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最終更新:2023.03.10

洋上風力発電とは?陸上風力発電との違いやメリット・デメリットを解説!

再生可能エネルギーについての研究開発が盛り上がりを見せる昨今、次世代のエネルギー供給を担う発電方式として大きな期待を集めているのが、洋上風力発電です。
本稿では、洋上風力発電と従来の発電方式を比較した際のメリットやデメリットの解説に加え、洋上風力発電に力を入れる企業を紹介します。

洋上風力発電とは?

洋上風力発電とは、風力発電のうち、海上や湖面に建設されたものを指します。
洋上風力発電には、発電機を海底に固定する「着床式」と、発電機を洋上に浮かべる「浮体式」の 2種類が存在します。

着床式の場合、水深の浅い海域に設置場所が限定されますが、頑強で大型の発電機を設置可能です。一方の浮体式では、発電機の大きさや発電効率が制限されてしまいますが、場所を選ばず、大量に設置することができます。

欧米では着床式が主流で、日本でもこれまでは技術的な問題から着床式が主流でした。一方で、洋上風力発電の発電量を増やすにあたって、近海の水深が深い日本では、設置場所に制限が少ない浮体式が注目を集め始めています。浮体式の設置については、コストや電力輸送の観点から課題も多く、今後更なる研究が必要です。

脱炭素化で注目の洋上風力発電

洋上風力発電に注目が集まっていることは、世界的に脱炭素化への関心が高まっていること関係しています。日本としても、2020年に掲げた目標(2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロ)の実現に向けて、再生可能エネルギーの発電量を増やしていく必要があります。

日本政府は 2040年までに洋上風力発電の規模を原発45基分(原発1基 = 1GW分)まで引き上げるという目標を掲げました。
しかし、再生可能エネルギーとしては技術的に前を行く他の発電方式が多くあります。ここで洋上風力に力を入れる理由は何なのでしょうか。

代表的な再生可能エネルギーには、水力発電や太陽光発電がありますが、これら発電方式は発電量が雨量や日照量(時間帯)に依存し、いつでも発電できるわけではありません。風力発電は夜間でも安定的に発電できるため、こういった太陽光発電の弱点を補うことができます。

もちろん風力発電も万能ではなく、風の弱い時間帯や台風が通過する際には発電ができません。よって、1つの発電方式に頼りきることなく、どれかが発電できない時間帯のリスクを他の発電方式で分散して補うことが重要です。

日本は、海に囲まれた島国で、自国領土と同程度の領海(約43万平方キロメートル)と 10倍以上の排他的経済水域(約 405万平方キロメートル)を有します。これまで活用できなかった広大な海域を発電のために有効活用することで、脱炭素化を大きく前進させる狙いがあるようです。

陸上風力発電と比較した洋上風力発電のメリット・デメリット

続いて、洋上風力発電についてより詳しく解説するため、陸上の風力発電と比較して、メリット・デメリットを見てみます。

洋上風力発電のメリット

洋上風力発電の大きなメリットは「安定的かつ高効率の発電が可能」であることです。

陸上では、山などの地形に影響を受けて風向や風の強さが頻繁に変化します。風力発電を行う上では、回転翼の向きを風に合わせることで発電効率を向上させますが、陸上では風向きが頻繁に変化するために風力発電機のポテンシャルを十分に発揮できません。風向きに応じて回転翼の向きを自動調整する機構を設けることもできますが、コスト増に繋がります。

風の強さについても同様です。風力発電では風の強さに応じて最適な羽の形状や大きさが変化します。風力発電機を最大限に効率よく運用するためには、一定風向で一定の強さの風が吹くことが望ましいのです。

上記のような理由から、安定して同じ向き、同じ強さの風が吹く洋上は、効率の面から見ると風力発電に適した立地であるといえます。

また、洋上では土地や道路の制限が少なく、大型発電機の導入が容易です。周囲の景観への影響も小さく、騒音問題などで近隣に迷惑をかける心配がないのもメリットです。

洋上風力発電のデメリット

洋上風力発電には大きなメリットがありますが、同様にデメリットもあります。
それは「基礎工事」、「電力ケーブルの敷設」、「維持管理費」に大きなコストが掛かることです。
基礎工事
まず基礎工事ですが、着床型の洋上風力発電機の場合、発電機が倒壊しないよう、海底に基礎を築き、足場を固める必要があります。陸上で工事をするのとは異なり、穴を掘る作業や周囲を固める作業を水中で行わなければなりません。
浮体式の利点はこの部分にあり、海に浮かべる場合には基礎工事に必要な費用を低減することができます。
電力ケーブルの敷設
次に、海底電力ケーブルの敷設です。
発電した電力は勝手に変電所に届けられるわけではなく、ケーブルを経由して届けなければなりません。陸から離れるほどケーブルは長くなり、敷設に掛かるコストは増大します。
維持管理費
最後に維持管理費です。洋上では波による浸食作用により、陸上よりも速く劣化が進行します。加えて、陸から離れるとメンテナンスのための往復移動にも費用がかかります。
また、任期を終え、老朽化した発電機は、そのまま捨てるわけにはいきません。1本1本回収し、陸まで運搬することになります。
洋上風力発電は、こうした問題を解決していかなければなりません。海上走行機能を備えた浮体式の発電機であれば、電力ケーブル以外の問題は解決できる可能性もありますが、その点は技術の進歩が待たれます。

洋上風力発電の開発を進める企業

洋上風力発電の普及においては欧州に後れを取っていますが、日本政府が強力な後押しを表明したことで、国内企業の研究開発熱が高まっています。

洋上風力発電に関わっているのは主に以下の企業です。
1. 電力会社:電源開発、東京電力、JERAなど
洋上風力発電の先進国である欧州や台湾などの海外電力会社と協力し、国内外で洋上風力発電の建設に取り組んでいる

2. 総合商社:丸紅、三菱商事、三井物産など
豊富な商材と流通網を持つ商社は、電力の新たな市場創出を求め、大型風車メーカーや建設事業など、国内外の企業との関係を強化し洋上風力発電事業を急ピッチで進めている。

3. 再生可能エネルギー開発事業者:日本風力開発、グリーンパワーインベストメント、コスモエコパワーなど
国内での陸上風力発電の開発・建設を行ってきた、再生可能エネルギー開発事業者は、今まで培ってきた実績やノウハウを踏まえて洋上風力発電でも注力している。

4. 設備点検・メンテナンス事業者:ホライズン・オーシャン・マネジメント
洋上風力発電は、地上型と比べて保守点検が難しい。海上での部品輸送やメンテナンスに専門性を持った事業者が活躍している。
洋上風力発電設備のメンテナンスについては、「洋上風力発電設備の点検・メンテナンス事業/ホライズン・オーシャン・マネジメント」をご覧ください。

他にも、大手ゼネコンや海外企業なども参入し、プロジェクトごとに連携しながら開発を進めています。
現在、日本国内では、洋上風力発電の計画容量が累計35GWに達しました。まだまだ目標には遠く及びませんが、今後の技術発展や再生可能エネルギーへの関心の高まりに応じて、この分野の規模自体も拡大していくものと考えられます。

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