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量子乱数を活用した「量子コンピュータ耐性AIプラットフォーム」を構築

2023年12月13日


三井物産株式会社(本社:東京都千代田区、社長:堀 健一、以下「三井物産」)、EAGLYS株式会社(イーグリス、本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:今林 広樹、以下「EAGLYS」)、Quantinuum(クオンティニュアム、本社:米国コロラド州ブルームフィールド市、CEO:Rajeeb Hazra、以下「Quantinuum」)の3社は、世界初となる量子乱数を活用した「量子コンピュータ耐性AIプラットフォーム」を構築しました。
三井物産とEAGLYSは、2022年より、異なる事業者間で安全性を維持したまま機密データとAIモデルを共有・連携することが可能な秘密計算プラットフォームの構築と社会実装に取組んできました(*1)。今回、Quantinuumが参画することで、今後懸念される量子コンピュータを悪用した攻撃に対してもより高度なセキュリティ環境を実現する、「量子コンピュータ耐性AIプラットフォーム」の共同提案を加速します。
具体的には、EAGLYSの秘密計算プラットフォーム「DataArmor(データアーマー)」にQuantinuumの量子サイバーセキュリティ製品「Quantum Origin(クオンタム・オリジン)」が生成する量子乱数を統合し、量子コンピュータによる将来の解読リスクに備えながら、AI活用可能なサービスを提供します。

1. 背景

量子コンピュータは、2035年には約100兆円規模の価値創出が予測されており(*2)、実用化に向けて急速に技術開発が進められていますが、同時に量子コンピュータによる暗号アルゴリズムに対する新たな脅威が予想されています。一例として、現在広く普及している暗号アルゴリズムのひとつであるRSA暗号方式(*3)が将来的に解読され、秘匿データが露見するリスクが指摘され、悪意のある第三者による「Hack now, Decrypt later(*4)」と呼ばれるサイバーセキュリティ攻撃等に対する注意喚起がなされています。このような脅威への対策として、量子コンピュータ時代を見据えた暗号アルゴリズムや暗号鍵を利用したデータならびにAIの保護は、産業界にとって喫緊の課題となっています。

2. 世界初となる量子乱数を活用した量子コンピュータ耐性AIプラットフォーム

化学素材開発や創薬、金融、リテール等の産業領域では、異なる事業者間での安全性を維持したまま機密データとAIモデルを共有・活用するニーズが高まっています。今回、量子コンピュータに対し数学的安全性を有する格子暗号をベースとした完全準同型暗号と、Quantum Originの量子乱数を組み合わせ、「秘密計算x量子技術」による量子コンピュータ耐性AIプラットフォームを構築いたしました。今後、本プラットフォームを活用したユースケース検討・創出に3社で取り組んでまいります。

DataArmor GateAIについて

EAGLYSの準同型暗号技術を利用した秘密計算プロダクト。AIモデルの学習推論、データ入出力処理を暗号状態で実行可能なため、AIを利用したサービスのセキュアな構築が可能。アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が標準化を進める耐量子計算機暗号(PQC)候補である「格子暗号」ベースでの準同型暗号を利用している。
サービス紹介ページ

Quantum Originについて

Quantinuumが開発した量子コンピュータを利用した暗号鍵プラットフォーム。量子コンピュータ由来の予測不可能な乱数を生成することが可能で、非常に強固な暗号鍵を提供するサービス。既存の暗号アルゴリズムだけでなく耐量子計算機暗号(PQC)にも対応。
サービス紹介ページ

*1 EAGLYS・三井物産で秘密計算PoCを実施|EAGLYSのプレスリリース(2022年11月 prtimes.jp)
*2 出典:Boston Consulting Group "Quantum Computing Is Becoming Business Ready"(2023年5月)
*3 RSA暗号:公開鍵暗号方式等に広く活用される、素因数分解の難しさを利用した暗号アルゴリズム。
*4 "Hack now, Decrypt later":現在ネットワーク上にある大量の暗号化されたデータを収集し、将来高性能な量子コンピュータが実用化されてからその暗号データを解読する、サイバー攻撃手法。

会社概要

会社名 EAGLYS株式会社(イーグリス)
所在地 東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目27-3 やまとビル7F
設立年 2016年12月
代表者 代表取締役社長 今林 広樹
事業概要 EAGLYSは、AI・秘密計算によるインダストリーデータの活用を促進するPrivate AIプラットフォームを提供する企業です。業界各社の秘匿データ収集からAI・データ活用を支える基盤の提供と、それを実現する要素技術の応用研究が強みです。『世の中に眠るデータをつなぐハブとなり、集合知で社会をアップデートする』というビジョンの下、様々なお客様のAIならびにデータのコラボレーション促進を支援しております。
ウェブサイトURL

https://eaglys.co.jp/

会社名 Quantinuum(クオンティニュアム)
所在地 米国コロラド州ブルームフィールド市
設立年 2021年12月(米Honeywell Quantum Solutionsと英Cambridge Quantum Computingが経営統合)
代表者 CEO Rajeeb Hazra、日本法人代表取締役CEO 結解 秀哉
事業概要 Quantinuumは、Honeywell Quantum SolutionsのハードウェアとCambridge Quantumのミドルウェアおよびアプリケーションを併せ持つ量子コンピューティング企業です。科学主導・企業駆動(science led, enterprise driven)で、量子コンピューティングと化学、サイバーセキュリティ、金融、最適化などのアプリケーションの開発を加速しています。エネルギー、物流、気候変動、ヘルスケアなどの分野で、世界で最も差し迫った問題を解決するためのスケーラブルで商業的な量子ソリューションを創造することに重点を置いています。米国、欧州、日本の9つの拠点で、350名以上の科学者を含む480名以上の従業員を擁しています。
ウェブサイトURL

https://www.quantinuum.com/

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「量子コンピュータ耐性AIプラットフォーム」イメージ「量子コンピュータ耐性AIプラットフォーム」イメージ

三井物産のマテリアリティ(重要課題)

三井物産は、「世界中の未来をつくる」を企業使命に、さまざまなステークホルダーの期待と信頼に応え、大切な地球と人びとの豊かで夢あふれる明日を実現すべく、サステナビリティ経営の重要課題としてマテリアリティを特定しています。 本件は、5つのマテリアリティの中でも、特に「豊かな暮らしをつくる」、「環境と調和する社会をつくる」、「新たな価値を生む人をつくる」の実現に資する取り組みです。

  • 安定供給の基盤をつくる

    安定供給の基盤をつくる

  • 豊かな暮らしをつくる

    豊かな暮らしをつくる

  • 環境と調和する社会をつくる

    環境と調和する社会をつくる

  • 新たな価値を生む人をつくる

    新たな価値を生む人をつくる

  • インテグリティのある組織をつくる

    インテグリティのある組織をつくる

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