今話題のEVシフトとは?日本と海外の現状や今後の取り組みを解説! - Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産

ソリューション次世代電池

最終更新:2024.09.24

今話題のEVシフトとは?日本と海外の現状や今後の取り組みを解説!

脱炭素社会の実現に向け、ガソリン車やディーゼル車から電気モーターを動力源として走行するEVへの転換を目指すEVシフトの動きが活発になっています。
この記事では、日本のEVシフトの現状を欧米や中国と比較するとともに、今後の動向や課題について解説しています。

世界的に推進されているEVシフトとは?

EV(Electric Vehicle)とは、エンジンを使用せずモーターを動力として走行する電気自動車のことです。EVは走行時に二酸化炭素を排出せず、地球環境負荷の小さな自動車として注目されています。「EVシフト」とは、ガソリンなどの化石燃料を使用する自動車からEVへの転換をさしています。
2015年のCOP21で採択されたパリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち(2℃目標)、1.5℃に抑える努力をする(1.5℃目標)」ことが約束されました。地球温暖化を抑止するため、温室効果ガスの排出削減が各国に求められています。二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「脱炭素社会」の構築が急がれており、日本でも2050年カーボンニュートラルが宣言されました。

脱炭素社会を実現するための世界の取り組みはいよいよ本格化しています。EVは、走行時に二酸化炭素を排出しないため、社会の脱炭素化に大きな役割を果たすと考えられていて、ガソリン車やディーゼル車などからEVへの転換が推進されています。

純粋なEVは、電気モーターのみを動力源としていますが、EV以外にもエコカーとして、エンジンとモーターの両方を搭載するハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)や、プラグインハイブリッド自動車(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)、水素と酸素で発電を行う燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)などがあります。世界はEVシフトに向かって動き出していますが、HVやPHV、FCVを広くEVに含めるか含めないかについては、国によって扱いが異なっています。

EVシフトの現状を解説!日本は遅れている?

続いて、EVシフトの現状について、日本のEV普及率、海外のEV普及率を解説します。

日本のEV普及率

脱炭素社会の実現に向け、その役割が期待されているEVですが、日本におけるEVの普及率は、公表されてはいません。

ですが、一般社団法人日本自動車販売協会連合会が集計・公表している自動車の燃料別販売台数によると、2020年でガソリン車が55.7%、HVが37.13%、PHVが0.59%、EVが0.59%でした。また、最新の販売台数(2022年1月)では、ガソリン車が41.2%に減少し、HVが50.4%と大幅に増加。EVの販売台数も増加はしていますが、0.9%と依然として低水準な状況にあるといえます。

海外のEV普及率

日本ではまだまだ普及が進んでいないEVですが、海外におけるEVシフトはどのような状況なのでしょうか。 

EVシフトに積極的なヨーロッパでは、欧州自動車工業会(ACEA)の発表によると、2020年の新車登録におけるEV比率が約5.6%となっており、日本に比べEVの普及が進んできています。ヨーロッパの中でも特に急速にEVシフトが進んでいるノルウェーにおいては、2020年の新車登録におけるEV比率は約54%となっており、世界一のEV普及率を誇ります。

アメリカにおける2020年のEV普及率は約1.8%で、現状はEVの普及があまり進んでいないといえるでしょう。しかし、バイデン政権がEVシフトに積極的であるため、今後急速に普及することも考えられます。中国では2020年のEV普及率が約4.4%で、徐々に普及が進んでいる状況です。

EVシフトの目標や今後の取り組み、日本と海外それぞれについて紹介

各国において普及率に大きな違いがあるEVですが、EVシフトは今後どうなっていくのでしょうか。日本や海外のEVシフトへの取り組みを紹介します。

日本の目標や今後の取り組み

日本では、当時の菅総理大臣が2021年1月18日の施政方針演説において、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」ことを宣言しました。日本の目標では、電動車としてEVだけでなくHVやPHV、FCVなども含めています。世界的なEVシフトへの潮流のなかで、日本でも明確な方針が打ち出されたことで、国内のEVシフトは、これまでよりも進んでいくと考えられます。

自動車メーカーもEVシフトへの姿勢を表明しており、例えばトヨタは、2030年までに自動車の電動化投資として8兆円、そのうちEVに対しては車載電池の開発など4兆円をあてることを発表しました。また、トヨタはこれまでは「2030年までにEVとFCVをあわせて世界販売台数200万台」を目標としていましたが、「2030年までにEVだけで世界販売台数350万台」と目標を大幅に引き上げました。他の自動車メーカーも各社EVシフトの方針を打ち出しており、EVの普及が加速的に進んでいく可能性もあります。

海外の目標や今後の取り組み

世界のEVシフトはどうなっていくのでしょうか。

ヨーロッパでは、成長戦略「欧州グリーンディール」のなかで、2035年までに自動車の二酸化炭素排出量を100%削減する目標を掲げています。これはつまり、2035年までにPHVやHVも含めたガソリン車、ディーゼル車の新車販売を禁止し、すべてを電気自動車とする完全EV化を示しており、日本よりも厳しい基準でEVシフトを進めています。

また、アメリカではバイデン政権下でPHVをEVに含め、2030年までにEV化率50%以上とする大統領令が出されました。これにあわせて、ゼネラルモーターズ(GM)、フォード、ステランティス(クライスラーの親会社)のビッグ3が、EVシフトを進めていく声明を共同で発表するなど、アメリカでもEVシフトが加速していく見込みです。

中国では、EVにPHVやFCVを加えた電動車の割合を、2035年までに50%以上とする目標を掲げています。中国では、EVとPHV、FCVがあわせて「新エネルギー車(NEV:New Energy Vehicle)」と名付けられていて、新エネルギー車の普及を進めるため、2019年に罰則付きの「ダブルクレジット規制(NEV規制+CAFC規制)」が導入されました。自動車メーカーは、一定の割合で新エネルギー車の販売を義務付けられている(NEV規制)ほか、それぞれの自動車メーカーが販売した全自動車の平均燃費にも規制が設けられています。(CAFC規制)

※CAFC規制は自動車メーカごとの企業平均燃費(CAFC)を管理する規制

EVシフトの課題

各国でいよいよ本格的に進み始めているEVシフトですが、そこには課題もあります。まず、EVは電気を動力源にしています。電気モーターを使用している自動車からは、走行中に二酸化炭素は排出されませんが、そもそも発電時の二酸化炭素排出量を減らさなければ、EVシフトによる脱炭素化に充分な効果を得ることはできません。つまり、EVシフトは、発電における再生可能エネルギーの導入促進など、発電所における脱炭素化とあわせて考える必要があります。

また、いまだEVの車種が少ないため、消費者の選択肢が限られてしまっていることも課題です。EVの選択肢がほとんどないために、これまで通りガソリン車やディーゼル車が購入されてしまう状況にあり、自動車メーカーにはEVの選択肢を増やすことが求められています。そして、販売価格がガソリン車より高いことも、EVの普及が進まない一因となっています。

さらに、EVの急速充電設備が不足していることも大きな問題です。EVの急速充電設備は、ガソリン車やディーゼル車におけるガソリンスタンドに相当します。日本では現在急速充電設備が8,000基ほどありますが、全国にガソリンスタンドがおよそ3万か所あることを考えれば、まだまだその数は十分であるとはいえません。こういった状況を踏まえ、政府は急速充電設備を2030年までに全国3万基に拡大する目標を掲げており、充電インフラを整えEVシフトを後押ししたい考えです。

EVシフトが、日本国内の産業や経済に与える影響も無視することはできません。
自動車産業は日本の主要産業の1つです。EVシフトによって自動車の部品点数が減少すれば、これまで自動車部品生産を行っていた国内中小企業への影響も大きく、これによる日本経済へのダメージは避けられません。EVシフトは経済的ダメージとバランスを取りつつ進めていく必要があります。

日本の国内自動車業界とは反対に、ドイツを除くヨーロッパや中国においてEVシフトは経済の追い風となります。そのためEVシフトに関連した事業では、政治による強力な支援を受けることが可能です。

こういった動きに合わせて、日本の企業も海外でのEV関連事業を進めており、三井物産のEV/電池システム関連技術は、ポルトガルやフランスのEVシフトに貢献しています。
詳しくは「次世代電池」「水素」をご確認ください。
脱炭素社会を実現するため、大きな役割が期待されているEV。各国でEVシフトが進められており、日本もその例外ではありません。現在のところ日本のEV普及率は低い水準にありますが、EVシフトに向かう世界の潮流は大きく、日本においてもEVシフトが進んでいくことは間違いないといえるでしょう。

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