イトーキ × e-dash Carbon Offsetが J-クレジット取引を加速させる - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

ソリューションカーボンオフセット

最終更新:2023.08.07

イトーキ × e-dash Carbon Offsetが J-クレジット取引を加速させる

2023年5月、株式会社イトーキとe-dash株式会社が連携し、カーボン・クレジットのマーケットプレイス「e-dash Carbon Offset」にて、J-クレジットの販売を民間主導として日本で初めて開始しました。同サービスが生まれた背景を通じて、クレジット取引およびJ-クレジットの現状と今後の展望に迫ります。

どこで、どのようなクレジットがいくらで買えるのか。従来の閉ざされた相対取引では分かりにくかったクレジット取引ですが、マーケットプレイス「e-dash Carbon Offset」が「誰でも手軽に」購入できるクレジット取引を実現しました。さらには、同マーケットプレイスでJ-クレジットを取り扱うことで、国内における地産地消型のJ-クレジット取引が活性化されることが期待されます。

国内有数のJ-クレジット・プロバイダー:イトーキ

──オフィス家具を提供するイトーキがJ-クレジットを販売しているのは意外にも感じます。J-クレジットを取り扱うに至った経緯を教えてください。
小野寺 イトーキでは、2009年より「人も活き活き、地球も生き生き」をビジョンステートメントとして掲げ、持続可能な社会の実現に向け取り組んで参りました。その中で、自社製品の環境負荷を定量的に把握するため、「スピーナチェア」というタスクチェアのCO2排出量の算定を初めておこなったのが2010年のことです。
排出量算定にあたっては、LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の考え方に基づき、製品の原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでの、ライフサイクル全体のCO2排出量を算定しています。同年には、カーボンフットプリント(CFP)制度試行事業に参画し、業界初のCFP算定結果の第三者認証を取得しています。
株式会社イトーキ Next Value営業室 兼 SDGsソリューション室 室長 小野寺重人。1998年イトーキ入社。IT、事業開発、営業職を経て、2012年インドネシア駐在事務所 所長。2015年タイ大手家具メーカーとのJV会社 ITOKI MODERNFORM 代表取締役社長。2017年米国Knoll社との提携によるKnoll Japan取締役副社長を経て、2022年より現職(新規事業開発・営業)
株式会社イトーキ Next Value営業室 兼 SDGsソリューション室 室長 小野寺重人。1998年イトーキ入社。IT、事業開発、営業職を経て、2012年インドネシア駐在事務所 所長。2015年タイ大手家具メーカーとのJV会社 ITOKI MODERNFORM 代表取締役社長。2017年米国Knoll社との提携によるKnoll Japan取締役副社長を経て、2022年より現職(新規事業開発・営業)
──自社における排出量可視化の取り組みが、どのようにJ-クレジット・プロバイダーに繋がっていったのでしょうか。
小野寺 スピーナチェアでは、算定した排出量をカーボン・クレジットによりオフセットし、2010年、環境省によるカーボン・オフセットモデル事業に業界で初めて採択されました。オフセット済みのスピーナチェアの販売を開始したことをきっかけに、2011年よりJ-クレジット制度のプロバイダーとしての事業を開始しました。
──早い段階からJ-クレジットの販売をおこなってきたようですが、その販売状況はいかがでしょうか。
小野寺 早くから取り組んでいることもあり、当社は日本で最も取扱量が多いJ-クレジット・プロバイダーの一社です。また、2020年の政府のカーボンニュートラル宣言を受け、ここ1、2年は特にカーボン・クレジットへの関心も高まっており、取扱量が大きく伸びています。政府は2022年度に889万ton-CO2であったJ-クレジット認証量を、2030年度には1,500万ton-CO2に拡大する目標を掲げています。

カーボン・クレジットのマーケットプレイスを運営するe-dash

──イトーキと共同でJ-クレジットの取扱いを開始したe-dashですが、e-dashのクレジット取引に関するこれまでの取り組みは、どのようなものだったのでしょうか。
甲斐 e-dashは、CO2排出量を手軽に算定することができる排出量可視化ソリューション「e-dash」から事業をスタートさせています。近年では「可視化の先」を見据えたソリューションとして、再エネの導入支援、電力証書や非化石証書なども扱っています。
クレジット取引については、海外のボランタリー・クレジットが購入可能なマーケットプレイスとして、2022年7月に「e-dash Carbon Offset」の運営を開始しています。さらにイトーキとの連携で、2023年5月より同マーケットプレイスでJ-クレジットの購入も可能となりました。
e-dash株式会社 セールス&マーケティング部 部長 甲斐綾乃。2017年三井物産入社。欧米の電力分野において、EV充電インフラ、VPP、分散型太陽光発電等を担当。その後「e-dash」の立ち上げとともに、現職
e-dash株式会社 セールス&マーケティング部 部長 甲斐綾乃。2017年三井物産入社。欧米の電力分野において、EV充電インフラ、VPP、分散型太陽光発電等を担当。その後「e-dash」の立ち上げとともに、現職
──海外で先行するクレジット取引ですが、その課題はどういったところにあるのでしょうか。
甲斐 クレジット取引は、かつてはどこでどのような種類のクレジットが売買されているかが不透明で分かりにくく、注目はされても実際に売買をおこなう人が少ない状況でした。そこで、「ここに行けば、誰でも手軽にクレジットを購入できる」マーケットプレイスがあってもいいのではないかと考え、「e-dash Carbon Offset」を開始しました。
──「e-dash Carbon Offset」は「誰でも手軽に」を売りにしているわけですね。その手軽さを実現するために、どのような工夫をおこなっているのでしょうか。
甲斐 通販サイトで買い物をするような、EC感覚でカーボン・クレジットを購入していただけるのが「e-dash Carbon Offset」です。多種あるクレジットから欲しいクレジットを見つける「探しやすさ」、クレジットを吟味するために網羅された「情報の見やすさ」、必要な量または金額に応じて少量から購入可能な「買いやすさ」にこだわっています。

イトーキとe-dashの連携で、地産地消型のJ-クレジット取引を拡大する

──では、イトーキとe-dashが提携してJ-クレジットを「e-dash Carbon Offset」で取り扱うに至った経緯についてお聞かせください。
小野寺 多くの事業者が排出量の可視化に取り組みはじめた頃、イトーキでは可視化の先には具体的な排出量削減のニーズがあると考え、排出量可視化ソリューションと連携して、オフセットが必要な事業者に速やかにクレジットを提供することを模索していました。今では多くの排出量可視化ソリューションが出てきていますが、なかでもe-dashは接続性に優れ、オープンにさまざまなプラットフォームや企業等との連携を進めていたこと、また三井物産グループとしての信頼性と安心感もあったことから、お声がけをさせていただきました。
───「e-dash Carbon Offset」にJ-クレジットがラインナップされることの意義はどのようなところにあるのでしょうか。
甲斐 国内の事業者は、国産のクレジットを購入したい意向を持っており、海外のボランタリー・クレジットでは、この地産地消型のニーズに応えることが難しい現状がありました。また、「地球温暖化対策推進法」といった国内法や、CDPやSBTなどのイニシアチブにおいて、クレジットを購入することで排出削減したものとして認められる(報告ができる)のは、現時点ではJ-クレジットのみです。このような観点から、J-クレジットは国内で最も必要とされるクレジットだと思います。
小野寺 J-クレジット取引はこれまで、買いたい人と売りたい人がそれぞれ個別に取引相手を探す相対取引が中心で、専門知識が必要なクローズドなものでした。「e-dash Carbon Offset」でJ-クレジットを扱うことにより、イトーキの持つ豊富で多様なJ-クレジットを、手軽に必要な事業者にお届けすることが可能となります。

「誰でも手軽に」利便性を追求したe-dash Carbon Offset

──脱炭素化を進めたい企業がe-dashへ相談に伺った場合、どのようなプロセスを経てJ-クレジット購入に至るのでしょうか。
佐々木 「e-dash Carbon Offset」に直接アクセスしてクレジットを購入いただくこともできますが、e-dashは可視化ソリューションもご提供していますので、可視化された排出量データに基づき、クレジットと他の脱炭素ソリューションも組み合わせて最適なソリューションを選定するご支援も可能です。
e-dashでは太陽光発電の導入、電力契約の見直し、非化石証書、クレジットといったソリューションを備えており、また一言にクレジットといっても、その由来や創出場所の異なる多種のクレジットを揃えていますので、最適なソリューションを納得してご購入いただけます。
e-dash株式会社 ソリューション開発部 佐々木悠太。大学卒業後、太陽光 / 地熱発電所の事業開発、小売電気切り替えのプラットフォーム営業を経て、2022年6月に「e-dash」へ入社。お客様のサービス利用を支援するカスタマーサクセスのポジションを経て、現在は可視化後の削減ソリューションの提案、提携業務に従事
e-dash株式会社 ソリューション開発部 佐々木悠太。大学卒業後、太陽光 / 地熱発電所の事業開発、小売電気切り替えのプラットフォーム営業を経て、2022年6月に「e-dash」へ入社。お客様のサービス利用を支援するカスタマーサクセスのポジションを経て、現在は可視化後の削減ソリューションの提案、提携業務に従事
──実際に「e-dash Carbon Offset」を閲覧してみると、さまざまなクレジットがあることが分かり、その背景を知るだけでも面白いですし、使い勝手も良いですね。
佐々木 「e-dash Carbon Offset」では、クレジット創出の背景となるプロジェクトの情報、クレジットが認証された時期、再エネ由来クレジットの場合にはCO2削減量見合いの再エネ/省エネ換算値、購入したクレジットがどの報告やイニシアチブに利用できるかなど、どのクレジットを購入すべきかの最適な選択ができる情報を画面上で網羅しており、さまざまなクレジットの中から「このクレジット」を購入したいと思ってもらえる工夫をしています。
小野寺 こういった情報は、相対取引時にお客様から必ず聞かれる一方、お客様が自力で調べようとするにはハードルが高いものです。そこをしっかりと網羅しているe-dash Carbon Offsetのインターフェイスは、とても優秀だと思います。
佐々木 日本では特に、地産地消型のクレジット取引を好む傾向にありますが、同じ地域で創出されたクレジットを購入してオフセットすれば、地域の脱炭素化に貢献することにも繋がります。また、例えば森林保全の重要性を掲げる企業は森林由来のクレジットを購入し、その資金が森林の保全活動に活用されるといったように、むやみにクレジットを購入するのではなく、そのクレジットを購入する理由や動機が重要であり、これがクレジットの選定基準の一つになっています。このような観点からも、クレジット創出の背景となるプロジェクト情報などを、分かりやすく提供することにこだわっています。

民間では初となるJ-クレジットのマーケットプレイスとして、国内のクレジット取引を加速させる

──最後に、「e-dash Carbon Offset」の目指す方向性について、それぞれの抱負と共にお聞かせください。
小野寺 カーボン・オフセットは、CO2排出削減活動の促進や、再生可能エネルギーや省エネ機器の導入、森林整備・保全活動などへの資金還流、さらにはそれらが実施される地域の活性化に寄与するとされています。イトーキは日本最大のJ-クレジット・プロバイダーとして、信頼性の高いJ-クレジットを、e-dash Carbon Offsetを通じて安定供給することで環境と経済を両立させ、脱炭素社会の実現に貢献していきたいと考えています。
佐々木 e-dash Carbon Offsetは、民間では初となるJ-クレジットを取り扱うマーケットプレイスです。多様で豊富なクレジットを競争力のある価格で提供することで、「クレジットを購入するならe-dash Carbon Offset」となるよう目指していきたいと思います。
甲斐 イトーキと連携したJ-クレジットの取引を身近な選択肢としてお客様に提供し、さらにはクレジット取引以外の脱炭素ソリューションの拡充も引き続き注力することで、日本のカーボン・ニュートラルに貢献していきたいと考えています。
──本日はありがとうございました。
e-dashでは、お客様に最適なクレジットを、各種脱炭素ソリューションと組み合わせてご提案することも可能です。まずはお気軽にお問い合わせください!

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