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CSOメッセージ

当社の事業ポートフォリオの組合せは自由自在。
これを活かすことで、
社会課題にインパクトを与える事業に取り組んでまいります

代表取締役 専務執行役員
CSO(チーフ・ストラテジー・オフィサー)

佐藤 理

本統合報告書では、成長戦略と企業価値向上のつながりを示し、事業ポートフォリオの良質化を企業価値向上の鍵と位置づけていますが、事業ポートフォリオについてのお考えを教えてください。

私たち三井物産は、時代に合わせて攻め筋を設定し、長年にわたり多くの産業でコア事業を築いてきました。その結果、事業領域をまたがった組合せのパターンを自由自在につくり出すことができるようになりました。

日本では、1990年代後半から「選択と集中」という言葉がよく使われていましたが、当社は総合商社として真逆の戦略をとっています。現在のビジネス環境はボラティリティが高く、そのような状況では、多様な事業ポートフォリオを有すことが分散効果を生み、リスク耐性と競争優位性を高めます。また、単に複数の事業や事業群を保有するだけでなく、その多数の組合せの中から最適なものを選択することで、気候変動対策などの複雑な社会課題にも、ベストの現実解を提供することが可能となります。

事業領域が多岐にわたるにもかかわらず、柔軟にポートフォリオを構成できている理由は、当社の企業文化や組織設計に関連しています。当社では、個性豊かで高い発想力を持つ社員一人ひとりが実力値を高めながら、事業本部間の垣根の低い組織において、「自由闊達」に連携よく協働しています。当社の事業本部制・グローバルマトリクス制は一見複雑に見えるかもしれませんが、顧客ニーズを把握し、産業横断的な組合せによって、最適な現実解を提供するのに適した組織体制です。さらに、ボトムアップ・ミドルアップでの事業提案を可能とする、「自由闊達」な企業文化を活かすことのできる体制でもあります。

社会価値と経済価値の両立や、サステナビリティについてのお考えを教えてください。

社会課題の解決が、当社の社会価値の一つであると考えています。社会課題は時代によって変化し、求められる社会価値も異なるため、未来を予測しながら、お客様の抱える複雑な課題に対し解決策を提案しています。例えば、GHG Scope3排出量への対応は、バリューチェーン全体での取組みが必要な課題です。一企業で対応するには限界がありますが、当社はバリューチェーンの上流から下流まで、ステークホルダーと協力して取り組むことで組合せによるイノベーションを実現しています。

サステナビリティへの取組みは、長期的な社会課題の解決に不可欠です。旧三井物産*の初代社長の益田孝が「眼前の利に迷い、永遠の利を忘れるがごときことなく、遠大な希望を抱かれること望む」と述べましたが、その精神を受け継いでいる当社は、サステナビリティ課題に取り組む上で、お客様の最適なパートナーになれると自負しています。

サステナビリティへの取組みでは、当社が得意とする事業領域や国・地域において、事業のど真ん中でインパクトを与える必要があると考えます。そうすることで、社会課題に対する本質的な現実解の提供と、長期的な視点での経済価値の創出を両立することが可能となります。

三井物産ならではの、社会価値と経済価値の両立に関する実例はありますか。

次世代燃料のグローバルでの取組みや、豪州における取組みは、当社らしい実例です。時代の流れを先読みして事業ポートフォリオを能動的に組替え、産業横断的に強みを組み合わせることで、気候変動への現実解を提供しつつ、経済価値も創出しています。

当社の豪州事業というと、鉄鉱石や原料炭、LNGや天然ガスのイメージが強いかもしれません。実際、これらは当社の経済価値を支える中核事業ですが、GHG Scope3排出量の多い事業でもあります。近年、気候変動問題が社会課題として注目される中、当社はサプライチェーン全体を通じた脱炭素化への対応を牽引していきます。また、得意とする豪州において、同問題に対応する事業も強化してきました。

例えば、当社が長年手がけてきたウッドチップ事業での経験や知見を活かし、森林アセット・マネジメント事業や森林由来の排出権ファンド事業を展開しています。また、エネルギー事業では、CCSの導入やクリーンアンモニアの製造を展望し、鉱山開発事業では、現場近辺でのグリーン水素製造も検討しています。さらに、豪州で排出権取引が先行していることを踏まえ、排出権創出事業も進めています。

このような取組みにより、当社は足元の経済価値を支える中核事業のサステナビリティを担保すると同時に、社会課題に現実解を提供することで、長期的な社会価値と経済価値の両立を図っています。

豪州における脱炭素社会に向けた取組み

2050年のNet-zero emissionsに向けた道筋についてのお考えを教えていただけますか。

当社は、2050年Net-zero emissionsをあり姿として掲げ、その道筋として2030年に2020年3月期比でGHGインパクトの半減を目指しています。これまでインベスターデイなどを通じて、2030年までのロードマップを、進捗状況を含めてお伝えしてきました。事業活動を通じ、社会課題に直接的なインパクトを与える取組みがすでにいくつか実現しています。その結果として見えてきた長期的な取組み方針を、ステークホルダーの皆様にお伝えしたいという意図があり、今回、新たに「2050年のNet-zero emissionsに向けた道筋」を作成しました。サステナビリティへの取組みは、目標設定だけでなく実行していくことが重要であり、今後も当社は、具体的事例をもって進捗を示してまいります。

* 法的には、旧三井物産と現在の三井物産には継続性はなく、まったく別個の企業体です。