ものづくりの知見を生かして 先行開発から量産フェーズまでサポートする「フォワード・エンジニアリング・ジャパン」の凄み - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

ソリューション資源循環

最終更新:2025.02.04

ものづくりの知見を生かして 先行開発から量産フェーズまでサポートする「フォワード・エンジニアリング・ジャパン」の凄み

最新素材、部品、構造、設計といった、ものづくりに関する全方位の深い知見を生かしながら、未来のモビリティに向けた製品づくりをサポートするフォワード・エンジニアリング・ジャパン。その幅広い事業領域と、持続可能な製品開発に関する想いを聞きました。

各国がカーボンニュートラルを目指すなか、CO2排出量削減を前提とした製品開発が命題になっています。その実現に向けては、潤沢な研究開発費がある大手メーカーといえど、すべてを自社でまかなうのは難しい時代。そこで活躍するのが、未来を予測しながら革新的なものづくりをサポートする会社。コンセプト検討から量産までの開発サポートをおこなう、フォワード・エンジニアリング・ジャパンの事業を紹介していきます。

カーボンファイバーを使った設計・製造からのスピンオフ

——フォワード・エンジニアリング・ジャパンは、「新モビリティの車体や構造の開発」「バッテリーパックの開発」「新素材を用いたアプリケーション開発」と、幅広く事業展開されています。どのように誕生した会社なのでしょうか。
長島 ローディング・オートモービル(現 ローディング・モビリティ)というドイツの会社があり、もともとはカーボンファイバー(CFRP)を使ったクルマの設計・製造をしていました。
長島 洋明|ながしま ひろあきフォワード・エンジニアリング・ジャパン株式会社 代表取締役社長自動車OEMでの14年の経験を経て、2017年に三井物産に入社。出資先である独Forward Engineering GmbHの日本市場におけるマーケティングに従事。2018年に日本支社のフォワード・エンジニアリング・ジャパン株式会社を立ち上げ、代表として自動車・モビリティ関連企業向けにエンジニアリング・コンサルティングサービスを展開
長島 洋明|ながしま ひろあき
フォワード・エンジニアリング・ジャパン株式会社 代表取締役社長
自動車OEMでの14年の経験を経て、2017年に三井物産に入社。出資先である独Forward Engineering GmbHの日本市場におけるマーケティングに従事。2018年に日本支社のフォワード・エンジニアリング・ジャパン株式会社を立ち上げ、代表として自動車・モビリティ関連企業向けにエンジニアリング・コンサルティングサービスを展開
——スポーツカーの設計・製造からスタートしたということでしょうか。
長島 はい。フォワード・エンジニアリングはそこからスピンオフして、CFRPに限らず、素材・設計など、より先進的で将来を見据えた開発をおこなっています。というのも、CFRPは軽量で性能も良いのですが高額です。スポーツカーは軽量化の実現に重きを置いてきましたが、これからの自動車はいかにCO2を減らすかに重点がシフトしています。そのサポートが事業のメインになっています。
——事業紹介の冒頭に「持続可能な製品開発」と謳われているのは、そういう理由なんですね。
長島 CO2排出量の削減は、新しいモビリティづくりをおこなううえで欠かせません。そういった観点から、トッププライオリティの一つとして「持続可能な製品開発」を入れています。
——なるほど。現在、どのような会社からの依頼が多いのでしょうか。
長島 自動車メーカーやそれに付随する部品・材料メーカーが7~8割、残り1~2割が航空宇宙系で、残り1割がその他産業となっています。繊維強化樹脂系の材料だけではなく、鉄やアルミも含めたマルチマテリアルで、いかに付加価値を生み出すかを軸にしています。

自動車で培った技術は他の産業にも応用できますので、幅広い分野でお役に立てると思います。また、各産業で得た知見を相互に応用することで、未来を見据えた開発のサポートをしていければと考えています。

グローバルでの知見を生かし、先進的な開発をサポート

——改めて、簡潔にどんなことをしている会社といえるのでしょうか。
長島 新しいソリューションをつくる会社です。ソリューションには、材料などの素材面、設計面などいろいろなアプローチがあります。現在、どの会社も正解がよくわからないなか、将来に向けてさまざまな開発をおこなっています。

我々はドイツ本社、北米、日本、中国と拠点がありますので、それらグローバルの知見や経験を生かし、さまざまな将来像の仮説を立てながら、将来のモビリティに対していかに付加価値を提供できるかという視点で先進的な開発をサポートしています。
——車体や構造の開発に強みがあるようですが、それこそ自動車メーカーの得意とすることのようにも感じます。
廣田 自動車メーカーは鉄に強く、そこに我々が入りこむ余地はあまり多くはありません。しかし、スピードを求められながら、繊維強化樹脂系の材料やアルミのマルチマテリアル構造の採用を検討する際などは、自社単独で開発するのは難しくなっています。

我々は構造設計のなかでも、最新素材を使いこなしながら設計することを得意としています。そういった場面で、当社の知見が生かされています。
廣田 雄嵩|ひろた ゆたかフォワード・エンジニアリング・ジャパン株式会社 設計エンジニア自動車OEMにて5年間ボディ骨格の設計開発の経験を経て、2024年にFEJに入社。OEMではCNを見据えたEVのボディ開発にも関わり、厳しい軽量化要求など環境に配慮した設計の難しさを痛感。現在はサステナブルな次世代BEV実現に向けた構造アイデア提案・設計開発に従事
廣田 雄嵩|ひろた ゆたか
フォワード・エンジニアリング・ジャパン株式会社 設計エンジニア
自動車OEMにて5年間ボディ骨格の設計開発の経験を経て、2024年にFEJに入社。OEMではCNを見据えたEVのボディ開発にも関わり、厳しい軽量化要求など環境に配慮した設計の難しさを痛感。現在はサステナブルな次世代BEV実現に向けた構造アイデア提案・設計開発に従事
——クライアントには、世界の名だたる自動車メーカーがいらっしゃいます。飛躍するきっかけは何かあったのでしょうか。
長島 まず、昨今の電動化の流れは我々の得意分野とマッチしました。ガソリン車からバッテリーEVへと変わるなかで、車体構造も大きく変化したわけです。また、バッテリーパックのような新しい部品も出てきました。

そういった中で、単純な軽量化のみならず、熱マネージメントはどうするのか、安全性やコストはどうなるのかなど、最適設計のためには材料をうまく使いこなす必要があります。マルチマテリアルを得意とする我々の知見や経験が、そこに生かされています。
——新しい素材に関する知見はもちろん、誰もわからない将来予測など、難しい課題解決が得意なのはなぜでしょうか。
長島 本社がドイツにあることが大きいかと思います。ドイツは比較的新しいことに積極的ですし、新しい素材や技術を量産視点で取り入れるのが非常に早い。日本は慎重に検討しますが、欧州はいいものがあればどんどん使っていきます。そこで得た知見・経験が今に生きています。また最近、中国に拠点を立ち上げました。中国支社との連携により、変化の激しい中国市場の最新技術もタイムリーに取り入れながら設計しています。

さらに、グローバルに拠点を置くことで、いろいろな文化、考え方の違うメンバーが集まっており、それぞれの地域の情報を共有できる体制もあります。そういった複合的な理由から、新しいソリューションを提案することができるのです。
——世界的に見て、競合他社は多いのでしょうか。
長島 欧州や北米には、それなりにあります。我々はそれぞれの市場における技術開発動向やニーズから将来シナリオを予測し、それに基づくソリューション提案をすることにより差別化を図っています。
——三井物産はなぜ、フォワード・エンジニアリングに出資をしたのでしょうか。
長島 カーボンファイバーの製造に関しては、日本が圧倒的に強いという背景があります。当時、フォワード・エンジニアリングはBMW向けにカーボンファイバーを使った部品設計をおこなっており、日本の自動車メーカーも今後使うことが予想されました。

また、各自動車メーカーは車体を軽量化させるだけでなく、リサイクル性が高く、安全性も高いといった難しい命題を両立させなくてはいけません。その点、いろいろな素材を巧みにアレンジする能力のあるフォワード・エンジニアリングには強みがありました。グローバル対応という意味でも、協業することが有効だと考えました。
——三井物産とのシナジーは生かされていますか。
長島 三井物産のグローバルな事業拠点とネットワークを活用し、フォワード・エンジニアリングの技術を世界中に普及させることで強力なシナジーを生み出しています。モビリティの大変革時代において、新しい素材や設計のニーズがますます増えることが予想されます。これからも連携を一層強化して、シナジーを最大限に高めていきたいと考えています。

CO2排出削減コストに見合う付加価値を提案

——最新の素材や最先端の技術と、持続可能な製品づくりは相反する点も多いかと思います。素材開発においても、コンサルティングをおこなっているのでしょうか。
廣田 はい。現在は材料メーカーもCO2排出量を下げるための素材を開発しています。自動車で言えば、天然・バイオ系の材料やリサイクル材料があります。当然、コストなどの課題もありますが、そこにどう付加価値をつけて使っていくかという議論を活発におこなっています。
——今や、CO2排出削減がお題に入っていない仕事は存在しないのでしょうか。
廣田 そうですね。CO2排出削減がベースにあり、それを解決しつつ、どう付加価値を付けていくかの世界になっています。
長島 各国ともに、2050年カーボンニュートラルなどの目標を掲げています。 自動車業界の見解では、今の延長で開発しても達成が難しい。新しいソリューション、付加価値をつけた素材開発や設計をしなければならないという認識です。
——付加価値というのは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。
長島 一例として挙げられるのは、部品統合・機能統合です。これまで、異なるふたつの部品が独立して機能していたとします。そのままCO2削減効果のある素材を使うと、一般的に材料費の分だけ部品のコストが上がってしまいます。そこでふたつの部品を統合して機能も盛り込んだ設計とし、製造工程を削減できれば部品コストを下げられるという考え方です。

幅広い視野でLCAの削減を目指す

——サービス紹介の中に「LCAおよびサスティナブル・コンサルティング」とあります。これはどのような事業なのでしょうか。
中田 自社工程におけるCO2排出量の算定は、多くのお客様が実施されています。しかし、他工程でどれくらい排出しているのかの計算は難しい。そこで当社が計算し、総合的にどんな工夫をすればライフサイクル全体として排出量を下げられるかを提案しています。
中田 侑甫|なかた ゆうすけフォワード・エンジニアリング・ジャパン株式会社 プロジェクトマネージャー2020年3月機械系学科卒業。学生時代は、学生フォーミュラの活動に取り組み、車体の構造変更、CFRP製ウイングの導入等にたずさわる。プロジェクトリーダー・副リーダーとして2年連続で全国大会優勝を達成。2020年4月フォワード・エンジニアリング・ジャパン株式会社に入社。サステナブルな次世代BEVに向けた構造アイデア提案・設計開発をおこなう
中田 侑甫|なかた ゆうすけ
フォワード・エンジニアリング・ジャパン株式会社 プロジェクトマネージャー
2020年3月機械系学科卒業。学生時代は、学生フォーミュラの活動に取り組み、車体の構造変更、CFRP製ウイングの導入等にたずさわる。プロジェクトリーダー・副リーダーとして2年連続で全国大会優勝を達成。2020年4月フォワード・エンジニアリング・ジャパン株式会社に入社。サステナブルな次世代BEVに向けた構造アイデア提案・設計開発をおこなう
※LCAについて詳しく知りたい方は「LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?メリットや事例をご紹介」をご覧ください
——「トップダウンLCA」「ボトムアップLCA」というのはどういうものでしょうか。
中田 「トップダウンLCA」は開発の初期段階での検証になります。詳細な分析は時間を要するので、まずは一番排出量が大きくなる工程から対策を考えていきます。「ボトムアップLCA」は、コンセプトや設計がある程度決まった段階で、ISO認定と同レベルで細かく見ていきます。
——LCAを考慮する際は、リサイクルや廃棄といったライフサイクルの最後をどうするかで大きく変わってきますよね。
中田 そこはとても難しい議論です。最近はリユースやリペアといった選択肢もあるので、どういう設計であれば分解ができ、分別できるのかも考える必要があります。
——御社が得意とするマルチマテリアルにとっては不利になりそうです。
中田 「持続可能な製品開発」を掲げるうえでの理想はモノマテリアルですが、難しい部品もたくさんあります。そのため、例えばマルチマテリアルで機能を満たしたうえで、リサイクルできるように易解体性のある設計をおこなう必要があります。そのような課題に対し、易解体可能な接着剤などの技術開発も素材メーカーとおこなっています。

自動車メーカーと材料メーカーの橋渡し役もおこなう

——「バッテリーパックの開発」とは、どんな事業なのでしょうか。
廣田 バッテリーパックをつくるうえでは、構造の知識や材料の知識が重要になります。材料メーカーは優秀な材料をつくるのが得意で、自動車メーカーは量産に向けた設計が得意です。一方、スピーディに開発するためには、お互いの技術を橋渡しすることが必要になります。
その中で、例えば量産車の分解調査や実際の搭載部品を用いた試験をおこない、設計に反映するなどの開発サポートをおこなっています。
——「新素材を用いたアプリケーション開発」とは、どんな事業ですか。
廣田 材料メーカーは、求められる性能を総合的に満たすような新しい材料を開発しています。しかし、その特性をプレゼンするだけでは自動車メーカーも部品メーカーも使い方のイメージが湧きません。必要とされるのは、ソリューション提案の形で、材料をどの部品にどう使えばどの程度の付加価値を車両に付与できるのか、答えを準備したうえで商談する必要があります。

しかし、そこには設計の知見が必要ですので、材料メーカーだけでおこなうのは難しい。当社が入ることで、使い方はもちろん、コストや重量、CO2排出量まで検討して提案することができます。
——本当に幅広くやられているのですね。新しいサービスは何かありますでしょうか。
長島 先ほどもお話しした通り、最近中国に拠点を立ち上げました。中国は自動車業界において重要なマーケットであるのみならず、技術面においてもリードしています。当社では、その技術を徹底的に調べ、お客様の設計や開発に反映させることを考えています。

例えば、中国の最新バッテリーパックを日本まで調達し、分解して設計の実力を評価しています。また、人為的に電池を爆発させて周辺部品の耐火性能を測るような実験もおこなっています。

画期的なアイデアで 日本のものづくりを元気にしたい

——最後に、この事業を通じて叶えたい夢を教えてください。
中田 クルマと聞いて皆さんが想像するのは、タイヤがあってウィンドウガラスがあってというものだと思います。将来、私たちが考えた設計や構造がモビリティの常識になるようなものをつくっていきたい。そういった優れた設計をしていきたいと思います。
廣田 フォワード・エンジニアリング・ジャパンに入社する以前は、自動車OEMで量産車の設計をおこなっていました。量産車の開発では品質とコスト・重量のバランスが重要ですが、その結果、新たな材料やアイデアはすぐには採用されづらく、そぎ落とされる傾向があります。
しかし、このままでは世界と戦っていくことができません。今後は、従来では選択肢として取れなかった画期的なアイデアや材料を実用化できるような提案をしていきたいと思います。
長島 フォワード・エンジニアリング・ジャパンとしては、自動車のみならず航空宇宙などの分野にもどんどんチャレンジしていきたい。個人的には、日本を元気にする仕事がしたいという想いがあります。
そのためには、我々と仕事をすると楽しいと思ってもらえるよう、新しいことに挑戦しながら日本のものづくりを盛り上げていきたいです。
——本日はありがとうございました。
未来の画期的なソリューションを一緒に創っていきましょう! まずはお気軽にご相談ください

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