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役員座談会

三井物産の価値創造
~Creating Sustainable Futures 実現への道筋~

成長戦略の中核となる中期経営計画 2026(現中経)のテーマ「Creating Sustainable Futures」で目指す世界と、その実現のための戦略・取組みについて、当社社長と3名の社外取締役が意見を交わしました。

中期経営計画2026達成に向けた取組みと期待

事業ポートフォリオ良質化と基礎収益力拡大

  • 恩田:当社は中期経営計画2023(前中経)において、当期利益、基礎営業キャッシュ・フロー共に大きく増加しました。今後の事業ポートフォリオ戦略、また現中経達成に向けた継続的な基礎収益力の拡大に関するお考えをお聞かせください。
  • 堀:当社が知見を持つown fieldに近い領域での新規事業の立上げと収益化を3つの攻め筋に沿って推進していく必要があります。また、事業環境に応じたアップサイドを機動的に取り込めるよう、当社機能を拡充すると同時に、競争力確保に向けた下方耐性を強化します。これらを通じて、当社らしい付加価値を実現し、さらなる基礎収益力の拡大を目指します。
  • 恩田:経営を監督する社外取締役として、当社の事業ポートフォリオ組替えと基礎収益力拡大の進捗度合い、また現中経で期待する点について教えてください。
  • 江川:当社は伝統的に資源・エネルギー事業に強いといわれてきましたが、最近はフードサービス、機能性素材などの分野への大型投資に見られるように、ポートフォリオの多角化に力を入れています。
    前中経期間には、ROICを活用したレビュー強化による積極的なポートフォリオの入替え、コスト削減などによる下方耐性の強化、安定供給のためのトレーディング機能発揮などにより、収益力が底上げされたことが確認でき、心強く思っています。現中経では、当社が強みを持ち、かつ成長が期待できる3つの攻め筋での事業推進、および人材戦略に期待しています。
  • 内山田:事業のサステナビリティ確保には、ポートフォリオの定常的な見直しが必須です。当社ではポートフォリオ管理委員会において、事業現場も巻き込む形で将来に向けたポートフォリオ戦略に関する議論が行われ、ポートフォリオの組替えや既存事業の強化などの施策につながっています。また、この施策の実行において、基礎収益力が土台になっています。基礎収益力がしっかりしているからこそ、当社は議論を尽くした上で、社会の環境変化に対して、迅速に、時には一定のリスクを取りながら、ポートフォリオの組替えに挑戦できるのです。現中経でも、事業ポートフォリオの定常的な組替えと、それを支える基礎収益力のさらなる強化を期待します。一方で、環境変化を踏まえ、事業ポートフォリオの組替えにあたって重視する基準は定期的に見直していただきたいと思います。

グローバルでの多様な個の活躍推進

  • 恩田:現中経では、グローバルでの多様な個の活躍推進を全社戦略の一つとしていますが、人材獲得・育成・強化という観点で期待することや課題認識について教えてください。
  • ウォルシュ:人材は当社の一番の資産であり、強みです。私は、多様な人材の活用により、当社の強みをさらに拡大できると確信しています。
    多様性という観点では、グローバルでの人材確保にさらに注力する必要があります。今年6月に、2名の外国人が新たに社外取締役に任命されましたが、取締役会や会社運営にグローバルな視点が反映されると評価しています。また、女性取締役登用も増加させる必要がありましたが、現在は女性の社外取締役が4名となっています。社内には優秀な女性が多くいますので、より積極的な人材開発、より高いポジションへの登用が必要です。
    多様性があってこそ、多様な視点、新しい発想や事業機会が生まれます。21世紀の課題を解決するのは多様性のある組織であると考えます。
  • 江川:「人の三井」といわれるとおり、当社は人材の獲得・育成・強化に積極的に取り組んできました。当社は社員一人ひとりがとても個性的で、生き生きと働いているという印象を持っています。一方で、多様性が課題という点ではWalshさんと同意見です。当社はキャリア採用を2012年という比較的早い時期から本格化しました。これは今後もぜひ続けていただきたいと思います。
    また、海外採用社員のさらなる活躍や役員登用に期待しています。2022年のグローバル人材データプラットフォームBloomの稼働開始は、統合的な人材データ管理が可能となる重要な進捗だと思います。
    女性活躍に関しては、恩田さんの執行役員昇進も本当にうれしく思っていますが、2025年3月期までの女性管理職比率(単体)10%の目標はぜひ達成していただきたいです。私は、女性管理職育成プログラム「Women Leadership Initiative」に注目しています。このプログラムには私たち社外取締役も参加していますが、当社の女性社員が非常に優秀で意欲的であること、また経営陣が女性の育成にコミットしていることを強く感じています。

Creating Sustainable Futures

事業を通じた社会課題への現実解提供

  • 恩田:現中経のテーマである「Creating Sustainable Futures」において、当社が目指すものは何でしょうか。
  • 堀:当社の機能と役割によって、収益性と持続可能な社会実現への貢献を両立させたいと思います。例えば、脱炭素社会の実現に向けて、当社が新しい技術や産業横断的な現実解をつくり上げ、エネルギー・トランジションに貢献していくこと。ウェルネス分野において、データを活用し科学的根拠に基づいて、未病やニュートリション領域で付加価値をつけ、食・農業分野では、地球の希少な自然資本との調和を実現しながら、これらを1つの大きなバリューチェーンとしたビジネスを展開すること。さらに、当社が持つグローバル・産業横断的なネットワークを活かし、さまざまな分野でのサプライチェーンや産業間での意義のある仕事をつくっていくこと。今後、地球が直面する希少性の高い物資の安定供給にもつなげていきたいと思います。これらは大きな社会課題ですが、当社ならばやり切れると思っています。
  • 恩田:「Creating Sustainable Futures」の実現に向けて、当社が現在果たしている役割、そして今後期待する役割についてどのようにお考えですか。
  • 内山田:社会課題は、解決が困難なものや、解決までの道のりが長いもの、解決手段が収益をすぐに生み出す状態ではないものがあります。しかし当社は、このような社会課題の緩和や解決につながる多くの事業に取り組み、それをビジネスモデルへと昇華させてきました。このような提案力・解決能力・ノウハウを持つ当社は、今後もさまざまな社会課題に対して事業を通じた貢献ができると思います。
  • 江川:私が取締役に就任してからの3年間に当社のサステナビリティへの取組みは加速しており、「Creating Sustainable Futures」を現中経のテーマにしていることからも、当社のミッションは社会課題の解決であるという意志を強く感じます。北海道の社有林を見学した際には、生物多様性の保護活動などを通じた自然環境の保全と伝統文化を守りながら、森林資源を活かす取組みを進めていることが印象に残りました。単に環境価値ある社有林を保有することだけではなく、社有林と連携したJ-クレジットの創出、豪州New Forestsを通じた森林カーボンクレジット・ファンド事業など、実際の事業展開につなげている取組みが進んでいることを心強く思います。このような、事業を通じてさまざまな社会課題への現実解を提供する当社ならではの取組みを通して、日本のサステナビリティへの取組みを底上げする役割を期待しています。

サステナビリティと収益性の両立

  • 恩田:現中経の目標である「ビジネスとサステナビリティの融合」に関連し、当社がどのようにサステナビリティへの取組みと収益性の両立を図っていくのか、課題認識や期待感を教えていただけますか。
  • ウォルシュ:サステナビリティの課題は当社にとって大きな事業機会であると同時に、事業を通じて世界に貢献する機会であると考えます。例えば、水素・アンモニア、希少鉱物への投資や、温室効果ガス削減に資する事業も世界の低炭素化への貢献になります。
    私は取締役として、当社のサステナビリティへの取組みに関する進捗に非常に勇気づけられています。当社の設定するサステナビリティ関連目標の達成に向けて積極的に取り組むことで、株主やコミュニティに付加価値を提供し、当社に優秀な人材と投資家を引きつけることができると期待しています。
  • 内山田:サステナビリティと収益性を両立するにあたって、事業ポートフォリオも含めた3つの掛け合わせが重要だと考えています。なぜなら、この3つが正の回転になるバランスを追求することが、ビジネスとサステナビリティの最適解となるからです。当社では、「社会課題の解決」が価値観のベースにあり、サステナビリティの追求と収益確保の両立につながってきたと思います。今後もこの価値観に基づき事業を継続し、長きにわたって人や社会に貢献していく企業として存在し続けることを期待しています。
  • 堀:社外取締役の皆様からもサポートいただきながら、サステナビリティへの取組みと収益性の両立を実現していきたいと思います。そのためには、常に自分たちの足元を見て成果を見通せることに着手し、同時に発揮できる機能を増やしていくことが重要だと思っています。事業ポートフォリオの組合せによる価値提供を進めながら、必要な機能が不足している場合は、時間軸を意識しながら早期に確保していく。このような形で、「Creating Sustainable Futures」の実現に向けて全社一丸となって取り組んでいきます。

さらなる企業価値向上に向けて

  • 恩田:当社のさらなる企業価値向上に向けて、期待することを教えてください。
  • ウォルシュ:イノベーションは成長機会を獲得するためにも、継続的な事業の改善にも重要です。また、将来の事業環境を見通すことは容易ではありませんが、事業環境の変化に対して、敏速かつ柔軟に対処し、変化を機会に変えていく必要があります。先進技術は、環境面では温室効果ガスの削減などに貢献するでしょうし、DXや人工知能などが従来の事業管理のやり方などを変えていくと思います。また、例えば、ヘルスケア分野では治療や予防に大きな変化があると思いますし、農業分野では、農業生産の量と質が飛躍的に向上する可能性があります。
    当社は、先進技術の活用、イノベーション、リサーチ活動などを通じて事業を改革していくと思います。10年後の事業環境は分かりませんが、当社は引き続き社会課題の解決に対して重要な役割を果たすためにイノベーションを活用し、事業の価値を増加させていると確信しています。
  • 江川:当社の競争力の源泉は、さまざまな事業を通じて培ってきたネットワーク、信用、ブランド、人材、そして環境変化に応じてポートフォリオを組み替える柔軟性です。加えて、世界中のさまざまな業界の情報を入手できることも、業界の垣根を越えた競争が激化している現状において、有利な状況にあると言えます。これらの優位性を活かして、環境変化に応じてさらに進化を遂げてほしいと思います。
    また、これまでキャッシュ・フローを拡大して企業価値向上を高めながら、株主還元にも積極的に取り組んできました。今後も企業価値の拡大を続けながら、株主還元への取組み継続を期待しています。
  • 内山田:さらなる企業価値向上に向けて「社会にとってなくてはならない企業」になることが重要です。当社は、エネルギー、資源、食料、医療、森林など、社会と直接つながるようなさまざまな事業に取り組んでいます。これらの事業を通じた社会課題の解決の継続によって、当社の企業価値はさらに向上すると思います。そのためには、当社のさまざまな取組みの加速とそれを可能にする技術的なイノベーションへの投資、さらにこれらを支える人材への投資が重要です。
  • 堀:本日は大変貴重なご意見と激励のお言葉をありがとうございます。
    私は、当社の長期的な持続性を確保し、また社会に評価いただける会社をつくるための礎は人材だと考えています。一人ひとりの社員が高い目線で自立的に考えるインディペンデント・シンカーとして切磋琢磨し、部門をまたいだ産業横断型のチームを形成することで、大きな仕事を成し遂げることができると考えます。そのためには、多様な専門性やバックグラウンドから生まれるダイバーシティと、その多様な個を1つのチームにまとめるインクルージョンが重要です。
    そして、当社の有する経営資源を最大限活用し、社会課題に正面から取り組み、サステナビリティと収益性を両立させるチームを絶えず高いレベルで維持し続けることがCEOの最大の役割だと考えています。これにより、当社が社会課題に対して価値を提供し、その結果として、パートナーとのより大きな仕事の成立、株主の皆様への還元、そしてステークホルダーの皆様からの高い評価につながり、当社の長期的な価値創造につながると信じています。