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コラム

最終更新:2023.03.10

カーボンニュートラルとは?実現の必要性や取り組みを解説

最近、「カーボンニュートラル」という用語をニュースやビジネシーンで耳にする機会が増えてきました。カーボンニュートラルとは何を意味し、その実現はなぜ必要とされるのでしょうか?

この記事では、カーボンニュートラルの目的や、実現のための取り組みを進める企業事例を解説します。

カーボンニュートラルとは?なぜ必要なのか

カーボンニュートラルとは、GHG(Greenhouse gas:温室効果ガス)の排出量と吸収量が均衡し、差し引きゼロになっている状態を表します。

「カーボン」は温室効果ガスに含まれる炭素を、「ニュートラル」は中立の状態、すなわちプラスマイナスゼロの状態を表します。

地球温暖化の主な原因は、大気中に蓄積されるGHGであり、中でもCO2(二酸化炭素)が最も地球温暖化に寄与していることが分かっています。カーボンニュートラルとは、GHGの排出量と吸収量を差し引きゼロにすることで、大気中のGHGの蓄積を増やさないようにし、地球温暖化を抑止しようとする考え方です。

カーボンオフセットとの違い

カーボンオフセットとは、CO2を含むGHGの排出量を減らす努力をしたうえで、削減しきれずに排出されるGHGを、植林などのCO2吸収活動によって埋め合わせをする考え方です。

カーボンニュートラルがGHGの排出量と吸収量が差し引きゼロの「状態」であるのに対し、カーボンオフセットは、差し引きをする「活動」を表しています。

また、カーボンオフセットを行う方法の一つに「カーボンクレジット」取引がありますが、これはGHGが削減された分を、株や通貨のような有価証券にして取引ができるようにしたものです。

カーボンオフセットに関する詳しい内容は、「カーボン・オフセットとは?必要性から企業の取り組み事例までを紹介」の記事を、カーボンクレジットについては「J-クレジット制度とは?メリットや価格の相場をわかりやすく解説」の記事をご覧ください。

2050年カーボンニュートラル社会の実現のために

過去数十年、気候変動や環境汚染を防止するため、様々な国際条約や協定が作られてきました。それらは明確な目標や法的拘束力に乏しいものだったのですが、2015年に開催したCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締結国会議)では、具体的目標やルールを明記した「パリ条約」が締結されています。

ここでは「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」という目的が明示されました。

各国がこの目的を共有し、日本では2020年に、菅義偉首相が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。

2050年に向けた日本の方針

「2050年カーボンニュートラル」は、遠大な目標であり、ロードマップや重点分野が定められています。事業者はこのようなロードマップを参考にし、歩調を合わせることが必要となっていくでしょう。

例えば、政府は「地域の活性化」と「脱炭素」の実現を同時に達成する事業への公共融資を強化しています。「地域脱炭素ロードマップ」と呼ばれる本事業は、2050年カーボンニュートラルに向けた政府事業の一環です。

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを実施している企業事例

カーボンニュートラル実現に向けて、国内外で数多くの取り組みが行われています。また、2050年に向けて計画されている事例も豊富です。

以下では、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みについて、海外と国内の企業事例を紹介します。

海外の事例

海外で取り組まれているカーボンニュートラル実現に向けた事例は次の通りです。

パタゴニア 環境再生型有機農業

アウトドア用品を製造販売するパタゴニアは、「故郷である地球を救う」というミッションを掲げています。パタゴニアが実施するカーボンニュートラル実現に向けた取り組みは、環境再生型有機農業です。

パタゴニアが取り組む農業では、有機肥料の使用などにより、地中の根や微生物による二酸化炭素の固定効果を高めています。2025年までにカーボンニュートラルな体系を実現することがパタゴニアの目標です。

ダイムラー 燃料電池自動車

ドイツの代表的な自動車メーカーであるダイムラーと関連会社は、燃料電池自動車の開発に取り組んでいます。2020年9月にダイムラー・トラックが発表した大型FCVトラックは、カーボンニュートラル実現に向けた製品の1つです。

ダイムラー・トラックの大型FCVトラックは、長距離輸送が可能な燃料電池自動車で、1,000キロメートル以上の走行に向いています。2023年にテスト走行が始まり、2020年代の後半には、量産が開始される予定です。

ロンドン イズリントン地区 地下鉄排熱の利用

ロンドンの北部にあるイズリントン地区では、カーボンニュートラルの実現に向けて地下鉄排熱の利用が進められています。

大ロンドン庁の推定によれば、地下鉄の運営に伴う排熱は、ロンドンにおける暖房需要の約4割に相当するエネルギー量です。地下鉄の排熱を家庭や企業の暖房に活用することで、使用電力の削減効果が期待されます。

国内の事例

国内で取り組んでいる、カーボンニュートラル実現に向けた事例は、次の通りです。

大崎クールジェン 石炭火力試験発電所

中国電力とJパワーの共同出資により設立された大崎クールジェンは、発電所や工場から排出されるCO2を再利用する取り組みを行っています。

排出したCO2の再利用は「カーボンリサイクル」という手法です。日本政府は、2019年にカーボンリサイクル室を設置し、予算を計上するなど技術開発に注力しています。

石炭火力試験発電所のプロジェクトが成功した場合、従来の石炭火力発電と比較して約9割のCO2を削減できる見込みです。

三菱重工エンジニアリング CO2回収装置の開発

三菱重工エンジニアリングでは、CO2を回収し大気中への排出量を削減するための装置を開発しています。三菱重工エンジニアリングは、アメリカに世界最大規模のCO2回収設備を建設し、排ガスからのCO2回収を実現しました。

阪急電鉄 カーボンニュートラル・ステーション

阪急電鉄の摂津市駅は、二酸化炭素排出量の削減と排出権取引制度の活用により、カーボンニュートラルを実現しています。国内の駅でカーボンニュートラルを達成した事例は、摂津市駅が初めてです。

摂津市駅では、太陽光発電の活用やLED照明の導入などを行い、算出した二酸化炭素排出量(年間約70トン)のうち、約36トン分の削減を行いました。
残りの約34トン分は、二酸化炭素排出枠を購入することで相殺し、カーボンニュートラルを実現しています。
温室効果ガスの排出量をプラスマイナスゼロにするカーボンニュートラルは、社会全体として目指すべき状態です。

多くの国や企業が、カーボンニュートラル実現に向けて活動することで、環境問題の解決につながります。日本でも2050年に向けて、カーボンニュートラルを目指しているので、今後の動向に注目です。

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