パリ協定とは?脱炭素に関する日本の取り組みと現在地をわかりやすく解説 - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

コラム

最終更新:2025.11.19

パリ協定とは?脱炭素に関する日本の取り組みと現在地をわかりやすく解説

気候変動は、産業革命以来の人類の課題ですが、近年は「1.5℃目標」達成のために世界が加速的に動いています。2023年のCOP28では、化石燃料の段階的削減が初めて合意され、日本でもGX戦略や再エネ拡大が議論の中心となっています。本記事では、国際的な枠組みである「パリ協定」の概要と、日本の脱炭素戦略の現在地を、最新動向を交えてわかりやすく解説します。

パリ協定とは、気候変動対策の国際的な枠組み

パリ協定における気候変動対策の長期目標

パリ協定とは、2015年11月30日から12月13日までの期間にパリ郊外で実施された「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」にて採択された国際条約です。気候変動に関する国際的な目標・取り組みが定められ、2016年11月4日に発効されました。

パリ協定においては、長期的な目標として、
【世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する】
こと、またそのために、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる、即ちカーボンニュートラルを実現することが定められ、これが世界共通の目標となっています。

これらの目標を達成するため、2020年から各国が取り組むべき検討・支援などが国際的な枠組みとして示されています。気候変動枠組条約には、世界196カ国が加盟しています。パリ協定は、この加盟国すべてが参加する史上初の協定です。日本も参加国のひとつとして批准しています。

京都議定書からパリ協定へ

気候変動対策に関する初の国際合意は、1997年に採択された京都議定書です。
京都議定書では、先進国に対し、2008年~2012年の対象期間における温室効果ガスの排出削減が義務付けられました。必要な削減量は国ごとに設定され、日本の場合は、1990年比で6%の排出削減が義務付けられました。

京都議定書以来18年ぶりの協定となりますが、パリ協定は開発途上国を含むすべての参加国・地域に温室効果ガスの排出削減が求められています。その背景には、京都議定書以降、大きく経済成長した新興国にも相当量の温室効果ガス排出があること、先進国のみに削減を課す不公平感への配慮などがあります。また、その削減目標は各国が自主的に設定するボトムアップ方式が採用されています。

パリ協定を受けた日本や各国の目標

各国が自主的に削減目標を設定

パリ協定で定められた長期目標は、【世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する】ことであり、またそのために、21世紀後半には、カーボンニュートラルを実現することです。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 第6次評価報告書(AR6)によると、世界目標である気温上昇を1.5℃に抑えるためには、2030年までに世界全体で温室効果ガスを2010年比で45%削減し、2050年までにカーボンニュートラルを実現する必要があります。

これを受けて、各国が排出削減目標を定め、温室効果ガスの削減を進めています。パリ協定では、自国の削減目標を自主的に定めるボトムアップ方式の目標設定が行われているため、目標達成のための具体的な施策については定められていませんが、各国には「自国が決定する削減目標(NDC:Nationally Determined Contribution)」を、2020年以降、5年ごとに提出することが義務付けられています。また、先進国に関しては、途上国に対し金銭的・技術的サポートを行うことも求められます。

このように、パリ協定は気候変動対策の大枠を定めたものであり、目標を実現するための施策は各国で異なります。以下で、日本を含めた各国の取り組みを紹介します。

日本の「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」

日本は当初、2030年度の温室効果ガスの排出を、2013年度を基準として26%削減することを中期目標を定めていました。これはパリ協定に基づき、日本が国際的に約束した温室効果ガスの削減量です。

その後、菅義偉(当時首相)は、2020年の所信表明演説において、「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言。2021年10月には「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定され、脱炭素社会の実現に向けたビジョンが示されています。

日本政府はこの長期戦略において、2050年カーボンニュートラルを目指すとし、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減するという、従来よりも「野心的な」中間目標を設定しました。これは、再生可能エネルギーの導入拡大、水素・アンモニアの活用、CCUS(炭素回収・貯留)などを含む包括的な施策によって達成を目指すものです。

パリ協定に基づく各国の削減目標

パリ協定では、温室効果ガスの削減目標(NDC)は各国が自主的に設定する仕組みが採用されています。そのため、基準年や算定方法が国ごとに異なり、単純な比較は難しい側面があります。ここでは、主要国の2030年目標を基準年・削減率・達成年とともに整理しました。
対象国・地域 削減目標
日本 2030年までに46%削減(2013年比)
EU 2030年までに55%削減(1990年比)
英国 2030年までに68%削減(1990年比)
フランス 2030年までに40%削減(1990年比)
ドイツ 2030年までに65%削減(1990年比)
米国 2030年までに50~52%削減(2005年比)
中国 2030年にGDP当たりのCO2排出を65%削減(2005年比)

パリ協定その後:各国の排出削減の進捗状況

米国の動き:復帰から再離脱へ

米国は2020年にトランプ政権下でパリ協定を離脱し、2021年にバイデン政権が復帰。バイデン政権は2030年に2005年比50~52%削減、2035年に61~66%削減という野心的な目標を掲げ、再生可能エネルギーやEV普及を加速しました。

しかし、2025年にトランプ政権が再登板し、就任初日にパリ協定からの再離脱を宣言。連邦レベルでは脱炭素政策が後退し、EV補助金や再エネ税制優遇の縮小が進んでいます。

一方、カリフォルニア州など一部州や企業は独自に脱炭素を継続しています。

COP26以降の課題とCOP30の焦点

各国のNDCを合算しても、依然として1.5℃目標達成は困難です。COP28のグローバル・ストックテイクでは、今世紀末に2.1~2.8℃上昇の可能性が指摘され、2030年までに世界全体で43%削減が必要とされました。

2025年11月開催のCOP30(ブラジル・ベレン)では、2035年に向けた新しいNDCの提出と、COP29で決定した気候資金年間3,000億ドル目標の具体化、さらに森林保全や化石燃料段階的廃止のロードマップ策定が主要議題となっています。

2050年カーボンニュートラル達成に向けて

パリ協定を大きな契機として、各国が温室効果ガスの排出削減に取り組んでいます。2050年カーボンニュートラル実現に向けて各国が削減目標を野心的に修正し、これまで以上に脱炭素化に向けたロードマップ策定が望まれています。

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