Green&Circular 脱炭素ソリューション

コラム

最終更新:2024.06.03

次世代への架け橋 -太陽光発電が現在の最適解である理由-

「脱炭素」をキーワードにしながら、新しいことに挑戦し続ける方々に話を聞く新連載『未来を拓くリーダーたち』。記念すべき第一回は、太陽光発電システムの設計・施工・販売のみならず、運転管理や保守管理、関連製品の開発・製造など多岐に渡り手がけ、太陽光発電協会(JPEA)の理事やJPEAが組織する「地域共創エネルギー推進委員会」の委員長も務められている、XSOL(エクソル)代表取締役社長・鈴木伸一氏に登場いただきました。

太陽光発電の必要性を環境面だけでなく、ライフラインの維持、エネルギー・セキュリティの確保、紛争問題、豊かさの格差など、複合的な視点で語るXSOL(エクソル)代表取締役社長・鈴木伸一氏。「PV100年構想」や、住宅における「太陽光発電システムの標準化」「格付け制度」という発想はいかに生まれたのか、『Green & Circular』編集長が迫ります。

太陽光発電の普及期に考えていたこと

上野 鈴木さんは、以前から太陽光発電に対して明確なビジョンを描き、各所で発信されています。また、行政や幅広い関係者を巻き込みながら多くを実現してこられました。講演などでは「利他」や「共創」という言葉を使われますが、その背景を知るためにも、まずはこれまでの経歴を教えてください。
鈴木 私は1982年に三菱電機に入社し、家電のセクションで主に電材・住設(電気で動く住宅設備全般)を担当していました。その中のひとつに太陽光発電システムがあったわけです。三菱電機はもともと宇宙衛星用の太陽光発電をやっていましたが、1995年より民生用も手がけるようになりました。
鈴木 伸一|すずき しんいち株式会社エクソル 代表取締役 社長1982年三菱電機入社。1995年より太陽光発電システム事業に従事。2013年太陽光発電協会事務局長。2015年エクソル入社、代表取締役副社長を経て2016年より現職
鈴木 伸一|すずき しんいち
株式会社エクソル 代表取締役 社長
1982年三菱電機入社。1995年より太陽光発電システム事業に従事。2013年太陽光発電協会事務局長。2015年エクソル入社、代表取締役副社長を経て2016年より現職
上野 そこからは太陽光発電一筋ということですね。
鈴木 途中でエアコンなどもやっていました。余談ですが霧ヶ峰『ムーブアイ』は私が商品企画したものです。
上野 そうなんですね、ヒット商品も手がけられている。
上野 昌章|うえの まさあき『Green & Circular』編集長三井物産株式会社 デジタル総合戦略室DX第二室 兼デジタルテクノロジー戦略室  次長。1993年入社、情報産業本部やプロジェクト本部において、ITや再生可能エネルギー関連の新規事業開発に従事。2020年10月よりデジタル総合戦略部にて脱炭素関連事業のDXに取組む
上野 昌章|うえの まさあき
『Green & Circular』編集長
三井物産株式会社 デジタル総合戦略室DX第二室 兼デジタルテクノロジー戦略室 次長。1993年入社、情報産業本部やプロジェクト本部において、ITや再生可能エネルギー関連の新規事業開発に従事。2020年10月よりデジタル総合戦略部にて脱炭素関連事業のDXに取組む
鈴木 その後、2009年に再び太陽光発電を手がけるようになり、販売企画責任者になりました。政府が「グリーン・ニューディール」を打ち出して、住宅用の補助金制度が復活した頃です。
上野 はい。その後FIT制度が導入され、急激に市場が拡大していきましたね。
鈴木 そうですね。そして2013年より太陽光発電協会の代表理事会社を三菱電機が承ることになりました。当時はFIT価格(2012年〜)にともなう国民負担をどう抑えるかなど課題が山積でしたので、現場も販売も知っているということで、私が事務局長を命じられたわけです。
※FIT制度と国民負担(再エネ賦課金)の関係について詳しく知りたい方は、「再エネ賦課金とは?再生可能エネルギー発電促進賦課金を徹底解説!」をご覧ください
上野 太陽光発電の歴史のなかでも、まさに佳境の時代ですよね。その頃私も多数のメガソーラー開発をおこなっていたのですが、さまざまな問題の解決のために太陽光発電協会に参加させていただき、鈴木さんに助けていただきました。
鈴木 激動の2年間でした。おかげさまで短期間ながら業界を勉強させていただき、今後に対する問題意識も生まれたわけです。
上野 事務局長の任期が終わってすぐ、エクソルに転職されるわけですよね。当時の問題意識というのは、どういったことだったのでしょう。
鈴木 発電効率の性能差が話題でしたが、そこに大きなブレイクはないだろうと。むしろそれをどう設置するか、システムとしての設計が重要になると考えていました。

当時、住宅用はパネル・パワーコンディショナー・架台にいたるまで「パッケージ」で供給し保証もしていました。一方、産業用は完全に「コンポーネント」の世界です。いずれ住宅用もそうなるだろうと。そのときに、どこがユーザー保証をするのか、保守・点検をするのかということが課題になる。メーカーは自社製品の保証しかしませんから。

つまり、設置の仕方や活用の仕方などプランが多様化するなかで、そこを束ねるノウハウやスキルが重要になってくるとは感じていました。
上野 さすがの先見性です。
鈴木 現・資源エネルギー庁次長の松山泰浩さんは、当時から「PV100年構想」※1 という話をされていました。FITの買取り期間である20年が終わったら、すべて無くなっていいのかと。太陽光発電はエネルギーインフラですから、国営ではないけれど国策に近いわけです。
※1 PV(Photovoltaic)=太陽光発電の意味

太陽光発電なら井戸水のように電気をまかなえる

上野 鈴木さん自身も、太陽光発電が重要なインフラになると考えていたのでしょうか。
鈴木 よく驚かれるのですが、太陽光発電が将来的にも中核になり続けるとは思っていません。さらに言えば、原発完全否定派でもない。既存の原発技術はもともと原子爆弾用に開発されたものですから、安全性に問題があるとは思っています。

核に限らず、将来的に技術が進化すれば安全で効率的な新しいエネルギー源が生まれると思います。ただ、我々が生きているうちには間に合わないかもしれない。それまでは、再生可能エネルギーがつなぎ役になると考えています。
上野 化石燃料はCO2排出の問題がありますからね。
鈴木 そうですね。でも、CO2の問題だけではないんです。エネルギーというのは、国民の生命を守る「セキュリティ」にも直結しています。実際、国際紛争の約70%が化石燃料の取り合いから生まれています。

また、私が子どもの頃は、石油はあと50年で枯渇すると言われていました。しかし、今もまだ枯渇する様子はなく、その消費先を生み出すために、本来は必要のないものまで石油由来の製品を開発してきた。CO2の問題も含め、すべては人間の意思であり、自分さえ良ければいいという「エゴ」が根底にあると考えています。
上野 確かにそうですね。
鈴木 もしも昔の井戸水のように、自分たちが必要な分だけの電気を自分たちでまかなえたら、解決できることがたくさんあるんですよ。「自給分散化電源」ということですが、それは今のところ太陽光発電しかない。
上野 風力や水力はそう簡単にできない。
鈴木 ドラマ『北の国から』の主人公・黒板五郎さんは風力発電を使っていましたが、今なら太陽光発電でしょうね。ヨーロッパは風力も多いですが、大きな発電所から配電する必要があります。つまり、日本だと電力系統の問題が出てくる。それならば、セキュリティ面も含めて、自分が使う電気は自分で作ろうと考えると、やっぱり当面は太陽光発電しか残らないわけです。

仕事はお金を稼ぐためにやっているのではない

上野 利他的・共創的なお考えは、事務局長などの経験から育まれてきたものなのでしょうか。
鈴木 もともと「仕事はお金を稼ぐためにやっているのではない」という考え方なんです。これは松下幸之助さんも稲盛和夫さんも言われていることで、私のオリジナルでもなんでもない。誰かのお役に立つことが、結果的に自分たちの暮らしを成り立たせるものとして、利益や給料として返ってくるだけなんです。

お金稼ぎだけが目的の方もいますが、それは自由意志なのでいいと思います。でも、それでは「幸せな人生だった」と感じながら晩年を迎えられないと思います。「因果応報」というのは、道徳的な教えではなくて一つの法則だと思っているんです。それは仕事だけでなく家庭でも同じです。「利他」は「自分の幸福」のためにある「法則」です。

清濁合わせ呑む覚悟のうえで生まれたFIT制度

上野 初期FITは買取り価格の高さもあり、さまざまな方が参入されました。世間的には、太陽光発電にネガティブなイメージも生まれました。
鈴木 それは当初からわかっていました。何事もメリット・デメリットがあり、諸外国に比べて日本人は慎重なんですよ。そんな風土の中で、民間の力を借りながら新しいインフラをスタートするためには必要なことでした。「1kWhあたり42円は高すぎた」という方もいますが、もっと安い値段でやって鳴かず飛ばずだったらどうするのかということです。まずは「現象/現証」を作り出さないといけない。

デメリットも生まれることをわかったうえで、腹をくくってやった志がある人たちがいるわけです。先ほどの「PV100年構想」も、それを見据えたうえで話をしていたわけです。でもね、お金儲けだけを考えて参入した志を持たない人たちは、FITの買取り期間である20年も持たなかった。

トイレやキッチンのように太陽光発電も標準装備になる

上野 住宅向けでは「太陽光発電設置義務化」という話も生まれています。鈴木さんのお考えで共感したのは、太陽光もいずれトイレやキッチンのような標準設備になるだろうという話です。
鈴木 間違いなく、なります。反対意見のひとつに「住宅価格が上がる」というのがありますが、上がらないですよ。家というのは何千万円もしますから、そのなかで軽自動車一台分くらいの価格は何かしらのコストダウンで吸収できます。

太陽光発電システムを標準化することは、住宅販売における競争優位性に貢献して売り上げアップにつながっていくと思います。ユーザーからしたら、いざというときに停電にならず電気代も安くなるわけですから。
上野 御社が格付け制度をスタートされたのも、そこを見越してのことでしょうか。
鈴木 住宅用は高品質なものがすでにパッケージ化されているので、格付けは必要ないんです。住宅メーカーさんがそもそも採用してくれませんから。何か問題があったときに対応できない業者は参入できない。

住宅用における現在の問題は、(取り付け)工事能力のキャパシティが足りていないことです。大手ハウスメーカーさんは、これまでも装着率が高かったので問題ないですが、中堅クラス以下は10%以下。これが義務化になったら大変ですよ、業者がいない。すでに破綻が起きています。
上野 そうなんですね。
太陽光発電設置における工事能力のキャパシティ不足を解消するため、エクソルが提案している「全棟搭載アライアンス」の仕組み
太陽光発電設置における工事能力のキャパシティ不足を解消するため、エクソルが提案している「全棟搭載アライアンス」の仕組み

産業用太陽光発電の格付けをはじめた理由

鈴木 格付けが必要なのは産業用です。産業用は規模も大きいですし、もともとコンポーネントで納品されている。先日、太陽光発電所の火災が起きましたが、あれは蓄電池が燃えたんですね。そうなるとどこが補填するのかと、電池のことだから知りませんというわけにもいかない。

そういった問題も含め、総合鑑定士のようなものが必要なんです。でも、太陽光発電の歴史の中で、それをやった人、できる人がいないんですよ。
上野 難しさはどこにあるのでしょう。
鈴木 すでにできあがっているものを鑑定しなくてはいけません。地中に埋まっているものや、配線が終わっているものをチェックする。しかも発電し続けているのでバラすわけにもいかない。相当ハードルが高いんです。
上野 FIT制度では、ある一定の要件を満たして発電さえしていれば認定されていました。
鈴木 そのせいで、大雨が降ったら流れてしまう設備も生まれてしまった。制度の不備と言えばそうですが、先ほどの話のようにある程度は仕方がないんです。ただ、そのまま放置していては社会的責任が果たせないので、遅まきながらでも品質が怪しいものはすべてサーベイ(調査)しようというのが格付けです。新規ビジネスというよりも、インフラの再活性化ですね。
上野 仕事とは「誰かのお役に立つためのもの」というお考えとはいえ、その志に感服します。
鈴木 本当はいろいろな会社に参入してきてほしいんです。企業格付けでも何社かあるように、お互い切磋琢磨して社会の信頼性や安全性を高めていきたい。でも、なかなか参入できない理由がふたつあります。一つは儲からない。もう一つは、格付けした後に問題が起きたら訴訟問題になってしまう。つまり、格付けした際に「保証しろ」となってしまうんです。なので、我々もいまは大手の保険会社と組んでやっています。

太陽光発電は次世代へのバトン

上野 FIT制度における参入計画の多くは、まずは20年限りのものとして考え、撤去費用もコストに入れて採算があえばいいみたいな風潮でした。そうではなく、長期的に100年使えるものにするのか、やめてしまうのか、その境目にきていますよね。
鈴木 科学の進歩で新しい電源が生まれることを想定すると、100年という期間は妥当かなと思うんです。100年使い続けられたら、次の世代へバトンを渡すことができる。

太陽光発電は社会資本の一つです。とはいえ資本主義国ですから、経済合理性を持ちながら、エネルギー自給率の低い日本で、孫の代まで暮らしを守るために使い続けなくてはいけない。そういう志を持った人たちが増えてくれば、結果としてビジネスにもなっていくと考えています。
上野 なるほど、太陽光発電もまだまだやるべきことがたくさんありますね。鈴木さんにはぜひ、今後も業界を引っ張っていっていただければと思います。本日はありがとうございました。

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