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CDIOメッセージ

一人ひとりの力を最大限に引き出すインクルージョンで、
デジタルを活用した変革をリードします

代表取締役 専務執行役員
CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)

松井 透

CDIOのミッションは何でしょうか。

三井物産グループのデジタルを活用した変革をリードしていくことです。変革は自分一人でできることではないので、経営のコミットを伝え、社員を後押しすることで、社員が自ら変革を起こしたい、加速したいという気持ちになってもらうことが重要と考えています。デジタルを活用した変革として、業務の徹底的な効率化・標準化による高付加価値な業務へのシフトと、新たなビジネスの創出の2つに本気で取り組んでいきます。

ご自身のリーダーシップスタイルに至った原体験について教えてください。

これまで4カ所、計約12年間の出向経験があり、さまざまな組織で仕事をしてきました。その経験から、主体的に動く人の集団が、組織として最も力を発揮すると実感しています。私は「任せるリーダーシップスタイル」で、社員一人ひとりがタスクではなく役割を持ち、その中で自らが考えて仕事をすることが大切という考えを持っています。

また、私は新たな組織や新たな事業を立ち上げた経験が多く、シェールガス事業会社やエネルギーソリューション本部(以下ES本部)の立ち上げも担いました。そのため、前例主義を嫌います。当社社員の強さは、前例に倣わず、自分の発想で、今の環境の中で一番よいことは何か、何が会社のためになるのかを考えることで、それを引き出すのがわれわれリーダーの役目だと考えています。

中期経営計画2023(前中経)のデジタルに関する取組みの進捗について教えてください。

当社は2017年からDXを推進してきました。前中経が始まった2020年4月に、経営企画部にあったDigital TransformationチームとIT推進部(当時)を、攻めと守りが一体となったデジタル総合戦略部に統合しました。2021年3月期にはDX総合戦略を策定して、当社グループのDXのあり姿を示し、推進のロードマップを策定・推進してきました。2023年3月期末時点でのDX取組み案件数は累計で約350件検討してきており、うち約95件が実証実験やシステム開発を実施、またうち約45件がプロジェクト実行もしくは実運用に至っており、着実に進捗しています。

さらに、技術的に難易度が高い、あるいは不確実性が高く事業本部単独では取り組みにくいものの、会社として中長期戦略視点でチャレンジすべき案件をサポートするために、戦略的DX支援制度を導入しました。この制度を活用し、森林DX、レベル4自動運転技術を活用した幹線輸送サービスのT2、サステナブルコットンのサプライチェーンをトレースするfarmers 360° link など、デジタルを使って社会課題に現実解を提供する事業が育ちつつあります。2023年6月に経営方針やサステナビリティ戦略との一体感ある実行体制などが評価され、経済産業省などが認定するDX銘柄に選ばれました。

中期経営計画2026(現中経)で目指すことについて教えてください。

1つ目は、現中経のCorporate Strategy④「グループ経営力の強化」に掲げるとおり、DXを活用して今の社員数でより大きな仕事を進めることです。そのためにはデジタルを活用した業務効率化により、高付加価値業務へのシフトを行うことが必要不可欠です。また、各事業本部のノウハウなどをしっかりと共有し、それを事業創出にも活かしていきたいと考えています。そのためには、全ての社員がリスキリングを続けることが重要です。

国際経営開発研究所(IMD)の調査によれば、日本の競争力は低下しています。中でも「ビジネス効率性」が悪いというのが顕著で、DXによる定型業務の徹底的な効率化は待ったなしです。そのためにも、ビジネスの現場を熟知している当社社員のDXリテラシーの向上に向け、関連スキルの実装による総DX戦力化を進めています。

私は、当社には自然とリスキリングするカルチャーがあると考えています。当社は、その時代の社会課題に応じてビジネスモデルを変え、さらに事業本部間の連携や本部をまたいだ異動もあるため、業界知識・物流事業・事業投資に必要な知識などを、常にアップデートしてきました。リスキリングしないと仕事ができないので、リスキリングは習い性になっていると言えると思います。デジタルも同様で、当社にはさまざまなデジタルツールやインフラがありますので、効率化に向けてそれを使いこなすためにリスキリングしていきますし、さらにDXビジネス人材やより高度なDX技術人材に向けたリスキリングも進めており、それを支援する仕組みとしてMitsui DX AcademyやDX人材認定制度を設定しています。私はCDIOとして、これらの取組みの推進を後押ししていきます。

2つ目は、データドリブン経営です。データを活用した意思決定の推進に取り組みます。中でも、タレントマネジメントシステム“Bloom”は重要と考えています。当社は人材が価値創造の源泉ですので、Bloomを通じてグローバルベースで人材を把握し、そのデータをもとに戦略的適材配置を推進することで、当社の価値創造をさらに加速していきたいと考えています。

3つ目は、DXを活用した事業創出です。デジタルと当社ならではのノウハウを組み合わせ、事業を創出していきます。例えば、森林DXでは、当社社有林のCO2吸収量可視化に航空測量データを活用し、クレジット創出プロジェクトの承認を取得しました。従来はクレジット算出にあたってのCO2吸収量は人手による実測でないと認められませんでしたが、行政に働きかけ、制度変更に至った結果として、デジタルの活用によって成果が得られた事例です。このようにノウハウや事業運営力とデジタルを組み合わせ、新たな事業創出への挑戦を続けます。

デジタルを活用した変革を実現するために重要だと考えていることは何でしょうか。

多様な人材を活かすためのインクルージョンです。私は出向経験からも、多様な人材が、自分はこの組織の大事な一員だ、と思って働けることが重要と考えています。例えば、オーストラリア人の中に日本人は私だけの状況で、オージーフットボール選手の話題が出た時、私だけ分からないので誰かが少し説明してくれる。このように少しの配慮で分からない人も分かるようにしてあげることは大事であり、これこそがインクルージョンだと思います。

立ち上げを担ったES本部は、複数の事業本部から人が集まった組織でしたので、“Make Others Successful”という言葉を本部員に浸透させました。ES本部は他事業本部とエネルギー・トランジションを進めるためのハブであり、他の事業本部の成功を導いていこう、という共通認識を持ってもらい、組織として一つにまとまるためです。

デジタルを活用した変革にはインクルージョンが重要です。デジタルの知識レベルにかかわらず社員全員が取り組むため、そしてさまざまな事業本部やキャリア採用で外部から集まった多様性の高いDX人材の力を最大限に引き出すためのインクルージョンです。全社DX取組みを一体となってリードし、攻めにも守りにも変革をもたらしていきたいと思います。