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ソリューション資源循環

最終更新:2023.09.05

サーキュラーエコノミーとは? その動向と実現に向けた取組み

従来型の大量生産・大量消費を背景に、世界的な資源・エネルギー不足、食料不足や環境問題が深刻化しています。そこで注目されているのが、資源を循環させて有効活用するサーキュラーエコノミーです。その仕組みや現状、課題について、国内外の取組み事例とともに解説します。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは?

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、「あらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、付加価値の最大化を図る経済」と定義されており、資源を廃棄せずに循環させることで有効利用する経済を指します。
前世紀の経済活動は、リ二アエコノミー(線形経済)とも呼ばれる大量生産・大量消費・大量廃棄の一方通行の経済であり、資源は最終的に廃棄されるため、いずれ枯渇します。
これに対して、サーキュラーエコノミーが目指すものは3R(Reduce・Reuse・Recycle)を軸とした資源循環です。資源をリサイクルや再利用をすることで、廃棄せずに循環させます。また、製品等の設計段階から投入する資源量を抑えることにより、新たな資源利用を抑えることができます。
例えば、プラスチックを資源循環させることは、プラスチックごみを減らすと同時に、原料となる石油の新たな投入を減らすことに繋がります。
ここで言う資源には、原材料として利用される鉄、非鉄金属、レアメタル、プラスチック、紙などに加え、使われていない民家を宿泊施設として利用したり、使用頻度の少ない車をレンタカーとして活用したりすることも含まれます。こうした活動は、資源が活かされないまま老朽化する場面を減らし、資源の効率的な利用に貢献します。
経済産業省 循環経済ビジョン2020(概要)より

サーキュラーエコノミーが推奨される背景

サーキュラーエコノミーに類似する概念は古くから提唱されています。
例えば、1960年代にはKenneth E. Bouldingが著書『Economic Development as an Evolutionary System』にて、「限られた資源を有する生態系に人類の経済システムを適合させる必要性」を指摘し、1990年代にはドイツの経済学者Michael Braungartらが「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)」のコンセプトを提唱しました。それらは「廃棄はやむを得ない」という認識を見直し、資源が無駄なく循環する仕組みの必要性を示しています。
こうした類似する概念が古くからあったにも関わらず、近年急速にサーキュラーエコノミーが注目を集めているのはなぜなのでしょうか?

世界的な資源/エネルギー/食料不足

国連によると世界人口は2020年の80億人から、2050年には97億人に増加すると言われ、これに伴い、食料不足の深刻化や資源需要の増加が懸念されています。レアメタルなどの一部の資源では、既に資源争奪戦の様相を呈している状況もあり、このような国家安全保障の観点からも、資源の効率的・循環的利用が求められています。

環境問題の深刻化

地球温暖化、大気汚染、土壌汚染、海洋汚染、自然環境破壊と生物多様性など、世界はさまざまな環境問題に直面しています。とくに近年は、地球温暖化対策として、プラスチックの原料にもなる化石燃料の使用削減や、廃棄時に焼却やサーマルリサイクルをおこなう際に発生するCO2の抑制などの観点から、リサイクル、ひいてはサーキュラーエコノミーの重要性が高まっています。
エレン・マッカーサー財団とマテリアル・エコノミクスによる共同論文によれば、再生可能エネルギーに移行することで削減可能な温室効果ガスは世界の排出量の55%であり、残り45%の削減に取組むことが重要だと言います。
これに対し、5つの主要分野 (セメント、アルミニウム、鉄鋼、プラスチック、食品)でサーキュラーエコノミーが実現されれば、残り45%のうち約半分(世界排出量の20%に相当)の温室効果ガスを排出削減できると示しています。

事業収益へのインパクト

企業も脱炭素化を進めるべく、積極的にリサイクルやエコ商品の開発を推進し、また意識の高い消費者は、環境に配慮した製品やサービスを選択的に購入するようになっています。サーキュラーエコノミーの推進は、CSR(企業の社会的責任)の観点のみならず、直接的に企業収益にインパクトを与えるものとして、重要な取り組みの一つになっています。

日本のサーキュラーエコノミー実現に向けた課題

日本のリサイクル率は、約20%と世界的にみても低い水準にあり、生ごみの多くを焼却処理しています。

日本のリサイクル率が低い要因の一つは、焼却設備・技術が発達してきたこと

日本は発生するごみの量が多く、これを処分するために古くから焼却設備が整備され、そのほとんどが水分とされる生ごみを焼却処分しています。焼却処分をする際に発生する熱エネルギーを回収することをサーマルリサイクルと言いますが、海外ではこれをリサイクルとはみなしていません。

焼却すればCO2を発生しますので、地球温暖化対策の観点からは焼却処理にはデメリットが大きく、
海外で比較的よく行われる、生ごみを堆肥や飼料にすることで資源化する技術や仕組みの発達が望まれます。

資源ごみの分別・回収の仕組み構築

日本では、分別回収の仕組みが整っている資源ごみについては、リサイクルが進んでいます。資源をリサイクルするうえでもっとも効率的な方法は、製品の廃棄物を回収・収集し、同じ製品にリサイクルすることです。例えば、PETボトル(86%)、アルミ缶(96.6%)、古紙(81.5%)などは高いリサイクル率となっています。

レアメタルについては、廃棄される製品に含まれるレアメタルの量が少なく、鉄くずなどと一緒くたに処理されるために回収が難しいこと、またリサイクル技術も開発途上であることから、リサイクル率が低い現状があります。

生ごみの回収は一般に、市区町村により行われますので、地域自治体や企業が連携して資源循環の仕組みを構築する必要がありますが、個別に必要な資源を分別、回収してリサイクルを行い、リサイクル品として使用者に戻して再利用するクローズドな資源循環を行う事例もあります。
サーキュラーエコノミーの実現に向けては、リサイクル技術の向上も然ることながら、資源ごみを分別・回収し、リサイクルにより再利用する「資源循環」の仕組みを整えることが大切です。

リサイクル技術の向上

リサイクルされた素材は一般に、ヴァージン材(新品)と比較して品質が劣る傾向にあり、
特にごみや廃材をリサイクルするために不純物が混ざり、気泡や着色など、外観品質が問題になることがあります。
また例えば、着色したプラスチックはリサイクルが困難な場合も多く、焼却処理(サーマルリサイクル)されるか、
リサイクルを行ったとしても、透明性が求められない一部の用途に限定されます。

リサイクルにおいては、ヴァージン材と同等品質のリサイクル素材を、競争力のある価格で提供することが求められ、そのためにリサイクル技術がさらに向上することが期待されます。

サーキュラーエコノミーの推進に向けた国内外の動向

欧州のサーキュラーエコノミー関連動向

世界に先駆けてサーキュラーエコノミーの概念を提唱した欧州では、2015年にサーキュラーエコノミーパッケージを承認し、食品廃棄物の削減や二次資源の品質基準の開発などを進めると同時に、2030年までに都市廃棄物の65%、包装材廃棄物を75%をリサイクルし、埋め立て廃棄量を最大10%削減する目標設定をしています。

さらに、2020年には「新サーキュラーエコノミー行動計画」を策定。その中で製品の長期使用やリサイクルを容易とする設計を義務付けたり、売れ残った製品の廃棄を禁止するなど、「廃棄物を出さない」ことに重点を置いた施策を展開しました。これを7つの重点分野(「電子機器とICT」「バッテリーと車」「包装」「プラスチック」「テキスタイル」「建築」「食」)で加速させる考えです。

日本でのサーキュラーエコノミー推進状況

日本では、「1999年循環経済ビジョン」で「1R(Recycle)」から「3R(Reduce・Reuse・Recycle)の総合的な推進」への転換が図られ、2000年には「循環型社会形成推進基本法」が成立。世界に先駆けて3R(Reduce・Reuse・Recycle)に取り組んできました。

サーキュラーエコノミー(循環型経済)が明示されたのは「循環経済ビジョン2020」であり、そこでは「環境活動としての3R」から「経済活動としての循環経済」への転換を図るとしています。具体的には、日本が培ってきた循環型の製品やビジネスをグローバル展開することを含め、経済やビジネス全体を循環性の高いモデルへ転換し、環境と経済を両立させることが目指されています。

2023年に策定された「成長志向型の資源自立経済戦略」では、「循環経済ビジョン2020」に基づき、国内の資源循環システムの自律化・強靱化と国際市場獲得を目指し、産学官CE(サーキュラーエコノミー)パートナーシップを立ち上げ、動脈産業と静脈産業の有機的な連携を促進する考えが示されました。

三井物産の取組み

三井物産でも、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、さまざまな取組みを行っています。
非鉄金属リサイクル
三井物産メタルズでは、アルミ分野を中心とした非鉄金属分野において、スクラップ回収からリサイクル材の調達、販売まで、非鉄金属のバリューチェーン全体でサーキュラーエコノミーの実現に貢献しています。
リサイクルプラスチック(PET樹脂)
三井物産も出資するサーキュラーペット社では、使用済みペットボトルを回収し、再びPETボトルの原料へ再資源化する事業をおこなっています。同社の工場ではペットボトル約10億本分に相当するリサイクルペット樹脂を1年間に製造する能力を有します。
リサイクルプラスチック(ポリプロピレン)
PureCycle社では、プラスチック素材の中でも使用量の多いポリプロピレンを、ヴァージン材と同等品質でリサイクルする技術を持ち、これまでリサイクル材の使用が困難だった製品に、リサイクル材を導入しています。
リサイクルプラスチック(ライスレジン)
三井物産プラスチックでは、非食用のお米を原材料としたプラスチック:ライスレジンを取り扱っており、石油由来のプラスチックを代替することでCO2排出量の削減に貢献しています。また、非食米の生産に休耕地を活用することで、日本の農業活性化にも繋げています。
ラベル台紙循環リサイクル
三井物産ケミカルでは、ラベル台紙のリサイクルをおこなう「資源循環プロジェクト」を展開しています。資源循環プロジェクトでは、廃棄されるはずのラベル台紙を回収し、リサイクルをおこなって使用者に再供給するというクローズドな資源循環を実現しています。
古紙循環リサイクル
三井物産パッケージングでは、古紙を回収して再生紙としてリサイクルし、さらには再生紙を2次加工することで段ボール等の包装材を製造・販売しています。これを通して、紙素材の資源循環を実現しています。

サーキュラーエコノミーの確立に向けて

サーキュラーエコノミーは、製品の設計や製造段階から長期使用やリサイクル性を考慮することで投入する資源量を減らし、製品使用後はリサイクルやリユースを促進することで廃棄を減らし、全体として資源を循環させることで限られた資源を有効に活用する概念です。同時に、「環境問題への対処」としてのみ捉えるのではなく、循環型の事業をおこなうことで経済性も高め、「環境と経済の両立」を目指す概念でもあります。
事業者においては、非鉄金属、プラスチックや紙といった原材料のみならず、未利用の建物や自動車の活用など、自社の保有する資源を廃棄せずに活用することで、循環型のビジネスモデルを確立し、環境と経済を両立することが期待されています。

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