紙コップリサイクルから始める社員の行動変容
三井物産パッケージングでは、パートナー企業と共に紙コップのリサイクル活動を推進しています。プラスチック素材から紙素材に変わった製品は多いものの、結局は同じゴミ箱に捨てられてしまう。そんな違和感から生まれたリサイクルの芽が、オフィスを中心に少しずつ広がっています。
三井物産パッケージング株式会社
私たちは紙やパッケージにまつわる課題解決のプロフェッショナル三井物産パッケージングです。環境配慮型パッケージのご提案、資源循環スキームの構築、プロフェッショナルならではの視点と解決力であなたのビジネスを支援します。
「紙やパッケージにまつわる課題解決のプロフェッショナル」を標榜する三井物産パッケージング。リサイクル・バリューチェーン全般に関わる、商社ならではの強みを生かした環境配慮型パッケージや、資源循環スキームの構築などを提案している企業です。取り扱い製品である段ボールは、主原料の90%以上にリサイクル古紙を使用。そんな同社が新たな紙資源として注目するのが紙コップです。そこに込めた思いと仕組みを聞きました。
リサイクルできる身近な資源 紙コップ
―― まずは紙コップのリサイクルを始めたきっかけを教えてください。
大池 数年前に環境問題がクローズアップされた際、パッケージ業界ではプラスチックをやめて紙素材に変えていこうという流れがありました。ストローが紙素材になった頃です。
しかし、苦労して紙に変えたのに結局はゴミ箱に行ってしまう。そこへの違和感や、せっかく紙に変えたのだからリサイクルしていこうというのが、きっかけのひとつです。
大池 俊行|おおいけ としゆき
三井物産パッケージング株式会社 事業推進室
2008年入社。紙を起点にCVS周辺の国内新規ビジネス立ち上げに従事。2020年より現部署。紙分野が出来る社会課題解決をテーマとして、環境対応に資する新規ビジネス立ち上げを進めている
大池 新聞紙や段ボールなどはリサイクルが定着していますが、活用されていない紙資源というのはまだ結構あるんです。まずは皆さまの身近にある紙コップに焦点を当てようと考えました。
――そもそも紙コップは年間どれくらい消費されているのでしょうか。
大池 日本国内で2021年度に出荷された飲料用カップは約61億個でした。重量換算で3万6千トンになります。とはいえ、紙のマーケットは大きいですから、すべてをリサイクルしても紙資源全体の1%にも満たない量です。
――これまでリサイクルが進んでこなかったのは、そういった量の問題が大きいのでしょうか。
大池 それもありますが、一番の理由としては汚れているということです。原料として使う際は、なるべくそういうものは使いたくないということが大きいですね。
――では、紙コップの回収とリサイクルの流れを教えてください。
大池 飲み終えた紙コップを軽く洗っていただき、専用の回収BOXに入れてもらいます。それをヤマト運輸が回収して、東京資源でストック、そこから日本製紙の工場で段ボールやトイレットペーパーなどにリサイクルされます。
――紙コップのリサイクルは難しい技術なのでしょうか。
大池 紙コップは内側がラミネート加工されていますが、すでに牛乳パックのリサイクルが1980年代よりされていますし、技術的に難しいものではありません。
CLOMAを起点とした業種を超えた出会い
――パートナー企業の多くは、CLOMA(Japan Clean Ocean Material Alliance)を通じて出会ったと聞いています。その団体について教えてください。
大池 海洋プラスチックゴミの問題解決に向け、経済産業省が主体となり2019年に生まれた組織です。業種を超えた関係者が連携して取り組んでおり、当社は紙セクションに属しています。主には、従来プラスチックが使われていたものを紙素材に変え、リサイクル性を上げていく活動をしています。
――再生紙を作っている日本製紙や、紙コップの回収をおこなっている文具・事務用品・オフィス家具メーカーのプラス、OTC医薬品のグラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパンなどもCLOMAでのつながりだとか。
大池 そうです。実証実験のスタートは2020年でしたが、当時はどこも紙コップのリサイクルをやっていませんでした。そのため、どう集めるのか、誰が運ぶのかなどゼロから試行錯誤していきました。
大池 三井物産 本店に協力を依頼して、従業員がコーヒーなどで使用する紙コップの回収からスタートしました。同時に、誰でも簡単に組み立てられ、スタックができる紙コップ専用の回収BOXも制作しました。
箱に入れて蓋をすることで一般ゴミと区分でき、箱型なので運搬も簡便になっている。また、液漏れ対策も施している
―― 仕組みづくりをする中で工夫された点はどこですか。
大池 まずは「洗ってください」とお願いしたときに、どれくらいの方にやっていただけるかが未知数でした。周知も含めてスタートしたわけですが、当初の回収率は非常に低かったです。一方、協力してくれる方はちゃんと洗ってくれることがわかりました。
担当者が定期的にアナウンスしてくれたこともあり、その後は回収率も上がっていきました。継続することで協力者が少しずつ増えていったんです。
三井物産本社でおこなった際の告知POP
飲み残しをなくし、1回すすぐ程度でOK
――紙コップを「洗う」作業は、ひとつのハードルだと思います。実際、どれくらい洗えばよいのでしょう。
大池 リサイクル原料として扱えるレベルという意味では、まずは飲み残しをなくして欲しい。あとは1回程度すすいでいただければ十分です。コーヒーの染みをゴシゴシ取る必要はありません(笑)
——輸送費などリサイクルにかかる費用は、誰がどれくらい負担しているのでしょうか。
大池 まだテスト段階ということもあり、基本的には紙コップを排出された企業に宅急便の費用を負担していただいています。量にもよりますが、年間にすると数万円程度ですので、企業活動としては難しい金額ではないと思います。
―― 将来的にはどんな仕組みを目指しているのでしょうか。
大池 まずは現在の延長線で考えています。我々としては量を集めたいわけではありません。マイボトルなどの活用で紙コップが減るのであれば、そちらのほうを優先していきたい。とはいえ、紙コップをゼロにするのも大変ですから、使ったものは多少お金がかかってもリサイクルしようという考え方なんです。
従業員の意識向上のために採用する企業が増えている
――紙コップの回収に協力してくれる企業は、どのような理由で採用していることが多いのでしょうか。
大池 近年、企業が環境負荷軽減への取組みを強化するケースが増えています。しかし、個々の従業員による具体的な行動はまだ十分とは言えない状態です。現在ご一緒している企業の多くはこの課題を抱えており、環境対応を掲げるうえで行動指針となる活動を模索されていました。
その中で、紙コップは身近なものであり、回収・リサイクルの仕組みが整っていて導入しやすいという理由から取組みが進められています。
――従業員への環境意識づけという意味合いが大きいわけですね。今後はどのように広げていこうと考えられていますか。
大池 首都圏だけでもたくさんオフィスがありますので、まずはこの活動をいろいろな方に知っていただきたいです。あとは競技場などの施設ですね。
親子で気軽に参加できるイベントも人気
――すでに東京ドームシティのフードコートや、アウトレットパークなどでの取組みもスタートしていると聞きます。
大池 東京ドームシティはフードコートにある飲み水用の紙コップからスタートしました。三井アウトレットパーク木更津では、三井物産の
Earth hacksとのコラボレーションでイベントを開催しました。週末にアウトレットで紙コップを回収し、それをトイレットペーパーにして1ヶ月後にお客様にお配りするイベントです。
――紙コップがトイレットペーパーになると、よりわかりやすく親しみが持てますね。
大池 そうなんです。アウトレットはファミリー層が多いこともあり、親御さんがお子さんに説明されたり、皆さん興味を持ってくれました。こういう活動はもっとやっていきたいですね。
――紙コップから紙コップへ再生する、水平リサイクル(※1)の可能性もあるのでしょうか。
大池 技術的には可能です。アメリカではすでにスターバックスなどで採用されています。しかし、日本の場合はそういった商習慣がないのと、古紙の回収方法の違いもあって実例がありません。
しかし、ペットボトルも時間をかけて水平リサイクルが普及してきたので、紙コップも将来的には十分ありえると思います。
※1 水平リサイクル=使用済みの製品を回収し原料として使い、新たな同じ機能の製品を作ること
紙コップをきっかけに 環境に貢献できれば
――最後に、紙コップのリサイクルを通じて叶えたい夢を教えてください。
大池 世の中はリサイクル社会へと変容していくと思います。日本は小資源国ですので、さまざまな取り組みが進んでいくと思いますが、紙コップは消費者が参加しやすい再生可能資源です。
我々の活動が皆さんの行動変容に繋がり、日本や世界の環境問題にわずかでも貢献することができたら、この活動の意義があると考えています。そこを目指して今後も頑張っていきたいと思います。
紙コップのアップサイクル活動をサポートいたします。ご興味ある方は、お気軽にお問い合わせください!
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