Green&Circular 脱炭素ソリューション

ソリューション最適化

最終更新:2024.01.18

BEMS(ベムス)とは?導入のメリットや課題、気になる補助金についての解説

再生可能エネルギーの利用のように、これまでと違うエネルギー源に注目が集まっている一方、エネルギーの利用方法を見直し、消費を削減していこうという取り組みも進められています。
建物内の使用電力を計測・監視・制御することで、建物全体のエネルギー使用を最適化する「BEMS」も、そうした取り組みのひとつです。ただし、メリットの一方でコスト面の課題も残されています。
この記事では、BEMSを導入するメリットや課題について解説します。

BEMS(ベムス)とは?建物のエネルギーを「見える化」するシステム

BEMS(ベムス)とは「Building Energy Management System」の略であり、「ビル・エネルギー管理システム」を意味します。さまざまな場所で導入されるEMS(エネルギー管理システム)のなかでも、会社や病院、商業ビルなどの施設に導入されるものを指す言葉です。
EMSはエネルギーの消費量を分析・管理するシステムの総称であり、快適性と生産性を両立しながら、効率の良いエネルギー消費を実現します。過去のエネルギー使用状況を分析して、場所ごとに自動制御を行い省エネ化することも可能です。BEMSもそうしたEMSのひとつとして、建物に導入されています。
EMSは、エネルギーマネジメントの対象によって、一般住宅向けの「HEMS」、工場向けの「FEMS」、地域向けの「CEMS」、集合住宅向けの「MEMS」などと呼ばれています。

BEMSが求められる背景は、省エネと温室効果ガス排出削減

環境省によれば、BEMSの普及率は、2013年に8%であったものが、2019年には17.6%となり、2025年には37%、2030年には48%とする計画です。BEMSはこの5年で飛躍的に拡大し、今後さらに普及が進むと考えられます。
環境省「2021年度における地球温暖化対策計画の進捗状況」(2023年11月8日閲覧)
こうした普及の背景には、気候変動に対する関心の高まりと、それに伴って企業レベルでの省エネが求められていることが挙げられます。SBTなどの国際的環境イニシアチブの広がりも普及の後押しとなりました。企業が温室効果ガスの排出を削減することによるメリットが拡大したことで、BEMSの重要性が高まっています。
SBTについては「SBTとは?用語の意味や取り組みのメリット、認定条件を解説!」で詳しく解説しています。

BEMSを企業が導入するメリットと課題

BEMSの導入による具体的なメリットと、残されている課題について紹介します。

メリットは、コスト削減と温室効果ガス削減、設備のデータ化

BEMS導入の最もたるメリットは、光熱費の低減です。電力使用量に応じて、常時機器を自動制御するため、トータルでの光熱費を抑えることができます。実際に、BEMSを導入することによって約10%のエネルギー削減効果を実現した建物のデータもあります。
最大デマンド値を設定し、電力消費が最大値を超えそうになったタイミングで自動制御が入るデマンドコントロールを設定することも可能です。証憑量(契約電力量)を低く設定することで、契約料金を抑えることができます。
こうした取り組みは、光熱費の削減に加えて、各企業に課せられた温室効果ガス排出量制限の達成に貢献し、環境配慮型の企業として内外にアピールすることにも役立ちます。
また、設備機器の稼働データを管理できるため、経年劣化への対応やメンテナンスの判断が迅速にできるというメリットもあり、設備の長寿命化や大きなトラブル回避に役立ちます。

課題は初期費用

現状では初期費用の高さが課題として残されています。どれだけ小規模に使用しても、複数の計測器やサーバーまわりの工事は最低限必要です。
上述したメリットを最大化するためには、創エネ設備(太陽光発電パネルなど)や蓄エネ設備の設置も別途求められます。また、大きな効果を求めて規模を拡大するほど、初期費用もかさんでいきます。

BEMSの導入企業を紹介

BEMSはすでに多くの施設に導入され、実際に効果を出しています。具体的な導入事例をご紹介しましょう。

西川コミュニケーションズ株式会社

西川コミュニケーションズ株式会社は印刷業の企業です。電気料金、CO2削減を実現するため、2013年に7階建て(延床面積約2,700㎡)の自社ビルにBEMSを導入しました。
電気使用状況を見える化し、不要な空調や照明を消す。デマンドコントロールによって空調を自動制御するなどの施策により、BEMS導入後は、年間約29万円の基本使用料削減、月間11,136kWhの電力使用量削減を実現しました。費用は、システム導入費として100万円、ランニングコストとして3,240円が毎月発生しています。

脳神経リハビリ北大路病院

脳神経リハビリ北大路病院は2015年に、4階建て(延床面積2,776㎡)のビル内にBEMSを導入しました。導入費用として約300万円発生しており、そのうち50万円を補助金で充当しています。
導入効果として、年間約170万円のコスト削減、約33,000kWhの電力使用量削減を実現しました。電力デマンドに関するスタッフ内の理解者が増え、省エネへの意識が向上したことも効果として挙げられています。

那覇空港国内線ターミナルビル

那覇空港国内線ターミナルビルでは、空調用冷水システムや照明システム効率化のために、2003年からBEMSを導入しました。2008年の調査では、導入前の6.4%にあたる約400,000kWh/月の削減を報告しています。
システムが巨大である分、大きな電力削減効果を上げることができました。

BEMSに関連したソリューションの例

建物の中でも大きな電力を消費する空調については、三井物産がダイキンと共同で、サブスクリプション型の空調サービス「エアアズアサービス:Air-as-a-Service」を提供し、これを通して省エネ、ひいては施設オーナーの脱炭素化に貢献しています。
月額固定料金で快適な空調環境をご利用頂くサービスで、IoTによる予兆保全や、空調における省エネの支援を長期に亘って行うことで、光熱費の削減を実現します。さらに、法定点検や定期的なメンテナンスもフルアウトソースが可能なサービスです。
Air-as-a-Serviceについて詳しくは「Air-as-a-Service/ダイキンとの共同事業 – Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産(mitsui.com)」をご覧ください。

BEMS(ベムス)に関連した補助金の詳細

BEMSの導入にあたり確認していただきたいのが補助金です。BEMSそのものへの補助は平成25年に打ち切られていますが、2022年度実施のZEB(Net Zero Energy Building)補助金のなかでBEMSの導入をカバーしています。

具体的には以下のような内容です。
環境省:二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金業務用施設等におけるネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)化・省CO2促進事業
対象者:公共施設・民間建築物

経済産業省:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業
対象者:民間建築物(延床面積2,000㎡以上)の場合

ZEBについて詳しくは「ZEB(ゼブ)とは?メリットや導入事例をわかりやすく解説」をご参照ください。
今回事例としてご紹介した一般企業や医療施設のように、BEMSによって恩恵を受ける施設は少なくありません。コストについては現状の大きな問題になっていますが、 ZEBなどの 補助制度を利用することで現実的に解決可能になります。
エネルギー消費が課題になっている現場の方は、ぜひBEMSの導入をご検討ください。

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