社会的インパクト評価と進捗報告
アフリカにおけるヘルスケアイノベーションハブ構築案件【最終活動報告】
2026年10月8日 現在
| 助成金額 |
66,995,000円 |
|---|---|
| 助成先 |
CA Medlynks Kenya Limited(CAメドリンクスケニアリミテッド、ケニア共和国・ナイロビ、以下 「CA MEDLYNKS」) |
| イシューファインダー |
嶋田 庸一 CA MEDLYNKS CEO |
| 解決を目指す社会課題 |
アフリカにおいて蔓延する感染症、疾患の研究・診断インフラ不足 |
| トピックスリリース |
社会課題「アフリカにおける疾患診断のインフラがない!」
アフリカではHIV/AIDS・結核・マラリアなどの三大感染症、顧みられない様々な感染症がいまだに根強く残るほか、がんや生活習慣病などの非感染症の脅威も急増しています。こうした疾患の研究・診断には本来公的機関のみならず、民間の研究者・研究機関・企業の果たす役割が大きいものの、研究・診断を行うための施設・機器不足、また活動を推進するための支援が求められています。
CA MEDLYNKSは、ヘルスケアスタートアップ企業である株式会社Connect Afya(コネクトアフィア、兵庫県たつの市、代表取締役社長:嶋田 庸一)の子会社で、アフリカで検査インフラや診断サービスを提供しています。さらに現地の医療機関・研究者・研究機関と協働して上記課題を解決するエコシステムを構築し、アフリカにおける疾患研究・診断サービスの進展を進めています。三井物産は本基金を通じ、アフリカでの事業経験やネットワークを活用し、研究者との連携を推進し、現地の関係者が最新研究・診断機器にアクセスできるイノベーションハブの構築を支援します。
社会的インパクト評価(ロジックモデルとKPI)
イシューファインダー&共創者対談

聞き手: 宮本(三井物産) 答え手: 嶋田(Connect Afya)
宮本: 嶋田さん、まずはConnect Afyaを立ち上げたきっかけを教えていただけますか?
嶋田: 新卒で製薬企業や医療機器メーカーの営業戦略を支援するコンサルティング会社に勤めていましたが、その傍らで知人のウガンダやケニアといったアフリカでのスタートアップ立上げを手伝っていました。その活動を通じて、アフリカで見る現場の課題を直接解決したいと思うようになりました。
その後、フランスに留学中したのですが、その時にケニアに自分でリサーチに行った際、現地の医療があまりに自分が日本などで見てきたものとかけ離れているのを目の当たりにして、医療インフラの改善に取り組みたいと強く感じました。
特に、適切な診断が受けられないことで病気が見過ごされてしまう現実に衝撃を受け、検査の普及を通じて医療全体の流れを作り出したいと考え、Connect Afyaを立ち上げました。
宮本: ケニアでの経験が原点なのですね。適切な診断が受けられない現実というのは、私たち日本ではなかなか想像がつきにくいですが、そこで起業という決断をされたのがすごいですね。

宮本: 三井物産共創基金のことは、どのようにして知ったのでしょうか?
嶋田: 接点のあった中東三井物産の方とお話させていただいた際に「三井物産共創基金って知ってますか?」と教えていただいたのがきっかけです。資金提供だけでなく、事業を加速させるためのアドバイスやネットワークの支援が受けられると聞いて、「これは挑戦しないと」と思いました。また、三井物産さんのアフリカでの豊富なプロジェクト経験と信頼性も大きな魅力でした。
宮本: 資金提供だけでなくアドバイスやネットワークの支援も受けられるのは、起業家にとって非常に心強いですよね。
宮本: 実際に三井物産共創基金を活用してみて、どんな印象を持たれましたか?
嶋田: ちょうど資金調達を行っていたこともあり、正直、最初は「資金が得られればいい」くらいに思っていた面もあったのですが、それ以上の価値があるとすぐに気付きました。資金提供だけでなく、現地での事業展開のための具体的なアドバイスや、重要なネットワークの構築をサポートしてもらっています。
特に、現地パートナーと連携する際、三井物産さんがその橋渡し役になってくださるのは大きな助けです。本基金が三井物産さん役職員の共創者との「共創」を掲げているのは本当にその通りで、単なるお金のやり取りだけではなく、一緒に価値を作り出していくという姿勢を強く感じています。
宮本: 「共創」という言葉が、ただのスローガンじゃなくて、実際の支援に落とし込まれているというのは嬉しいですね。現地での連携に三井物産がどのように関わっているのか、もっと詳しく聞きたくなります。

宮本: 共創者に期待することや、連携で生み出されている価値について教えていただけますか?
嶋田: 共創者には、現地の実情に詳しく、課題解決に情熱を持っていることを期待しています。特に、テクノロジーや物流の専門知識を持つパートナーと組むことで、今までできなかったことができるようになっています。
例えば、物流の効率化や感染症対策のためのデータ分析技術の導入など、具体的な成果が生まれています。こうした連携がなければ、私たちだけでは成し遂げられなかったことばかりです。これからもお互いの強みを活かして、より多くの価値を生み出していきたいですね。
宮本: お互いの強みを活かして新しい価値を生み出しているのがよく伝わってきます。物流の効率化やデータ分析技術の導入というのも、現地でのインパクトが大きそうです。
宮本: この社会課題を解決するために、三井物産共創基金以上に必要なものは何だと思われますか?
嶋田: やはり現地の人たちとの信頼関係が一番大事だと思います。それがなければ、どんなに素晴らしい仕組みを持ち込んでも定着しません。信頼の礎は、地道にやっている姿を見せることだと思うので、その点はいつも意識しています。
それと、政策的な後押しも必要です。例えば、政府や国際機関との連携を深めることで、より広範囲に影響を与えることができます。こうした取り組みが、社会課題の解決には欠かせないと思います。
宮本: 信頼関係や人材育成というのは、本当に重要ですよね。それがあってこそ、現地の課題に根付いた解決策が実現できるのだと思います。政策的な後押しについても、やはり現地の政府や国際機関との関係構築が鍵を握りそうですね。
宮本: 今後、三井物産共創基金やそのエコシステムにどのようなことを期待されていますでしょうか?
嶋田: もっと多くのプレイヤーがこのエコシステムに参加してくれると嬉しいです。特に、私たちが活動しているアフリカのような地域では、まだまだ解決すべき課題が山積みです。そういった課題に取り組む新しいプロジェクトがどんどん生まれることを期待しています。
それから、本基金を通じて成功した事例が次世代の企業や起業家にとってのロールモデルになっていくといいですよね。それがまた新しい挑戦を生み出し、さらに大きな価値を生み出す循環ができれば素晴らしいと思います。
宮本: 確かに、成功事例が次世代に引き継がれていくエコシステムができれば、基金の価値もさらに広がりますね。新しい挑戦が次々と生まれる場として、これからも進化していくことを期待しています。
宮本: 嶋田さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。
最終活動結果(共創期間2023年9月〜2026年8月、3年間)
1.イノベーションハブの稼働:2024年7月に稼働開始
2024年7月、遺伝子シークエンサーを含む東アフリカ最大規模の研究拠点として稼働を開始し、同年12月には設備を用いた最初の研究が実施されました。共創基金からの助成金は主にこの機器の購入に充てられ、ナイロビで研究を受託するための物理的な基盤が本助成によって作られました。
2.研究機関・アカデミアとのパートナーシップ:目標5件に対し26件
着手時に関心を示した企業は2社、研究パートナー候補は2件でした。2026年8月末時点で、ハブでのトレーニングや研究相談会に参加し設備の利用を検討する研究者は25名を超え、共創可能性のある企業・機関は、2026年3月時点の14社・機関から、大学・研究機関との連携9件、企業との共創17件、あわせて26件に広がりました。短期目標5件、中期目標10件のいずれも超えた水準です。2025年5月には、関係企業・大学との4者で「抗菌薬適正使用体制の支援に関する包括的連携協定」を締結し、ケニアにおける薬剤耐性(AMR)の調査・研究と、感染症に関わる人材育成に取り組んでいます。現地協力企業とも2023年にイベントを共催し、その後も関係が続いています。
3.研究実施:目標10件に対し4件、論文・データベース登録:目標10本に対し0本
倫理委員会の審査を経た研究4件(乳がんのBRCA1/2遺伝子解析2件、結核患者の状態確認、16S rRNAによる微生物の遺伝子検査)が、ナイロビで実施されました。研究者が検体を国外へ送らずに済んだ最初の事例です。目標の10件には届きませんでしたが、2026年内に実施を予定していた6件は倫理委員会の審査と実施条件の調整が続いており、うち妊婦に対するアフラトキシン毒性検査の承認が最終段階にあります。これを5件目の先行事例として審査を通す手順を他の研究者へ展開し、実施予定6件と実施時期調整中2件を2027年度中に実施段階へ移す予定です。尚、研究の実施が先行し、論文化と研究情報データベースの構築には至りませんでした。実施済研究4件のうち、1件は検査を継続しており研究の進展にあわせて論文化を進める予定です。
4.対外発信:目標4回に対し6回
日経FT感染症会議2025、Africa Investment Forum、TICAD、神戸アフリカビジネスフォーラム2025、G20 DIA ICT SME Challenge 2025(ケープタウン)、ケニア日本商工会講演(2026年7月)の6回で発信しました。
5.三井物産との共創、事業面での連携
2026年4月に三井物産本社で社内勉強会を開催し、アフリカ事業に関わる社員7名とケニアの医療の実態と現地での事業の立ち上げについて議論しました。また、三井物産労働組合イベントとしての講演会を、2026年度中の開催に向け準備を進めています。事業面での連携では、三井物産を通じて関係企業と現地への技術移転プロジェクトが進行しているほか、医療ツーリズムを軸に三井物産が出資するアジアの病院グループとの連携可能性につき協議を行いました。
社会的インパクト評価総括
ロジックモデルに設定したKPIに対し、パートナー数(目標5/実績26。中期目標10も超過)とイベント等での発信(目標4回/実績6回)を達成しました。一方、論文数(目標10本/実績0本)、データベースに登録された研究数(目標10本/実績0本)、検体数(目標1,000件/実績約200件)は目標未達となりました。アウトプットに置いた設備を利用した研究実施も、2026年までに10件の目標に対し実施済4件にとどまっています。
これらのKPI進捗は、掲げた社会課題「アフリカにおいて蔓延する感染症、疾患の研究・診断インフラ不足」の解決に次のように寄与しました。着手時点のナイロビには、感染症やがんの研究に必要な検査を国際的な水準で受託できる民間施設がなく、研究者は検体を国外へ送るか、研究そのものを断念するしかない状況です。3年間の本基金の共創期間で、遺伝子シークエンサーを備えたラボの稼働、倫理委員会の審査を経た研究4件の現地実施、26件の共創ネットワークという形で、ナイロビで研究を受託するための基盤ができました。審査から実施までの手順はCA MEDLYNKSの中に蓄積されており、これを他の研究者へ展開することが実施件数を伸ばす道筋となります。尚、研究実施件数が目標に届かなかった背景の主因は、2025年のUSAID閉鎖とPEPFAR縮小により欧米の大学・研究機関がケニアで持っていた研究資金が失われたことですが、パイプラインを日本の大学・研究機関に組み替えた結果、案件の立ち上がりは予算サイクルに沿うことになりました。
本基金を通じた最大の成果は、ナイロビに国際水準の研究検査を受託できる民間の拠点が生まれ、現地の研究者が検体を国外へ送らずに研究を実施できるようになったことです。また、当初想定していなかった成果として、関係企業・大学の4者による包括的連携協定の締結や、日本の臨床検査大手からの出資および技術連携があります。この技術連携により、ナイロビの民間検査施設として初となるGCLP認証を2026年12月に取得する見込みで、国際的な研究助成機関が支援するデング熱ワクチン治験について、CA MEDLYNKSを検査拠点とする方向で交渉に入っています。3年間で得られたものは、稼働する設備、認証の見込み、と26件のネットワークですが、これらは研究が始まるための前提であり、ナイロビで研究が日常的に回るようになるかどうかは、実施予定6件が動き出す2027年度に決まります。本基金での共創期間は終了となりますが、三井物産の皆様からいただいたご縁と学びを活かし、アフリカの疾患課題に取り組む研究者と、日本を含むグローバルな研究機関・企業をつなぐ拠点として、引き続き目指す社会課題解決へ向け取り組んでまいります。
共創者総括コメント
3年間の共創期間中、ケニアでは財政制約の深刻化に伴う医療・公衆衛生・教育関連予算の削減に加え、国際援助機関による支援事業の縮小・停止など、ヘルスケア分野に携わる事業者にとって極めて厳しい事業環境が続きました。そのような状況の中でも、CA MEDLYNKSは本業である医療検査ラボ事業の戦略を柔軟に見直しながら、比較的影響の小さかった日系企業や学術機関との連携へと軸足を移し、着実に前進させてきました。嶋田様をはじめとする関係者の皆様のご尽力に敬意を表するとともに、途上国における事業運営には、環境変化に適応する柔軟性と強いレジリエンスが不可欠であることを改めて認識しました。
また、本プロジェクトを通じて整備されたInnovation Hubは、単なる研究設備ではなく、ケニアや東アフリカの若手研究者が研究活動に挑戦し、新たな知見を生み出すための基盤として大きな意義を有していると考えています。アフリカの疾患課題の中には、先進国の研究開発の枠組みだけでは十分に取り上げられないテーマも少なくありません。目指す社会課題解決へ向け、本拠点が将来的に現地の研究者が主体となり、地域にとって真に必要な研究やソリューションを生み出す「アフリカによる、アフリカのための研究拠点」へと発展していくことを期待しています。
一方、取組を通じて、社会課題解決の難しさも改めて認識しました。医療や研究インフラの構築には長い時間軸が必要であり、採算化するまでには継続的な資金・人材・パートナーシップが求められます。そのため、本来であれば社会が不安定な局面においてこそ必要性が高まる取組である一方、財政状況の悪化や援助資金の縮小といった外部環境変化の影響を受けやすいという構造的な課題を抱えています。今回の取組を通じて、社会課題解決は成果創出までに長い時間を要すること、社会課題解決と事業性の両立を実現することの難しさと重要性を改めて実感しました。
三井物産のマテリアリティ(重要課題)
三井物産は、「世界中の未来をつくる」を企業使命に、さまざまなステークホルダーの期待と信頼に応え、大切な地球と人びとの豊かで夢あふれる明日を実現すべく、サステナビリティ経営の重要課題としてマテリアリティを特定しています。本件は、6つのマテリアリティの中でも、特に「持続可能な安定供給の基盤をつくる」、「健康で豊かな暮らしをつくる」の実現に資する取り組みです。
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持続可能な安定供給の基盤をつくる
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環境と共生する世界をつくる
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健康で豊かな暮らしをつくる
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人権を尊重する社会をつくる
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「未来をつくる」人をつくる
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インテグリティのある組織をつくる



