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CFOメッセージ

当社のポートフォリオ経営をさらに進化させ、
事業ポートフォリオの良質化や成長投資の進捗を示しながら、
当社の成長ストーリーをお伝えしていきます

代表取締役 専務執行役員
CFO(チーフ・フィナンシャル・オフィサー)

重田 哲也

中期経営計画2023(前中経)を振り返っての手応えについてお聞かせください。

当社にとって前中経の3年間は、コロナ禍、ロシア・ウクライナ情勢によるサプライチェーンの分断、インフレ高進などの外部環境の変化への対応力が問われる期間でした。お客様やパートナーから、さまざまな課題解決のご要望も増え、当社の機能発揮や事業拡大の機会は多く、強靭な事業ポートフォリオの構築を進めながら好業績につなげることができました。コロナ禍の影響により、一部成長投資の実行に遅れが出たものの、良質な案件パイプラインの拡充に取り組み、2024年3月期以降の実行に向けて着実に進捗しています。

中期経営計画2026(現中経)は、前中経の成果を通じて得た自信とともに良いスタートが切れたと思います。前中経の戦略や方針を継承し、進化させ、経営基盤・収益基盤をさらに拡充していきます。

現中経でのキャッシュ・フロー・アロケーションについて教えてください。

キャッシュ・フロー経営をさらに深化させます。前中経で導入したキャッシュ・フロー・アロケーションの考え方は投資家の皆様に分かりやすいとご評価いただいており、この枠組みを継続します。投資については、現中経の発表時点で、成長投資として1兆1,700億円を「投資決定・方針確認済み」に配分しています。今後さらに、案件パイプラインから厳選の上、マネジメント・アロケーションの枠組みを通じて資金配分します。

株主還元は、安定的な基礎営業キャッシュ・フローをベースとし、3年間累計の基礎営業キャッシュ・フローに対する株主還元の割合を前中経の34%から引き上げ、37%程度を目標としました。また、これまでも継続的に増配を行ってきましたが、現中経においても基礎収益力の拡大を見込むことから、1株当たりの配当150円を下限とする累進配当を導入しています。

現中経では、ポートフォリオ経営をどのように進化させていくのでしょうか。

成長投資の厳選において、各事業本部を管掌する経営会議メンバーの関与が深まっています。管掌役員と事業本部長の双方向の対話を通じ、全社目線での議論を今まで以上に深めています。事業性・収益性に加えて、規模感・戦略性・希少性・即効性などを重視し、また現中経の攻め筋、事業群形成、「サステナビリティ経営の更なる深化」との整合性などの考え方も浸透してきました。当社の事業投資は、例えば物流・トレーディング事業でその業界に刺さり込み、そこで蓄積した知見や業界でのプレゼンスを活かして検討するなど、事業に対する深い理解に基づいています。この知見・プレゼンスに基づき、各業界に応じたリスクを上回るリターンを追求します。

また、事業ポートフォリオの良質化に向けて、「ミドルゲーム」の重要性について意識を高めています。「ミドルゲーム」は、ビジネスモデル「創る・育てる・展(ひろ)げる」の「育てる」に該当します。事業環境の変化に対応可能な複数のシナリオを持ち、戦略的な打ち手の前倒し、或いは最適なタイミングでの実行など、「中盤」での事業強化を徹底します。

さらに、会社のROE目標と、各セグメントの資産効率を橋渡しする指標として前中経よりROICを導入し、ポートフォリオ・レビューの質を向上させています。ROICのターゲットは、事業毎のリスク・ライフサイクルにおけるステージなどの違いもあるため、事業毎に動的に分析しています。現中経のROEの目標は、当社の考える株主資本コストを上回る水準として、3年間平均で12%超としました。収益性向上、適切な資本構成、株主還元の強化により、ROEの持続的な向上を目指します。

当社の成長戦略の実行と価値創造を通じた企業価値向上についてお考えをお聞かせください。

当社は、外部環境の大きな変化がもたらす社会課題に対し、グローバルに持つ各分野の知見と機能を掛け合わせた産業横断的な現実解の提供により、価値創造を行っています。そのため、当社の事業推進そのものが社会価値と経済価値の双方を創出し、その成果や将来への期待が企業価値向上に直結していると思います。世界的なエネルギー・トランジションにおける既存エネルギー源の安定供給と将来に向けた新エネルギー源開発の両立はその代表的な例であり、また食・ニュートリション×ウェルネスエコシステムにおいては、消費者の健康ニーズの高まりに応え、未病・予防や病院向け治療食などの健康に通じる食の提供を通じて社会価値と経済価値を創出しています。

社会課題の複雑化に伴い、リスクも複雑化してきていると思いますが、リスクへの対応についてお考えをお聞かせください。

目下、地政学、サプライチェーン、ESG、サイバーセキュリティなど、グローバルでリスクの複雑さが増大しており、当社のリスクマネジメントにおいても、その対応を求められるものが多く、かつ複雑化しています。当社の企業価値向上には、各事業セグメントにおける収益性・成長性向上に加え、リスクマネジメントも、事業を支え、将来の不確実性をコントロールする仕組みとして重要です。当社は統合リスク管理を導入しており、事業本部とコーポレートスタッフ部門、さらにコーポレートスタッフ部門各部間が、重層的に連携して取り組み、また、ポートフォリオ管理委員会にて定期的に議論を行い、その結果を経営会議・取締役会に報告しています。この仕組みや取組みをさらに先鋭化し、ポートフォリオ経営に組み込んでいきます。

株主・投資家の皆様との対話からの気づきについて教えてください。

株主・投資家の皆様との対話は、私の最優先課題の一つです。昨年、CFOに就任して、分かりやすい発信、具体的事例を用いた説明に注力しながら、当社の経営方針や経営の議論を共有してきました。皆様のご意見・ご指摘に気づかされることが多く、それらを積極的に社内にフィードバックし、経営での議論やその改善につなげてきました。また、当社ビジネスモデルは分かりにくいと言われることもありますが、皆様との対話を通じて、経営の透明性が高まっていると感じています。

現中経の方針・戦略の進捗につき、しっかりとモニタリングしていきます。例えば、新規投資の進捗状況などを一定の頻度で開示し、トラックレコードを示すことで株主・投資家の皆様からの当社事業に対する信頼を獲得し、結果として資本コストの低下にもつなげたいと思います。多くのインパクトある成長投資案件候補が控えていますので、当社の成長に大きな期待感を持っていただけるよう、当社の価値創造ストーリーを皆様にお伝えしていきます。