Green&Circular 脱炭素ソリューション

ソリューション資源循環

最終更新:2023.02.06

アルミ業界でサーキュラーエコノミーを実現

非鉄金属製品、原料、スクラップの国内外販売を通じて、持続可能な社会の構築を目指す三井物産メタルズ。主力事業であるアルミ分野において、スクラップ・再生地金のアルミ原料調達からアルミ製品販売に至るまで、バリューチェーン全体で取り組む環境負荷の軽減について話を聞きました。

我々の生活には欠かすことのできないアルミニウム(以下、アルミ)は、アルミ新地金を生産する場合に比べてわずかな電力エネルギーで再生可能であり、省エネルギーに貢献するリサイクルに適した金属として知られています。低炭素化やサーキュラーエコノミーに注目が集まっている昨今、三井物産メタルズはアルミバリューチェーンのなかで、どのように循環型社会に貢献しているのでしょうか。担当者に話を聞きました。

アルミ新地金と再生地金、その特徴と違い

――アルミ新地金と再生地金、それぞれの特徴を教えてください。
 天然地下資源のボーキサイトを原料とする新地金は、アルミ純度99.7%以上と不純物がほとんどないため、メーカー等が求める品質に調整しやすいのがメリットです。しかし、生産時に膨大な電力を必要とします。
一方、再生地金は使用済みのアルミを溶かして作るリサイクル地金で、生産時の消費電力も新地金の3%程度と少なく、CO2を削減できるメリットがあります。また、再生地金はアルミ以外の含有金属成分がJIS規格等で定められており、製品規格や強度に必要な成分が既に含まれているので、再生地金には新たに必要金属成分の添加が少なくて済むというコスト削減のメリットもあります。
三井物産メタルズ株式会社 軽金属原料部 東京営業室 舘 泰志。2015年に三井物産入社。金属資源本部石炭部、海外駐在を経て、2022年5月に三井物産メタルズに出向。アルミ再生地金の物流を担当。「リサイクル意識が世界的に高まる中、お客様やエンドユーザーの声をつなぐのが我々の役割です」
――新地金でないと作れない製品にはどのようなものがありますか?
丸山 アルミ箔といわれる製品には、アルミ純度の高い新地金が使われます。コンデンサーやリチウムイオン電池、医薬品の包装、家庭用クッキングホイルなどに使われるアルミ箔は、幅広い分野で私たちの生活を支えています。それらを再生地金で作ることも可能かも知れませんが、再生地金には不純物(添加金属)が含まれており、製造効率の理由により最初から新地金が用いられることがほとんどです。
三井物産メタルズ株式会社 軽金属原料部 原料室 丸山 耕平。2019年キャリア入社。アルミを中心とする非鉄金属スクラップに幅広く携わってきた。「アルミスクラップには図面や型番がなく、どこから買うのもどこに売るのも自由です。自分のやり方次第でビジネスが生まれるのが面白いところです」

アルミ製品の取扱いにおいても環境負荷低減を視野に

――アルミ製品の輸入販売においては、環境負荷の低減にどう取り組んでいるのでしょうか?
 環境問題に積極的に取り組むサプライヤーとの取引を重視しています。具体的には、環境規制に対応している企業、環境ビジョンを持つ企業、水力発電などの自然エネルギーで製造されるアルミ新地金「グリーンアルミ」に力を入れている企業、再生地金の利用を促進する企業などです。
また、メーカーと共同でアルミ板の軽量化にも取り組んでいます。軽量化はコスト削減に繋がるのみならず、製造や輸送時の環境負荷低減にも繋がり、CO2削減に貢献することができます。
三井物産メタルズ株式会社 アルミ製品部 東日本営業室 李 敏玉。2010年入社。主に中国からのアルミ板製品の輸入を手掛けてきた。「資源が乏しい日本への供給を支える仕事で、非常に大きなやりがいを感じています」
――アルミ業界における近年の動向を教えてください。
丸山 低炭素社会の実現に向け、製品のリサイクル率を高めたいアルミ製品メーカーが増えています。これまでも、価格的な理由で一部にアルミスクラップを利用するメーカーはありましたが、その使用率を高めていくと、新地金よりもコストがかかる場合があります。それでも「コストが高くなってもいいから、新地金使用率を下げ、スクラップの割合を増やしたい」というご意見を伺う機会も増え、環境意識の高まりを日々感じています。
 飲料缶メーカーでも、将来的にはリサイクル率を増やした原料を使いたいという問い合わせが増えており、低炭素化への意識の高まりを感じます。
――世界的に見て日本のアルミ関連産業はどのような状況にあるのでしょうか?
丸山 1970年代の2度のオイルショック以降、高騰する電力コストなどを背景に国内のアルミ新地金製錬業は衰退し、現在ではすべての新地金を海外から輸入しています。一方、アルミ再生地金は世界と伍する技術力や競争力があります。その理由として、再生地金を製造するための電力は、新地金に比べてわずか3%程度であること、日本はアルミスクラップを資源循環させるだけの分別回収システムが確立されていることなどが挙げられます。アルミ再生地金は環境意識の高まりもあり、さらに注目・促進されていくと思います。

社内連携でバリューチェーンを結び、顧客に新たなマーケットを提案

――三井物産メタルズが得意とするアルミ製品にはどのようなものがあるのでしょうか?
上野 ひとつは、窓サッシなどで使われる「アルミ押出形材」です。人目に触れるアルミ製品は、表面品質(見た目の良さ)を求めて、アルミ純度の高い新地金を求める傾向にあります。これに対し、適度にアルミスクラップを混合し、一定の表面品質を維持しつつも、「環境に配慮しながら製品価格も下げる」という観点から、製造技術の可能範囲でアルミスクラップ比率を上げた製品作りをメーカーに提案しています。
――それは素晴らしい試みですね。
上野 しかし、アルミスクラップ比率を上げると、アルミ表面に筋や気泡が発生し、製品不良率が上がる傾向にあります。強度に問題はなく、外観だけの問題ですが、窓サッシのような一般消費者向け製品では敬遠されがちです。その点を踏まえながら、環境価値とコストメリットを追求し、最適なバランスを探っています。
三井物産メタルズ株式会社 アルミ製品部 営業・業務室 上野 真理。2012年入社。アルミ押出形材の国内販売を担当している。「幅広い業界のお客様とお付き合いさせていただくことができ、そこで得た情報をお客様に提供できるのも、商社ならではのやりがいだと思います」
丸山 そこで現在は、工事現場で使うアルミ足場板のような、表面品質よりコストや製品強度を重視・優先する製品用途でのアルミスクラップ利用の拡大も試みています。サプライヤー側では、一部製品のために原料比率を変えることを「製造管理上の大きな負担」として敬遠する部分もあります。その場合は、環境価値を重視し、真摯に取り組む海外のメーカーと組むこともあります。このように、スクラップ材の利用用途を広く提案すると同時に、柔軟にサプライヤーを選定できるのは、国内外のさまざまな販売先および仕入先と取引している弊社の強みといえます。
――臨機応変に仕入先と販売先をマッチングさせるためには、社内の連携が重要になりますね。
上野 はい。社内ではスクラップや再生地金を扱う軽金属原料部とアルミ製品部で密に情報共有をおこない、連携しています。また、三井物産のネットワークを活用して海外取引先を開拓するなど、グループ全体でのネットワークが有効に機能しています。

リサイクル比率を上げたいお客様の要望に応えていく

――軽金属原料部の業務について教えてください。
 軽金属原料部では大きく2つの事業を推進展開しています。ひとつは、スクラップ由来の再生地金を国内外から調達し、国内メーカーへ販売しています。もうひとつは、工場や市中から発生するアルミスクラップを買い取り、再溶解する再生地金メーカー等へ販売しています。
――アルミの「回収」はどのようにおこなわれるのでしょうか?
丸山 例えば私たち消費者がアルミ缶を資源ごみとして分別して捨てるように、アルミスクラップは自治体や民間企業を通じて全国の至る場所で分別回収されています。回収・選別と輸送効率化を担うスクラップ業者は、アルミ缶は缶、板は板、サッシはサッシというようにきれいに選別したうえでパッキングし、メーカーに販売しています。
 日本では、工場からNG品として出されるアルミスクラップだけでなく、施設や家庭から出るアルミスクラップでも、単一のアルミ品種ごとに分別回収して処理するシステムが進んでおり、日本は世界でも類を見ないリサイクル先進国です。特にアルミ缶のリサイクル率は96.6%と極めて高く成熟しています。

守備範囲の広い三井物産メタルズだから多様なニーズに応えられる

――三井物産メタルズの強みはどこにあるのでしょうか?
丸山 それぞれのアルミ商材で、多くの仕入先、販売先、協力企業と信頼関係を築いている点が強みの一つです。日本だけでなく、世界中で取引をおこなっており、その市場動向を把握しています。国内外の相場や情報を基に、国内で回収したアルミスクラップを海外へ輸出するなど、アルミ資源リサイクルをグローバルに展開しています。
 スクラップの回収や再生地金の製造など、アルミバリューチェーンの一部で事業をおこなう会社は多くありますが、当社ほどアルミ商材を幅広く扱い、そのバリューチェーンに総合的に関わっている企業は少ないと思います。そのため、幅広いネットワークを活用することができ、お客様へ多様な価値提供をおこなうことができます。
――アルミ事業における今後の展望をお聞かせください。
丸山 さまざまな課題を抱えるお客様に向け、当社のネットワークや総合力を活かした最適なソリューションを提供していきたいと思います。また、サーキュラーエコノミーを中心とした環境問題に関する我々の知見を活かすことで、脱炭素社会の実現に向けた「未来への仕組み作り」を推進していきたいと考えています。
――本日はありがとうございました。

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