マテリアルリサイクルとは?種類や具体例、解決すべき課題を詳しく解説 - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

ソリューション資源循環

最終更新:2024.10.28

マテリアルリサイクルとは?種類や具体例、解決すべき課題を詳しく解説

マテリアルリサイクルは、廃棄物を新しい製品の原料として再利用する環境負荷の低いリサイクル方法です。エネルギー消費やCO2の排出量が少なく、資源の効率的な再利用が可能な点で注目されています。しかし、マテリアルリサイクルの割合が伸び悩んでいるのが現状です。この記事では、マテリアルリサイクルの種類や具体例、直面する課題について詳しく解説します。

リサイクルの3つの種類

リサイクルマークの紙を持った人
リサイクルとは、使い終わった廃棄物をそのまま捨てずに資源として再利用し、新しい製品に生まれ変わらせること。リサイクルは大きく3種類に分類できます。まずは、リサイクルの種類についてみていきましょう。    

1. マテリアルリサイクル

マテリアルリサイクルとは、廃棄物を新しい製品の原料として再利用する方法です。「マテリアル」は英語で「物」を意味し、物から物へのリサイクルをすることを指します。

例えば、廃プラスチックを溶かして原料に戻し、新たなプラスチック製品を作ることが可能です。再生されたプラスチックは、文具やペットボトルのような小さなものから、公園の設備といった大規模なものまで、幅広く利用されています。

マテリアルリサイクルは再利用ができるだけでなく、リサイクル時のエネルギー消費が少ない点も大きなメリットです。2022年には約22%にあたる180万トンの廃プラスチックが、マテリアルリサイクルによって処理されました。

2.ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルとは、廃棄物を化学的に分解し、新たな物質を作り出すリサイクル方法です。例えば、廃プラスチックを溶解して合成ガス(例: 水素、二酸化炭素)を生成し、そのガスを原料としてアンモニアや炭酸ガスといった新しい製品を作ることができます。

2022年には、廃プラスチックの約3%にあたる28万トンがケミカルリサイクルによって処理されました。この方法は、高品質な再生材を製造できる一方で、廃材を溶解する際に多くのエネルギーを消費するという課題もあります。

3.サーマルリサイクル

サーマルリサイクルとは、廃棄物を焼却する際に発生する「熱」をエネルギーとして再利用する方法。例えば、リサイクルが難しい汚れたプラスチック容器や空き箱などを燃焼させ、その熱エネルギーを温水プールや発電などに活用しています。

この方法は、燃焼する際に大量のCO2や有害な物質が排出されるというデメリットがあります。2022年には廃プラスチックの63%(510万トン)がサーマルリサイクルによって処理されました。CO2排出量削減のためには、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの導入を増やす必要があります。

参考:一般社団法人プラスチック循環利用境界「プラスチックリサイクルの基礎知識」    

マテリアルリサイクルの2つの種類

リサイクルマークの段ボール箱に入れられたペットボトル
マテリアルリサイクルには「水平リサイクル(レベルマテリアルリサイクル)」と「カスケードリサイクル(ダウンマテリアルリサイクル)」の2種類に分けられます。どのような特徴があるのか、詳しく解説します。

1.水平リサイクル(レベルマテリアルリサイクル)

水平リサイクル(レベルマテリアルリサイクル)とは、廃棄物を同じ製品の原料として再利用するリサイクル方法です。

例としては、使用済みのペットボトルを再度ペットボトルに、古紙を再生紙にリサイクルすることが挙げられます。水平リサイクルでは、原油から製造するよりもCO2排出量を抑えることが可能です。

2.カスケードリサイクル(ダウンマテリアルリサイクル)

カスケードリサイクル(ダウンマテリアルリサイクル)は、廃棄物が同じ製品の原料としての品質を満たさない場合、品質レベルを一段階下げた製品の原料としてリサイクルする方法。

例として、ペットボトルを衣類などにリサイクルする方法があります。カスケードリサイクルは水平リサイクルに比べ、手間が少なく容易に行えるのがメリットです。

マテリアルリサイクルの対象になる廃棄物の具体例

フレーク状に粉砕されたペットボトル
マテリアルリサイクルの方法でリサイクルされる廃棄物にはさまざまなものがあります。ここでは、より具体的な例を紹介します。

プラスチック

日本では年間約1,000万トンのプラスチックが生産されています。プラスチックリサイクルの中で最も広く行われているのは、使用済みペットボトルを再びペットボトルとして再利用する水平リサイクルです。また、カスケードリサイクルによって、使用済みプラスチックが衣類や食品用トレー、卵パックなどに再利用されることもあります。

回収されたプラスチックは、まず洗浄して異物を除去し、次に粉砕してフレーク状にし、さらに乾燥させて再生原料が作られます。

このように、プラスチックのリサイクルの中で、さまざまな種類のプラスチックを新たな製品の原料として再利用できるマテリアルリサイクルは、重要な手法となっています。

ビニール

農業用ビニールハウスやパイプに使用されるポリ塩化ビニールは、異物混入の影響を受けにくいため、マテリアルリサイクルが広く行われています。パイプは水平リサイクルによって、同じ種類の製品として再生されます。またビニールはカスケードリサイクルにより、床材などに再利用が可能です。

金属

金属製品のリサイクルが最も広く知られているのがアルミ缶。廃棄されたアルミ缶のフィルムや塗料を取り除いた後、高温で溶かして再生地金にします。この再生地金からは、新たなアルミ缶や自動車部品などが製造されています。

アルミ缶リサイクル協会によれば、アルミ缶のリサイクルでは原料のボーキサイトから新たに製造するよりも、エネルギーを97%節約することが可能です。また、廃棄された電気製品や自動車などから取り出された金属も再利用されています。

2022年度の金属のリサイクル率は93.9%にも達し、リサイクルが進んでいる廃棄物の1つと言えるでしょう。

木くずやがれき

建設現場や解体現場などで発生する木くずやがれきも、マテリアルリサイクルの対象です。木くずは細かく破砕され、パーティクルボードや合板などの建材、家具の素材として再利用されています。粉砕したがれきは新たな建築資材として再利用が進んでいます。

マテリアルリサイクルの解決すべき課題

分別用のリサイクルボックス
他のリサイクル方法よりも、CO2排出量が少ないマテリアルリサイクルですが、リサイクルできるプラスチックの量やごみの分別の問題、品質の低下といった課題があります。これらの課題を解決する技術の開発が求められています。

徹底した分別をする必要がある

マテリアルリサイクルを効果的に実施するためには、徹底した分別が不可欠です。廃棄物から異物を除去し、細かく分別することで、リサイクルの質と効率を大幅に向上させることができます。分別が不十分な場合、リサイクル材料の質が低くなり、利用範囲が制限されます。

特に、食用油脂や香辛料を含む容器類は洗浄に手間がかかり、リサイクルが困難です。

リサイクルの繰り返しにより品質が劣化する

マテリアルリサイクルでは、リサイクルを繰り返すことで品質の劣化が課題となっています。ペットボトルの水平リサイクルでは、加熱によってプラスチックの分子が切断されるため、プラスチックの品質が低下。これにより新たな製品としての品質も損なわれます。最終的には、カスケードリサイクルでしか再利用できなくなります。

マテリアルリサイクルできるプラスチックが限られる

プラスチックのすべてがマテリアルリサイクルできるわけではありません。マテリアルリサイクルの量が少なく、再利用が進んでいないことが大きな課題となっています。ヨーロッパなどの諸外国に比べ、日本ではまだ十分に普及しているとは言えません。

2022年の廃プラスチック総排出量は823万トンで、そのうち717万トンが再利用されました。しかし、マテリアルリサイクルされたのは22%にあたる180万トン。日本で生産されるプラスチックの半分近くはポリプロピレン(PP)とポリエチレンであり、特にPPは着色料や添加剤が多いため、リサイクル後も色や臭いが残り、利用できる製品が限定されるといった課題があります。

マテリアルリサイクルできないPPは、燃料として利用されるサーマルリサイクルで処理されますが、これによりCO2が排出されます。また、ケミカルリサイクルは製造過程でエネルギーを消費し、マテリアルリサイクルよりも多くのCO2を排出するため、環境負荷が高くなります。そのため、マテリアルリサイクルによる処理を増やしていくことが望まれています。

マテリアルリサイクルで廃棄物を有用な資源へ

リサイクルにより再生された製品
廃棄物を原料として新しい製品を作るマテリアルリサイクルは、他のリサイクル方法よりもCO2排出量が抑えられるメリットがあります。リサイクルできるプラスチックの限界やリサイクルの繰り返しによる品質の劣化といった課題もありますが、2024年8月日本政府は廃棄物削減やリサイクル推進を目指す「第五次循環型社会形成推進基本計画」を閣議決定しました。

この計画は、資源を有効活用し、成長の好循環を生むサーキュラーエコノミーへの移行を目指しています。マテリアルリサイクルの推進により、これらの課題を解決できるようなリサイクル技術の開発も進んで資源循環が活性化し、持続可能な未来が期待されます。

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