プラスチックはリサイクルすると何になる?リサイクル方法や企業の取り組みを紹介 - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

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最終更新:2024.09.24

プラスチックはリサイクルすると何になる?リサイクル方法や企業の取り組みを紹介

プラスチックのリサイクルは、脱炭素社会の実現や地球温暖化抑制につながるとても重要な取り組みです。
この記事では、プラスチックの3つのリサイクル方法や、国内企業がプラスチックリサイクルに取り組む事例などを紹介します。

プラスチックはリサイクルすると何になる?

プラスチックをリサイクルすると、そこから新たなプラスチック製品や、化学製品の原料などに再利用することが可能です。

リサイクルによって作られるプラスチック製品の例は作業着などの衣料品や、ペットボトル、洗剤などの容器から公園の遊具、ベンチなどです。プラスチックから作られる化学製品の原料には、製鉄などに用いるコークスや、アンモニア、溶媒として使われるメタノール、ベンゼン、トルエン、キシレンなどがあります。

リサイクルできるもの

プラスチックで作られている製品は、何でもリサイクルできるわけではありません。プラマークやPETマークが付いているプラスチック製品がリサイクルの対象で、PETマークは飲料用や調味料用のペットボトルなどにあり、多くの場合、ボトルとキャップの両方がリサイクルの対象となります。プラマークはポリ袋やお弁当の容器、食品用トレイや包装に使われる袋などに付けられています。
ただし、薄いラップフィルムや、3cm以下の小さなプラスチック製品はリサイクルできません。リサイクル施設の機械に巻き付いたり、挟まったりしてしまい故障の原因となります。

プラスチックの3つのリサイクル方法をわかりやすく解説!

プラスチックのリサイクル方法は、「マテリアルリサイクル」、「ケミカルリサイクル」、「サーマルリサイクル」の3つに分類することが可能です。

ここからは、3つのリサイクル方法について解説します。

マテリアルリサイクル:廃プラスチックから新たな製品を作る

マテリアルリサイクルとは、廃プラスチックから新たなプラスチック製品を作る方法です。廃プラスチックを溶かして再びプラスチック原料に戻した後、新たな製品に加工します。
マテリアルリサイクルで作られる製品は、文具やペットボトルなどの小さなものから、公園や道路などの大規模な設備まで様々です。

廃プラスチックが汚れていると、リサイクルされた製品の品質が低下してしまうため、食品や飲料のプラスチック容器などは綺麗に洗ってからリサイクルに出す必要があります。

ケミカルリサイクル:廃プラスチックを原料に分解し再利用する

ケミカルリサイクルとは、廃プラスチックを原料である炭化水素(石油に近い成分の炭素と水素から成る油)やガスなどに分解し、再利用する方法です。
ケミカルリサイクルによって廃プラスチックをガス化すると、一酸化炭素や水素など化学工業の原料が回収できます。

廃プラスチックを原料の石油に戻す技術は確立されており、過去には国内でも廃プラスチックを炭化水素に戻す大型設備が稼働していました。しかし、当時の環境ではコストパフォーマンスが悪く、大型設備が撤退しています。現在はよりコストパフォーマンスの高い技術開発が進行中です。

サーマルリサイクル:廃プラスチックの熱エネルギーを活用する

サーマルリサイクルとは、廃プラスチックを燃やした時に発生する熱を、エネルギーとして再び活用する方法です。廃プラスチックは紙類と比べると発熱量が大きく、焼却時の熱や蒸気で発電したり、温水プールを温めたりできます。
不純物が混ざったプラスチックを処理する場合や、選別が難しい場合のリサイクル方法として、サーマルリサイクルが最適ですが、燃やす際にCO2や有害物質が発生する点がデメリットです。

プラスチックのリサイクル率の現状を日本と世界で比較!

プラスチックのリサイクル率は、国によって異なります。世界各国のプラスチックリサイクル率や、日本のプラスチックリサイクルの課題は次の通りです。

日本のプラスチックリサイクル率を世界各国と比較

日本のプラスチックリサイクル率は、2012年から2020年まで継続して80%を超える高い水準となっています。ただし、リサイクル方法としては、サーマルリサイクルが全体の半分以上を占めている状況です。

経済活動に関する国際機関であるOECDの基準では、サーマルリサイクルはリサイクルとして認識されていません。サーマルリサイクルを含まない日本のプラスチックリサイクル率は、24.3%となっています。
出典:一般社団法人プラスチック循環利用協会2020年プラスチック製品の精算・廃棄・再資源化・処理処分の状況
2020年の国内廃プラ総排出量822万トンに対して、マテリアルリサイクル量が173万トン、ケミカルリサイクル量が27万トンです。サーマルリサイクル以外のプラスチックリサイクル率は約24.3%と計算されます。
出典:Plastics – the Facts 2017, PlasticsEurope
欧州プラスチック業界団体のPlasticsEuropeがまとめたデータによると、2016年に欧州におけるリサイクルの割率が最も高かった国はノルウェーでした。データが掲載されている30か国の内半数以上が30%を超えています。日本のリサイクル率は2015年の時点で20%台と、世界各国と比べると低い水準です。

日本のプラスチックリサイクルの課題

日本のプラスチックリサイクルには、大きく分けて2つの課題があります。

1つ目の課題は、先述の通りマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの割合が他国に比べて低いことです。日本はゴミ焼却率が高いため、廃プラスチックの多くがサーマルリサイクルで処理されてきました。国際的な基準でリサイクル率を高めるためには、サーマルリサイクル以外の量を増やす必要があります。
2つ目の課題は、2021年から始まった廃プラスチックの輸出規制への対応です。日本では、人件費が高いことなどから廃プラスチックを海外に輸出していました。しかし、輸出規制の開始後は国内でプラスチックを循環させる必要があります。

企業がプラスチックリサイクルを行うメリット

企業がプラスチックリサイクルに取り組むことで、様々なメリットを得ることが可能です。主なメリットとして次のような項目が挙げられます。

●イメージ向上や経済的メリット
プラスチックリサイクルに取り組むことで、環境問題への取り組み姿勢が評価され、企業のイメージが向上します。また、株価やサステナブルファイナンスなどへの好影響などのメリットを得ることも可能です。

●廃棄物の削減や業務のスリム化
廃プラスチックをリサイクルすると、廃棄物の量を削減することができます。また、ごみ処理の手間を省き、業務をスリム化できることもメリットです。

●ごみ処理コストの削減
廃プラスチックを資源として再利用することで、ゴミの処理にかかっていたコストを削減できます。

国内企業のプラスチックリサイクルの取り組み

国内では、様々な企業や自治体がプラスチックリサイクルに取り組んでいます。国内の組織が取り組むプラスチックリサイクルの事例は次の通りです。

花王株式会社・ライオン株式会社

花王株式会社とライオン株式会社は、洗剤やシャンプーの詰め替えパックを回収するボックスを共同で設置しました。店頭の専用回収ボックスに入れられた詰め替えパックは、組み立てが容易なブロックなどの形で再生されます。

また、現在はより効率的な回収システムの開発や、リサイクル技術を向上させる取り組みも進行中です。

神戸市

神戸市は、2021年10月1日から「神戸プラスチックネクスト~みんなでつなげよう。つめかえパックリサイクル~」という取り組みを行っています。

この取り組みは神戸市や小売業、日用品メーカー、リサイクラーなどが共同で行うプロジェクトです。日用品メーカーの中には、リサイクルの技術開発に取り組む花王株式会社も含まれます。

市内75か所の小売店舗に設置された回収ボックスには、洗剤やシャンプーなど使用済みのプラスチック容器を入れることが可能です。集めたプラスチック容器は分別回収され、詰め替えパックとして再び消費者へ還元されています。

旭化成株式会社

化学や建材、医療など幅広い事業を運営する旭化成株式会社も、プラスチックリサイクルに取り組む企業の1つです。

旭化成株式会社では、商品のQRコードを読み取ることで再生プラスチック利用率が分かる技術を試験しています。再生プラスチック利用率の可視化により、消費者の行動を変容させリサイクルを促すことが狙いです。
三井物産

三井物産では、包装材やPETボトルなど、様々な素材の回収・リサイクル事業を推進しています。

例えば、米国PureCycle Technologies社と提携し、マテリアルリサイクル率を向上させる技術の導入を進行中です。同社の技術では、廃プラスチックから高品質なリサイクルPP樹脂を生産できます。

また、「ライスレジン」に関するバイオプラスチックソリューションは、他に例を見ない取り組みです。

三井物産のリサイクルに関する取組みの詳細は、資源循環をご覧ください。
これらの他にも、多くの企業がプラスチックリサイクルに取り組んでいます。

プラスチック製品は、リサイクルによって新たな製品に作り変えたり、化学製品の原料として使用したりすることが可能です。

プラスチックのリサイクル方法には3つの種類があり、利用用途が異なります。日本ではサーマルリサイクルの割合が高く、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの比率を高めることが今後の課題です。

この記事で紹介した国内の事例を参考に、自社で取り組める範囲からプラスチックリサイクルに取り組んでみてはいかがでしょうか。

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