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CEOメッセージ

中期経営計画2026の推進を通じて
「挑戦と創造」を積み重ね、
グローバル企業として
さらなる高みを目指します

代表取締役社長

堀 健一

中期経営計画2026

5月に公表した中期経営計画2026(現中経)のテーマ「Creating Sustainable Futures」に込めた想いについて教えてください。

「Creating Sustainable Futures」は、当社が標榜するMission「世界中の未来をつくる」と直接連動しています。当社は世界中の、また多岐にわたる産業の社会課題を掘り起こし、地域特性、産業特性、課題解決のための時間軸を考慮の上で、よりよい未来をつくるために多様な「現実解」を提供することができます。そのため、「Futures」と複数形にしています。

その現実解を生み出す事業は、世界が直面している課題の解決と当社が求める収益性を両立させるという意味で「Sustainable」である必要があります。そのような事業を創るためには、グローバル・産業横断的な強みを融合させ、「創り、育てていき、そして展(ひろ)げていく」ビジネスモデルを推進する、すなわち、各国の個別事情を理解しながら、産業横断的にグローバルな課題に取り組み、複数の産業をまたがるイノベーションを生み出す必要があります。そして、それをやり切る人材の育成も極めて重要です。これらを踏まえて、現中経の全社戦略(Corporate Strategy)を設定しました。

現中経を通じた当社のあり姿をどのようにお考えでしょうか。

現中経における各種施策の実践を通じて、さらに自分たちの目線を上げ、グローバル企業としてさらなる高みを目指したいと考えています。

現在は、外部環境のボラティリティが高く、将来を見通すことが困難な経営環境が継続しています。だからこそ、足元の収益基盤を絶えず強化し、持続性の高い事業を成長案件として加えていく、すなわち事業ポートフォリオ変革の継続が最重要と考えています。

「Sustainable Futures」を目指して3つの攻め筋を描いています。1つ目は当社が参加している事業領域を中心に、グローバルな産業横断的ビジネスソリューションを提供すること(Industrial Business Solutions)。2つ目は、世界の最重要課題の一つであるエネルギー・トランジションに対して、当社ならではの産業横断的な現実解を提供していくこと(Global Energy Transition)。3つ目は、ヘルスケアコストの合理化も考慮しながら、多様化する生活者のライフスタイルや志向に応え、世界全体の健康を増進するサービスを提供していくこと(Wellness Ecosystem Creation)。この3つを中心に成長施策を推進します。

当社はグローバルかつ幅広い産業にわたる事業を展開しているため、お客様の課題を解決するための引き出し、すなわち知見やノウハウ、機能を多数有しています。これは、課題解決のためのビルディングブロックとも言い換えられます。エネルギー・トランジションに向けたバリューチェーンの構築や、食・ニュートリション・ウェルネスを組み合わせたエコシステムの形成など、当社の手がけているさまざまな事業から得た知見を業際で的確に組み合わせ、お客様の課題に合わせて解決策をつくり出していきます。

このようにして社会やお客様の課題解決に貢献して成果を出すと、お客様・パートナーから、三井物産と組んでよかった、次のプロジェクトも三井物産と一緒に取り組みたいと思っていただける。そして、次のプロジェクトでも選んでいただけるような場面を増やしていくことを目標としています。

現中経公表以降、成長投資が相次いでいますが、
キャッシュ・フロー・アロケーションについてのお考えをあらためて教えてください。

現中経では「Creating Sustainable Futures」につながるポートフォリオへの変革を、キャッシュ・フロー・アロケーションの枠組みの中で進めていきます。安定的に獲得したキャッシュ・フローを成長投資と株主還元にバランスよく配分し、強靭なバランスシートを保ちます。成長投資に関しては充実した案件パイプラインがある一方で、現在の経営環境を踏まえると、リターンの目線を高く持ち厳選する必要があります。自分たちで現場を複眼的に見ることで、厳選した投資実行に向けた良い判断をしていきたいと考えています。同時に、「sustainable」という視点から、責任を持って引き継いでくださる第三者がいる場合には、たとえ現在高い業績を上げている事業であっても、資産リサイクルを通じたポートフォリオの入替えを進めます。

株主還元に関しては、前中経から基礎営業キャッシュ・フローに対する還元割合目標を33%から37%程度に引き上げました。また、当社の基礎収益力の着実な向上を踏まえ、1株当たり150円を下限とした累進配当を導入しました。成長投資と株主還元の充実を両立し、株主の皆様の期待に応えてまいります。

ステークホルダーとの価値協創

本統合報告書では、成長戦略と企業価値向上のつながりを示し、ステークホルダーとの価値協創を通じて当社の企業価値が向上するとしていますが、ステークホルダーとの価値協創についてのお考え、当社ならではの実例について教えてください。

株主や投資家の皆様、お客様、パートナー、社員といった多面的なステークホルダーの皆様との価値協創は、会社のあり姿そのものです。そのためには、当社の中長期の方向性、特に貴重な経営資源をどのように配分して、価値創造につなげていくかを示し、常に各ステークホルダーの立場から賛同・理解いただくことが重要だと考えています。その意味で、皆様との対話は非常に重要です。私自身は、現在グローバリズムがどうなっていくかということに特に関心があり、より高い目線で、ステークホルダーの皆様と価値を創造していきたいと考えています。

現中経の「Global Energy Transition」は、当社らしいステークホルダーとの価値協創に関する実例です。長期目線で、あるべき脱炭素社会に向けて、どのような企業行動がトランジションの時間軸を考慮した現実解になっていくか、ということを深く考えた上で価値協創することが非常に重要です。脱炭素社会に向けての橋渡し役としての天然ガス・LNG事業、そしてさまざまな新事業を、持続可能かつ投資基準を満たし、そこから生まれる新たな便益をビジネスモデルに落とし込める形で推進していく必要があります。当社の経営資源と時間軸の中で、業際から生まれるイノベーションを通じて、脱炭素社会をどのように実現していくかをお示しします。そして、試行錯誤の過程も透明性を持ってお見せし、皆様のご理解を得て、高いレベルのグローバルコンソーシアムで、この「Global Energy Transition」を実現していきたいと考えています。

企業文化

当社の企業文化に関するお考えを教えてください。

「挑戦と創造」「自由闊達」は、長きにわたり三井物産が大切にし、また社員一人ひとりが胸に刻んできた言葉でもあります。そして、仕事を進める上での社員の心構えに、当社の企業文化が顕在化しています。

多様なバックグラウンドとユニークな強みを持つ当社社員が、さまざまな経験を積み、スキルに磨きをかけ、「挑戦と創造」の精神をもって世界中で活躍する。社員同士はお互いをリスペクトし、認め合い、切磋琢磨しながら、事業本部の垣根を越えた産業横断的なチームをつくり上げ、多様なステークホルダーとの共創によって価値を生み出していく。この当社流のインクルージョンは、「自由闊達」な企業文化が土台になって育まれているものです。

組織の枠組みの中で、こうしたプロセスが再現されていくことが、まさに三井物産の企業文化であり、揺るぎない強みなのです。その意味では、社員一人ひとりが当社の企業文化の担い手であり、継承者であると言えます。三井物産は大切な一人ひとりの社員の活躍の舞台です。その舞台を提供し、当社が掲げる目標に向かって、社員に大いにその力を発揮してもらう。ここに企業文化の真髄があると考えています。

これには、当社の組織設計も密接に関係しています。当社の体制は、16の事業本部長と海外の拠点長が社長直下にある点に特徴があります。社長と共に経営を担う管掌役員やコーポレート役員を中心とした経営チームがあり、かつ密に連携しているフラットな組織です。そのため、事業部門間・地域間の垣根が低く、複数部門が協働するのが常態になっています。

三井物産流のインクルージョンは、どのように企業価値向上につながるのでしょうか。

社会課題が複雑化する現在においてグローバルなビジネスを進める上では、お客様の課題や本質的なニーズに応えることのできる、産業横断的な多様なメニューの提示がポイントとなります。また、事業環境の大きな変化が生じた場合に、代替プランのタイムリーな提示や、バックアップの施策を講じることも重要です。

多様な人材が産業横断的に有効なチームを形成できる三井物産流のインクルージョンは、お客様に提示できるメニューを広げ、事業を通じたお客様の課題解決においても、新しい事業を創出する上でも、極めて重要なファクターです。そして、不測の事態が起きた際の「打たれ強さ」の確保にもつながります。

ステークホルダーエンゲージメント

株主・投資家との対話で重視していることは何でしょうか。

株主・投資家の皆様との対話は極めて重要と考えています。対話において最も重視しているのが、当社の事業を深く知っていただくこと、その上で、当社の将来像と経営方針をご理解いただくことです。そのために、対話の機会を多く持ち、定点観測していただけるような情報を提供したいと考えています。また、皆様との対話を通じていただいた助言や指摘は、社内においてしっかりフィードバックし、経営改善に活かしています。

実際に、長年の対話の積み重ねで、株主・投資家の皆様が当社を総合的にご理解いただいていると実感する機会が増えています。

当社はグローバルにさまざまな領域にまたがった事業ポートフォリオを有しています。しかし、どの領域においてもベースとなるコア事業は、当社機能を起点に、さまざまなお客様の課題解決やニーズに応える過程で獲得し、磨き、展(ひろ)げ、時間をかけて積み上げてきたものです。一見、コングロマリットに見えますが、それぞれの領域でベースとなるコア事業の創り方、育て方、組合せ方は変わりません。事業ポートフォリオの新陳代謝においても、絶えずコア事業に戻り、コア事業の育成を継続しています。地球規模の課題に対応可能な、グローバル、かつ産業横断的な事業群形成を可能にしているこのような事業運営について、投資家の皆様と議論できる機会は大変貴重です。

今後の挑戦

社長就任3年目を迎えて、今までの手応え、そして今後の挑戦についてお聞かせください。

前中経期間を終えた今、強く感じているのが、会社全体としての「一体感」の高まりです。現中経で掲げる施策、目標の達成に向けて、経営資源を最大限活用して実行していこうという「一体感」が醸成されていることを感じています。

その一つの背景が、お客様の期待の高まりです。先行き不透明な、複雑な経営環境であるがゆえに、当社に対するお客様の期待が高まっています。これに対し、当社の強みである部門間の垣根の低さを活かし、本部横断的にチームをつくり、お客様の期待に機動的に応えていこうとする社員が増えています。また、機動的に動くために、経営との相談の頻度も増しています。

私は社長就任時から社員に対して、成長のレベルを2ノッチ上げていこうと言い続けてきました。1ノッチは、お客様の高まる期待に応えるべく、当社の経営資源をフルに活用しようということで、これは相応に達成しつつあるように思います。さらなる1ノッチが、今以上にイノベーションを起こし、ダイナミックな活動をしていくことです。これからやるべきことは、まだまだたくさんあります。それがまさに現中経「Creating Sustainable Futures」にほかなりません。「挑戦と創造」の積み重ねを企業価値向上にしっかりとつなげ、株主の皆様の期待に応えてまいります。

堀 健一