・国際間大規模液化CO2海上輸送の実現に向け、標準化検討を進める低圧仕様の液化CO2輸送船のAiPを取得
・日本政府が進める将来のCCS事業への適用をはじめ、液化CO2輸送船の早期市場投入に向け準備を加速
三井物産株式会社(社長:堀 健一、本社:東京都千代田区)、川崎汽船株式会社(社長:明珍 幸一、本社:東京都千代田区)、株式会社商船三井(社長:橋本 剛、本社:東京都港区)、今治造船株式会社とジャパン マリンユナイテッド株式会社の共同営業設計会社である日本シップヤード株式会社(社長:檜垣 清志、本社:東京都千代田区)、日本郵船株式会社(社長:曽我 貴也、本社:東京都千代田区)、三菱商事株式会社(社長:中西 勝也、本社:東京都千代田区)、三菱重工グループの三菱造船株式会社(社長:上田 伸、本社:東京都港区)は、低圧仕様の液化CO2輸送船(LCO2輸送船)の2船型について、アメリカ船級協会(ABS、本部:テキサス州)および一般財団法人日本海事協会(NK、本部:東京都千代田区)から基本設計承認(Approval in Principle : AiP)*1を取得しました。
授与式は、天然ガス・LNG・水素など世界のエネルギー環境問題に関する大規模国際会議「ガステック2024(Gastech 2024)」の会場となったアメリカ・ヒューストンのGeorge R. Brown Convention Centerで9月17日に行われました。
国内で回収したCO2を貯留地に向けて輸送する各CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)プロジェクトにおいて、今後海上輸送の手段としてLCO2輸送船の需要拡大が見込まれます。三菱造船、日本シップヤード、三井物産、三菱商事では、日本国内での安定的なLCO2輸送船の建造・供給、CCSバリューチェーンの実現と経済性向上を目的に、各プロジェクトを横断したLCO2輸送船の標準化や建造サプライチェーンの確立に取組んできました。今回、国内の主要船社である川崎汽船、商船三井、日本郵船を加え、AiPの取得に至りました。
AiPを取得したLCO2輸送船は、長距離大量輸送を見据えた低圧仕様の5万m3級および2万3,000m3級の2船型で、貨物タンクの鋼材として従来のニッケル鋼に代わる適切なタンク鋼材の適用を前提としているほか、その製造工程の確立において重要な課題となる溶接後熱処理(PWHT)*3をECA*4と呼ばれるエンジニアリング的アプローチにて省略するプロセスを含みます。
三井物産は、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の令和5年度「先進的CCS事業の実施に係る調査」に関する委託調査業務としてのマレーシア沖南部CO2貯留サイトの採択など、CCS事業の早期立ち上げに向けて積極的に事業開発を進めています。今後もエネルギーバリューチェーン開発の知見と、広範なビジネスネットワークを活用し、グローバルなCCS事業の展開を通じて、「環境と調和した社会」の実現に向けて貢献していきます。
*1 基本設計承認(Approval in Principle : AiP)とは、認証機関が基本設計を審査し、技術要件や安全性の基準を満足すると承認されたことを示すものです。今回は液化ガスをばら積で輸送する船舶に適用されるIGCコード*2および各船級(ABS,NK)規則に基づき、審査が実施されました。
*2 IGCコード(正式名称:International Code for the Construction and Equipment of Ships Carrying Liquefied Gases in Bulk)とは、LCO2やLNGなどの液化ガスをばら積貨物として輸送する船舶の安全要件が規定された国際規則のことです。
*3 溶接後熱処理(Post Welding Heat Treatment : PWHT)とは、溶接施工後に構造物を再加熱し、一定温度で一定時間保持することで溶接施工時に発生した残留応力を低減し、溶接継手部の品質を改善する効果を狙うものです。このプロセスは構造物を専用の炉に入れて行われることが一般的であり、大型構造物を対象とする場合、炉のサイズとの関係で製品製造のボトルネックになることがあります。
*4 Engineering Critical Assessment : ECAとは、溶接構造物の安全性を評価する手法で、溶接部に含まれる微小な初期欠陥と予想される応力履歴を用いて、材料および溶接の特性から、構造物の使用年数中に溶接継手に重大な品質上の問題が発生しないこと確認するものです。
三井物産のマテリアリティ(重要課題)
三井物産は、「世界中の未来をつくる」を企業使命に、さまざまなステークホルダーの期待と信頼に応え、大切な地球と人びとの豊かで夢あふれる明日を実現すべく、サステナビリティ経営の重要課題としてマテリアリティを特定しています。 本件は、5つのマテリアリティの中でも、特に「環境と調和する社会をつくる」の実現に資する取り組みです。
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安定供給の基盤をつくる
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豊かな暮らしをつくる
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環境と調和する社会をつくる
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新たな価値を生む人をつくる
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インテグリティのある組織をつくる