【脱炭素経営EXPOレポート】e-dashとLCA Plusが連携を強化! より精緻なCO2排出量算定へ
事業者単位のCO2排出量可視化・削減ソリューション「e-dash」と、製品単位のCO2排出量可視化ソリューション「LCA Plus」が『第6回 脱炭素経営EXPO 春』に出展。両ブースから見えてきたトレンドやカンファレンスの模様をお届けします。
東京ビッグサイトにて、2025年2月19日~2月21日に開催された『第6回 脱炭素経営EXPO 春』。カーボンニュートラルを実現する最新技術が一堂に会する『SMART ENERGY WEEK 春』と同時開催され、3日間で6万8000人を超える来場者数となりました。
排出権取引制度スタートに向けて準備万全のe-dash
エネルギー関連の請求書をアップロードするだけで、Scope 1・2の排出量を可視化でき、Scope 3にも対応するクラウドサービス「
e-dash」。開放感があり、気軽に周遊できるブースは多くの来場者で賑わいを見せました。
パネルでは、CO2排出量の可視化から削減までを一気通貫で支援できる点、専門家が並走しながらサポートする「コンサルティング支援」の充実についての訴求がおこなわれていました。
「製造業のお客様がやはり多いですが、IT・通信系のお客様も増えています」(e-dash 川端氏)
「大規模排出事業者に関しては、2026年度から排出権取引制度(GX-ETS)がスタートするということもあり、非化石証書やカーボンクレジットに関するお問い合わせも増えています。また、算定の効率化を求める大手企業を中心に、算定業務請け負いサービスに関心が集まっています」(e-dash 甲斐氏)
(写真左)e-dash マーケティング部 部長 甲斐綾乃 (写真右)e-dash マーケティング部グロースグループ 兼 コミュニティグループ グループマネージャー 川端 晃代
ブースでは『Scope3算定と開示』『非化石証書・クレジット活用』など、さまざまなテーマのミニセミナーも開催。『サプライチェーン排出量の一次データ化のすすめ』と題されたセミナーでは、e-dash × LCA Plusの活用による新たな価値をプレゼンしました。
「Scope3を実態に近い精緻なものにするため、今後は一次データでの算定を希望される企業様が増えていくことが予想されます。すでにLCA Plusと協業していますが、今後もサプライチェーンの一次データを集める仕組みを用意して、利便性を高めていければと思います」(e-dash 甲斐氏)
算定業務支援サービスのニーズが高まるLCA Plus
製品単位のCO2排出量(カーボンフットプリント)の算定・保存・分析・管理をワンストップで実現できるプラットフォーム「
LCA Plus」。今回はサービス内容についてのパネル展示だけでなく、LCA Plus利用企業が排出量算定をおこなった実際の製品と、その算定結果を展示するスペースも設けられていました。
「LCA算定はしたけれどそれをどう活用すればいいのか? という声をいただく機会が増えています。そこで、LCA Plus の活用事例を見える化していく取り組みとして、製品と算定結果を展示しました」(LCA Plus岩佐氏)
馴染みのある製品が並ぶことで、カーボンフットプリントに対するイメージがしやすくなるという効果もあるそうです。
「算定業務支援サービスのニーズも高まっています。その他、算定結果の客観性を担保したいという声も多く、妥当性確認・検証サービスのニーズも増えています」(LCA Plus岩佐氏)
LCA Plus 事業推進チーム プロジェクトマネージャー 岩佐達朗
大手製造業からの問い合わせが多いのは変わらないものの、最近は中小企業も増え始めたと言います。また、昨年までは自動車業界や電機・機械が中心でしたが、食品業界や建設業界など裾野の広がりを感じているとのことでした。
「すでにエクセルなどで算定されている方ほど、LCA Plusの利便性をよりご理解いただけています。今後の展望としては、Catena-X(自動車業界のサプライチェーンでのデータの共有&相互運用を目的とした欧州のデータスペース※)や、Ouranos Ecosystem(日本で経済産業省を中心に構築が進むデータスペース※)がいよいよ本格的に動き出しているので、LCA Plusでもこれらの企業間データ連携の仕組みにしっかり標準連携していきたいと思います」(LCA Plus岩佐氏)
※データスペース:各国・地域で構築が進んでいる企業間の安心、安全なデータ共有を実現する社会インフラ
LCA Plusのブースでも各種ミニセミナーや、TOPPANや中野製薬の方を招いたトークセッションを開催。利用者の具体的な声が聞けるということで、多くの来場者が足を止めていました。
e-dash × LCA Plusの活用で2030年カーボンニュートラルを目指す中野製薬
カンファレンス会場では、中野製薬 × e-dash × LCA Plusの基調講演3社セッションもおこなわれました。
中野製薬は、理美容室および一般向けの頭髪化粧品メーカーです。同社は2020年に「サステイナビリティ推進プロジェクト」を発足して以来、さまざまな取り組みをおこなってきました。
そのひとつに、一般向けヘアスタイリング剤「タント」の製品単位排出量(カーボンフットプリント)算定があります。そこで活用されたのが「LCA Plus」、約1年かけて同シリーズの計11アイテムでカーボンフットプリント算定をおこなってきました。
それと並行するように、Scope 1・2の可視化・削減を目指し「e-dash」を活用。2024年10月にはFIT非化石証書代理調達サービスを活用し、国内非生産拠点の使用電力を100%再エネ化しています。
カンファレンスでは『中野製薬が理美容業界初の事例として進めるサステイナビリティ経営』と題して、執行役員 研究開発本部長の坪西慎氏が登壇。LCA Plusから岩佐氏、e-dashからは今泉氏も参加しました。
「理美容業界はまだ環境負荷低減への意識が低いなか、いち早く取り組むことで業界でのイニシアチブを取りたいという思いからスタートしました。タントは環境意識が高いと言われているZ世代を中心に支持を集めているブランドです。そこで、まずはこのタントシリーズからカーボンフットプリント算定をしようと思いました」と語る坪西氏。
「他社はすべてがパッケージになっている製品が多く、弊社としては必要なサービスだけを取り入れたかった。e-dashとLCA Plusは私たちにとってベストな組み合わせでした」と語る、中野製薬 執行役員 研究開発本部長の坪西慎氏
カーボンフットプリント算定においては、「自分たちの使っている原材料がIDEA(排出原単位のデータベース)のどの項目に当てはまるのかがわからず、LCA Plusにレクチャーしてもらえて助かった。外部の目が入ることで正しいデータになった」。
再エネの導入においても、「どこから始めればよいかわからず、e-dashに相談しながら実現可能性の高いところから始めた。将来設計に至るまでサポートしてもらえている」など、利用者ならではの率直な感想を数多く聞くことができました。
「お客様のニーズとしては、まず最初に企業単位での排出量算定。その後に、製品単位での算定を希望される方が多いので、LCA Plusと連携しながら紹介していく流れを強化していきたいと思っています」と、基調講演後に語ったe-dash ソリューション&アドバイザリー部 部長 今泉 覚氏
可視化を終え、時代は次のステップへと動き出した
昨年に比べると、可視化ソリューションや教育に関する出展が減った『第6回 脱炭素経営EXPO 春』。その一方で、再生可能エネルギーの導入、エネルギーマネージメント技術、GX推進支援、データセンターの脱炭素化など、より具体的なアクションを提案する展示が増えていました。
それは脱炭素化に向けた取り組みが、日本全体で進んでいる証とも言えます。
e-dashと
LCA Plusの連携強化も、その流れの中にあると感じたEXPOとなりました。
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