業分野で再利用するなど、当社ならではの総合力を発揮し、情報収集・分析を行い、サーキュラーエコノミーへの移行機会を捉えて新たなビジネスモデルや新事業の創出を行います。
主なリスクと機会及びそれに対する戦略
当社は、川上から川下まで幅広い事業をさまざまな国・地域で展開しています。当社事業におけるサーキュラーエコノミーへの移行リスクを以下の通り分析、特定しています。
法令・政策変更リスク |
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技術リスク |
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市場・販売リスク |
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レピュテーションリスク |
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*使い捨てを基本に大量生産・大量消費・大量廃棄を行う等、調達、生産、消費、廃棄といった流れが一方向である線形経済システム('take-make-consume-throw away' pattern)に基づくビジネスモデル
また、各セグメントにおいて、内外経営環境を見極め、事業を取り巻くリスクと機会を特定し、それぞれに対する個別戦略を立てて取り組んでいます。
※下記表は横にスクロールしてご覧ください。
セグメント | リスク | 機会 | 戦略 |
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金属資源 |
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エネルギー |
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機械・インフラ |
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化学品 |
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鉄鋼製品 |
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生活産業 |
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次世代・機能推進 | 特有リスクなし |
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目標
事業でのセグメント目標
各セグメントでサーキュラーエコノミーへの移行に伴うリスクと機会の分析を進め、新たな事業創出を目指しています。
セグメント | 目標 | 進捗 |
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金属資源 |
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エネルギー |
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機械・インフラ |
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化学品 |
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鉄鋼製品 |
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生活産業 |
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次世代・機能推進 |
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体制・システム
サステナビリティ経営推進
サステナビリティ委員会は、経営会議の下部組織として、サーキュラーエコノミーに関わる経営の基本方針、事業活動やコーポレートの方針・戦略に関し、企画・立案・提言を行っています。
サステナビリティ委員会の活動については、取締役会による監督が適切に図られる体制となっており、サステナビリティ委員会における審議事項は、定期的に経営会議及び取締役会に付議・報告されます。
管掌役員 | 佐藤 理(代表取締役専務執行役員、CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)、サステナビリティ委員会 委員長) |
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事務局 | サステナビリティ経営推進部、経営企画部 |
当社サステナビリティ経営の推進体制図やサステナビリティ委員会の活動に関する詳細はリンク先をご参照ください。
事業本部体制
複数の事業本部でサーキュラーエコノミーに関連する組織・タスクフォースが組成されており、各事業本部における外部環境分析やビジネス機会検討を行っています。各組織・タスクフォース等での分析結果や検討内容は適宜事業本部長や経営会議メンバーに報告しています。
ベーシックマテリアルズ本部 | 2018年10月にサーキュラーエコノミー(CE)タスクフォース設置、2020年4月に本部長直轄のサーキュラーエコノミー推進チーム(CET)を組織化し、本部内CEハブ機能提供、及び具体的CE案件化への取組み開始。取組みの具体的な進展に合わせ、2023年4月よりプラスチック資源循環推進チームを分離、独立した組織とし、それに合わせCETの組織構成の組替えを実施(専任:1名、兼務:4名)。本部内のサーキュラーエコノミー関連の新規ビジネス創出、及び本部横断取組みの支援、関連情報の発信等を行っている。 |
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パフォーマンスマテリアルズ本部 | 2021年6月に本部長直轄のサーキュラーエコノミー推進チーム(CET)を設置(専任:3名、兼任:5名)。本部内のサーキュラーエコノミー(CE)関連の新規ビジネスの創出・推進、及び本部・部を超える横断取組みの推進・支援、関連情報の発信等を行っている。 |
鉄鋼製品本部 | 2022年8月に、次世代事業開発部にグリーンスチールイニシアチブ推進室(前グリーンスチールイニシアチブ推進チーム)を設置。各事業部・海外拠点に設置したコーディネーターと共に、サーキュラーエコノミーのほか、グリーン調達、水素・CCUS、電化等、気候変動対策・脱炭素化に向けた本部戦略・攻め筋策定、新規ビジネス創出を行う。 本部横断的にグリーンスチール・IMR(Inspection Maintenance & Repair)への取組みを実行中。各事業部・海外拠点に設置したコーディネーターと共に、サーキュラーエコノミーのほか、グリーン調達、水素・CCUS、電化等、気候変動対策・脱炭素化に向けた本部戦略・攻め筋の元、新規ビジネス創出を行う。 |
ステークホルダーとの協働
イニシアティブへの参画
イニシアティブへの参画を通じたサーキュラーエコノミーへの取組みを推進、拡大させています。各イニシアティブへの参画においては当社のサーキュラーエコノミーに対する基本方針、取組みと合致しているか確認の上、参画を決定しています。
クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)
CLOMAは、地球規模の課題である海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、プラスチック製品の持続可能な使用や代替素材の開発・導入を推進し、イノベーションを加速するために2019年1月に設立され、当社は幹事会社29社の一社になっています。CLOMAには、当社及び子会社の三井物産プラスチック株式会社、三井物産パッケージング株式会社、ベンダーサービス株式会社を含めた498社・団体(2023年7月現在)が参画しています。
当社は、用途に応じた最適な代替素材の選択を容易にするために技術情報の共有を行う普及促進部会、最新の開発成果に関する技術交流・技術セミナーの開催を行う技術部会、国際機関・研究機関等との連携による情報収集・発展途上国等への情報発信・技術コンサルティングを行う国際連携部会に参加し、さらには、国際連携部会傘下に組成されたインドネシア協力WORKING GROUPでは座長を務め、サステナブルなソリューションモデル実現に向けた取組みを行う等、海洋プラスチックごみ問題の解決に向け引き続き必要なアクションを取っていきます。また、2022年に設立された未来デザインタスクフォースチームにもメンバーとして参画し、CLOMAとして考える、日本の未来理想像案の策定を進めています。
CEFLEX(Circular economy for flexible packaging)
CEFLEXは、軟包装材のバリューチェーン全体を代表する企業や団体等、プラスチック包装材料のバリューチェーンに関わる200社以上から構成される欧州の共同コンソーシアムで、プラスチック製軟包装材を回収・分別・再資源化するインフラシステムの構築を検討しています。当社は2018年から参画し、さまざまなワーキンググループで積極的な役割を果たしています。今後もCEFLEXへの参画を通じて、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していきます。
循環経済パートナーシップ
サーキュラーエコノミー(循環経済)への流れが世界的に加速化する中で、日本国内の企業を含めた幅広い関係者のサーキュラーエコノミーへのさらなる理解醸成と取組みの促進を目指して、官民連携を強化することを目的として環境省、経済産業省及び一般社団法人日本経済団体連合会によって創設されました。当社は本パートナーシップを通じてサーキュラーエコノミー分野での日本企業の競争力向上に貢献していきます。
取組み
各セグメントにおける取組み
金属資源
循環型社会に対応すべくリサイクル事業を一早く推進しています。子会社の三井物産メタルズでは、アルミ・銅・チタン等の各種非鉄スクラップや電化製品に含まれる廃基板等のリサイクルを推進、また、アルミ二次合金事業も強化し、リサイクル事業を拡大していきます。
当社が出資する総合リサイクラーSims Limitedでは、金属リサイクルのみならず米国ニューヨーク市の市中ごみの処理や、ごみ埋立地から発生するメタンガスを活用した発電事業等に取り組んでいます。
機械・インフラ
当社は、先進国同様に中南米でも「所有」から「使用」への流れが加速することが想定される中、チリの自動車オペレーティングリース・レンタカー業界最大手であるAutorentas del Pacifico SpAを傘下に持つInversiones Mitta SpAに出資参画しています。Mitta社のチリ鉱山・エネルギー業界向けに高いシェアを持つ自動車オペレーティングリース事業(BtoB)と、歴史ある地場レンタカー事業(BtoC)の基盤を活かして、リース、レンタル、シェアリングのサービス事業を推進し、消費者サイドへのバリューチェーン拡大に努めます。
化学品
ベーシックマテリアルズ本部では、ヴェオリア・ジャパン株式会社(以下、ヴェオリア)、株式会社セブン&アイ・ホールディングスと設立した株式会社サーキュラーペット(CPET)が、岡山県津山市にPETボトルリサイクル工場(リサイクルPET樹脂製造能力:年間約2.5万トン)を建設し、2024年6月より稼働を開始しています。CPETは、日本国内で排出された使用済ペットボトルを100%原料としてリサイクルPETを製造・販売します。ヴェオリアの技術・オペレーションノウハウにより、キャップ・ラベルの付いた比較的グレードの低い使用済ペットボトルでも、キャップ・ラベルのないきれいな使用済ペットボトルと混ぜることなく100%処理、飲料用途に耐え得るリサイクルPETを唯一製造できるのがCPETの大きな特色です。当社は、本事業を皮切りに国内外で廃プラスチック問題等の解決に向け、同様の案件を検討・推進していくことで、サーキュラーエコノミーの確立に貢献していきます。
また、パフォーマンスマテリアルズ本部では、子会社の三井物産パッケージング株式会社において、古紙の回収から再生紙の販売、再生紙を用いた段ボール等の包装材販売まで、リサイクル・バリューチェーンを構築しています。古紙を繰り返し利用することで新たな木材資源利用の削減が可能です。古紙は古くからリサイクルが行われている再生資源のひとつですが、古紙の回収量が減るなかで、現在は焼却廃棄されている難処理古紙と呼ばれる防水加工された紙などの再生が注目されています。難処理古紙の回収はニーズも高いため、三井物産パッケージングでは原材料に戻すリサイクルの検証を進めています。さらには、2023年10月に、株式会社宮崎と三井物産ファーストワンマイル株式会社を設立し、古紙以外も含めた静脈資源一元管理を進めています。
リサイクルポリプロピレン製造事業開発
パフォーマンスマテリアルズ本部
当社は、米国PureCycle Technologies, Inc.(以下、PCT)と、日本におけるリサイクルポリプロピレン樹脂製造事業の共同開発に取り組んでいます。
海洋プラスチック問題や気候変動といった環境問題を背景に、日本でもさらなるプラスチックのリサイクル活用が求められています。しかし、包装材料や自動車材料に広く利用されるポリプロピレン樹脂(以下、PP樹脂)は、分離が難しい着色料等の添加剤を含んでいることが多く、リサイクル材が利用できる用途は限られています。
PCTは、廃プラスチックからヴァージン材と同等品質であるUltra-Pure Recycled Polypropylene(UPRP)と呼ばれるリサイクルPP樹脂を生産する技術ライセンスを有し、UPRPの生産に成功しています。2023年4月には、米国オハイオ州の年産約5万トンの第一号商業プラントが完工しました。同工場で生産されるリサイクルPP樹脂は既に20年先まで長期引取契約として概ね販売合意済みで、他にジョージア州オーガスタやベルギーのアントワープにおいても大規模リサイクル工場の建設が計画されています。
当社は、本案件の推進により消費財や食品の容器、自動車内装材向け等にもリサイクルPP樹脂の用途拡大を目指し、廃プラスチックの確保からリサイクルPP樹脂の製造、お客様への供給までのサプライチェーンを構築することで、廃プラスチックの削減、サーキュラーエコノミーの確立に貢献していきます。
鉄鋼製品
インフラ構造物の老朽化が国際的な社会課題になりつつある中、サーキュラリティへの関心の高まりに基づき、建造物・設備の長寿命化に資するメンテナンス事業を強化しています。2019年にSHO-BOND & MIT インフラメンテナンス、2021年に洋上風力発電機点検・修繕サービスを行うホライズン・オーシャン・マネジメントを設立、2023年にパイプラインの補修機器製造・技術サービスを提供するSTATSの全株取得、インフラ補修事業を行うStructural Technologiesへ出資参画し、サーキュラーエコノミーの確立に貢献しています。
生活産業
食料本部では、農産物バリューチェーン、動物タンパクバリューチェーンの構築を通じ、農産加工品、畜水産加工品の生産時に出る副産物を有効活用する循環システムを形成しています。具体的には、大豆・菜種・小麦・ゴマ・コーン等の副産物、畜産副産物や水産系残滓を畜産・水産飼料に有効活用したり、カットイチゴのヘタについた果肉を使用し絞りジュースを精製、茶葉残渣を堆肥原料に利用しているほか、サトウキビ搾りかすを発電燃料、廃食用油を畜産・水産飼料・航空燃料として再利用したり、排水処理によって生じる余剰汚泥を乾燥させ、ボイラー燃料として使用する等、副産物の活用販路拡大を推進しています。
次世代・機能推進
三井情報
当社子会社の三井情報では映画館や総合スーパー、スポーツジム等、多店舗展開されているお客様向けに、省エネ対策と快適性保持の両立を支援するクラウド型省エネルギーマネジメントサービス「GeM2」を提供しています。建物のエリアごとに温度・湿度情報を収集、データセンターに送信し、その情報をもとに空調(ガス・電気)・換気扇を最適にコントロールし、従来のデマンドコントローラのような発停管理だけでなく、温度やモードのきめ細かな制御により、快適さを維持しながら、大幅な省エネを実現します。
このほか、クラウドから遠隔監視する太陽光発電監視サービスを提供しています。太陽光発電設備は、メンテナンスフリーと言われているものの、実際はパネル損傷・汚れ、また機器故障の発生、経年劣化等、さまざまなメンテナンスポイントがあります。それらの異常にいち早く気づくシステムの検討が必要とされており、こうしたニーズに応える取組みを行っています。
エアアズアサービス
当社は、ダイキンエアテクノ株式会社と設立したエアアズアサービス株式会社(以下:AaaS)を通じ、利用者に快適な空調空間を月額固定料金で提供するサブスクリプション型のサービスを展開しています。
このサービスは、施設のオーナーに代わって空調設備を設置・保有し、空調機1台ごとの運転状況を24時間365日遠隔監視できるIoTシステムや、取得した運転データの分析技術を活用し、施設ごとに最適な運用改善サイクルを提供するものです。機器の運転状況を可視化して無駄をなくすことでエネルギー使用量とコストを削減でき、サービス導入前と比較して概ね20%の電力消費量削減を実現しています。また、稼働時間や負荷を把握し適切な予防保全を行うことで、機器の長寿命化にもつながります。今後もAaaSを通じ、ビルや工場等のエネルギー効率の改善をサポートしていきます。
なお、AaaSは一般財団法人省エネルギーセンター主催の2020年度省エネ大賞において、製品・ビジネスモデル部門省エネルギーセンター会長賞」を受賞しました。