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最終更新:2024.01.09

スマートグリッドとは?仕組みやメリット、日本での取り組みも紹介

「スマートグリッド」は、実用化が進められている次世代のエネルギー供給網です。
停電防止や節電につながるほか、太陽光発電とも関わりが深く、普及にむけた取り組みの拡大が予想されます。
しかし、「スマートグリッドに興味があるけれど、詳しいことはよくわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
そこで、この記事では、そんなスマートグリッドについて解説します。

スマートグリッドとは?わかりやすく解説!

スマートグリッドとは、IT技術によって、供給側・需要側の双方から電力量をコントロールできる送電網のことです。日本語で「次世代送電網」とも呼ばれます。
これまでの電力供給は、供給側である発電所から、企業や家庭などに向けて、一方向に電力が流れるものでした。
一方、スマートグリッドでは双方向的に電力が流れるほか、電力供給の過不足といった情報もやり取りできます。それにより、さまざまなメリットがあると考えられています。
スマートグリッドは、環境問題と経済問題を解決する手段として期待されています。
2009年には、米国のオバマ元大統領がグリーン・ニューディール政策の一つとしてスマートグリッド掲げ、注目を集めました。
以下で、スマートグリッドを導入すると具体的にどんなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。

スマートグリッド導入のメリット

スマートグリッド導入の大きなメリットは、「効率的な電力供給」「再生可能エネルギーの効率的な導入」の2つです。

効率的な電力供給
スマートグリッドでは、双方向でデータをやり取りできます。つまり、企業や家庭における消費電力情報や、電力会社からの電力抑制指示を送受信できるということです。
電力会社は、企業や家庭の電気の消費量が減少したというデータを受け取った場合、それに合わせて電力供給を抑えることで、過剰な発電を防ぐことが可能です。また、余剰電力を別の需要家に回すなどの調整ができます。スマートグリッドでは、このように需給バランスを調整できるため、停電防止にもつながります。

再生可能エネルギーの効率的な導入
スマートグリッドでは、従来の大規模発電所による電気と、家庭などで発電された電気を合わせてコントロールすることが可能です。
地域で太陽光発電や風力発電システムをつなげ、優先的に電力を融通できれば、電気を地産地消することも可能です。
また、再生可能エネルギーは発電量が天候に左右されるという不安定感がありますが、その際は発電所から供給量を増やすことで、安定した電力供給が可能です。

スマートグリッドの仕組み

スマートグリッドでエネルギー最適化を行うシステムのことを「CEMS(セムス:Community Energy Management System)」と呼びます。「コミュニティ(地域)」という言葉が入っているとおり、スマートグリッドの導入は地域単位で考えます。
スマートグリッドの具体的な仕組みは、以下のとおりです。
まず、各家庭や企業において、既存の電力計の代わりに「スマートメーター」という機器を用います。スマートメーターとは、通信機能を持った電力計測機器です。このスマートメーターをすべての家庭やオフィスなどに設置することで、電力使用やエネルギーの流れを「見える化」します。
スマートメーターで計測したデータは、制御施設であるコントロールセンターに送られ、地域内の「エネルギー最適化」を行うために使われます。
エネルギー最適化の例としては、
- 昼間の電力需要ピーク時に、各施設に太陽光発電システムによる電力を使うように指示を出す
- 再生可能エネルギーの余剰分を別の施設に送る
- 集まったデータから電力消費予測を立てる
などが挙げられます。

スマートグリッド導入後の未来とスマートシティ

スマートグリッドが導入されると、環境に優しく、エネルギーを効果的に使える社会が実現されていると考えられます。
ただし、前述したとおり、スマートグリッドは、1つの施設と発電所の間だけで完結する仕組みではありません。施設同士のつながりだけでなく、施設内でのエネルギー利用でも最適化を行い、地域全体でエネルギー最適化をする「スマートシティ」の構築を目指すことが重要です。
そのためには、前述したCEMSだけではなく、「BEMS」「FEMS」「HEMS」が必要となってきます。
いずれも、エネルギーを管理するための制御システムを指します。以下で、それぞれの意味を解説します。

BEMS(Building and Energy Management System)
こちらは「ベムス」と読み、ビル内のエネルギー管理システムのことです。
BEMSでは、室内の人数や温度などを感知するセンサーや、空調設備や照明設備などの使用電力の制御装置をビル内に取り付けます。それらの設備により、電力使用量をモニターで見える化したり、センサーの情報をもとに制御装置で使用電力を過不足なくコントロールしたりすることが可能となります。

FEMS(Factory Energy Management System)
こちらは「フェムス」と読み、工場内のエネルギー管理システムを指します。
仕組みはBEMSと同じで、工場内のさまざまな設備や製造ラインの電力使用を見える化・最適化します。

HEMS(Home Energy Management System)
こちらは「ヘムス」と読み、家庭内のエネルギー使用量を見える化・最適化するシステムです。
主に、家電の電気使用量をチェックすることが多いですが、太陽光発電や蓄電池などの電力とまとめて管理することもあります。
企業などが入るビル、工場、そして家庭。これらをコントロールセンターで結ぶことで、CEMS体制ができ、スマートシティができあがります。

スマートシティの実証実験

日本でも、スマートシティの実証実験が進められています。
2010年~2014年に神奈川県横浜市・愛知県豊田市・京都けいはんな学研都市・福岡県北九州市の4地域において、大規模な実験が行われました。いずれも、電力会社のほか、自動車メーカーや重工業企業が参加し、特定課題に対して先端技術を使って取り組んでいく試みが主でした。
近年のスマートシティの取り組みは、大都市だけではなく大小様々な地域において、スマートシティの構築が進められ、医療、福祉、交通、環境負荷低減などのその地域が抱える多様な課題に対して複合的に取り組もうとする事例が増えています。
例えば、福島県の「浪江町復興スマートコミュニティ構築事業」では、震災復興における地域構築において「非常時の安全・安心」「再生可能エネルギーの導入」「生活利便性の向上と新たな雇用の創出」を目指す取り組みです。太陽光発電とEV、CEMSやBEMSを活用し、環境に配慮した安全性の高いのまちづくりを目指しています。
今後、スマートシティの実現を目指して、スマートグリッドを普及させる取り組みは、ますます加速すると予想されます。
スマートグリッドは、安定した電力供給と効率的なエネルギー利用を目指すシステムです。世界中で注目されており、日本でも官民一体となって、実用化に向けた研究が進められています。
人々の環境問題への関心が高まる中、スマートグリッドに関する取り組みも、さらに盛り上がっていくでしょう。

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