循環型社会とは?3Rの基本と世界・日本・企業の取り組み事例、個人にできることを紹介
限りある資源を有効に使い、ごみの発生を最小限に抑える「循環型社会」が重要視されています。その鍵となるのが「3R」に代表される取り組みです。この記事では、循環型社会の定義や世界・日本・企業の取り組み事例を紹介。また循環型社会を実現するために個人でできることも解説します。
循環型社会とは?
循環型社会とは、限りある資源を効率よく使い、繰り返し活用することで、環境への負荷を最小限に抑えることを目指した社会のあり方です。注目されている背景には、大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした従来の経済活動によって、資源の枯渇やごみ処理の問題が深刻化している現状があります。
こうした課題に対応するため、日本では「循環型社会形成推進基本法」が制定されました。廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再資源化(リサイクル)といった「3R」の考え方を基本とし、最終的にはリサイクルできなかったものも含め、適正な方法で処分することが求められます。
この循環型の考え方は、環境への配慮を軸とした持続可能な社会の実現にもつながります。そのためには、私たち一人ひとりの意識を変えるとともに、社会全体の仕組みを見直すことも重要です。現在では、使い捨て型のライフスタイルから脱却し、資源の循環と環境保全を両立させる取り組みが、国内外で本格的に進められています。
出典:環境省「循環型社会への新たな挑戦」
循環型社会形成推進基本法とは
循環型社会形成推進基本法は、ごみの発生をできるだけ減らし、資源を無駄なく使い続ける社会をつくるための基本的な枠組みを示した法律です。2001年に施行され、廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再生利用(リサイクル)、そして最終的な適正処分という一連の流れに「優先順位」を設けている点が特徴です。
この法律では、使い終えた製品や副産物などの中で再び活用できるものを「循環資源」と定義し、これを廃棄物として扱うのではなく、積極的に循環利用することの重要性が強調されています。
国や自治体、企業、市民それぞれに具体的な役割が与えられ、事業者や消費者には「排出者責任」や「拡大生産者責任」といった考え方が求められています。
出典:
環境省「循環型社会形成推進基本法の概要」
循環型社会の基本「3R」と広がる「5R」の取り組み
循環型社会を実現するために重要とされているのが、①Reduce(リデュース=発生抑制)、②Reuse(リユース=再使用)、③Recycle(リサイクル=再資源化)からなる「3R」です。これらは①→②→③の順に優先度が高く設定されています。
近年では、Refuse(リフューズ=不要なものを断る)、Repair(リペア=修理して使う)といった取り組みを加えた「5R」の考え方も広まりつつあります。
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項目 |
定義 |
具体例 |
5R |
3R |
Reduce
(リデュース)
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資源の消費やごみの発生を もとから減らす
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・マイバッグ・マイボトルを使う
・簡易包装の製品を選ぶ
・レンタルやシェアを活用する
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Reuse
(リユース)
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繰り返し使うことで、 ごみを減らす
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・フリマを活用する
・リターナブル容器を利用する
・ガレージセールで再活用する
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Recycle (リサイクル)
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資源として
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・ごみを正しく分別する
・再生紙などのリサイクル製品を使う
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Refuse
(リフューズ)
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ごみになるものを買わない・ 受け取らない
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・レジ袋や使い捨て容器を断る ・不要なパンフレットを受け取らない
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Repair (リペア)
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壊れたものを
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・家具や家電を修理して使い続ける ・壊れた衣類を直して着る
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循環型社会が必要とされる背景
循環型社会が求められている背景には、世界的なごみの増加によって地球環境への負荷が深刻化している現状があります。世界銀行によると、都市ごみの排出量は2016年の約20.1億トンから、2050年には約34億トンに達すると予測されています。
こうした膨大なごみの処理には大量のエネルギーが必要とされ、焼却時には二酸化炭素が排出されるため、地球温暖化の一因にもなっています。また廃棄物の輸送や埋立処分も環境への負荷が少なくありません。
さらに、海洋に流出したプラスチックごみは、生態系を脅かし、鳥類や魚類など多くの生物に深刻な影響を及ぼしています。
環境省のデータによると、日本では最終処分量が年々減少している一方で、小型電子機器に含まれるレアメタルなどの金属資源は、適正な再資源化が必要です。レアメタルは生活を支える重要資源でありながら製品に微量かつ複雑に含まれるため、回収や再利用が難しい課題があります。
限りある天然資源を廃棄ではなく循環させて使い続けることは、環境保全だけでなく経済の安定にも直結します。気候変動や生態系の危機、資源の浪費を防ぐために、使い捨て型の社会から脱却し、資源を有効活用する循環型社会への移行が求められています。
出典:
世界銀行「What a Waste 2.0」
環境省「令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書:第1節 廃棄物等の発生、循環的な利用及び処分の現状」
環境省「令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書:第4節 ベースメタルやレアメタル等の金属」
環境省「【特集】3R徹底宣言」
循環型社会の取り組み事例【世界】
循環型社会の実現に向けて、世界各国ではさまざまな政策や連携が進められています。EUでは大規模な戦略のもと制度整備が進み、アジアでは地域協力による枠組みづくりが広がっています。ここでは、欧州とアジアの取り組みを紹介します。
EU:欧州グリーンディール
EUでは、循環型社会への移行を成長戦略の中心に位置づけた「欧州グリーン・ディール」を2019年に発表しました。グリーン・ディールは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目標に掲げており、その一環として資源の効率的な利用や廃棄物の削減を推進する「循環経済行動計画」も盛り込まれています。
あわせて、「経済成長と資源利用の切り離し」や「どの地域を取り残さず気候中立を目指す」といった方針も掲げられ、持続可能な経済モデルへの転換が図られています。
さらにEUは2022年、「包装・包装廃棄物規則案(PPWR)」を提案し、使い捨て包装の削減と再利用の義務化に向けた動きを強化しました。この中には、飲料容器へのデポジット制度、再利用可能な包装設計の義務化、素材情報を示すQRコードの表示義務などが含まれており、段階的な導入が予定されています。
アジア:アジア太平洋3R推進フォーラム
循環型社会の実現には、国際的な連携と情報共有が不可欠です。アジア太平洋3R推進フォーラムは、アジア地域において環境保全と経済成長の両立を図りながら、循環型社会の構築を目指す国際的な取り組みとして、日本の提案により2009年に設立されました。フォーラムには各国政府をはじめ、国際機関、民間企業など多様な関係者が参加しています。
このフォーラムでは、各国における3R政策の実施支援や、対話の促進、情報の共有、ネットワークの構築が進められてきました。2013年の第4回会合では、今後10年間の行動指針として「ハノイ3R宣言」が採択され、地域全体の取り組みの方向性が示されました。
2025年3月には、「ジャイプール宣言」が採択され、2035年までの循環経済に関する新たな目標が設定されました。現在は日本、中国、韓国、オーストラリアを含む39か国が参加し、持続可能な資源循環に向けた国際的な協力が進められています。
出典:
環境省「アジア太平洋3R推進フォーラム」
循環型社会の取り組み事例【日本】
日本でも、循環型社会の実現に向けて法律の整備や資源活用の仕組みづくりが進められています。プラスチックの資源循環を促す新たな法制度や、都市に眠る有用資源を再活用する取り組みなど、具体的な事例を紹介します。
プラスチック資源循環促進法の施行
プラスチックの大量消費と廃棄は、地球環境への大きな負荷の一因となっています。こうした課題に対応するため、2022年4月に「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。この法律は、プラスチックの設計から廃棄に至るまでのライフサイクル全体で3R+Renewable(再生可能資源)の活用を推進するものです。
法施行により、製造・販売事業者や排出者が自主回収や再資源化の計画づくりを求められ、市町村による再商品化計画が支援されています。
2024年3月時点では、全国各地で複数の再資源化計画および再商品化計画が認定されており、官民連携による具体的な資源循環の取り組みが進展しています。この法律は、循環型社会の形成を後押しするとともに、地球温暖化の防止や海洋汚染の抑制にもつながる重要な一歩です。
出典:
環境省「環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書:第4節 循環経済(サーキュラーエコノミー)」
都市鉱山の活用
金属資源は枯渇リスクを抱えており、日本政府は循環型社会の実現に向けて、限りある金属資源の有効活用を積極的に推進しています。その中でも注目されているのが、「都市鉱山」という概念です。これは、使用済みの家電や電子機器に含まれる、リサイクルされていない金属資源が膨大に存在することを指します。
都市鉱山の活用は、資源の循環と廃棄物の削減を同時に実現するための重要な取り組みと位置づけられています。2013年には小型家電リサイクル法が施行され、家庭から排出されるスマートフォンやデジタルカメラなどの回収と再資源化が本格的に進められてきました。
また、東京2020五輪では、回収した小型家電から抽出した金属を用いてメダルが製作されるなど、都市鉱山の活用が広く注目を集めました。
環境省は2030年までに金属リサイクルの処理量の倍増を目指しており、2024年6月には「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」が施行され、分離・回収技術高度化や、再資源化工程の効率を高める設備導入の促進が進められています。2025年度には自治体間の連携を強化するための「資源循環自治体フォーラム」の創設を予定しています。
循環経済パートナーシップ
循環型社会の実現には、企業や団体を巻き込んだ取り組みの広がりが不可欠です。こうした背景のもと2021年3月2日に設立されたのが、「循環経済パートナーシップ(J4CE)」です。この枠組みは、官民が連携して企業や団体の理解を深め、循環経済への取り組みを加速させることを目的としています。
J4CEは、環境省・経済産業省・経団連によって創設され、事務局は地球環境戦略研究機関(IGES)が務めています。活動内容としては、国内外への先進事例の発信、企業間の情報共有、定期会合を通じた対話の場の提供などが挙げられます。
2025年3月末時点では、企業196社、団体21が参加しており、日本における循環型社会づくりを推進する重要な枠組みとして注目されています。
循環型社会の取り組み事例【国内企業】
循環型社会の実現に向けて、企業も重要な役割を担っています。衣料やプラスチックといった身近な分野で、リサイクルや再資源化を推進する企業の取り組みを紹介します。
株式会社ユニクロ
株式会社ユニクロ(ファーストリテイリング)は、衣類の回収と再資源化を通じて、循環型社会の実現に貢献しています。2020年から始まった「RE.UNIQLO」では、不要になったダウン製品を店舗で回収し、再生ダウンを使用した新たな商品を展開しています。
さらに、回収された衣類の一部は、難民や被災地への寄贈に活用されており、着用が難しい衣類については、防音材や燃料として再利用されています。
こうした取り組みは、廃棄物の削減と資源の循環を両立する実践的なモデルとして注目されています。
ヴェオリア・ジャパン合同会社
ヴェオリア・ジャパン合同会社は、三井物産、セブン&アイ・ホールディングスと共同でリサイクル事業を展開しています。3社が設立した株式会社サーキュラーペット(CPET)は、岡山県にPETボトルの再資源化を行う新工場を建設し、2024年6月から稼働しています。
この施設の特徴は、これまでリサイクルが難しかった低グレードの使用済みPETボトルも処理可能で、飲料用途に適した高品質な再生樹脂を製造できる点です。
製造された再生材は、セブン&アイのオリジナル商品の容器などにも活用されており、循環型経済の実現に向けた先進的な取り組みとして注目されています。
リサイクルプラスチック(PET樹脂) /サーキュラーペット
三井物産は、お客様のPETボトルをリサイクルして再度ペットボトルを製造したいというニーズに、株式会社サーキュラーペット社をご紹介しています。
循環型社会の課題
循環型社会の実現に向けた取り組みは着実に進められているものの、依然として多くの課題が残されています。2022年のごみ総排出量は3,897万トンと減少傾向にある一方で、リサイクル率は2013年の20.6%から19.5%へと低下し、近年は頭打ちの状況が続いています。
とくにプラスチック資源に関しては、リサイクルの過程で大量のエネルギーを必要とすることがあり、再生時の品質劣化や、再利用先のニーズとのミスマッチといった課題も表面化しています。
こうした背景から、資源の再利用だけにとどまらず、製品の設計段階からごみの発生を抑える視点が不可欠です。
出典:
環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和5年度)について 」
ケミカルリサイクルとは?主な手法や注目される背景、メリット・デメリットも解説
ケミカルリサイクルは、廃棄された資源を化学的に分解し、新たな原料として再利用する方法。本記事では、ケミカルリサイクルの手法や他のリサイクル方法との違い、メリット・デメリットを紹介します。
循環型社会を実現するために個人ができること
循環型社会の実現には、何よりもまず「ごみを出さない」という意識を持つことが第一歩です。環境省が提唱する
「3R徹底宣言」を参考に、日常生活の中で無理なくできることから始めてみましょう。
リサイクルに頼る前に、以下のような行動を意識することで、ごみの発生そのものを減らすことができます。小さな工夫の積み重ねが、持続可能な社会につながっていきます。
■なるべく資源を使わない製品を選ぶ
─ 詰め替え用や簡易包装の商品を選ぶなど。
■本当に必要なものだけを手に入れる
─ 買わずにレンタルやリースを活用する。
■使えるものはすぐに捨てず、できるだけ長く使う
─ フリマアプリやリサイクルショップを上手に利用。
循環型社会の実現には一人ひとりの行動が重要
循環型社会の実現には、「リデュース」「リユース」「リサイクル」の3Rの実践が欠かせません。私たち一人ひとりの意識と行動の積み重ねが、資源の循環を促し、持続可能な社会の実現につながります。まずは日々の暮らしから見直し、できることから始めてみましょう。
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