第7次エネルギー基本計画を徹底解説、GX2040ビジョンとの関連性は? - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

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最終更新:2025.04.22

第7次エネルギー基本計画を徹底解説、GX2040ビジョンとの関連性は?

第7次エネルギー基本計画は、日本のエネルギー政策の基本方針を定める重要な計画です。「GX2040ビジョン」との関係性や、日本のエネルギー政策のポイントを徹底解説します。

経済産業省 第7次エネルギー基本計画|https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001-1.pdf
日本のエネルギー政策の基本方針を定めるエネルギー基本計画。最新の計画は「第7次エネルギー基本計画」として、2025年2月に閣議決定されました。持続可能な経済成長を目指す戦略である「GX2040ビジョン」との関係性に焦点を当てながら、再生可能エネルギーの導入拡大や火力発電の削減、脱炭素技術の進展等、日本の未来の方向性を示す重要な政策指針や具体的な施策を徹底解説します。

エネルギー基本計画とは?

出典:経済産業省 METI 「知っておきたい経済の基礎知識~S+3Eって何?」
出典:経済産業省 METI 「知っておきたい経済の基礎知識~S+3Eって何?」

エネルギー基本計画の概要

エネルギー基本計画は、日本のエネルギー政策の基本方針を定める重要な計画であり、エネルギー政策基本法に基づき政府が策定しています。この計画は、地球温暖化の進行やエネルギー安全保障の確保を目的として作成されており、国のエネルギー政策を長期的に支える枠組みとなります。計画は3年ごとの見直しが義務付けられており、最新の計画は第7次エネルギー基本計画として、2025年2月18日に閣議決定されました。
また、エネルギー基本計画の策定においては、「S+3E」の考え方が重要な柱となっています。これは、エネルギーの安全性(Safety)を大前提として、安定供給(Energy Security)、経済効率性(Economic Efficiency)、環境適合(Environment)の4つの要素を組合せたものであり、バランスの取れたエネルギー政策を目指すものです。この考え方に基づき、政府はエネルギー供給の多様化や再生可能エネルギーの導入、効率的なエネルギー利用を促進し、地球温暖化対策を進めています。
つまり、エネルギー基本計画は、国のエネルギー政策の方向性を示すだけでなく、社会全体が持続可能なエネルギーシステムを築くためのマイルストーンとなります。
*エネルギーミックスについて詳しく知りたい方は「エネルギーミックスとは?なぜ必要?」をご覧ください。

第7次エネルギー基本計画のポイント

出典:資源エネルギー庁 「エネルギー基本計画の概要」
出典:資源エネルギー庁 「エネルギー基本計画の概要」

電源構成の転換

第7次エネルギー基本計画では、電源構成(電力の発電構成)の大きな転換が進められます。2040年度の発電電力量は1.1兆〜1.2兆kWh程度に達することが見込まれ、2023年度と比較して電力需要は約2割増加 すると予想されています。この増加に対応するため、2040年度の電源構成は再生可能エネルギーを中心に転換が進み、再生可能エネルギーの割合は40%〜50%程度を目指します。特に、太陽光発電は23%〜29%を占め、風力発電は4%〜8%の割合を確保することが計画されています。
重要なポイントは、再生可能エネルギーが初めて最大の電源として位置づけられていることです。これにより、2040年度の火力発電の割合は30%〜40%程度に減少し、従来の化石燃料依存から脱却を目指します。また、2040年度の原子力発電は、20%程度を維持するとされています。これに伴い、従来の「可能な限り原発依存度を低減する」という文言は削除されました。これらの目標は、温室効果ガス排出量削減のためのステップとしています。
再生可能エネルギーの導入拡大には、発電設備の大規模な導入や電力網の整備が必要であり、これを実現するためには政府や企業そして地域住民一人ひとりの協力が不可欠です。第7次エネルギー基本計画は、将来のエネルギー需要への対応と環境負荷軽減を両立する重要な計画なのです。

脱炭素戦略

第7次エネルギー基本計画における脱炭素戦略には、化石燃料依存から脱却し、持続可能なエネルギー供給を実現するための重要な施策が含まれています。まず、石炭火力発電の発電量を減らし、LNG火力や水素・アンモニア、CCUS(炭素回収・貯留技術)等を活用した火力発電の脱炭素化が進められます。さらに、省エネや電化の推進に加え、非化石エネルギーへの転換が加速され、エネルギー効率を高める取組みが強化されます。
また、電力の脱炭素化と再生可能エネルギーの主力電源化に向けては、電力市場の統合が求められ、系統整備や蓄電池、需要応答(DR)による調整力の確保が重要な課題となります。また、水素やアンモニア、合成メタン、合成燃料、バイオ燃料の導入による、再エネ電源の多様化とともに、CCUSやCDR(炭素除去技術)の技術革新が求められます。これらの取組みによって、脱炭素社会の実現に向けたエネルギー基盤の強化を目指しています。

第6次エネルギー基本計画との違い

2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画と、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画には、エネルギー政策の方向性にいくつかの重要な違いがあります。再生可能エネルギーに関して、第6次計画では2030年度に再生可能エネルギーの割合を36〜38%にすることが目標とされていましたが、第7次計画では2040年度に再生可能エネルギーの割合を40〜50%に引き上げ、太陽光は23〜29%、風力は4〜8%を目指すことが明記されています。
また、火力発電の割合については、第6次計画では2030年度に41%を予定していましたが、第7次計画では火力発電を30〜40%に抑える方針を採用しました。原子力については、第6次計画で2030年度に20〜22%を見込んでいましたが、第7次計画でも20%程度を維持する方針が示されており「安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用」という姿勢は変わっていません。
さらに、脱炭素技術の活用において、第7次計画では、CCS(炭素回収・貯留技術)や水素、アンモニア等の脱炭素技術を重視し、これらの技術がエネルギー転換の重要な柱と位置づけられています。

GX2040ビジョンとは

GX2040ビジョンの概要

GX2040ビジョンは、脱炭素社会を実現し、持続可能な経済成長を目指すための2040年までの戦略的ビジョンです。策定の目的は、GXに向けた取組みの中長期的な方向性を官民で共有し、投資の予見可能性を高めることにあります。そして、ビジョンの実現には、電力システムの改革を通じて、再生可能エネルギーの普及と安定供給を両立させ、効率的なエネルギー利用があげられます。そして、スマートグリッドの導入、分散型エネルギーシステムの推進、デジタル技術の活用が重要な要素となります。
特に注目すべきは、10年間で150兆円規模の官民投資を呼び込む成長志向型カーボンプライシング構想が示されたことです。この構想は、経済活動と環境保護を両立させ、脱炭素化を加速させるための重要な施策です。

第7次エネルギー基本計画との関連性

GX2040ビジョンは、2040年に向けてのエネルギー社会のあり方を描き、持続可能で強靭なエネルギーシステムの構築を目指すとともに、GXの実現を目指しています。このビジョンは、エネルギー安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現を追求するものであり、GXの中長期的な方向性を示しています。
第7次エネルギー基本計画は、GX2040ビジョンを実現するための具体的なエネルギー政策を示すものであり、再生可能エネルギーの割合を増加させ、火力発電の削減、原子力の安定活用といった施策を取り入れています。この計画はエネルギー基盤の整備に関する指針を提供し、エネルギーの安定供給と脱炭素社会の実現に向けた重要なステップを踏んでいます。
第7次エネルギー基本計画とGX2040ビジョンは相互に補完し合い、GXビジョンの中長期的な目標を達成するための実行可能な手段を提供しています。具体的には、第7次エネルギー基本計画は、GX2040ビジョンを実現するための道筋を示す施策であり、エネルギー供給の多様化、効率化、そして脱炭素化を進めるための重要な指針となっています。

GX2040ビジョンの内容

GX2040ビジョンでは、革新技術を活用した新たなGX事業の創出と、サプライチェーンが脱炭素エネルギーやDXによって高度化される産業構造の実現を目指しています。そして、この実現に向けて、イノベーションの社会実装や市場創造、中堅・中小企業のGXが進められています。
例えばGX産業立地では、クリーンエネルギーを活用した製品・サービスが成長をけん引し、地方創生と経済成長を促進します。地域ごとのエネルギー供給の特性を考慮し、効率的に新たな産業用地や脱炭素電源を整備します。
さらに、エネルギー、産業、くらしなど各分野でも投資戦略、GXの取組みを加速させます。再生材の活用を促進することを目的に、2025年通常国会では、資源有効利用促進法改正案の提出が予定されています。
最後に、成長志向型カーボンプライシング構想として、2025年にはGX推進法改正案の提出され、2026度からは排出量取引制度の本格稼働、2028年度からは化石燃料賦課金の導入が進められ、予見可能な価格設定とともに企業の排出削減が加速する見込みです。

企業への影響と対応策

GX2040ビジョンにもとづき、企業は電化や省エネ技術の導入を積極的に進める必要があります。具体的には、モーダルシフト(トラック輸送から鉄道や船舶への切り替え)や商用車・社用車の電動車への切替えや、省エネ性能の高い機器や建物の導入が求められています。これらの取組みにより、長期的なエネルギーコストの削減が期待でき、事業継続計画(BCP)の観点からも電力の安定確保につながります。さらに、電力契約を通じて脱炭素電源への転換を進めることで、持続可能なエネルギー供給が実現し、企業の環境負荷が低減されます。企業や個人が政策の意義を理解し、社会的な議論に積極的に参加することで、GX2040ビジョンの実現に貢献し、持続可能な社会の構築に寄与することができます。

日本のエネルギー政策の未来

オフィスビルの写真
日本のエネルギー政策は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な転換点を迎えています。第7次エネルギー基本計画とGX2040ビジョンは、未来の方向性を示す重要な政策指針といえます。これらの計画の核心には、エネルギーミックスの再構築があり、特に再エネの導入拡大が重要なテーマとなっています。
第7次エネルギー基本計画では、エネルギー安定供給と経済成長、脱炭素化を同時に実現することが求められています。この目標を達成するためには、再生可能エネルギーの導入拡大だけでなく、その技術革新や投資環境の整備も不可欠です。また、GX2040ビジョンは、これらをより長期的かつ戦略的な視点で捉え、2050年に向けたカーボンニュートラル社会の実現を目指しています。
エネルギーの多様化と安定供給を実現するためには、官民の一層の協力と努力が必要であり、国際的な連携と技術革新も欠かせません。その道のりは厳しいものですが、これらの取組みが日本の将来をつくる力になると確信しています。

参考

経済産業省 第7次エネルギー基本計画|https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001-1.pdf
経済産業省 2040年度におけるエネルギー需給の見通し|https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001-3.pdf
経済産業省 GX2040ビジョンの概要|https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218004/20250218004-3.pdf
資源エネルギー庁 再生可能エネルギーの導入状況|https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/063_s01_00.pdf
(すべて2025年3月18日参照)

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