世界の発電割合とは?各国の発電方法やエネルギー政策の特徴を解説 - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

コラム

最終更新:2025.09.24

世界の発電割合とは?各国の発電方法やエネルギー政策の特徴を解説

世界の発電割合の現状を、米・日・ブラジルなど主要6カ国の発電方法を通して解説。各国のエネルギー政策の特徴や、発電方法を決める要因などを解説します。

2050年のカーボンニュートラル達成に向け、世界各国で化石エネルギーから再生可能エネルギーへの移行が急速に進んでいます。本記事では、世界全体の発電割合を把握した上で、米国・日本・ブラジル・フランス・ドイツ・ノルウェーの6カ国を比較。 各国の発電割合やエネルギー政策の特徴などを解説します。

世界全体の発電割合は?再生可能エネルギーへのシフト

世界の発電割合

世界全体の発電割合出典:自然エネルギー財団「統計・マップ|世界の電力」
Energy Instituteによると、2024年の世界全体の電源構成は以下のとおりです。
火力: 59.9%
  └ 石炭: 35.4%
  └ 天然ガス: 22.5%
  └ その他化石燃料: 2.0%
原子力: 9.1%
水力: 14.2%
風力: 7.8%
太陽光: 5.5%
その他再エネ(バイオマス、地熱等): 2.8%
なお、2024年時点での再生可能エネルギー(風力・太陽光・その他再エネ)の合計比率は16.1%であり、依然として化石燃料由来の火力発電が約60%を占める状況です。再エネの導入は進んでいるものの、世界全体では依然として化石燃料への依存が根強く残っていることがわかります。

世界のエネルギーシフトの潮流とその背景

国際エネルギー機関(IEA)の報告によると、再生可能エネルギーの発電割合は、近年著しく増加しています。2000年以降、風力や太陽光などの再エネは技術革新とコスト低下により導入が進み、天然ガスも石炭より大気汚染物質(SOx、NOx)の排出が少ないエネルギーとして世界的に利用が拡大しました。
出典:自然エネルギー財団「統計・マップ|世界の電力」
出典:自然エネルギー財団「統計・マップ|世界の電力」
2024年時点では、再生可能エネルギーが石炭に次ぐ世界第2位の主力電源として位置づけられるまでに成長しており、エネルギー構成の大きな転換点を迎えています。

こうしたシフトの背景には、気候変動対策としての脱炭素はもちろん、エネルギー価格の高騰や地政学リスクへの対策として、安定供給と経済性を両立する電源構成の見直しが世界的に加速していることがあります。持続可能で競争力のあるエネルギー戦略は、企業・国家の成長基盤であり、環境・経済・安全保障の三位一体での取組みが求められています。

主要6カ国の発電割合と政策の特徴

主要6カ国の発電割合(2023年)
出典:International Energy Agency※一部、割合(%)の記載がないデータについては、IEAの公表値を元に当社にて算出 構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない
出典:International Energy Agency
※一部、割合(%)の記載がないデータについては、IEAの公表値を元に当社にて算出 構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない
国が置かれた地理的条件や歴史的背景、エネルギー政策により、その国の発電割合は大きく異なります。ここでは、米国、日本、ブラジル、フランス、ドイツ、ノルウェーという特徴的な6カ国の主要な発電方法を取り上げ、それぞれの電力事情を比較・解説します。

米国:州主導で再エネ化加速、シェール革命後に多様化

出典:International Energy Agency「United States」
出典:International Energy Agency「United States」
米国の主な発電方法・割合(2023年)
総電力生産量 4,400TWh
1位:天然ガス 41.9%
2位:原子力 18.1%
3位:石炭 16.7%
エネルギー政策の背景や特徴
米国では天然ガス(LNG)火力発電が40%以上を占める一方、風力(9.6%)や太陽光(4.8%)の導入も徐々に進んでいます。特徴的なのは、州ごとに再エネ導入率の差が大きく、政策・地理・経済条件の違いが顕著に表れている点です。

2023年時点で17州とワシントンD.C.が100%クリーン電力目標を設定しています。また、シェールガス革命によってガスの国内供給が安定し、インフラが整ったことが、結果として再エネ拡大の土台となっています。

日本:火力7割、再エネ拡大とGX政策

出典:International Energy Agency「Japan」
出典:International Energy Agency「Japan」
日本の主な発電方法・割合(2023年)
総電力生産量 1,002TWh
1位:天然ガス 33.0%
2位:石炭 28.3%
3位:太陽光 9.6%
エネルギー政策の背景や特徴
資源に乏しく、山と深い海に囲まれるなどの地理的制約から、日本はエネルギーの安定供給と経済合理性の両立という長年の課題を抱えています。こうした中、政府は「GX(グリーン・トランスフォーメーション)推進法」や「第7次エネルギー基本計画」を通じて、2030年までに再エネ比率を36〜38%に引き上げる方針を明確にしています。
*第7次エネルギー基本計画について詳しく知りたい方は「第7次エネルギー基本計画を徹底解説、GX2040ビジョンとの関連性は?」をご覧ください。

ブラジル:水力・風力・バイオの多様な再エネで南米の脱炭素を牽引

出典:International Energy Agency「Brazil」
出典:International Energy Agency「Brazil」
ブラジルの主な発電方法・割合(2023年)
総電力生産量 707TWh
1位:水力 60.2%
2位:風力 13.5%
3位:バイオ燃料 8.1%
エネルギー政策の背景や特徴ノルウェー同様、水資源に恵まれたブラジルは水力発電が電力供給の中心です。さらに、水力発電量が落ち込む乾季には、広大な土地で栽培されるサトウキビの搾りかす(バガス)等を燃料とするバイオマス発電も活用されています。

他にも、風況の良い沿岸部に風力発電設備を設置し、世界最高水準の設備利用率を記録。政府は2015年に太陽光を中心とした「分散型発電」のインセンティブプログラムも発足させており、南米の脱炭素モデルとして注目を集めています。

フランス:原子力と再エネ共存の模索

出典:International Energy Agency「France」
出典:International Energy Agency「France」
フランスの主な発電方法・割合(2023年)
総電力生産量 525TWh
1位:原子力 64.3%
2位:水力 11.6%
3位:風力 9.8%
エネルギー政策の背景や特徴
フランスは伝統的に原子力比率が極めて高い国ですが、同時に原子炉の老朽化という課題も抱えています。そうした中、エネルギー転換をいち早く推進しており、2019年に制定されたエネルギー・気候法により、2050年までにパリ協定第4条に準拠するカーボンニュートラル(温室効果ガスの人為的排出と人為的吸収がフランス国内において均衡している状態)目標を達成することが法的義務となりました。

また、フランスの法律では、カーボンニュートラルにおいて国際オフセット(クレジット)は含まないと定義し、より厳格な対応が求められています。
*フランスのカーボンニュートラル戦略について詳しく知りたい方は「フランスのカーボンニュートラル戦略における規制と企業事例の最前線 」をご覧ください。

ドイツ:脱原発・脱石炭推進、再エネ100%への挑戦

出典:International Energy Agency「Germany」
出典:International Energy Agency「Germany」
ドイツの主な発電方法・割合(2023年)
総電力生産量 511TWh
1位:風力 27.5%
2位:石炭 26.4%
3位:天然ガス 15.8%
エネルギー政策の背景や特徴
ドイツは2010年制定の「エネルギーヴェンデ(エネルギーの大変革)」政策を推進しており、2045年までにネットゼロ排出を達成することを法的に定めています。政府は、2030年までに再エネ比率80%、2035年までに100%にするという政策目標を掲げていますが、法的拘束力はありません。ドイツは2023年に原子力を完全廃止しており、石炭も2038年までに段階的に廃止する方針です。

ノルウェー:水力中心、世界最高水準の再エネ比率を実現

出典:International Energy Agency「Norway」
出典:International Energy Agency「Norway」
ノルウェーの主な発電方法・割合(2023年)
総電力生産量 154TWh
1位:水力 89.1%
2位:風力 9.0%
3位:天然ガス 1.0%
エネルギー政策の背景や特徴ノルウェーは、フィヨルドに代表される高低差の大きい地形と豊富な降水量を活用し、国内の発電量の約90%を水力発電で賄っています。2050年までに温室効果ガス排出量を90〜95%排出量を削減(1990 年比)し、低排出社会を構築するという目標を設定しています。

発電割合を形成する3つの視点

なぜ国によってこれほど発電割合は異なるのでしょうか。その国の電源構成は、地政学的な状況や経済性、歴史的経緯等、無数の要因が複合的に影響しあって形成されます。
ここでは、その構成を理解する上で特に重要と考えられる要点を3つの視点に絞って考察します。

1.地理的条件と資源の賦存量

最も根本的な要因は、各国の地理的条件と、そこで利用可能な天然資源の量です。これらは、発電コストや技術的な実現可能性に直接影響するため、各国の発電の土台を形成します。
発電方法 特徴・地理的条件
風力 一年を通して安定した風が吹く沿岸部や平原を持つ国では風力発電が盛ん ドイツ、ブラジル
水力 高低差のある地形と豊富な水資源に恵まれた国では、水力発電が最も合理的で経済的な選択肢となる ノルウェー、ブラジル
太陽光 日照時間が長く、乾燥帯・温帯・地中海性気候(夏季)等に位置する晴天の多い国では太陽光発電が有利 インド、スペイン
火力(化石燃料) 国内に安価な化石燃料が豊富にある国では、それらを活用した火力発電がエネルギー供給の基盤を担う 米国

2.エネルギー安全保障と地政学リスク

次に考慮すべきは、自国でエネルギーを安定的に確保できるかという「エネルギー安全保障」の観点です。エネルギー資源の多くを輸入に頼る国は、国際情勢の変動や輸出国との関係悪化といった地政学リスクに絶えず晒されます。

例えば、1970年代の石油危機が、多くの先進国にとってエネルギー自給率を高める大きなきっかけとなったように、エネルギー安定供給のために多様な電源構成を模索する動きが加速しています。

3.国の政策と国民の合意

そして最終的な電源構成は、地理的条件や安全保障の要請等を踏まえた上で、各国の政府が定めるエネルギー政策に大きく影響されます。政策には、その国の歴史的背景や国民の価値観、そして将来へのビジョンが色濃く反映されるからです。

例えば、ドイツの再エネ転換政策「エネルギーヴェンデ」は、福島第一原発事故を受けて国民の間で高まった脱原発への強い民意が政策を後押しした典型例です。エネルギー転換には、インフラ整備やコスト負担に対する国民の理解が不可欠であり、国民の意見や選択が最終的な発電割合を方向付ける決定的な要因となります。

理想の発電割合と未来のエネルギー像

これまでの各国の状況や背景を踏まえ、未来の理想的なエネルギー像について考えてみましょう。各国の条件によって最適な発電割合は異なりますが、国際的に共有されている「S+3E」という考え方や、「次世代エネルギー」技術の活用が鍵となります。

S+3Eの重要性

S+3Eとは、安全性(Safety)を大前提に、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)を同時に達成することを目指す考え方です。これら4つの要素の頭文字を取ったもので、理想の発電割合を議論する際に、このバランスを意識したエネルギー政策が重要となります。
2011年の福島第一原子力発電所事故以降、日本のエネルギー政策の基本方針を定める「エネルギー基本計画」も、このS+3Eにもとづき、安全性を最優先とした政策転換を目指して政府が策定しています。

次世代エネルギー「水素」「アンモニア」への期待

そして、S+3Eの実現に向けた新たな選択肢として、次世代エネルギーへの期待が高まっています。中でも、燃焼時にCO₂を排出しない水素とアンモニアが注目されています。
水素:再エネから作った電気で水を電気分解して製造する「グリーン水素」は、究極のクリーンエネルギーとして期待されています。
アンモニア:燃焼時に窒素酸化物(NOx)を排出するなどの課題があるものの、製造時のCO₂を地中に貯留(CCS)したり、グリーン水素を使用したりすることで、よりCO₂フリーなアンモニアを製造することが可能です。さらに、水素と比べて貯蔵・運搬が容易なため、一時的に水素をアンモニアに変換し、使用時に再度水素に戻せば、貯蔵や運搬のコストを低減できるという利点もあります。

世界のエネルギー課題に挑む三井物産の取組み

三井物産では、温室効果ガスの削減や気候変動の緩和と適応に貢献する事業を、国内外で展開しています。再エネ分野のソリューションにおいては、太陽光発電、風力発電、バイオマス発電をはじめ、さまざまな再生可能エネルギー発電をご支援します。
*三井物産の再エネソリューションについて詳しく知りたい方は「再エネ - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産 」をご覧ください。

発電割合から見える未来

各国の発電割合は、地理的条件や政策だけでなく、国民の価値観・生活習慣によって形作られます。地政学リスクや気候や天気に左右されず、各国事情に合わせた必要な電源構成にシフトしている状況が見られます。今の発電割合が、私たちや次世代の暮らしにどんな影響を与えるか、少し立ち止まって考えてみませんか。持続可能な未来のために、私たち一人ひとりができる選択や行動を、今日から始めてみましょう。

参考

自然エネルギー財団 統計・マップ|https://www.renewable-ei.org/statistics/international/
International Energy Agency|https://www.iea.org/
海外投融資情報財団 再生可能エネルギー大国ブラジル:その実力と脱「水力依存」への取り組み|https://nipo-brasil.org/wp-content/uploads/2020/04/471984deba9e6614d899aaa31eed7b92.pdf
経済産業省 エネルギー基本計画|https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20250218_01.pdf
経済産業省 資源エネルギー庁 第1節 米国の「シェール革命」による変化|https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2015html/1-1-1.html
経済産業省 資源エネルギー庁 5.S+3E|https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2023/05.html
独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構  石炭資源情報|https://coal.jogmec.go.jp/info/docs/241220_4.html
独立行政法人 農畜産業振興機構|https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003194.html
(すべて2025年8月5日参照)

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