Scope3とは?全15カテゴリの内容やCO2排出量の算定方法を紹介! - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

ソリューション可視化

最終更新:2024.09.24

Scope3とは?全15カテゴリの内容やCO2排出量の算定方法を紹介!

Scope3(スコープ3)は、製品の原材料調達から製造、販売、消費、廃棄に至るまでの過程において排出される温室効果ガスの量(サプライチェーン排出量)を指し、Scope1(自社での直接排出量)・Scope2(自社での間接排出量)以外の部分「その他の間接排出量」を指します。

既に多くの企業が、自社からの排出量を削減するのみではなく、サプライチェーン排出量を算定し、サプライチェーン全体での温室効果ガスの排出削減や業務効率化の実現に取り組んでいます。

この記事では、Scope3の説明から、Scope3のカテゴリ(分類)や取り組み事例などについて詳しく解説します。

Scope3(スコープ3)とは?

サプライチェーン排出量 = Scope1+Scope2+Scope3

事業者が行う原材料調達、製造、物流、販売といった、利用者に製品が届くまでの一連の流れをサプライチェーンといいますが、サプライチェーン排出量とは、この一連の流れの中で排出されるすべての温室効果ガスを指します。つまり、自社からの直接的な排出のみならず、自社活動に伴う間接的な排出を含む、事業活動に関係するすべての温室効果ガスの排出量を指します。

サプライチェーン排出量は、Scope1、Scope2、Scope3に区分され、簡単には、Scope1:燃料の燃焼による直接排出、Scope2:電気の使用による間接排出、Scope3:それ以外の間接排出すべて、であり、サプライチェーン排出量 = Scope1+Scope2+Scope3として規定されています。
分類区分  内容
Scope1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
Scope2 他社から供給された電力や熱、蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3 Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
また、Scope3は、サプライチェーンの「上流」と「下流」に分類することができます。
原材料の調達や輸送・配送などが「上流」、製品の使用や廃棄が「下流」で、さらに15のカテゴリに分類されます。
経済産業省 資源エネルギー庁
経済産業省 資源エネルギー庁

サプライチェーン排出量が求められる背景

自社による直接排出のみを削減対象とした場合、直接排出ではない削減努力や削減効果、例えば省エネ製品の開発(Scope3:⑫製品の使用)といった取り組みが適切に評価されず、またこのようなサプライチェーン上にある大きな排出削減ポテンシャルを見落とす可能性などが指摘されています。このような観点からサプライチェーン排出量を把握することが重要であるとされています。

サプライチェーン排出量は、国際的には「GREENHOUSE GAS PROTOCOL(GHGプロトコル)」*1)により規定され、またISOによる算定ガイドラインが示されています。日本では、環境省により「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」が示されています。

*1) GHGプロトコルは、WRI(世界資源研究所)とWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が共催している国際的な組織「GHGプロトコルイニシアチブ」により規定されている。

サプライチェーン排出量を算定・報告する動き

国際的には、G20の要請を受けて金融安定理事会(FSB)により設立された気候関連財務情報開示タスクフォース「TCFD」(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)により、企業の気候変動への取り組みや影響を情報開示することが求められています。日本では、TCFDに賛同する企業が2023年10月12日時点で1,470社(世界一位)に上り、また東京証券取引所のプライム市場は、上場企業にTCFDに準拠した報告を求めています。
排出量の算定・報告の観点では、「地球温暖化対策推進法(温対法)」により、3,000ton-CO2以上を排出する企業に排出量の報告が義務付けられており、また「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ)」により、1500kl/年以上のエネルギーを使用する企業には、その使用量などの定期報告が義務付けられています。

こういった動きの中、TCFDではScope3を含むサプライチェーン排出量の開示が推奨され、また企業の科学的な中長期の削減目標設定を促す枠組みSBT(Science Based Target)*2)では、scope3を含むサプライチェーン排出量の削減目標を設定することを求めるなど、サプライチェーン排出量を算定・報告する動きが強まっています。

*2) CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト/国際NGO)・UNGC(国連グローバルコンパクト)・WRI(世界資源研究所)・WWF(世界自然保護基金)の4つの機関が共同で運営しています。

サプライチェーン排出量を算定する目的・メリット

サプライチェーン排出量の算定には、以下のような目的・効果があります。

・温室効果ガスの排出量を適切に把握し、その削減ポテンシャルを測る
温室効果ガスが、サプライチェーンのどの段階で、どの程度排出されているか、その排出源と排出量を特定することで、排出削減に向けた適切な対策を打つことができます。排出源と排出量は企業により異なりますので、従ってその企業に適切な排出削減施策が異なります。

・経営リスク管理の強化
サプライチェーンにおける気候変動関連のリスクを早期に特定し、その影響を最小限に抑えるための対策を講じることができます。例えば、原材料の供給不安定化や、気候変動規制への対応といったリスクを事前に把握し、事業継続計画に組み込むことができます。

・イノベーションの促進
サプライチェーン全体での排出量削減を目指し、新たな技術やビジネスモデルの開発を促進することができます。例えば、低炭素な原材料の調達、効率的な物流システムの構築、再生可能エネルギーの導入などが挙げられます。

サプライチェーン排出量を報告する目的・メリット

サプライチェーン排出量の報告には、以下のような目的・効果があります。

・ステークホルダーからの信頼向上
投資家、顧客、従業員など、様々なステークホルダーに対して、企業が環境問題に対して真摯に取り組んでいることを示し、信頼関係を構築することができます。

・ブランドイメージの向上
自社の製品やサービスが環境に与える影響を透明化することで、消費者は企業に対して共感と信頼を得やすくなります。また、サプライチェーンにおける環境リスクを事前に特定し、対策を講じる企業であることを明示することは、企業の事業継続性をアピールすることができます。

・得意先や取引先との関係強化
サプライチェーン排出量の削減に取り組むことは、得意先や仕入先と一体となって温室効果ガス削減に取り組むことを意味します。近年では特に、得意先から排出量を報告するように求められるケースや、環境負荷の小さい原材料等を調達する「グリーン調達」、消費者においては環境配慮型の製品やサービスを選択的に購買するといった動きが加速しています。適切な環境対応は、こういった社会的な動きを自社のビジネスチャンスに転換し、得意先や取引先との関係強化に役立ちます。

Scope3(スコープ3)の15カテゴリにおける排出量の算定方法を一覧で紹介!

排出量算定の2つのアプローチ

サプライチェーン排出量におけるScope3は15のカテゴリーに分類され、カテゴリーごとの温室効果ガス排出量の算定方法(ガイドライン)が示されています。
排出量の算定方法には以下の2つのアプローチがあります。
・関係する取引先から排出量の情報提供を受ける
・計算により算出する「排出量=活動量×排出原単位」
精度の高い算定を行うためには、前者の計測・収集データを用いた算定が必要となりますが、簡易的な算出には後者の方法が利用可能です。

カテゴリーごとの排出量算定方法

以下の表は、スコープ3のカテゴリと、活動例、排出量の算定方法をまとめたものです。
*排出原単位については、環境省「排出原単位データベース」との対応を示しています。また、「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧」を利用するカテゴリもあります。

サプライチェーン排出量の可視化と削減に取り組む企業事例

既に国内でも多くの企業がサプライチェーン排出量を算定し、排出源および排出量を適切に把握したうえで、排出削減活動を進めています。
ここからは企業のサプライチェーン排出量の可視化と排出削減の取り組み例を紹介します。

事例1:イオン株式会社

イオン株式会社は、事業で発生する温室効果ガスを実質ゼロにする取り組みを進めています。
イオンのScope3排出量のうち、約55%がカテゴリー1「購入した製品・サービス」となっています。そこで自社ブランド「トップバリュ」や「H&BC」(ヘルス&ビューティケア)の主な製造委託先に、「気候変動への取り組みに関するアンケート」を実施し、各社の気候関連課題への取り組みや方針、イオンへの要望をヒアリング、脱炭素化の取り組みを開始しています。将来的には、企業間連携も含めたサプライチェーン全体での具体的な削減計画を策定する考えです。

事例2:新菱冷熱工業株式会社

新菱冷熱工業株式会社は、サプライチェーン排出量の算定により、温室効果ガス排出のホットスポットを特定することで、排出量の削減につなげています。同社の排出量は、そのほとんどがScope3であり、カテゴリー11「販売した製品の使用」、カテゴリー1「購入した製品・サービス」、カテゴリー4「輸送、配送(上流)」の順に多くなっています(2019年度)。
その中で、自助努力で排出削減が実施しやすいカテゴリー4「輸送・配送(上流)」に注目し、ウェアラブルカメラによる現場の遠隔監視を通してその排出量を削減しました。また、コンクリートから、金属くず、廃プラスチック類、ガラス陶磁器くずのリサイクルを進め、2020年度は88%のリサイクル率を達成し、これによりカテゴリ5「事業から出る廃棄物」の削減を図っています。

事例3:DIC株式会社

プラスチックを含めた化学素材などの取り扱いもあるDIC株式会社では、Scope3におけるカテゴリー12「販売した製品の廃棄」での排出量が比較的多くなっています。これを受けて、同社ではライフサイクル視点での環境負荷の把握と削減、およびサーキュラーエコノミーに配慮した製品設計を進め、仕入先やお客様、消費者、リサイクル事業者など、サプライチェーンにおけるすべての関係者との間で発生する環境負荷を把握し、廃棄物排出量の抑制、資源循環に配慮した調達などを推進しています。
このように、最近では多くの企業がScope3を含めたサプライチェーン排出量の算定、それに基づく排出削減に取り組んでいます。また、3社の例からも分かる通り、企業により温室効果ガスの主な排出源と排出量は様々であり、自社にとって最適な削減施策を進めるためには、サプライチェーン排出量の可視化が重要となります。

排出量算定・可視化サービス

脱炭素化を推進するうえでは、まずは排出量を算定し、サプライチェーン全体でどこからどの程度のCO2が排出されているかを適切に把握することが重要です。
排出量算定においては、「算定方法が分からない」、「算定結果が信頼できるデータかが分からない」といった声もあり、最近では様々な可視化サービスが出てきています。

三井物産では3つの可視化ソリューションをラインナップし、さらに可視化後の各種報告書の作成支援や、具体的な排出量削減施策に至るまで、企業に最適なソリューションを提供しています。
排出量可視化の方法については、以下もご参照ください。

「三井物産が提供する排出量可視化ソリューション一覧」 ​
以上、サプライチェーン排出量のスコープ3について解説しました。

既に多くの企業がサプライチェーン排出量を算定し、排出源と排出量の適切な把握を通して、効果的な排出削減を進めています。これから脱炭素化を進めたいと考えている企業は、まずはサプライチェーン排出量の可視化を検討してみてはいかがでしょうか。

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