30by30とは?生物多様性に向けた具体策と企業や個人ができる取組み
「30by30」は、2030年までに地球の30%以上を生態系として保護する目標で、生態系や生物多様性の維持と気候変動対策のため、国際的な協力そして、企業と個人の取組みが求められます。
「30by30」とは、2030年までに地球の陸地と海域の30%以上を健全な生態系として保護することを目指す国際的な目標です。この目標は、生物多様性の劣化を防ぐとともに生態系を維持強化し、気候変動への対策を講じるための重要な取組みです。森林や海洋の保護区域を拡大し、持続可能な管理を進めることで、自然環境を守り、次世代に豊かな地球を引き継ぐことが求められています。
生物多様性のための国際目標「30by30」とは?
30by30(サーティ・バイ・サーティ)とは?
「30by30」とは、2030年までに、地球の陸と海の30%以上を健全な生態系として保全しようとする野心的な目標です。気候変動や人間活動によって危機に瀕している生態系を守り、生物多様性を維持することを目的とし、生物多様性の損失を食い止め、自然環境を回復させる「ネイチャーポジティブ(Nature Positive)」実現の柱として位置づけられています。2023年3月に閣議決定された「生物多様性国家戦略2023-2030」にも30by30が達成すべき目標の1つとして盛り込まれています。
30by30目標の達成には、各国政府による国際的な支援やNGO、企業、市民が一丸となって取り組むことが求められます。例えば、企業は自然資本を重視した持続可能なビジネスモデルの導入を、個人は意識的な消費行動を実践することで、目標達成に近づくことができるのです。
生物多様性の現状と30by30目標達成の意義
IPBES(生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)*の2019年の報告によると、地球上の約1,000,000種が絶滅危機に瀕しています。清浄な水の供給や気候調整、食料生産など生態系から人間が享受してきた多様な恩恵が減衰し、種の絶滅の危険性が深刻化し、持続可能な社会基盤を脅かす状況になっています。
生物多様性の損失が地球規模で影響を及ぼしている状況を背景に、2022年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2030年グローバルターゲットの1つに「30by30」が目標として設定されました。前身の愛知目標、2020年までに陸17%、海10%を大幅に上回る野心的な数値となっています。
*IPBES(生物多様性と生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム):生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価し、科学と政策のつながりを強化する政府間組織です。2012年に94の政府によって設立され、2025年3月時点で199か国が加盟しています。
日本における30by30の現状
2021年時点で、日本の保護地域は陸域の20%、海域の13%にとどまっています。この数字は、2030年までに地球の陸と海の30%以上を健全な生態系として保全するという「30by30」を達成するには不十分です。人間活動による地球温暖化や環境破壊が進行する中で、生態系の維持はますます重要な課題となっており、現状の取組みを強化する必要があります。現状では国立公園等の国の管理区域に加え、地域や民間との保全活動が不可欠であり、既存の地域の管理体制強化も急務です。そのため、日本では地域ごとの協力を強化し、民間の土地や漁業地域を含む広範な生態系保護活動が求められています。
30by30ロードマップとその具体的な取組み
環境省 30by30ロードマップ
環境省が策定した「30by30ロードマップ」は、30by30目標を達成するための行程と具体策を示した計画です。ロードマップには、保護地域の拡大、持続可能な管理方法の導入、地域社会との連携等が含まれています。具体的なステップとして、各地域での保全活動の推進や、保護地域のネットワーク化等が挙げられます。
「30by30」を達成するための主要施策は以下の通りです。
- 保護地域の拡充保護地域とは、自然環境や生態系、文化的価値や景観の保護を目的とした地域です。法律や規制によって自然環境が守られ、生態系の維持や生物多様性の保全に重要な役割を果たしています。具体的には国立公園、国定公園、鳥獣保護区、海洋保護区、景観保護地域、資源保護地域などが該当します。
- OECM(Other Effective Area-based Conservation Measures)の設定と管理保護地域以外で生物多様性を保全する地域を認定し、保全を可視化。OECM拡大の効果は多岐にわたります。脱炭素効果や循環経済の促進、農山村活性化、食の安全確保、 健康維持、心身の癒しなど6つの効果が挙げられています。特に民有地の保全は希少種の生息地を含む里山や都市部の緑地を守ることで、生物多様性の回復に直結します。
- 自然共生サイトの認定企業有林や里地里山など、民間の保全活動を支援する日本独自の制度。環境省が認定することで、PR支援やサステナブルファイナンスの活用が可能。環境省は、生物多様性保全に貢献する場所を「自然共生サイト」に認定する仕組みを始めました。これは、地域住民や企業が自然環境を保全し、持続可能な利用を進めるための取組みを支援するものです。例えば、里山や湿地、海岸等が認定されることで、保全活動が活性化し、地域全体で生物多様性の保全が促進されます。「自然共生サイト」は、地域の自然資源を守りながら、持続可能な社会の実現に寄与する重要な役割を果たしています。
生物多様性のための30by30アライアンス
「生物多様性のための30by30アライアンス」は、OECM認定の推進を目的として、2022年4月に発足した企業・自治体・団体の連携組織です。所有地のOECM登録をしたい事業者や、そうした取り組みを支援したい企業など、30by30の実現に向けた行動をとる参加者が集まり、民間主導の保全活動を推進しています。地域資源の保全や持続可能な管理方法を導入し、地球規模での生態系の健全化に貢献することを目指しています。2025年2月現在、コアメンバー・発起人 23団体に加え、943の企業や自治体、NPO等が参加しています。
生物多様性の保全に向けて私たちにできること
企業の取組み
企業は事業活動を通して生物多様性へ配慮することが求められます。企業が所有する土地の自然共生サイトへの申請やサステナブルファイナンスの推進が重要です。TNFD提言に基づく情報開示やサプライチェーン管理、消費者啓蒙も効果的です。
個人の取組み
私たち一人ひとりが生物多様性を守るためにできることとして、地域の旬な食材を選ぶ「たべよう」、自然体験への参加「ふれよう」、自然を写真や文章で発信する「つたえよう」、自然や文化を守る活動に参加する「まもろう」、生態系配慮商品の選択「えらぼう」が挙げられます。これらは環境省が提唱する「my行動宣言」としてまとめられ、日々の生活に組み込むことが可能です。
今後の展望
30by30の達成に向け、保護地域の質的向上や民間の積極的参画が課題として残されています。単なる面積拡大ではなく、生態系の回復力を高める管理が求められます。国際連携による生態系ネットワークの構築も重要です。この取り組みは、数値目標を超え、人と自然の共生を再構築する社会変革を目指しています。企業や個人の積極的な参加が、持続可能な地球の実現を加速させる鍵となります。
参考
Green & Circular メールマガジン登録
脱炭素・カーボンニュートラル担当者必読の最新記事やイベント情報を毎月1〜2回お届けしています。登録ページからメールアドレスをご登録ください。